('A`)ドクオが現実をスクゥようです

182: ◆9M2jQ1rhT. :2007/06/22(金) 23:37:08.13 ID:UusoYdpuO

 追記――「彼」は職員室に連れられて、長々と、ネチネチと、怒られました。
 それは、勿論、「彼女」も同じです。
 「教師」は心から、二人を怒りました。
 それが通じたのか、「二人」は共に、無事に、帰路につきます。
 お互いに、「ごめんね」と、「ありがとう」と、繰り返しながら、睦まじく。
 それからも、二人は幸せに暮らします。
 誰が何と言おうと、それは事実です。本当です。

 そして、彼が見つけた「何か」とは――

「馬鹿じゃねぇの……」

ed_real.



184: ◆9M2jQ1rhT. :2007/06/22(金) 23:38:44.18 ID:UusoYdpuO

「なぁ、そう思うよな?」

 誰かから、返事が返る事はない。
 俺は知っている。携帯電話は喋らない。

 ――ただ、失念していた。

 部屋は薄暗く、世界には誰も存在しない。
 手を差し伸べるべき「彼女」も、叱ってくれる「教師」も、
口うるさい「携帯電話」も、何一つ存在しない。

 ――いつまでも、失念していたかった。

「笑わせるよ……自業自得だ」

 全てを、拒んで、篭もって、逃れたのは、誰でもない俺だ。
 石で願いが叶わない、それを知ってしまった俺だ。
 自殺さえ億劫だ、そこまで墜ちてしまった俺だ。



185: ◆9M2jQ1rhT. :2007/06/22(金) 23:40:18.17 ID:UusoYdpuO

 幸も不幸もない、平凡過ぎる俺だ。

 それなのに――ずっと不幸な、俺だ。

「知っている、理解している、反省も、後悔もしている」

 それなのに、全てが許容出来ない――俺だ。
 ここ「現実」では、携帯電話は喋らない。
 変わりに――「俺」を責め立てるのは、いつだって「俺」だ。
 そこには優しさも、愛嬌も、ユーモアも一切ない。
 ただ、現実と、憎悪と、八つ当たりだけが占拠する。

「何一つ、わかってねぇ。だから、こんな蛇足書いてんだろうが」

 俺は、反論しない。



186: ◆9M2jQ1rhT. :2007/06/22(金) 23:41:58.78 ID:UusoYdpuO

「良い迷惑だろうが。チラシの裏にでも書いてろ」

 俺は、反論しない。

「何人を巻き込んだ? 誰が得をした?」
 俺は、反論しない。

「下らねぇ、心から下らねぇ。酷く不愉快だ」

 俺は、反論出来ない。
 現実には逆らえない。

「何がしたい? 何がしたくない? それすらねぇのか?」

 現実は容赦ない。
 少し泣きそうだ。
 誰か、助けてくれ。

「胸を張れ。テメェは今、『ドクオ』だろうが」

 「彼」は、俺は――そうだ。

('A`)「うるせぇよ。頭が高ぇ」

「……」

 ――反論した。



189: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/22(金) 23:50:42.55 ID:UusoYdpuO

 ゆっくりと、ゆっくりと、物語はエンドへ向かう。
 「彼」は、愚かだったかも知れない。
 俺も、現在進行形で愚かだ。
 どいつもこいつも、果てしなく愚かだ。

 それでも、それだからこそ、「何か」を探している。

 他人にはない、「何か」。
 目に見えない、「何か」。
 存在すらない、「何か」。

 その途方もない、無様な行為に、また「何か」が与えられるよう、
それこそ「何か」であるように――

 ――と、「彼」は小さく願った。

ed_real...is happy end.



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