川 ゚ -゚)クーは生き続けるようです
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:13:55.95 ID:eGZqZa360
- 第九話 『問答』
冷たい風が吹いていた。
気温的に、ではない。
雰囲気として冷めた空気が満ちているのだ。
川 ゚ -゚)「…………」
その中を、クーは黙って歩く。
周囲は住宅街から、段々と木々が増える景色へと移っていた。
このまま道なりに歩き続ければ、大きな交差点に出るだろう。
右折すれば学校。
左折すれば商店街。
直進すれば海へと出る。
戻る、という選択肢はない。
これ以上、ギコ達に迷惑を掛けるわけにはいかないからだ。
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:16:10.46 ID:eGZqZa360
- さて、どの方角に曲がろうかと考えた時。
川 ゚ -゚)「……もう来たのか。 気が早いものだな」
視線は上へと向けられる。
同時、先にいた何者かが飛び降りた。
それは三つの人影。
た、という軽い着地音が二度、ど、という重い着地音が一度響く。
_、_
( ,_ノ`)「初めまして、になるかな? bP7『NNN』」
(*゚∀゚)「にはは」
( ゚∋゚)「…………」
術式連合に所属する魔術師三人組。
残る二十一種の殲滅のために派遣された実力者だ。
真ん中に立つ男の情報はないが、左右に控える二人はクーも知っている。
右に立つツーは魔術師でありながら、雷獣という疑似気術を扱う女。
左に立つクックルは、その力を全て防御に回す鉄壁の男。
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:18:17.86 ID:eGZqZa360
- 警戒すべきは魔術だけではない。
理由は定かではないが、彼らは体術を主にして戦っている。
攻撃主眼であるはずの魔術を補助に使っているのだ。
考え方からして常軌を逸していることから、普通の戦い方では苦戦すること必至だろう。
川 ゚ -゚)「……まさかこんな場所で襲われるとはな。
形振り構っていられない状況になった、ということか」
_、_
( ,_ノ`)「そりゃあ、お前さんのことじゃないか?」
川 ゚ -゚)「何を――」
_、_
( ,_ノ`)「まぁいいさ。 俺の仕事はアンタを捕らえることだからな」
軽く指を鳴らし
_、_
( ,_ノ`)「ツー、クックル。
ここは俺がやるから、お前らは人払いの結界を張ってこい。
ついでに誰かさんがちょっかい出せないように見張れ」
(*゚∀゚)「あいあいさー!」
( ゚∋゚)「…………」
元気の良い返事を残し、二人は地を蹴って散開した。
二十一種であるクーを相手に一人を残すとは、あの真ん中の男を相当信用しているのだろう。
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:21:35.99 ID:eGZqZa360
- 残されたのは渋澤とクーで、両者共に油断なく睨み合う。
川 ゚ -゚)「こうなれば私も本気で刃向かうぞ」
_、_
( ,_ノ`)「それは俺としても歓迎するところだな。
我々から二百年以上も逃げ続けたのは嘘ではないと証明してほしい。
とりあえず、期待外れではないことを祈ろうか」
クーは左腕で棺桶を担ぎ、渋澤はポケットの中に突っ込んだ手を握る。
そんな時だった。
_、_
( ,_ノ`)「さて、と……ん?」
「――――ぁ」
_、_
( ,_ノ`)「……何か聞こえなかったか?」
川 ゚ -゚)「?」
「――ぁぁぁ」
_、_
( ,_ノ`)「いや、ほら、やっぱり聞こえるぞ」
「――ああぁぁぁ」
川 ゚ -゚)「確かに。 というかこの声は――」
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:23:19.93 ID:eGZqZa360
- (,,;Д;)「誰か止めてええええぁぁぁぁぁ!!」
クーの背後から、猛スピードで迫るチャリンコ一台。
もはや自転車としての速度を軽く凌駕し、サドルに乗せたギコを泣かせつつ高速で走る。
(;,,゚Д゚)「ああぁぁぁぁぁ……って、クーか!!?」
次の瞬間、ギコはとんでもない行動に移る。
自動車以上の速度を出す自転車から、
(#,,゚Д゚)「とりゃあああ!!」
と、奇声を上げながら飛び降りたのだ。
川;゚ -゚)「ばっ――」
_、_
( ,_ノ`)「ほぅ」
(;,,゚Д゚)「あばばばばばばばば!!」
身を丸めて背中から着地。
しかし当然、それだけで勢いを殺せるわけもなく、
そのまま身体中を地面に打ち付けつつ、クー達の下へと転がっていった。
川 ゚ -゚)「てぃ」
(;,,゚Д゚)「あだっ!?」
向かってくる先に棺桶を置き、高速で回転するギコの身体をぶつけて止める。
頭から思い切り激突したギコは、悲鳴を上げて痛みに悶えた。
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:25:33.80 ID:eGZqZa360
- 川 ゚ -゚)「……おい」
(;,,゚Д゚)「痛い! これは痛いよっ!!」
川 ゚ -゚)「おい!」
(;,,゚Д゚)「げふぉ……!」
もがくギコの腹に、クーの爪先が吸い込まれるように直撃。
動きを止め、しかしぴくぴくと身体を震わせる無様なギコを睥睨し
川 ゚ -゚)「ギコ、何故君がここにいる」
(;,,゚Д゚)「いてて……げほっ……あー、そりゃあ簡単だな。
クーがここにいるからだ」
川 ゚ -゚)「ふざけるな」
(,,゚Д゚)「ふざけてここまで出来るかよ。
もし出来たとしたら、そいつぁ最高にクレイジーだぜ、HAHAHA」
_、_
( ,_ノ`)「いや、もうクレイジーじゃねぇかと思うんだがなぁ」
(;,,゚Д゚)「はっ! テメェは!!」
そこでようやく渋澤に気付いたのか、ギコは跳ねるように立ち上がった。
射殺せそうな視線を浴びせるクーを無視し、その前に立ち塞がる。
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:28:21.60 ID:eGZqZa360
- (#,,゚Д゚)「おうおうおう! クーに近付きたけりゃあ、俺を倒してからにしな!
今の俺はアドレナリンどばどばでちょっとやべぇぞ!?」
_、_
( ,_ノ`)「じゃ、遠慮なく」
(;,,゚Д゚)「へ?」
次の瞬間。
思わぬ衝撃が、思わぬ箇所を直撃する。
それはいわゆる股間という部位で、男にとってこれ以上ない急所だった。
(;´゚Д゚)「――ッッ!? はがっ……!!?」
_、_
( ,_ノ`)「御愁傷様ということで」
川;゚ -゚)「何だ、今のは……!?」
渋澤とギコの間に十数メートルの距離があるにも関わらず、攻撃された。
何らかの魔術を扱っていることは明白だろう。
クーの動体視力をもってしても、その正体を知ることは出来なかったが
川 ゚ -゚)「だがよくやったぞ、ギコ」
(;´゚Д゚)「へぁ? ちょ……俺の、心配とか……ねぇ……?」
川 ゚ -゚)「早々に沈められることはなくなった。
解っていれば不意打ちは避けられる――!」
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:30:28.30 ID:eGZqZa360
- 左手に持った棺桶――突撃機構槍を振り回し、その切っ先を渋澤へと向けて構えるクー。
その先端には鋭利な杭が頭を覗かせていた。
今にも飛び掛からんと腰を落とすクーであったが
((((,,´゚Д゚))))「ちょ、ま、待て、クー……きぇぇぇ!!」
川 ゚ -゚)「……何だ、気持ち悪い顔して」
(,,;Д;)「酷っ!!」
辛辣な言葉に、ギコは膝を震えさせつつも立ち上がる。
その様は生まれたての小鹿のようだ。
_、_
( ,_ノ`)(しかしあの坊主、よく動けるな……しばらくは立てもしないと思ったんだが)
(,,゚Д゚)「とにかくクーは手を出すな! ここは俺に任せて後ろで応援してろ!
いいな、絶対戦うなよ! 絶対だからな!!」
川;゚ -゚)「……戦いたくなってくるのは何故だろうか」
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:32:37.15 ID:eGZqZa360
- _、_
( ,_ノ`)「お前ら仲いいな。
で、坊主は何が目的だ? 坊主が代わりに戦ってくれるのか?」
(#,,゚Д゚)「馬鹿言え! 俺が戦えるわけねぇだろ!」
川 ゚ -゚)「堂々と言うことではないぞ」
(#,,゚Д゚)「俺の目的は一つ!! テメェに――」
何やら仰々しいポーズを決める。
右手の人差し指を天へと向け、威風堂々と仁王立ち。
そして力の限り、声を張り上げ
(#,,゚Д゚)「――テメェに、クーの素晴らしさを教えてやんだよ!!」
川 ゚ -゚)「…………」
_、_
( ,_ノ`)「…………」
無論、ついていけない二人が正常であることは言うまでもない。
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:34:32.56 ID:eGZqZa360
- 所変わって別の場所。
渋澤達のいる区域の端に位置するここで、ツーとクックルが何やらゴソゴソと足下をいじっている。
(*゚∀゚)「えいやーっと、こらしょーっと」
( ゚∋゚)「…………」
手に持っているのは、不思議な光を発する金属片だ。
一見すればナイフにも見えるそれを、道路の端に突き刺している。
しゃがんだツーが、日本語とは思えない妙な言葉を短く吐き
(*゚∀゚)「ほいほーい、これでおkネ」
( ゚∋゚)「…………」
(*゚∀゚)「そそ、これで術式の素質を持ってない人間は入ることが出来ないネ。
ついでに中にいる関係ない人達は、ワタシ達が暴れても気付かないヨ」
便利な時代ネー、と楽しそうに呟くツー。
しかし、その表情が鋭くなったのは直後だった。
(*゚∀゚)「……そこにいるのは誰ヨ?」
視線の先は、住宅街の外れにある自然公園へと向けられている。
木々の挟間から、一般人ではない人間の気配が漂っているのを感じ取ったのだ。
- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:36:19.49 ID:eGZqZa360
- 答える声はない。
風が木の葉を揺らす音が、その場に響いているのみだ。
それが十秒経ち、一分経ち、遂に我慢出来なくなったツーは腰元の曲刀を手に取る。
(*゚∀゚)「出てこないアンタが悪いんヨ!」
振りかぶっての投擲。
曲線を描いて飛翔する刃が、木々を切り裂く。
(*゚∀゚)「むむッ!」
('A`)「っと、あぶねぇな」
( ・∀・)「向こうから手を出して来たのならば、やるしかないですね」
わざとらしい台詞と共に飛び出して来たのは、モララーとドクオだった。
そしてやはりわざとらしく口端を釣り上げ
('A`)「あぁ、そうだなモララー。
あんなおっかねぇクソ中国人とデカいだけの木偶の坊が襲ってくるからなぁ」
( ・∀・)「僕達は身を守るためにも戦わざるを得ないというわけですね」
(*゚∀゚)「……は? 何言ってんのヨ? それにアンタらが何でここに?」
( ・∀・)「そりゃあ、親友を手助けするために決まってるジャマイカ」
(#*゚∀゚)「なんかすげぇムカつくネ」
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:38:21.88 ID:eGZqZa360
- と、ここでようやく気付いた。
渋澤の下にはクーがいて、自分達の前にはモララーとドクオがいるということに。
この状況が示す事実とは単純なもので
一人足りないのではないか?
思い出すのはギコという少年だ。
取るに取らないガキではあるが、しかし無視することは出来ない点があった。
――攻撃を、意図的に回避することが出来る。
仕掛けは解らないが揺るぎない事実だ。
そして、囮として考えるならばこれ以上の適任者もいない。
もしギコが――ありえないが――短期間で戦闘経験を溜めることが出来れば、それは脅威となるだろう。
まさかとは思うが
(*゚∀゚)「……お前ら、ワタシ達を足止めする気ネ?」
( ・∀・)「だと言ったらどうする?」
(*゚∀゚)「作戦ミス、としか言いようがないヨ。
例えギコとかいうガキが強くなっていても、渋澤さんには絶対に勝てないネ」
('A`)「大層な自信なことで。 悪役の台詞としちゃあ三流だな」
(*゚∀゚)「どっちが本当の悪だか解って言ってるカ?
二十一種の女に加担してるお前らに、正義なんてないヨ!」
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:41:44.96 ID:eGZqZa360
- ( ・∀・)「別に正義を謳うつもりはないし、二十一種に加担しているつもりもない」
不敵な笑みを携え、モララーは腰から符を数枚だけ取り出す。
それをツーへと向ける視線は鋭く、そして自信に充ち溢れていた。
( ・∀・)「――僕は親友に肩入れしている。 それだけだ」
('A`)「あ、俺は違うからそこらへんヨロシコ」
(*゚∀゚)「キメェのは黙ってロ」
('A`)「いい加減、この扱いに泣くぞ俺ぁ」
まったく堪えた様子も見せないドクオも、腰に吊った刀に手を伸ばす。
涼しげな音を立てながら、ゆっくりと引き抜いた。
( ・∀・)「悪いが僕達と遊んでもらう」
(*゚∀゚)「作戦ミス、って言ったヨ。
アンタらのメンバーで、渋澤さんに対抗出来るのはアンタだけ。
それがここにいる時点で、もう何もかも失敗なんヨ」
('A`)「へぇー」
( ・∀・)「へぇー」
二人はそう言い、武器を構える。
適度な闘気が、ツーとクックルに牙を剥いた。
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:43:53.27 ID:eGZqZa360
- (*゚∀゚)「……ふン」
明確な戦闘の雰囲気を読み取り、ツーも釣られるように笑みを浮かべる。
二本の曲刀を逆手に構え、
(*゚∀゚)「だったら最初からフルパワーで行ってやるネ。 感謝するヨロシ」
次の瞬間、彼女の身体が紫電を纏った。
ツーの身体の内から出る力が、肩にある一点を通って具現化しているのだ。
一点の正体など言うまでもない。
「――!」
黒い獣が肩に乗っている。
稲妻を纏う狐のような獣は、魔術より生み出された仮想生物だ。
本来、すべきではない具現化を敢えて行う中国魔術師。
その実力は、先日の戦闘で証明されている。
(*゚∀゚)「今日こそは丸焦げにしてやんヨ!!」
( ・∀・)「さて、それが出来るかな?
僕が何も考えていないとでも思うか?
魔術などという単細胞が使う術式なんか、タネさえ解れば対処法はいくらでも思いつくというのに」
(*゚∀゚)「んだとコラ! ちょっと強いからって調子乗ンなヨ!」
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:45:29.05 ID:eGZqZa360
- ( ゚∋゚)「…………」
(*゚∀゚)「んあ?」
睨むように凝視するクックル。
その意志を、長年共に行動してきたツーは容易く汲み取る。
(*゚∀゚)「成程! ここで戦う相手を変えられれば困るってわけカ! クックル頭いいネ!」
(;・∀・)(……いいのかなぁ)
(*゚∀゚)「んじゃあ、ワタシはそっちのキメェの相手にするネ!
クックルはあの生意気な気術師を潰すヨ!」
('A`)「いいぜ、来いよ。
どんな攻撃だろうが、術式を使ってる時点で俺には効かねぇぜ?」
(*゚∀゚)「うるせーヨ! ブサイクのくせに生意気ネ!」
('A`)「『のび太のくせに生意気だぞ』みたいな言い方すんなよ……のび太が可哀想じゃねぇか」
(;・∀・)(そっち心配するんだ)
どうにもドクオやツーには、状況をクラッシュする能力が備わっているらしい。
比較的真面目な空気を重んじるモララーにとっては、居心地の悪いコトこの上ない。
- 43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:47:23.37 ID:eGZqZa360
- (*゚∀゚)「よーし! ちゃっちゃとやっつけて渋澤さんトコ戻るヨ!」
( ・∀・)「僕がここにいる限りは不可能だ」
モララーが札を取り出し、ツーが曲刀を握り締め、ドクオが刀の柄を掴み、クックルが巨躯を構える。
一触即発とはこの事か。
誰かが微動さえすれば、ここ一帯は術式が舞い交う戦場となるだろう。
『人払い』の結界が効いている間であれば、ここにミサイルが落ちようとも誰も気付けない。
「――ぁぁぁぁ」
そう、術式の素質をもたない限りは気付かないのだ。
( ・∀・)「…………」
(*゚∀゚)「…………」
「ぁぁぁぁぁぁ」
('A`)「…………」
( ゚∋゚)「…………」
「ああぁぁぁぁぁ」
( ・∀・)「……ちょっと待った。 何だこの声」
(*゚∀゚)「……段々近付いてくるネ」
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:49:09.88 ID:eGZqZa360
- 次の瞬間だった。
ツーとクックルの背後にある、人払いの結界の境界線。
それが、外側からの衝撃によって砕け散る。
( ゚∋゚)「「!?」」(゚∀゚*)
外部からの攻撃だと判断したのは、結界に背を向けていたツーとクックルだ。
しかし、
(;'A`)「げっ、ありゃあ――」
真実を視界の正面に収めていたのは、ドクオとモララー。
内一人であるドクオは、その意外な正体に素っ頓狂な声を出す。
そして残る一人であるモララーは、それを好機と見て動き出していた。
(;*゚∀゚)「クックル! あぶ――」
( ゚∋゚)「!!」
しかし言葉間に合わず、激突。
結界を突き破った『何か』は一度たりとも止まることなく、振り向きかけたクックルの背中へと直撃した。
- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:51:01.47 ID:eGZqZa360
- ( ゚∋゚)「――ッ!?」
硝子が砕けるような甲高い音が響く。
だが、既に人払いの結界は割られているはず。
となれば、衝撃によって破壊されたのは――
( ・∀・)「ふっ!!」
真っ先に動いたのはモララー。
予想外の出来事に対し、素早く順応した上に利用までしようとしている。
彼の戦闘に対する覚悟は半端ではない。
そして、生まれながらに気術師として育てられ、積み上げてきた経験は伊達ではない。
既に思考は戦闘モードに切り替わっている。
モララーは寸劇を生み出した獲物――クックルに牙を剥くことに一意専心した。
そう、クックルにぶつかった『何か』の正体が
ノハ#;゚听)「ひぃぃぃやぁぁぁぁ!!?」
自転車に乗っている、絶賛片思い中のヒートその人であっても。
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:52:57.81 ID:eGZqZa360
- そんなカオスな状況が開始された場所とは、少し離れた地点。
住宅街と森が半々になっているような風景の中。
二対一の構図で、男女が睨み合っている。
_、_
( ,_ノ`)「成程――面白い」
先ほどのギコのとんでも発言に対する返事は簡潔だ。
_、_
( ,_ノ`)「それはつまり、ノロケたいってことで良いのか?」
(;,,゚Д゚)「ばばばば馬鹿野郎! ノロケられるような関係じゃねぇわい!」
_、_
( ,_ノ`)「じゃあ何だ? まさか時間稼ぎとか言うつもりかい?
だとすりゃあ遠慮なくぶっ飛ばすが――」
(;,,゚Д゚)「いやだから! テメェにクーがどれだけ無害かを教えてぇんだよ!!」
_、_
( ,_ノ`)「は?」
川 ゚ -゚)「え?」
(,,゚Д゚)「いいかよく聞け!
テメェらは、クーを悪だと勝手に決め付けて殺そうとしてやがるがなぁ!
クーは絶対に悪い奴なんかじゃねぇ!!」
咆哮に近い声は、閑静な住宅街に高々と響いた。
しかし人払いの結界内であるため、住人が気付くことはない。
- 56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:55:00.70 ID:eGZqZa360
- _、_
( ,_ノ`)「……お前、なかなか愉快だな」
(#,,゚Д゚)「こちとら本気じゃい!」
_、_
( ,_ノ`)「成程。 つまり俺達が知らないbP7の何かを知っているわけか」
(#,,゚Д゚)「その名で呼ぶんじゃねぇ……!
アイツには『クー』って名前があンだよ!」
川 ゚ -゚)「ギコ……」
(,,゚Д゚)「それにクーはすげぇ優しいんだ! これを見ろ!」
右の袖を捲る。
姿を見せたのは彼の腕だ。
しかし、それは男のモノとは思えぬほどの繊細さを持っている。
(,,゚Д゚)「俺はアンタの部下とクーとの戦いに巻き込まれて、腕を失った。
その後、起きてみたらこうなってたんだ」
_、_
( ,_ノ`)「つまりクーが、わざわざ自分の腕をお前に移植した、と」
(,,゚Д゚)「残虐非道な奴がそんなことするわけねぇだろ?
お前らは間違ってる。 クーはお前らが思ってるほど悪い奴なんかじゃない」
_、_
( ,_ノ`)「ふむ……」
- 58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:57:31.98 ID:eGZqZa360
- 煙草を片手に頷く渋澤。
ギコの言葉は真摯そのもので、誰が聞いても嘘を言っているとは思えないだろう。
それほどクーのことを大切に思っており、そして渋澤達を敵に回してまで庇う覚悟を持ち合わせている。
_、_
( ,_ノ`)「坊主、お前は良い男だな」
(;,,゚Д゚)「え……」
_、_
( ,_ノ`)「今時珍しいじゃねぇか。
そこまでして女を護ろうとすることが出来るなんてよ」
(;,,゚Д゚)「お、煽てても何も出ねぇぞ!!」
_、_
( ,_ノ`)「別に煽てたつもりはねぇんだが――」
と、そこで煙草をくわえる。
動作に紛れて唇が言葉を放ったが、ギコ達には聞こえなかった。
- 59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 20:59:29.32 ID:eGZqZa360
- (,,゚Д゚)「……今、何て言った?」
_、_
( ,_ノ`)「いいや、下らんことさ。 本当に下らん」
川;゚ -゚)「――!!」
ゆらりと動いた渋澤に、クーが一瞬で対応する。
ギコを背中に隠すように一歩踏み出し、棺桶を構えたのだ。
(;,,゚Д゚)「な、何すんだよ!?」
川;゚ -゚)「私の後ろに隠れて、絶対に顔を出すな……奴はやる気だ……!」
(;,,゚Д゚)「やる気!? 馬鹿言え、まだ説得は――」
抗議の声は、突如として響いた音によって遮られる。
川;゚ -゚)「くっ!」
クーが前方からの何かを防いでいた。
強烈な音が響く度、盾のように構えられた棺桶が鋭く震える。
攻撃されていると気付くのに、さほど時間は必要なかった。
- 61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 21:01:29.35 ID:eGZqZa360
- (;,,゚Д゚)「お、おいオッサン! 俺の話を聞いてなかったのか!?」
_、_
( ,_ノ`)「聞いていたさ」
(;,,゚Д゚)「だったら何で――」
川;゚ -゚)「迂闊に頭を出すな!」
言い終わる前に引っ張り込まれた。
すぐ傍で地面が弾けて驚くギコの耳に、静かな重い声が届く。
_、_
( ,_ノ`)「どうして、だと? 解り切っているじゃないか」
は、と笑みを浮かべ
_、_
( ,_ノ`)「二十一種は全て捕らえ、それが出来なければ消滅させる。
それが術式連合の存在意義……そして俺の使命だろうがよ」
(;,,゚Д゚)「だーかーらー! クーは悪者じゃねぇって――」
_、_
( ,_ノ`)「――あまり大人の世界を嘗めんじゃねぇぞ、坊主」
空気が変わった。
一種ふざけたような状況が、戦場に瞬転する。
突如として当てられた殺気にギコの喉が、ひ、と鳴ってしまう。
- 64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 21:02:57.71 ID:eGZqZa360
- 川;゚ -゚)「やはり貴様、最初から話を聞くつもりなどなかったな……!?」
_、_
( ,_ノ`)「そんなこたぁない。 お前らの言い分はちゃんと聞くつもりだったさ。
まともに言葉を交わせる二十一種なんぞ珍しいんでな」
(;,,゚Д゚)「テメェ……!」
_、_
( ,_ノ`)「悪いな、坊主。 これが俺の仕事なんだよ」
右腕を掲げ、その先をクーへと向けると同時、先ほどと同じような衝撃が棺桶に走った。
(;,,゚Д゚)「くそっ! さっきから何なんだよ、こりゃあ!」
川;゚ -゚)「解らん……銃か何かを隠し持っているのか――」
そこでクーの表情が凍った。
詮索するように視線を泳がせ、しかし確信の色を混じらせた声で
川;゚ -゚)「貴様まさか、ゲイル……いや、『コンスタントガンナー』か……!?」
- 66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 21:04:17.43 ID:eGZqZa360
- _、_
( ,_ノ`)「流石は長生きと言うべきか。
名前くらいは知られていたようだな」
川;゚ -゚)「初めて姿を見るが……そこまで老いているとは思わなかったぞ」
(;,,゚Д゚)「こ、こんせんと?」
川;゚ -゚)「『コンスタントガンナー』……人間魔力連射機とも呼ばれる天才魔術師の異名だ。
かつて二十一種の一種を、たった一人で葬るという偉業を成し遂げた生ける伝説……。
そして私としては、最も相対したくなかった敵の一人……!」
(;,,゚Д゚)「……!」
あのクーが戦う前から怖気づいている。
頬を流れている汗が、敵対している男の危険さを物語っていた。
_、_
( ,_ノ`)「あの時は俺も若かった。
若かったが故に倒せただろうし、若かったせいで足に障害を残してしまった」
川;゚ -゚)「異名を『ゲイルガンナー』から『コンスタントガンナー』に変えたのは、そのせいか」
_、_
( ,_ノ`)「今ではまともに走ることすら出来やしないからな。
まぁ、たったそれだけで衰えたとは言わんつもりだが」
川;゚ -゚)「だろうな……戦いから身を引くのなら、新たな異名など必要ない」
- 69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 21:06:51.90 ID:eGZqZa360
- (;,,゚Д゚)「おい……足が悪いなら、走って逃げられやしないのか?」
川;゚ -゚)「奴の真髄は『魔力の早撃ち』だ。
ここから一歩でも逃げようものなら、確実に蜂の巣にされるぞ」
本来、魔術という術式は変換しての攻撃を主とする。
つまり魔力を『炎』や『氷』に形を変えてから、攻撃として放つのが普通なのだ。
現にツーは魔力をテンという生物に変換して戦っているし、クックルは防壁として使用している。
しかし渋澤は違った。
彼は『魔力をそのままにして撃ち出す』という技術を体得している。
これは一見簡単なように見えて、実は非常に困難な術式であった。
前提として、魔術師が魔力を変換して使用する理由は『イメージし易い』からである。
炎や水など誰でも見たことがあるだろうし、だからこそ変換は容易い。
どこぞの漫画と一緒で、馴染みの深い物質や生物を具現する方が習得が楽なのだ。
そもそも、魔力とは概念的なものである。
実際に形として見たことのある者はいない。
故に魔力をそのままの形で使用出来る者など、この世にはいないと思われていた。
だが、渋澤はそれを完璧に操ることが出来るのだという。
- 72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 21:09:03.56 ID:eGZqZa360
- 天才的な感覚。
天才的な勘。
天才的なセンス。
彼の持つ天才という素質が可能とした、前代未聞の魔術式。
メリットなど言うまでもないだろう。
変換というプロセスをすっ飛ばした攻撃は、まさに高速の一言。
それは燃費効率の良さも相俟り、長期間の連続攻撃を生み出せる。
『人間魔力連射機』とはよく言ったもので、二十一種に対する者としてこれ以上の適任者もいるまい。
先ほどからの渋澤の余裕は
自身の力を信じ切り、そして絶対の優勢を悟っていたからに他ならない。
_、_
( ,_ノ`)「さて、そろそろ本気で討ち取らせてもらおうか。
その棺桶、随分と頑丈そうだが……どれだけ耐えられるかな?」
川;゚ -゚)「くっ――」
左右は住宅の壁。
前方には天才と呼ばれる魔術師。
後方は障害物などない見通しの良い道路。
もし渋澤がクーの言う通りな人物ならば、逃げ道など何処にもないことになる。
- 75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 21:10:28.64 ID:eGZqZa360
- (;,,゚Д゚)「くそっ、こうなったら……!」
川;゚ -゚)「何だそれは?」
(;,,゚Д゚)「モララーから預かった符だ。
一枚使って一枚吹っ飛んだから、残る一枚に賭けるしかねぇ。
ただ、『攻撃力を上げる符』なのか『気配を隠蔽する符』なのか解らないのが問題」
川;゚ -゚)「……駄目じゃないか」
効果が似ているならばともかく、まったく逆方向。
博打で使用するには分が悪いと判断したのか、クーの表情が曇る。
しかし、ギコは首を振った。
(;,,゚Д゚)「いや……一つだけ、これを有効活用出来るかもしれない方法がある」
川;゚ -゚)「待て。 君のことだから嫌な予感が――ん?」
(;,,゚Д゚)「あれ? これってまさか――」
- 77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 21:11:42.40 ID:eGZqZa360
- _、_
( ,_ノ`)「……逃げる算段か?
だったら片方を犠牲にするくらいじゃないと、俺からは逃げられんぞ」
無論、そうならないことを見越しての発言だ。
先ほどの問答から、ギコとクーにはある程度の信頼関係が結ばれていることが解っている。
どちらかがどちらかを犠牲に生き延びる方法など、絶対に選択しないだろう
不死の身体を持つクーが壁となるケースは考えられたが
足などを撃ち抜かれ、自分達に捕らわれてしまえばそれこそ本末転倒。
_、_
( ,_ノ`)(さて、御手並み拝見だな)
不死のクーと、特殊な能力を持っていると思われるギコ。
二十一種すら狩った自分に、彼らはどう対抗しようとするのか。
と、その時。
渋澤の前方で気配が止まった。
棺桶の裏にいる二人の呼吸が、急激に小さくなったのだ。
_、_
( ,_ノ`)「来るか……」
攻撃直前の独特な沈黙。
敏感に感じ取った渋澤は、視線の先に立つ棺桶を更に睨む。
どこから出現しても油断なく撃ち抜けるよう、精神を集中させた。
- 79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 21:13:25.44 ID:eGZqZa360
- 動きは直後だ。
(#,,゚Д゚)「だらっしゃ!」
棺桶の陰から飛び出して来たのはギコ。
殺気というよりも怒気に満ちた瞳が、僅かに揺れつつ渋澤を見ていた。
_、_
( ,_ノ`)「ほぅ……俺の正体を知っても尚、向かってくるというのだな?」
その姿に、渋澤は小さな感嘆の声をあげた。
少し前まで一般人だったギコの、しかし生み出される気力は称賛に値する。
_、_
( ,_ノ`)「その様子だとクーを逃がすつもりのようだな。
だが、選択を誤ったとしか言いようがない……坊主なんぞ一秒あればブッ飛ばせるぞ」
(;,,゚Д゚)「や、やってみやがれってんだ!
そう簡単にやられるつもりなんかねぇけどな!!」
啖呵を切ったギコは、その意識を渋澤へと集束させる。
(#,,゚Д゚)(奴から出る『危険』を見定めてやる……こうなりゃ意地でも時間を稼ぐんだ!
いくら連射とか言っても、攻撃される範囲さえ解れば――!!)
直後、世界が凍った。
自分以外の全てが白黒に染まる。
時が止まったかのような光景に、ギコは見てしまった。
- 81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/01(土) 21:14:48.29 ID:eGZqZa360
- (;,,゚Д゚)(なっ――!?)
白黒から一気に赤へと変わる瞬間を。
渋澤を中心として、放射線状に赤い線が無数の数を以って広がる、という絶望的な光景を。
そしてその一部――それでも数え切れぬほどの数――が、ギコの身体中を貫いていた。
天才魔術師VS危険を視る少年。
互いの信念を曲げることなく、反則級の能力を持った者同士が――
_、_
( ,_ノ`)「さぁ、いつまで逃げ切れるかな?」
(;,,゚Д゚)(やべぇ……マジで一秒ももたねぇかも)
しかし、圧倒的な差を持ったままタイマンを開始した。
――――――――――――――――― To be Continued ――――
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