( ^ω^)がマジ切れしたようです

385:バトロワ ◆I40z/j1jTU :2007/10/02(火) 23:50:50.65 ID:Y54Kj55K0

暗い室内。


蜀台を掲げながら、ブーンが近づいてくる。
その顔は、穏やかなものであった。

窓の外は相変わらず暗い。

眠りについてる深き森は、人を誘うには十分な魔力があった。


( ^ω^)「お疲れだお」


手を、伸ばしてくる。しわが目立つ細い腕。
その手を、優しく握り締める。


^^あんたのおかげで強くなれた
ありが
とう


この旅に出て何度ありがとうと言っただろうか。
しかし、この言葉では表せないくらい俺の心は感謝で溢れていた。



391:バトロワ ◆I40z/j1jTU :2007/10/02(火) 23:52:48.66 ID:Y54Kj55K0

( ^ω^)「強くなれるとは、まだ決まったわけじゃないお」

^^道標のことか

( ^ω^)「そうだお。君はまず、暗闇を照らす灯台を探さなくてはいけない。
      次に、君はその灯台にならなくてはいけない。
      まずはそこからだお」

^^道標ならもう見つけてある

( ^ω^)「お?」


ブーンは軽く小首を傾げる。道標ならもう何人にも出会った。

彼らは闇に満たされた俺の心を照らしてくれた恩人。
そう、彼ら以外にはありえないのだ。



395:バトロワ ◆I40z/j1jTU :2007/10/02(火) 23:54:32.58 ID:Y54Kj55K0

^^俺の道標それは


脳裏に、彼らの顔が浮かぶ。

オワタ。幾度となく刺したが何度も生き返った超人。
人を楽しませるために、一生懸命生きるその姿。
俺に、優しさを教えてくれた。

ショボン。生という道を見失ってしまった魔女。
しかし、それを自分の力で探し出した。
俺に、強さを教えてくれた。

クー。わけわからんひらひらの洋服を着ていた女性。
堂々たる行動で、俺を導いてくれた。
俺に、答えを教えてくれた。


そして。


ブーン。黒ローブの服で身を包んだ老人。
俺の心を一瞬で見透かし、旅に出した張本人。
忘れ去られたものを思い出させてくれた。
俺に、自分を教えてくれた。



402:バトロワ ◆I40z/j1jTU :2007/10/02(火) 23:56:29.80 ID:Y54Kj55K0

^^彼らが俺の道標だ

( ^ω^)「君は、強くなるお。いまよりも、ずっと」


老人が本を棚から取る。
題名は桃たろお。俺の帰るべき世界。


( ^ω^)「僕からも言わしてもらうお」


ブーンは、両手でその本を開く。

そこから眩い光が溢れ、俺の身体を包み込んでいく。
俺の旅は、終わりを迎えたのだ。


( ^ω^)「君に逢えて、良かった」


その声は、耳にいつまでも響き渡った。



407:バトロワ ◆I40z/j1jTU :2007/10/02(火) 23:58:12.28 ID:Y54Kj55K0

老人は名残惜しくその本を見つめたあと、そっと棚に戻す。

この身体を手に入れてから、幾度となく別れを体験した。
そして、自分自身は相手に別れを告げれない。なんだか理不尽だな、と苦笑する。

だが、それが自分自身がもたらした業なのだ。
後悔しても、いまさら遅いのだ。


テーブルの上に置かれた、真新しい本を捲る。

何も書かれていないはずの白いページ。徐々に字と絵が浮かんでくる。
その本の表紙にはこう書かれていた。


『親友』と。


窓の外は朝日を迎えている。



――終――



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