三丁目の('A`)ドクオ達のようです

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/06/04(金) 00:02:20.90 ID:ZB8IBzlWO
( ⊆⊇)「……」

耳鳴りが鳴り止まない。

明らかにおかしい。
どこにもいない。

掃いて捨てる程に溢れかえっていた奴らが、忽然と姿を消していた。

どうなっている。
誰の仕業なのか。
どこに行ったのか。

巫女装束の女の姿が脳裏に浮かぶ。奴がどこかにやったのか。

人間は流石にまずい。が。分からない。もはやどうでもよくなってきていた。
思い知らせてやりたいとも思っている。
そうだ。思い知らせてやらなければ。

神社はどこだ。
覚えていない。
どうでもいい。歩けば着く。

耳鳴りは鳴り止まない。
遠くで、まだ。猫が鳴いている。


第二十五話 六月十九日・昼



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/06/04(金) 00:04:18.68 ID:ZB8IBzlWO
※    ※    ※

(,,゚Д゚)「いつからだ」

(*゚ー゚)「え?」

(,,゚Д゚)「いつからだって聞いてるんだ」

(*゚ー゚)「えっとー、何が?」

(,,#゚Д゚)「……とぼけんじゃねえ」

(,,゚Д゚)「お前……ッ、もう、見えてねェんだろ!? 周りの景色も、俺の顔も、何もかも……!」

(*゚ー゚)「やだなぁ、まだ少しは見えるよ」

(,,゚Д゚)「じゃあ聞くが」

(,,゚Д゚)「俺が今どっちの目を閉じてるか、分かるか?」

(*゚ー゚)「ん。えーと……左、かな?」

(,,゚Д゚)「両目とも開きっぱだ、馬鹿」



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/06/04(金) 00:06:46.19 ID:ZB8IBzlWO
(*゚ー゚)「ありゃりゃ、失敗だったかな。えへへ」

(,,゚Д゚)「何で、そんなに平気そうなんだよ」

(*゚ー゚)

(* ー )「そんな事無い、不安で仕方ないよ。こんな非常時に、目が急に使い物にならなくなるんだもの。焦っちゃった」

(,,゚Д゚)「……」

(* ー )「本当はね。モララーさんの顔も見えなかったんだ。それでね、ちょっとだけ、ほっと……したりしたんだ、不謹慎だけど……」

(,,゚Д゚)「……」

(* ー )「もう分かんない。皆、今、どんな顔してるの? 何でバラバラになっちゃうの?」

(,,゚Д゚)「しぃ」

(* ー )「このままじゃ皆死んじゃうよ、私も。……死ぬのかな」

(,,゚Д゚)「しぃ!」



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/06/04(金) 00:08:16.56 ID:ZB8IBzlWO
(*;ー;)「……。まだ死にたくないよ、ギコ君」

(,,゚Д゚)「──聞いてくれ。俺はお前のそばから離れるつもりはない。お前を死なせるつもりも、全く無い」

(*;ー;)「嘘。目が駄目になった子達がどうなってきたか……ギコ君も知ってるでしょ」

(,,゚Д゚)「ああ。だからどうした」

(,,゚Д゚)「一緒に来い。俺はお前の目にはなれねぇが、お前の盾にはなれる」



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/06/04(金) 00:09:47.14 ID:ZB8IBzlWO
※    ※    ※

(メ,,メ Дナ)

(メ,,メ゚Дナ)「んぐ」

( ^ω^)「ん。起きたのかお」

(メ,,メ゚Дナ)「……。あいつは?」

鼻先が引きつる。とうの昔に馬鹿になっているのに、律儀に悪臭に反応しているらしい。
頭の奥に鈍く残る痛みを払いながら、周囲を見渡す。
ドクオの姿が見えなかった。

( ^ω^)「トイレ行ってるお」

(メ,,メ゚Дナ)「そうか」

ふんと鼻を鳴らし、天を仰ぐ。
ここに日の光は届かない。故にその挙動に意味は無い。

そろそろ昼に差し掛かる時間帯だろうか。
勘でしかないが。

(メ,,メ゚Дナ)「恐らく良い頃合いだ。奴が帰って来たらさっさと東区に戻るぞ」

( ^ω^)「おk」
(メ,,メ゚Дナ)「……」
( ^ω^)「……」
(メ,,メ゚Дナ)「何だよ。何か言いたげじゃねえか」



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/06/04(金) 00:11:46.41 ID:ZB8IBzlWO
(;^ω^)「え。あー……ああ」

( ^ω^)「いや、前酷い事言ったから。悪いかなーなんて」

(メ,,メ゚Дナ)「チッ、ンな事かよ。馬鹿なガキに野次られた程度、いちいち根に持つかっての」

(;^ω^)「結構怒ってたような……というか本人目の前でその物言いかお」

(メ,,メ゚Дナ)「…………」

劣化モナー。
のほほんとした間抜け面を眺めて俺が感じた印象は、その程度のものだった。
確かに身体はかなり鍛えているようだが、ただそれだけだ。
俺が言えた立場ではないけど。

( ^ω^)「僕の顔に何か付いてるのかお?」

(メ,,メ Дナ)「別に」

目を瞑る。流石兄弟が起きるまで、二度寝するか。
傍らのニヤケ面をずっと眺めているのもシャクだ。

(メ,,メ Дナ)「……」

(メ,,メ Дナ)「小僧」

( ^ω^)「?」



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/06/04(金) 00:13:34.84 ID:ZB8IBzlWO
(メ,,メ Дナ)「俺達は今、渦の中にいる」

( ^ω^)「渦?」

(メ,,メ Дナ)「ああ」

この感覚は、覚えがある。
それも一度や二度ではない。

(メ,,メ Дナ)「西区は壊滅した。東区の被害も甚大だ。仮に例の奴らを何とか出来ても、後に続く混乱は今の比じゃない」

結局のところ、野良猫は野良猫によって殺される方がよっぽど多いのだ。
これまで保ってきた危ういバランスは、膨大な野良の亡骸の上に成り立っていた。

(メ,,メ Дナ)「大勢が死ぬだろう。朝から晩まで戦いに明け暮れる事もあるだろう。行き倒れた猫を脇目に餌を喰らう事もあるだろう」

(メ,,メ Дナ)「その時、お前の傍らにはショボンも、あの馬鹿もいない。お前は独りだ」

( ^ω^)「……」

変な気分だった。
こんな事を言うつもりは全く無かった。
唐突に自分が年老いた事を自覚してしまう。
奴も、こんな気持ちだったのだろうか。



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/06/04(金) 00:15:10.10 ID:ZB8IBzlWO
( ^ω^)「独りじゃないと思うお」

(メ,,メ Дナ)「ほう」

( ^ω^)「ドクオが居なくなっても、皆がバラバラになるとは思ってないお。仮にそうなっても、僕は独りにはならないお」

ズキリと頭の奥が痛んだ。
思わず目を開く。
幼さを残した猫の面は、相変わらず笑ったままだった。

(メ,,メ゚Дナ)「何故だ」

ブーンなる猫は、頬をポリポリと掻き、照れ臭そうに笑う。

( ^ω^)「今は色々あって野良だけど。……実は僕、飼い猫なんだお。
       あの子が来るのを、死んでも待たなきゃいけない。
       あの子が来るまで、死んでも生きなきゃいけない。だから僕は独りじゃないお」

(メ,,メ゚Дナ)「なんだ、そりゃ」

思い切り間抜けなセリフを吐く。
そもそも意味が分からない。イカれているのかこいつは。



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/06/04(金) 00:16:49.00 ID:ZB8IBzlWO
( ^ω^)「……うん、そうだお。死ぬななんて言われなくても。最初からそのつもりは全く無いんだお」

(メ,,メ゚Дナ)「あ?」

(;^ω^)「あ、いやこっちの話」

(メ,,メ゚Дナ)「しかし、飼い猫、ね。そんじゃ、さぞかし野良の暮らしはしんどかろう」

( ^ω^)「そうかお? 確かにお腹は減るしやたら怖いけど、僕は結構好きだお」

(メ,,メ゚Дナ)

(メ,,メ゚Дナ)チッ

(;^ω^)「え? あれ、思っくそ舌打ち?」

何なんだ、こいつは。
食えない野郎だ。


(メ,,メ゚Дナ)「小僧」
( ^ω^)「お?」
(メ,,メ゚Дナ)「俺お前嫌いだわ」
( ^ω^)「いや、まあ僕もだけど……」



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/06/04(金) 00:19:02.32 ID:ZB8IBzlWO
(メ,,メ゚Дナ)「だが」

( ^ω^)「?」

(メ,,メ゚Дナ)「助かったよ。ありがとう」

それにしても、最後まで生き残りつつあるのが、鉄砲玉の俺とは。
全く笑えない冗談だ。

(;^ω^)「あ、ああ。うん。ど……どう致しまして」
( ^ω^)「良かったお。皆何とか生き延びて」

やはり、屈託無く笑う。
このガキのニヤけ面に、恐らくショボンは救われたのだろう。
それに対しての礼は流石に言いたくはない。


( ´_ゝ`メ)「──あ〜〜〜〜ッ、よォっく寝ちゃいましたかなぁ〜ンッあいだだ痛い痛いアバラ痛い」

(メ<_`;)「このざーとらしさ、いっそ潔いな」

( ^ω^)ノ「お。おはおー」

( ´_ゝ`メ)ノ「おはおっおー」

(メ<_`;)「気が合うの? ひょっとして兄者的には」

(メ,,メ゚Дナ)「……お前ら。いつから起きてた」

( ´_ゝ`メ)「え、回想終わった辺りからだけど」



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/06/04(金) 00:21:41.78 ID:ZB8IBzlWO
(#) _ゝ メ)


(メ<_`;)「そ、そんなことより、彼が遅いな」

(メ,,メ゚Дナ)「!」

( ^ω^)「ドクオのトイレ、結構長いお。何か年取って色々しんどいとか」

(メ,,メ゚Дナ)「どっちに行ったんだ」

( ^ω^)「外でやるって、入り口の方に」

(メ,,メ゚Дナ)「……クソッ、迂闊だった……! あんの、馬鹿野郎が!!」

( ^ω^)?

( ^ω^)…

(;゚ω゚)「ま、ま、ま、ままままさか」


(メ,,#゚Дナ)「急いで東区に戻るぞ!!」



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/06/04(金) 00:25:56.67 ID:ZB8IBzlWO
※    ※    ※

ひゅう、ひゅう。
隙間風のような音。
この手の音は、どちらかというと冬のイメージがある。
どっかから風が吹いているのかと思ったが、違った。
これは俺の呼吸の音だ。

('A`)「はぁ、はぁ、は、ぜぇ、いやいや……っが、ごほっ」

咳き込み、涎とも痰とも判別しにくい塊を吐き出す。
べちゃりと地面に広がったそれに血は混じってはいなさそうだったが、
病状は既にだからどうしたというレベルだろう。

よろけながら、歩を進める。
まるで死を目前にした老人じゃないか、と思ったが、よく考えなくてもその通りだった。

('A`)「ザマぁ、ねえな」

高まる動悸とは裏腹に、頭だけは異常に冷えていた。

('A`)(西区に入ってから……半日と、ちょっとくらいか)

東区から吹いている風が髭の間を抜けていく。
辺りに猫は見当たらない。が、建築物の向こう側にひしめく気配は何となく感じ取れる。
長居はしていられない。



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/06/04(金) 00:28:04.11 ID:ZB8IBzlWO
('A`)「と、と」

一歩踏み出した所で、バランスを崩す。
よろめいた体が壁にぶつかり、辛うじて持ちこたえる。

('A`)「…………」

体がついて来てくれない。
あまり悠長にしてはいられないのだが。分かっちゃいるけど動かせねぇ。

('A`)「スイスイ、スーダララッター……」

空を見る。
朝方に小雨が降ったが、今は辛うじて曇天といったところだ。
じめじめとした湿り気が、これでもかと言うほど壁から伝わってくる。

じっと、呼吸を整える。
しばらくして、壁の向こうの気配が緩やかに後退しつつあるのを感じた。

代わりに目の前に迫っていた、派手に気配のデカい物体を、目玉だけ動かして視界に入れる。


('A`)「どうしたんですか、こんなとこで」

▼・ェ・▼「散歩だ」



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/06/04(金) 00:29:36.31 ID:ZB8IBzlWO
('A`)「さいですか。……ゲホ」

▼・ェ・▼「随分とまぁ、なんつうか。ひでぇザマだな」

('A`)「サーセン」

▼・ェ・▼「ゴーグルの女が捕まった」

('A`)「そう、ですか」

▼・ェ・▼「男はまだだ。この意味、分かるな」

('A`)「ええ」

ゆらりと重心をずらし、壁から顔を離す。頬に張り付いた髭が、一本一本はがれていく。

('A`)「ちゃんと覚えてますよ。あんさんとした約束なら」

▼・ェ・▼「やるってのか。もう、ろくに歩けもしないお前が」

('A`)「もちろん」

▼・ェ・▼「勝てる根拠は」

('A`)「無いっす。でも、ケリはつけます」



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/06/04(金) 00:31:31.08 ID:ZB8IBzlWO
▼・ェ・▼「他の連中は」

('A`)「一応全員無事です。ですが置いて行きます、今の傷付いたあいつらが戦えば、きっと誰かが死ぬ」

('A`)「すまないけど、乗っけてってくれませんか。全力で走ってきたのに追い付かれちゃう」

▼・ェ・▼「嫌だね。死にかけを連れて行く程酔狂じゃねェし、猫に利用されんのもシャクだ」

('A`)「それを承知でお願いします」

▼・ェ・▼「見返りは?」

('A`)「俺を置いてけばあんたは奴に殺される。連れて行けば、死なずに済む」

▼・ェ・▼

▼・ェ・▼「く、く。はははは。そんなモン、見返りにもなってねえよ。
     っつか何だそれ、俺が喧嘩売る事前提なのか。もう良いよ、来たついでだし乗れや」

('A`)「感謝します」

出来る限りしっかりとした足取りで、ビーグルの背中に乗る。
「ほんと馬鹿ばっかだな」と彼が小さく呟いたのには、聞こえない振りをしておいた。



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/06/04(金) 00:34:07.85 ID:ZB8IBzlWO
※    ※    ※

(;><)「だから! こっちのルートで避難を!」

( `ー´)「そうは言いますけどねぇ、こちらにも都合がねぇ……」

( ><)「それは分かりますけど、そこを何とか」

( `ー´)「ギコさんちみたいにでっかい縄張り持ってりゃ、多少ほっぽりだしても何とかなるのかもしれないけど、
       ウチはこの通りの狭い縄張りに大所帯ですから、もし火事場泥棒とかされたらたまらんのですよ」

( ><)「いやそれは皆さん同じですから協力をですね、ギコさんも自分の縄張りを避難所として使っていいって言ってるんですし」

( `ー´)「んー……やらしい話、あまりこういう事で彼に借りを作りたくないんですよね」

(;><)「っそ、そんな事言ってる場合じゃないでしょ! 何言ってんですか!」

( `ー´)「おたくのとこの大将だってよくちょっかい出されてたじゃないですか。好き勝手やってりゃ鬱陶しがられるのは当たり前ですよ。ねえ?」

( ><)「…………」



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/06/04(金) 00:36:16.56 ID:ZB8IBzlWO
( ^Д^)「おう、どうよ」

( ><)「てんで駄目ですね、危機感ゼロです」

彼らの縄張りの外れで待機していたプギャーと落ち合う。
彼の声色にも期待している素振りはまるでなかった。
恐らく僕の返答も想像通りだっただろう。

( ^Д^)「やっぱ駄目か。ネーノも古いからな……ギコの名前は裏目に出るわなそりゃ」

ネーノはギコが猛烈な勢いで縄張りを広げ始めた頃からの古参だった。彼には相当辛酸を舐めさせられたと聞く。
加えて、未だ彼の縄張りに被害が無いというのも非協力的な態度を後押ししていた。

( ^Д^)「ショボンかドクオか、ミルナが居りゃ、もう少しマシな交渉が出来るんだが」

( ><)「ですね……何とか日が落ちるまでには子供達だけでも避難させたいんですけど」

( ^Д^)「日が落ちるまで、か。……腹、減ったな」

( ><)「すきましたね、お腹」



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/06/04(金) 00:38:25.94 ID:ZB8IBzlWO
ネーノの縄張りは小高い丘も含まれていて、僕達はちょうどそこの中腹に立っていた。
この丘の反対側辺りに砂緒神社への階段に繋がる山がある。

丘から見る町並みは物凄い景色とは言えないけれど、いつも視界を塀や建物に遮られている僕には新鮮だった。
空は変わらず、濁った雲と共にどこまでも広がっている。


( ^Д^)「うう、何だかなー何で頑張ってんだろーなァ俺ら」

プギャーはいかにもくたびれた様子で背中を丸めていた。
ぎゅるる、とお腹の音が鳴っている。

( ><)「馬鹿な事言ってないで、どこかしらでご飯食べましょう。ちょっと面倒だけど神社に戻って……──」

( ><)「!!」

( ^Д^)「どした」

(;><)「いや、今あの向こう辺りの、通りの隅に。チラッと奴が。多分、間違いなく」

ほんの一瞬だが、あの姿を見間違っているとは思えなかった。
脳裏に嫌というほど焼き付いているのだから。

(;^Д^)「何だって!?……いや、っちゅうか、真っ昼間だぞ?」

( ><)「……」

( ^Д^)「……」



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/06/04(金) 00:41:09.46 ID:ZB8IBzlWO
顔を見合わせ、合図をするでもなく、二匹して歩き始める。
歩みは次第に、走りへと移り変わっていく。

( ><)「どうしたら?」

( ^Д^)「もし本当に奴が来てるなら、ネーノの縄張りにじき気づくだろう。
      俺が先回りして移動してくれそうな奴だけでも強引に引率する、後は勝手に逃げてくれる事を祈るしかない」

( ^Д^)「お前はネーノをぶん殴ってでも連れ出せ。あんな野郎だが東区と仲間には必要だ」

( ><)「了解です」

( ^Д^)「いいか、絶対に奴と向かい合うなよ。ミルナの仇を取ろうとか思うなよ! これフリとかじゃねぇかんな!!」

( ><)「分かってますって」

( ^Д^)「いざとなったらもうネーノとかどうでも良いからさっさと逃げろ、分かったな! あと例の頼む!」

( ><)「はい!」



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/06/04(金) 00:44:21.57 ID:ZB8IBzlWO
立ちはだかる塀を境界に、彼は左に、僕は右へと走る。
走りながら塀の横に転がっていた石ころをくわえ上げ、大きく振りかぶる。
そのまま道路に沿って立っていたガードレールへと、石を思い切り投げつけた。


特有の甲高い金属音が、辺り一帯に響き渡る。



( ><)(……お願いします!)


彼らが既に帰って来ている事を祈りつつ、今はただ走る。


時刻は昼過ぎ。
空は曇天。
自分の胸中にくすぶる物は否定しようもなかったが、そんなものに構う暇は無い。
真面目に恨んだところで仕方がない。
そんな事は、とうの昔から分かっている。


第二十五話 終



戻る六月十九日・正午(前)