('A`)ドクオが現実をスクゥようです

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 22:44:05.69 ID:clvHdcaUO

6th_world view.

 妙な安心感と、埃っぽい空気に包まれた部屋。
 時刻は午後二時。世間が浮き足立つ、ハッピーサンデー。

「寝ないのか? 昨日は寝てないんだろ?」

 俺は大の字で床に同化する。行き場のない焦燥感を携えて。

('A`)「……なんかさ、『何かやらなきゃ!』って気、しない?」

「働くか?」

('A`)「働いたって、誰も俺を見てくれないさ」

 俺の中で声がした。控え目な、大声がした。
 そいつは、ここぞとばかりにまくし立てる。

 ――立ち上がれ。



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 22:45:08.25 ID:clvHdcaUO

 何て事はない、それは勇者の声だった。
 ――そこは剣と魔法が支配する、混沌とした世界。
 貫くべき正義が、倒すべき悪が、はっきりと視覚化された世界。
 シンプルで、それでいて美しい世界。

「それ、何てネトゲ?」

('A`)「……うるせぇ」

 今、俺がいる世界には「悪の魔王」も「正義の味方」もいなかった。
 正義は悪に成り代わり、「何か、良く分かんないけど頑張ります」と言った顔で、
ただ、金をかき集める。
 逆もまた然り、だ。

('A`)「なぁ、これって『ゲーム脳』かな?」

「さぁ、……かもな」



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 22:46:30.97 ID:clvHdcaUO

 俺の日常はいつもこうだった。
 不平不満を呟いては、狸ふて寝を繰り返す。
 グラウンドに魔法陣を書き殴る行動力もなければ、地味な現実を受け入れる勇気もない。

「当たり前だろ。お前は現実に生まれて、現実に育ったんだから」

('A`)「……」

「嫌ってくらい知り過ぎてるんだ。『人は飛べない』」

('A`)「そんなの……やってみなきゃ、わかんねぇじゃん」

 酷く弱々しい声だった。脳内に響く声にさえかき消されそうな程に。

「屋上ダイブでも決行するか? ……無理だろ」

 やがて、俺は沈黙する。



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/08(金) 22:51:27.50 ID:clvHdcaUO

 ――俺は真っ白い空間で、「答えらしいもの」を探していた。

 そこは、どこまでも自由を匂わせる世界だった。
 解放された俺は声を上げる。

('A`)「どうなんだ!? 何が『正しい』んだ!?」

 声に呼応する様に、白い世界に影が生まれた。
 俺は壊れた様に叫び倒す。
 八つ当たり、自暴自棄、その他諸々の自己都合を吐き出した。

 ――助けてくれ。

 そして、やがて訪れる穏やかな静寂。
 影は答えずに、静かに顔を上げた。

「――よう……俺」

6th_world view...end.



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