('A`)ドクオが現実をスクゥようです

3: ◆9M2jQ1rhT. :2007/06/22(金) 18:52:25.58 ID:UusoYdpuO

7th_happy ready.

「――よう……俺」

 影は言葉を発して動きを止めた。
 人とも、それ以外とも取れるシルエット。

 ――それは、しかし素敵だった。

 人知を越えた「何か」を纏い、ただ悠々と揺れる。
 俺は全ての行動を忘れて、その光景に魅入っていた。
 一瞬にも永遠にも思える時間は、やがて脆く崩れ去る。
 ――異変は唐突に起きた。

(;'A`)「……」

 「それ」は言葉では言い表せない、渦々しい空気を放ち、そして、静かに「口」を開く。



5: ◆9M2jQ1rhT. :2007/06/22(金) 18:53:35.54 ID:UusoYdpuO

「――『Q.あなたは幸せですか?』」

 「ほら、また夜が来たよ」。

「――スレッド一覧。『世界をスクゥ』、一件該当」

(;'A`)「……」

「『塗り替えて』、『お前らとな――』、『伝えた』、
『卒業――』、『また朝が――繰り返』、『俺のよ――』」

 「そいつ」粒子となり大気に溶けながら、狂った様に「鳴り」響く。
 狂ったように、
 狂ったように、
 ただただ、鳴り響く。

「『tomorr――』、『飛』、『i...』、『生きて――な?』、『死』」

( A )「やめろ――」

 ――ほら、

「『現実に生まれて、』」

 また、夜が――

「『現実に育ったんだ』」



6: ◆9M2jQ1rhT. :2007/06/22(金) 18:55:12.09 ID:UusoYdpuO

( A )「知ってるよ……」

「『何で、生まれてきたの?』」

 ――知ってるさ。

 そんな事――

 白さを失った世界には、やがて夜が訪れた。
 全てが死んで、残されたのは「何もない」夜。

 ――ここは、どこ?

 世界を覆う闇の隙間、無数の光はギラギラと俺を監視する。
 全ての光は間違いなく俺を敵視していた。
 額に浮く汗を拭い、辺りを観察する。
 灰色の廃墟、汚染された川、流れる音。遠くから聞こえる、機械の唸り声。
 一見すると工場の中の様だった。

「――なんで、」

 ――どこからか声がした。



8: ◆9M2jQ1rhT. :2007/06/22(金) 18:56:48.32 ID:UusoYdpuO

 気のせいか――しかし、耳を澄ませば確かに聞こえる。
 その音を辿り、歩く。
 月明かりに照らされた溝。川のほとり、声はそこから確かに聞こえるようだった。
 近付いて見ると、そこには小さな子供がいた。
 小学生と思しき影は、足元の石を拾い、投げ、拾い、投げ。
 何かを呟きながら、ひたすらにその作業を繰り返していた。

「もう、こんなのいらない!」

 少し動きを止め、やがて叫び、懐から何かを取り出す。

 ――あぁ、そうか。

(;'A`)「おいッ!」

 突然、声を掛けられた少年は面倒臭そうに振り向いた。



10: ◆9M2jQ1rhT. :2007/06/22(金) 18:57:35.70 ID:UusoYdpuO

「何……っ?」

 ほら、ね――

(;'A`)「あー……なぁ?」

 少年は真っ直ぐな目で俺を睨む。
 その手には、何の変哲もない灰色の石が握られていた。

「こんな時間に、何か用ですか……」

 小さくて、それでも響く声で少年は言い放つ。
 「『伝えたい事』は確かに存在した」。
 ――そう、確かに、存在した。

('A`)「あー、何か嫌な事でもあったか?」

「関係ないでしょ……」

 少年の目には明らかな警戒色。
 それでも、俺が口を開くのを待っている様だった。



12: ◆9M2jQ1rhT. :2007/06/22(金) 19:01:47.75 ID:UusoYdpuO

 だから、俺は「言って」やった。

('A`)「良い事、教えてやるよ……その石な、後、十年くらいだけ大事にしてみろ」

 目の前の少年も、この機械の音も、川も星も、俺は全て知っていた。
 ほんの少し、その全てが止んで、

「何で――」

 そして、動き出す。
 言い掛けた少年を制し、俺は静かに続けた。

('A`)「叶う……よ、多分」

 彼はその目を驚きに見開き、掌の石と俺の顔を見比べ、更に声を潜めて言った。

「何で知ってるのさ……」

(;'A`)「あー……知ってるさ。何でも」

 その夜はどこまでも静まり返っていた。



14: ◆9M2jQ1rhT. :2007/06/22(金) 19:02:46.02 ID:UusoYdpuO

 まるで世界中から隔離された様に。そして、それは案外正解かも知れない。

「ねぇ! じゃあ、僕はこれからどうなんの?」

('A`)「あー……どうかな。取り敢えず、お前は――明日も生きてるよ」

 ――アラート、アラート。

 世界が変わる。
 俺を包む景色も、間違った優しさも、全部を巻き込んで変化する。
 ゆっくりと、ゆっくりと。

 「懐かしいな……」

 そうして眺めていた工場も、黒い景色に溶けて消える。
 ――何も見えない。
 俺は諦めて、目を閉じた。



15: ◆9M2jQ1rhT. :2007/06/22(金) 19:03:52.05 ID:UusoYdpuO

 ――やがて、景色は十二色に染まる。

「ようやくお目覚めか。昼寝とは良いご身分だな」

 目を開くと、白い天井が一面に広がる。
 耳元で毒吐く携帯電話を一瞥し、現在時刻を把握する。

('A`)「うわ……休日無駄にした」

「起きてても無駄にしてるけどな」

 ふと、記憶から何かが欠けている感覚があった。
 この違和感は知っていた。
 「夢」を忘れていく感覚だ。

「良い夢は見れたか? 『ポマードポマード』言ってたけど」

(;'A`)「助けろよ。確実に襲われてるじゃねぇか」



17: ◆9M2jQ1rhT. :2007/06/22(金) 19:06:23.94 ID:UusoYdpuO

 事実、夢の内容は覚えていない。
 架空の世界で、わざわざ妖怪退治に勤しむ俺、どうよ?

('A`)「お前……もしかして、九十九神とかじゃね?」

 それは長期に渡り大切にされた「物」には魂が宿る、
という伝説というか、言い伝えというか、その類のものだった。

「馬鹿にするな、最新機種だ。ワンセグも行ける」

(;'A`)「……」

 夢のない文明の利器は、呟いて眠る。
 俺はベッドに横たわり、意味なく天井を凝視する。

('A`)「静かだな……」

「いや……未来なんて存在しない。汗水流して『建てる』もんだ」

 突然の声に驚きつつ、それでも平静を装って返す。



20: ◆9M2jQ1rhT. :2007/06/22(金) 19:08:19.19 ID:UusoYdpuO

('A`)「……起きてたのか」

「むにゃむにゃ」

(;'A`)「突っ込まねぇぞ」

 非常に判断に困る寝言を最後、やはり部屋は静まり返った。
 いつしか俺も眠りに就いて、何だか幸せな夢を見たような気がしたが、朝が来ると忘れていた。
 「ずっと眠ってられたらなぁ」とか、そんな事を呟いて、やはり天井を眺めていた。

('A`)「でも、まぁ……」

 しかし、それはなかなかに素敵な朝だった。

7th_happy ready...end.



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