( ^ω^)がマジ切れしたようです

360: 共通前編 ◆YhrftnhMQI :2007/10/06(土) 02:23:35.04 ID:kvvVXkm+0

 円卓に男たちが座っていた。全員黒の礼服を一分の隙もみせずに着こなし、目深に帽子をかぶっている。
おかげで顔を伺い見ることはできない。だが、その声の調子からして、彼らが話している内容が
ただ事ではない、ということだけは見て取れた。


???「くっ、なんてこった」

???「それが世界の選択か……」

???「畜生、俺達は何もできないのか? この事態をただ静観するしかないのか?!!」


(咒)「いえ、はたしてそうでしょうか」

???「!!」

???「……何かあるのですか、メシア翁」


 メシアと呼ばれた老翁に皆の視線が集まる。参加している男達のなかで唯一帽子をかぶらず、たくわえた髭を
揺らして柔和な笑みを携えたまま、老人は口を開いた。



364: 共通前編 ◆YhrftnhMQI :2007/10/06(土) 02:26:17.64 ID:kvvVXkm+0

(咒)「以前のDAT騒動と違って、今回のケースでは世界の基盤はしっかりしています。
   おそらく自浄作用が働くでしょう。ならば私たちはその手助けをすればいいのです」

???「な、なるほど……」

???「しかし『手助け』といっても、具体的に我々は何をすればいいのでしょう?」

(咒)「実は今回の件に関しまして、ひとつ解決策らしきものを思いつきました。よければこの件、
   私に一任していただけないでしょうか? 二週間で世界を戻してみせましょう」

???「二週間で?!」

(咒)「ええ。あなた方からしたら、私のような引退したはずの老人に仕事を奪われるというのは心苦しいこととはおもいますが、
   この老いぼれとて、世界の安定を望む気持ちはみなさんとかわらないつもりです」

???「……わかりました。ではジャム・メシア。あなたに今回の一件、一任させていただきます」

(咒)「感謝しますよ」



368: 共通前編 ◆YhrftnhMQI :2007/10/06(土) 02:29:05.47 ID:kvvVXkm+0

 見た目は同じだが、その男が会議の中心だったのだろう。彼の言葉を合図に男たちは席を立ち、部屋を出て行く。
やがて、円卓に残されたジャムと呼ばれた老人一人だけになった。


(咒)「さて、それでははじめますか……」


 そう言うと老人は音もなく、電気の落ちた会議場の闇の中へと姿を消していった……









370: 共通前編 ◆YhrftnhMQI :2007/10/06(土) 02:30:54.35 ID:kvvVXkm+0
 代わり映えしない風景が右から左へ流れていく。一定のリズムで電車は揺れ、小さな軋んだ音をたてている。
特に外を見たいわけではなかったが窓際に肘を置き、ドクオはひとり窓から見える景色を眺めていた。


('A`)「わたくし、生まれも育ちもヴィップ町、帝釈天で産湯に浸かり、性はモイタン名はドクオ。
   人よんで「スペシャルのドクオ」と申します……」


 なんとなく某国民的流浪人の口上を真似てみる。「フーテン」の代わりに「スペシャル」という単語を使ったのはなぜだろう。
 CP幹部候補生。普通の高校生だった自分を変えてくれるかもしれない光。それに対する、仲間との対立。
だが、とりあえず今はそんな事は関係ない。少なくとも明日までは喧嘩別れした友人達のことを考えずにすむ。
実家に荷物を取りに行くという、普段なら断る母親の頼みをあっさり受けたのは、そういう打算もあった。


('A`)「そうだよな。何はともあれ今はひとり旅。ロマンでも求めてのんびり行くとするか」


 のどかな田園風景に少々飽きがはいり、ほどよく眠気が回る。ちょうどトンネルに入ったところで、
少年──ドクオ・モイタンは静かに目を閉じた。



372: 共通前編 ◆YhrftnhMQI :2007/10/06(土) 02:33:39.90 ID:kvvVXkm+0

ドクオ「……ん」

川 ゚ -゚)「お、ようやく起きたか。おはよう」

从'ー'从「おはよう」

ドクオ「……おはようござい、ま、し、た」


 目の前に座る、見知らぬ美女二人。寝起き一番の光景としては至福なのだろうが、ねぼけた頭では
イマイチその幸福を解せない。それよりも、ドクオにはこの状況の不自然さのほうが気になった。


ドクオ「えと、どちらさん?」

川 ゚ -゚)「私はクー。女子高生だ。レアだ」

从'ー'从「あたしは渡辺、OLです。そんなにレアじゃないです」

ドクオ「……ドクオです。男子高校生、普通です」

川 ゚ -゚)「何をいう、高校生にもなって童貞というのはかなりレアだ。自分を偽るのはいけないぞ」

ドクオ「どどど童貞ちゃうわ!」

川 ゚ -゚)「まぁ、魔法使いまではあと十数年か、精進しろよ、ドクオ」

从'ー'从「クーちゃん、何言ってるの……」



375: 共通前編 ◆YhrftnhMQI :2007/10/06(土) 02:35:32.44 ID:kvvVXkm+0

ドクオ「魔法使いはともかく……なんで俺の席の前に座ってるんですか?」

川 ゚ -゚)「嫌なのか? こんな美人二人が前にいるというのに我侭なヤツだ」

ドクオ「いえ、そうじゃなくて……」


 平日昼間。ド田舎の沿線。
古びた扇風機が耳障りな音をたてて回っているのがよく似合う、現代社会から隔離されたような車両空間。
首をのばして見回してみても、自分と目の前の二人以外に乗客の姿は見受けられない。


从'ー'从「ごめんね。いきなり目の前に知らない人がいたらやっぱりびっくりするよね」

ドクオ「い、いえ。クーの言ったようにラッキーですよ。はははは」

从'ー'从「そういってもらえたらうれしいな、ありがと」

ドクオ「(おいおいおい、これはもしかして本当に俺の時代が来たのか?)」


 ちょっと不思議な言動をするクーも、しっかりとした感じの渡辺さんも確かにかなり美人の部類に入る。
そんな二人が初対面のフツメン高校生である自分と仲良く向かい合って話しているのだ。
これではドクオがフラグでも立ったのかと期待するのも当然である。



379: 共通前編 ◆YhrftnhMQI :2007/10/06(土) 02:38:33.56 ID:kvvVXkm+0
从'ー'从「でね、ドクオ君。あたしたち、君に言わなきゃいけないことがあるの。実は……」

川 ゚ -゚)「君のかわいい寝顔に私たちは心を奪われてしまった。これはもしかしてLOVEの予感というヤツなのかもしれない」

ドクオ「(フラグ飛び越えて告白キター!!)」

从;'ー'从「ちょ、ちょっとクーちゃん」

川 ゚ -゚)「すまない渡辺。思わず先走ってしまった。二番煎じかもしれないが、はやく告白するんだ」

从'ー'从「ちーがーうーの。えっと、ドクオ君……はい」

ドクオ「ん?」


 渡辺が差し出した鏡を手に取る。そこに写っていたのは……



川 ゚ -゚)「すまない。君があまりにもバカ面で眠りこけていたからつい……」

(肉'A`)「……」







ドクオの 肉質が 3ポイント あがった!



383: 共通前編 ◆YhrftnhMQI :2007/10/06(土) 02:41:01.40 ID:kvvVXkm+0

('A`)「実家に里帰りですか。俺と一緒ですね」

从'ー'从「えっ、ドクオ君もなの?」

('A`)「ちょっとお袋に頼まれて、じーさんの所に物借りにいくんです。今日は創立記念日なんで
   たまにはひとり旅もいいかな、なんつって」

川 ゚ -゚)「お使いか、まったくこれだからいい子は困る。」

('A`)「そういうクーは平日の昼間っからなんでこんなところにいるんだ? 学校はどうした」

川 ゚ -゚)「あぁ。私は修行中だ」

('A`)「へ?」

从'ー'从「ふふふ、クーちゃんは好きな男の子を驚かせるため、全国をまわって見識を広めているそうです」

川 ゚ -゚)「授業に関しては大丈夫。なんたって私は元・天才少女だからな……」



『次は終点〜『FUJIYAMA』〜『FUJIYAMA』〜』



384: 共通前編 ◆YhrftnhMQI :2007/10/06(土) 02:42:48.94 ID:kvvVXkm+0
川 ゚ -゚)「むっ、終点か。それでは降りることにしよう。旅は道連れ世は情け。
   ドクオも途中まで一緒に行かないか」

('A`)「ああ。じゃあご一緒させてもらいますか、っと。渡辺さんもいいですよね?」

从'ー'从「う、うん。よろしくね」

川 ゚ -゚)「(さて、アイツは間に合うかな……)」

('A`)「(アバンチュールの可能性、まだ死んでないぞ)」

从'ー'从「(おばあちゃんの家までで『FUJIYAMA』なんて駅、それも終点になるようなところあったっけ……)」


 三者三様の思いを胸に、電車は駅へと到着した。



('A`)「こーゆう寂れた駅もいいなぁ。俺の町はちょっと味気ないし」


 昭和の香りが色濃く残る改札口。駅員に切符を切ってもらい、ドクオは外に出た。


川 ゚ -゚)「悪い、ちょっと待ってくれ」



385: 共通前編 ◆YhrftnhMQI :2007/10/06(土) 02:44:21.12 ID:kvvVXkm+0

('A`)「どうしたんだ?」

从'ー'从「まさか、切符を落としたとか…」

川 ゚ -゚)「いや。ところでこの切符を見てくれ。これをどう思う」

('A`)「すごく……入場券です」


 記載された駅名は青森。どうやってここまで乗り継いでこれたかのほうが不思議だった。


('A`)「うわ……これは精算に時間かかりそう」

从'ー'从「駅員さん、乗り越しでいくらくらいですか?」


 青森駅の入場券を見て駅員がギョッとする。奥にひっこみ、やがて時刻表と運賃リストを手に戻ってくる。


駅員「えっと……37564円だね」

('A`)「(なんで端数があるんだ……)」

川 ゚ -゚)「ふむ」



389: 共通前編 ◆YhrftnhMQI :2007/10/06(土) 02:46:23.92 ID:kvvVXkm+0
 ザックからかわいらしいキャラクターものの財布を取り出し、クーは口をあけてひっくりかえす。


チャリーンチャリーンチャリーン
川 ゚ -゚)つIII@@@@@@@@


川 ゚ -゚)「さんじゅうはちえん」

3人「「「 こ れ は ひ ど い 」」」

川 ゚ -゚)「案ずるな。すでに手は打ってある」


 そう言うと、クーは右手を天に掲げた。





川ドモン ゚ -゚)「出ろぉぉぉっ、ガンダァァァァム!!」

川ドモン ゚ -゚) パチンッ


♪チャチャーチャチャーチャチャーチャチャーチャッチャッ
♪チャチャーチャチャーチャチャーチャチャーチャッチャッ



391: 共通前編 ◆YhrftnhMQI :2007/10/06(土) 02:48:05.59 ID:kvvVXkm+0

从'ー'从「このBGMは……って、アレは何?!!」

('A`)「鳥か」

駅員「飛行機か」

川 ゚ -゚)「いや、違う……アレは」




(炎^ω^)「♪赤く煌くサンバイザー あいつがウワサの店長だ
     怒涛に迫る客を振り分け 限定グッズを売りさばく 回りで助ける天使たち
     限定グッズは売り切れだ すまんこの次またどうぞぉぉぉ♪」
(挿入歌:アニメ店長 歌・内藤ホライゾン 参照:http://www.youtube.com/watch?v=CPVxAHHUfZ8


 無駄に暑苦しい男が原付きで現れた。ドリフトを試み、見事失敗。
傷だらけになりながらも即座に立ち上がり、額のサンバイザーを煌かせて名乗りをあげた。


(炎^ω^)「俺の名前はブーン、アニメ店長ブーンだお!」

川 ゚ -゚)「よく来てくれたな、アッシー・ミツグ君」

(炎;^ω^)「ちょwwヒドスwwww」



393: 共通前編 ◆YhrftnhMQI :2007/10/06(土) 02:50:07.61 ID:kvvVXkm+0

(炎^ω^)「まったく、クーもクー店長も人使いが荒いお」

川 ゚ -゚)「いや、本当に助かったよ。駅弁の買いすぎでお金がなくなってしまったから親戚の素直姉さんに
   頼んだんだが、まさかこんなに早く助けをよこしてくれるとはな」

('A`)「あのアキバハラからここまでスクーターで来たのか……すげぇ」

(炎^ω^)「おっおっおっ、熱血に不可能はないんだお」

从'ー'从「えっと、はじめまして。渡辺です」

(炎^ω^)「内藤ホライゾン、ブーンでいいですお」
(炎^ω^)「(『G@mers』の渡辺さんにそっくりだお……)」

川 ゚ -゚)「私の名はクー、住職と呼んでくれ」

('A`)「……ねぇ。おかしくない?」

川 ゚ -゚)「ひどいぞドクオ。人の名前を笑うなんて……」

('A`)「違う、そんなことじゃなくて」


 いつの間にか、霧がでていた。



395: 共通前編 ◆YhrftnhMQI :2007/10/06(土) 02:51:42.28 ID:kvvVXkm+0

(;'A`)「おいおい、やっぱりおかしいぜ」

 十数メートル後ろにあるはずの駅もみえない。互い3人の姿を確認するのが精一杯なほど
その霧は濃く、早く広がっていく。


从'ー'从「山の中だからといって……こんなに早くなるものなの?」

川 ゚ -゚)「違う、これは天候の変化じゃない……スタンドだ!」

('A`)「『正義<ジャスティス>』ッ?!」

(炎^ω^)「体に穴が開いちゃうお!」

从'ー'从「(それはないと思うけど……)」

???「残念ですが、ここはJOJOの世界ではありません」


カツーン カツーン カツーン



397: 共通前編 ◆YhrftnhMQI :2007/10/06(土) 02:54:10.34 ID:kvvVXkm+0

 はたして、霧の中を歩いてきたのは白い髭を蓄えた老人だった。皺ひとつない黒の燕尾服。
年ゆえか背丈は短いものの、ピシリと背筋をのばし、靴音をひびかせて4人へ向かってくる。


(炎^ω^)「この土の上で靴音がするなんて……新手のスタンド使いかッ」

从'ー'从「ブーン君、失礼だよ! 申し訳ありません、おじいさん」

(咒)「気にしないでください渡辺様。それに内藤様、残念ですが私はスタンド使いではありません」

('A`)「……二人とも、知り合い?」

(咒)「いえ、初対面ですよドクオ様。私の名前はジャム・メシア。しがない管理人です」


 ジャムの足が止まる。途端、霧は幻のように消えていく。



 霧があけたそこは、どう見ても寂れた駅前ロータリーではなかった。



400: 共通前編 ◆YhrftnhMQI :2007/10/06(土) 02:55:59.62 ID:kvvVXkm+0

 天井にシャンデリアがつらされている。赤の絨毯が部屋いっぱいに広がり、古めかしくも手入れのいきとどいた
時計がコチコチと振り子を揺らしている。汚れひとつない壁掛かった、どこかで見たような油絵。
サロンのような腰の低いテーブルとクッション椅子。大理石でできたカウンターに白のレースカーペットに乗った
花瓶がひっそりと、白い空間の中で自らの青をアピールしている。


从'ー'从「ホテルみたい……」

(咒)「そのとおりでございます。渡辺様」

('A`)「……まるで夢だな」

(咒)「驚かれるのも無理はありませんが、とりあえずそちらにお掛けになりませんか。
   まもなくもうひとりの客人がおいでになります」

ξ゚ -゚)ξ「ジャム様、ショボン様がおいでになりました」


 ちょうどそのとき、無人のホールにジャムと4人以外の人間が姿を現した。
いたって普通に奥の廊下からやってきたのは、まだほんの中学生ほどにしかみえないメイド服の少女。
そして土で汚れた服をきたひとりの男だった。眉ひとつ動かさないメイド少女と対照的に、ものめずらしげに
ホールを見渡す男。それだけで、自分たちと同じ来客者だとわかった。


(咒)「はじめまして、ショボン様。今回はこのように手前どもの都合でお呼びさせてしまい、申し訳ありませんでした。」

(´・ω・`)「……まったく、強引ですね」



401: 共通前編 ◆YhrftnhMQI :2007/10/06(土) 02:57:40.38 ID:kvvVXkm+0

(咒)「返す言葉もございません。あなたの世界は少々特殊でして、こうしてこちらから強制的に
   お呼びさせてもらいました。もちろん、今回の埋め合わせは後ほどきちんとさせていただきます」

(´・ω・`)「気になさらずに。案外、これも『虹』に到達するプロセスかもしれないし……おっと。君たちもボクと同じかい?」

('A`)「はい。俺たちも気づいたらここにいたんです」

(´・ω・`)「僕の名前はショボン、『虹』を探している男さ」

川 ゚ -゚)「二次を探しているのか?」

(炎^ω^)「是非アキバハラに来るお!」

(´・ω・`)「……おそらく、僕のいう『虹』と、君たちのいう“ニジ”は別のものだね」

(咒)「立ち話も何ですし、みなさんお座りになりませんか」



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