( ^ω^)ブーンが諦めたようです

6: :2006/09/26(火) 16:44:37.54 ID:4VQyRxXZO
  
カランコロン―――

透明感のあるベルの音と共にドアが開く。

( ^ω^)「おいすー」

僕は親友の陽気な挨拶に応える。

(´・ω・`)「やあ、いらっしゃい」



( ^ω^)ブーンは諦めたようです【番外編】



7: :2006/09/26(火) 16:45:34.94 ID:4VQyRxXZO
  
ブーンがカウンターに腰を下ろしながら店内を見回す。

( ^ω^)「あれ、お客さんは僕一人かお?」
(´・ω・`)「うん、今日は貸し切りにしてるからね」
(;^ω^)「えっ、mjd?そんなにお金持ってないお」
(´・ω・`)「何言ってるんだい、今日は君達の婚約祝いパーティなんだから、お金はいらないよ」



8: :2006/09/26(火) 16:46:45.11 ID:4VQyRxXZO
  
いつも通り、ブーンの前にサービスのテキーラを置く。

(´・ω・`)「ツンと一緒に来なかったのかい?」
( ^ω^)「会社に寄ってから来るらしいから先に来たんだお。多分もうすぐ来ると思うお」
(´・ω・`)「そっか。もう準備は出来てるから、後はみんなが揃うのを待つだけだよ」

僕の言葉にブーンは、その人の良さそうな顔を綻ばせた。

( *^ω^)「おっおっ楽しみだお! ―――ショボン、色々とありがとうだお」



9: :2006/09/26(火) 16:48:01.05 ID:4VQyRxXZO
  
『色々』という言葉に含みを感じる。
あの時の事を言ってるんだろう。

(´・ω・`)「礼には及ばないさ…親友の喜ぶ顔が見られたんだ、僕はそれだけで充分だよ」
( *^ω^)「ショボン……」
(*´・ω・`)「ブーン……」
(`・ω・´)「くそみそフラグktkr」

(;^ω^)「ひいっ……シャキンさん! 突然の登場はびっくりするお」
(`・ω・´)「だってショボンがなかなか紹介してくれないから……」

あ、シャキン兄さんの存在を忘れてた。
ちょっとすねてるみたいだ。
この人たまに子供っぽい事言うんだよね。



10: :2006/09/26(火) 16:50:56.10 ID:4VQyRxXZO
  
カランコロン―――

おっと、誰か来たみたいだ。
ドクオかな。

ξ゚听)ξ「遅くなってごめんなさい」

ありゃ、ツンが先に来ちゃったか。
うーん…主役二人を待たせる事になっちゃったなあ。
ドクオの奴何してるんだろう。



11: :2006/09/26(火) 16:51:56.35 ID:4VQyRxXZO
  
( ^ω^)「思ったより早かったおね、用事はもう済んだのかお?」
ξ゚听)ξ「ええ、もうみんな揃ってる?」
(´・ω・`)「すまない、ドクオがまだなんだ。テキーラで時間潰しててもらえるかな」
ξ゚听)ξ「把握」

ツンにテキーラを渡してキッチンに入ると、シャキン兄さんが冷蔵庫に『あれ』をしまっていた。



12: :2006/09/26(火) 16:53:29.08 ID:4VQyRxXZO
  
(´・ω・`)「なかなかいい出来だね」
(`・ω・´)「だろ? これ見たらきっと驚くぞ〜」
(´・ω・`)「ふふ、ちょっとしたドッキリだもんね」

僕たちが顔を見合わせてニヤリとした時、少し荒々しいベルの音が聞こえてきた。

ああ、またあんなに乱暴にドア開けて。
ベルが壊れたらどうするんだ……
お気に入りなんだぞ。



13: :2006/09/26(火) 16:55:36.64 ID:4VQyRxXZO
  
不健康な親友の姿を思い浮かべ、一言言ってやろうと店内に戻る。

(´・ω・`)「ちょっとドクオ、ドアは静かに開けるようにって何度も―――」
川 ゚ -゚)「こんばんは」

予想外の人物に遭遇して一瞬固まってしまった。

('A`)「おうショボン、遅くなってわりぃ。途中で懐かしい奴に会っちまってさ、ブーンの婚約祝いの話したら参加したいって言うから連れて来たんだ。覚えてるだろ? クーだよ」



14: :2006/09/26(火) 16:58:00.58 ID:4VQyRxXZO
  
もちろん覚えてる。
クーは高校時代に仲の良かった子だ。
ちょっと変わってるけどなぜか僕たちと気が合った。

川 ゚ -゚)「突然押し掛けてしまってすまない、是非ブーンに祝いの言葉を…と思ってな。迷惑だったか?」
(´・ω・`)「迷惑だなんてとんでもないよ、ねえブーン」
( ^ω^)「もちろんだお! クー、来てくれて嬉しいお」
川 ゚ー゚)「ならよかった。ブーン、おめでとう」
( *^ω^)「ありがとうだお。 紹介するお、婚約者のツンだお」



15: :2006/09/26(火) 17:00:59.15 ID:4VQyRxXZO
  
ξ゚听)ξ「初めましてクーさん」
川 ゚ -゚)「初めまして。堅苦しいのは好かないんだ、私の事はクーと呼んで欲しい」

ξ゚ー゚)ξ「それじゃあ、私もツンって呼んでちょうだい」
川 ゚ー゚)「分かった。ツン、婚約おめでとう」
ξ゚ー゚)ξ「ありがとう」

よかった、二人もなかなかウマが合うみたいだ。



16: :2006/09/26(火) 17:01:54.62 ID:4VQyRxXZO
  
('∀`)「そういや、よく4人で授業抜けて屋上で昼寝してたよなあ」
( ^ω^)「 懐かしいお。DQNに絡まれた時もクーのお陰で助かったお」
(´・ω・`)「確かあの時は、ドクオが煙草吸ってたせいで絡まれたんだよね」
('A`)「その節は申し訳ございませんでした…」

(`・ω・´)「さあさあ、思い出話は後にして早速始めようじゃないか」



18: :2006/09/26(火) 17:03:16.42 ID:4VQyRxXZO
  
シャキン兄さんに促され奥のテーブル席に移動する。
並んだ料理を見て、味を知っているブーンとドクオが目を輝かせている。
可愛いやつらだ。

(´・ω・`)「それじゃあ改めて……」

(´・ω・`)('∀`)(`・ω・´)川 ゚ー゚)「ブーン、ツン、婚約おめでとう!」
( *^ω^)ξ*゚ー゚)ξ「ありがとう!」



19: :2006/09/26(火) 17:04:36.12 ID:4VQyRxXZO
  
乾杯の後は、ひたすら食べて飲んで喋った。

川 ゚ -゚)「むう、どの料理もとてつもなく美味いな」
( ^ω^)「そうなんだお! ショボンもシャキンさんも料理の鉄人並だお」
(`・ω・´)「はは、ありがとう。調理師の両親に、小さい頃から技術を叩き込まれたからね」

(´・ω・`)「ドクオ! またピーマン残して……」
('A`)「こんな苦いもん絶対体に悪いって」
(´・ω・`)「ツン! またそんなに一味かけて……」
ξ゚听)ξ「辛い方がおいしいでしょ、痩せるし」
(´・ω・`)「限度って言葉知ってるかい?」
20: :2006/09/26(火) 17:07:56.44 ID:4VQyRxXZO   
そうして何時間が過ぎただろう。
すっかり酒が回った僕たちは、人様にお見せ出来ないような様相を呈している。

ブーンは大声で歌いながら走り回ってるし、ドクオなんかほぼ全裸だ。
シャキン兄さんはひたすら笑いながら手酌酒。
ああ、兄さんのこんな姿を見る日が来るなんて……

まあかくゆう僕も、先程から壁に向かってナレーションしている。
こんにちは壁さん。
や ら な い か ?


ξ#゚听)ξ「ちょっと、ナレーション!しっかり仕事しなさいよね!私たち席移動するから!」

(´;ω;`)「あ、はい、すいません」



21: :2006/09/26(火) 17:09:39.79 ID:4VQyRxXZO
  
そんな酔っ払いたちを避けるように、ツンとクーは静かにカウンターに移動した。

ξ゚听)ξ「ふう、食べ過ぎちゃった」
川 ゚ -゚)「奴らは飲み過ぎだな」

馬鹿騒ぎする男性陣を、呆れた顔で眺めながら言う。

ξ゚听)ξ「ほんとに、ショボンにシャキンさんまであんなになっちゃって……片付けは私たちの仕事になりそうね」
川 ゚ -゚)「うむ。だがツンも相当飲んでるようだったが……ザルか?」
ξ゚听)ξ「そういうクーもね」
川 ゚ー゚)「はは、そういえばそうだな」
ξ゚ー゚)ξ「あははは」

ひとしきり笑い合うと、ツンは手の中のグラスに視線を落とした。



23: :2006/09/26(火) 17:13:15.47 ID:4VQyRxXZO
  
ξ゚听)ξ「……ちょっとクーが羨ましいな」
川 ゚ -゚)「ん?なぜだ?」

ツンの言葉に、クーが不思議そうな顔をする。

ξ゚听)ξ「私、ブーンとは幼馴染みだけど、中学からは疎遠だったから…… だから楽しそうに昔の話してるの見てなんとなく」

―――嫉妬、かな……と小さく呟く。

川 ゚ -゚)「そうなのか……私がいたせいで高校時代の話が中心になってしまったんだな。すまなかった」
ξ゚听)ξ「ううん、クーのせいじゃないの」



24: :2006/09/26(火) 17:14:18.36 ID:4VQyRxXZO
  
グラスの中身を一口飲み込んで言葉を続ける。

ξ゚听)ξ「前から思ってたの……ここに来るとね、なんだか私だけ違うような気がするの」
川 ゚ -゚)「違う?」
ξ゚听)ξ「うまく言えないんだけど―――疎外感っていうか、私には入り込めないあいつらだけの領域があるような感じがして……」
川 ゚ -゚)「………」



25: :2006/09/26(火) 17:15:53.33 ID:4VQyRxXZO
  
クーはしばらく考える表情をしてから口を開く。

川 ゚ -゚)「それは私も同じだな」ξ゚听)ξ「え?」

川 ゚ -゚)「私が知ってるのは高校生のあいつらだけだ。それに久しぶりの再会だしな、どうしても距離を感じてしまうさ」
ξ゚听)ξ「そっか……」

川 ゚ -゚)「だがまあ、そんな事は些細な問題だ。共有出来なかった時間はこれから取り戻せばいい。まだまだ人生は長いんだからな」



26: :2006/09/26(火) 17:16:47.68 ID:4VQyRxXZO
  
これから取り戻す……
そうだよね。
これから二人で新しい絆を作っていけばいいんだから。
なんだか自分が、とても小さな事を気にしていたように思えてくる。

ξ゚ー゚)ξ「そうよね……嫌でもこれから先、何十年も一緒なんだもんね」
川 ゚ー゚)「そういう事だ」

そして二人はまた笑い合う。
ありがとう、と言うとクーは少し照れていた。



27: :2006/09/26(火) 17:17:35.26 ID:4VQyRxXZO
  
川 ゚ー゚)「そうだ、ブーンとの成れ染めを聞かせて欲しいな。あいつの浮いた話はあまり想像出来ない」
ξ*゚听)ξ「んー、そうね、いいわよ。なんか恥ずかしいけど」


ξ゚听)ξ「私とブーンは家が隣通しでね、いつもどこに行くのも一緒だった」



28: :2006/09/26(火) 17:20:48.70 ID:4VQyRxXZO
  
ξ;゚-゚)ξ「ブーン待ってよ〜」
( ^ω^)「ツン早く来るお!」

ブーンは昔から足が速くて、私はいつも必死に後を追い掛けてた。
でも私が離れ過ぎるとちゃんと立ち止まって待っててくれて……

そんな優しさが大好きだった。



30: :2006/09/26(火) 17:21:37.42 ID:4VQyRxXZO
  
ξ*゚-゚)ξ「わたしブーンの事好きよ」
(*^ω^)「僕も! ツンとずっと一緒にいるお!」
ξ*゚ー゚)ξ「うんっ、約束だからね」

ずっと側にいたくて交した約束。
嬉しくてその夜は眠れなかったなあ。

ブーンは覚えてくれてるかな?



31: :2006/09/26(火) 17:22:26.11 ID:4VQyRxXZO
  
中学生になると小さい頃みたいにじゃれ合うのが恥ずかしくて、自然と距離を置くようになってしまった。

寂しさに気付いた時には、まだまだ幼い私には飛び越えられない距離になっていて……

でも、どんなに二人が離れても、ブーンは昔みたいに待っていてくれる。

そう信じてた。



32: :2006/09/26(火) 17:23:31.11 ID:4VQyRxXZO
  
(,,゚Д゚)「好きだ、付き合ってほしい」

ある日、クラスメイトだったギコ君に告白された。
今思えば断わるべきだったんだけど……
私はブーンと話せない寂しさを言い訳に彼と付き合い始めた。

学年でも人気の高かったギコ君に告白されて、舞い上がってしまったせいもあると思う。


最低だな、私………


そして、その直後からブーンがほとんど学校に来ていない事を知った。



33: :2006/09/26(火) 17:27:05.12 ID:4VQyRxXZO
  
私のせい?
私がブーンを裏切ってしまったから?

後悔
罪悪感
負の感情が押し寄せる。

私の事なんか嫌いになっちゃった?
それともこれは思い過ごし?
勝手に勘違いしてるだけ?

ねえ、どうして何も言ってくれないの。
どうして叱ってくれないの。
ブーンの気持ちが分からないよ。
私は、私はどうすればいいの……



34: :2006/09/26(火) 17:30:47.33 ID:4VQyRxXZO
  
ξ;;)ξ「答えてよ、ブーン……ねえ……」

返ってくる事のない問いかけ。

今はもうアイツの背中さえも見えない。
ずっと追い掛けていたいのに……


そして私たちは、すれ違ったまま中学を卒業した。



35: :2006/09/26(火) 17:31:37.06 ID:4VQyRxXZO
  
ξ )ξ「…………」
川 ゚ -゚)「ツン、大丈夫か?辛いならもう―――」
ξ゚听)ξ「……ううん、平気。ごめんね、成れ染めのはずがどんどん暗い話になっちゃって」
川 ゚ -゚)「そんな事は気にしなくていいさ。誰かに聞いてもらいたいんだろう?」
ξ゚听)ξ「うん……ありがとう。続き、話すね」



36: :2006/09/26(火) 17:32:38.71 ID:4VQyRxXZO
  
その後はブーンと何の関わりも無く過ごした。
高校を出てから一人暮らしを始めたし、生活のどこにもブーンを感じる事は無かった。

それなのに夢に見る幼い思い出。

ξ*゚-゚)ξ「わたしブーンの事好きよ」
(*^ω^)「僕も! ツンとずっと一緒にいるお!」
ξ*゚ー゚)ξ「うんっ、約束だからね」

馬鹿みたい。
こんな大昔の約束、アイツが覚えてるわけないのに。
きっと私の事も忘れてる。

だから私も忘れてやるんだ。



37: :2006/09/26(火) 17:34:19.62 ID:4VQyRxXZO
  
そんな虚しい決意をよそに、就職してからは自然と昔を振り返らなくなった。
仕事に追われる日々はまた違う虚しさを運んできたが。

それでも、忙しさにかまけて過去を忘れていられるのは楽だった。

辛いだけの過去なら消してしまおう。
もうアイツの足音は聴こえないんだから。


そんなある日、私は一人の男性と出会った。



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