('A`) ドクオが家出をするようです

375: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 23:06:30.38 ID:DXpNuSU90

('A`) ドクオが家出をするようです

あーだりぃ。
夏はなんてだるいんだろーなー。

俺は鏡の前で、髪の毛をセットする。
中学生になってから始めた、整髪だ。
ワックスで大げさに髪を立てる。よし、整髪終了。
俺は今一度鏡を見る。

('A`) 「今日も決まってるな……」

鏡の中の自分に少しの間、見とれる俺。
その後、朝食をとり、歯を磨いて、家を出る。



380: 作成期間短いので完成度低いけどお許しくを ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 23:09:16.20 ID:DXpNuSU90

('A`) 「いってきまーす」

俺は毎朝歩いて学校へ向かう。
俺の家から徒歩五分のところにある、ラウンジ中学校。
今日は終業式で、明日から夏休みと思うとワクワクする。そしてなにより――

('A`*) 「女子から夏休みの予定聞かれたらどうしーよーかなー」

夏休み前の終業式は、一番女子からの誘い率が高いんだぜ。
去年、中1だった俺にはなにもイベントは起こらなかった。だけど、今年はなにかありそうな気がする。

俺がニヤニヤしながら妄想をしていると、後ろから思い切り背中を叩かれた。

('A`;) 「うぉっ!」

俺が慌てて振り返ると、そこにいたのは、毎朝会ういつもの顔だった。



387: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 23:11:48.43 ID:DXpNuSU90

( ^д^)9m 「よお、ドクオ! 今日はお前にとって最悪の日だな!」

('A`) 「ふっ、俺をなめんなよ。プギャーこそ最悪の日にならないようにな」

プギャーとは小学校からの友達で、毎年どちらがモテるか勝負をしている。
だけど結果は全部引き分けさ。
バレンタインデーは、どっちも0個。長期休み前の誘いはいつも男子から。
そんな俺たちだからいつも一緒にいて、馬鹿をやっていられるのかもしれない。

終業式は飛ばさしてもらおう。うん、面倒くさいからな。
俺らは通知表をもらうために、教室にもどった。
いつもやる気のない担任が、淡々と通知表を配り、それを受け取った生徒たちは一喜一憂している。
そして、俺とプギャーは――



390: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 23:14:04.58 ID:DXpNuSU90

( ^д^)9m 「オール4うめぇwww」

('A`;) 「オール2……」

( ^д^)9m 「プギャーwww」

あーうぜぇ、俺とプギャー今まであまり変わらない成績だったのに。これじゃあカーチャンに通知表渡せないじゃん。
帰りのSHRも終わり、ここでみんな夏休みに突入する。そして、ここからがメインイベントだ。

( ^д^)9m 「ドクオ、誰がいい?」

('A`) 「妹者とか良くね?」

( ^д^)9m 「バーカ、高望みしすぎだ。お前には幼馴染のペニサスがいるだろう」



394: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 23:16:26.04 ID:DXpNuSU90

ペニサス伊藤。
俺の幼稚園からの幼馴染だ。家は隣り、幼稚園からずーっと同じクラス、まさに腐れ縁ってやつである。
これは運命、なんて思ったことはなく、俺はただ早くクラスが別々になることを祈っていた。

さて、俺らがwktkしながら待っていた時間、およそ二時間。
教室にはすでに誰もいなくなっていた。

( ^д^)9m 「……今年も引き分けだな」

('A`) 「ああ、お前はいいライバルだよ……」

( ^д^)9m 「俺らプギャーww……」

('A`) 「帰ろう……」

( ´д`)9m 「ああ……」



399: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 23:18:32.55 ID:DXpNuSU90

俺らはトボトボしながら帰る。
けど一分もたてば、いつも通りの俺たちだ。こんなことは馴れっこだからな。
俺とプギャーは夏休みになにをするかなど、色々話していた。男だけの夏休みも意外と楽しいんだぜ、ホント。
俺とプギャーの友情は永遠だ、どちらかに天使が舞い降りない限り。

('A`) (何年後の話だろーなー……)

そんなことを考えながら、正門を出る。
そのときだ。正門の影から誰かがあらわれた!

从・∀・从 「……」

('A`;) 「いいい、い、いい、妹者!?」

( ^д^)9m 「なにしてんだよ、こんなところで」

俺は考える。その時間およそ2秒。
そして俺の頭は四つの選択肢をはじきだした。



401: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 23:20:40.76 ID:DXpNuSU90

@俺らには用事はない オッズ2倍
A俺ら二人に用事がある オッズ8倍
Bプギャーに用事がある オッズ15倍
C俺に用事がある オッズ36倍

('A`) (俺は……ギャンブラー、ドクオ!)

@俺らには用事はない オッズ2倍
A俺ら二人に用事がある オッズ8倍
Bプギャーに用事がある オッズ15倍
→C俺に用事がある オッズ36倍

受付終了いたしました。

俺はそこで妹者を見る。
妹者は恥ずかしがっているのか、俺から目を逸らしている。はは、なんて可愛いやつなんだ。
いいんだぜ、俺を誘っても。俺は必ず受け入れるんだぜ――



407: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 23:22:57.75 ID:DXpNuSU90

从・∀・从 「あの……プギャー君」

( ^д^)9m 「な、なんだよ」

从・∀・*从 「私と夏休み、一緒に遊園地行ってほしいのじゃ」

( *^д^)9m 「お、お前俺なんか誘ってプギャーwww……喜んで」

\(゜A゜)/ ナンテコッタイ

二人は俺を無視して、さっさと手をつないで行ってしまった。
俺はガックリと項垂れて、トボトボと家に帰る。あー、今日の俺は立ち直れそうにないわ。
俺が家の前まで来ると、隣の家から丁度ペニサスが出てきた。



413: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 23:25:33.02 ID:DXpNuSU90

('、`*川 「あ、ドクオじゃん。なんかすごい落ち込んでるように見えるけど、どうかしたの?」

('A`) 「うるせーよ、お前には関係ない」

('、`*川 「あ、わかった。あんた、また今年も女子から誘われなかったんでしょ」

('A`) 「……」

('、`*川 「可哀想ね〜。可哀想すぎるから、私があんたとどっか行ってあげようか〜?」

('A`) 「うっせーよ、ペニブス。おめーとどっか行くくらいなら、一人で行くほうがましだ」

('、`*川 「あっそ、じゃあもう二度と誘ってあげないから」

ペニサスはそう言うと、自転車に乗りどっかへ行ってしまった。
残された俺は、家へ帰る。
俺は家に帰ると、まずすぐに通知表を隠した。これがカーチャンに見つかるとまずい。
そしてすぐさまPCをつけて、ん?おかしーなー。PCまだつけてないのに、黒い画面に気持ち悪い男の顔が映っているぞ。
そして、その後ろには気持ち悪い女の顔……、俺はゆっくりと後ろを振り返る。



418: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 23:28:36.47 ID:DXpNuSU90

J( 'ー`)し「お帰り、ドクオ」

('A`;) 「ただいま」

J( 'ー`)し 「なんか渡すもの、ない?」

('A`;) 「え、あ、はい」

俺はカーチャンの威圧感に負けて、通知表を差し出す。
俺はカーチャンが通知表を見ているうちに、部屋から逃げ出そうとした。
しかし、俺の後ろから発せられる禍々しい気によって、俺の体は動けなくなってしまった。

('A`;) 「……」

J( ー )し ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

(;A;) 「ごめん……」

J( ^д^)し9m 「オール2プギャーwww」



425: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 23:30:56.46 ID:DXpNuSU90

その夜、俺は飯抜きだった。
カーチャンは俺と口を聞いてくれない。ごめんね、俺頭悪くて、ごめんね。
トーチャンは俺とカーチャンの間に流れている空気に気づいていないようで、上機嫌でビールを飲んでいる。

(*´Д`) 「あっはっは、ドクオは明日から夏休みか」

('A`) 「……うん」

(*´Д`) 「いいな〜子供は。どうだ、誰か女の子でも誘ったりしてどっか行くのか?」

('A`) 「いや……」

J( 'ー`)し 「あなた、この子に女の子が釣られるわけないでしょ」

(*´Д`) 「それもそうだな〜、ドクオには一切浮いた話がないからな〜、あっはっは」

ババァ、やっと俺の話題に触れたと思ったらそれか。ジジィ、冗談でもいいから否定しろよ。
俺は飯も食えないので、さっさとこの場から離れ、自分の部屋にもどった。
そして、部屋に入るとまっさきにベッドに寝転がる。



428: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 23:33:35.24 ID:DXpNuSU90

('A`) (あーもう、プギャーも、妹者も、ペニサスも、トーチャンも、カーチャンも俺を馬鹿にしやがって)

俺がイライラしていると、今年の春買ってもらったばかりの携帯が鳴り響いた。
アドレス帳には、家族とプギャーと男友達5,6人しか入ってない。その中でもメールを送ってくるのは、プギャーだけだ。
そしてそのメールはやっぱりプギャーからだった。


07/25 19:23

From プギャーww
Sub 件名なし

8月8日、お前と自転車で旅に出る約束してたじゃん?
その日なんだけど、妹者と遊園地行くことになっちゃって無理になった。
本当にごめん。違う日に必ず行こうな?な?



433: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 23:35:40.28 ID:DXpNuSU90

('A`) 「……はは、ははは」

もう笑うしかねーよ。
プギャーはずっと連れ添ってきた俺より、今日話しかけられたばっかりの妹者をとるんだな。友情より愛情なんだな。
俺はもう自分が惨めでしょうがなかった。
毎日、髪の毛をセットして、女子の目を気にしてる自分が本当に馬鹿みたいだ。
プギャーなんていつもプギャーしてるだけなのに……いつの間にこんな差がついたんだろう。
今の俺は劣等感の塊だった。

俺はちょっと泣いた。負け犬の涙なんて全く下らない。
俺は自分のこれからの生活に絶望していた。
もうこんな生活は嫌だ、こんな生活から逃げ出したい。
そのとき、俺の頭に一つの考えがよぎった。

('A`) 「逃げればいいじゃん……」

そうだよ、逃げればいいじゃん。
今は夏休みだし、丁度いい。なにもこの家にいる必要はないんだ。



435: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 23:37:54.18 ID:DXpNuSU90

('A`) 「いつにしようか」

家出をするには、やっぱり軍資金が必要だ。
だとすると、今すぐに家出をするのはまずい。
俺は頭を悩ませながら、チラッと携帯の画面を見る。そこにはまだプギャーのメールが表示されていた。

('A`) 「8月8日……。うん、これだ!」

その日、俺はワクワクしながらベッドにもぐりこんだ。
今の環境を打開できるなら、どんな方法でもいい。とりあえず家を出て、そんでどこか知らない街へ行って――そうこうしているうちに俺は眠りに落ちていった。

家出決行の日までは、俺はあらゆる方法で金を稼いだ。
カーチャンの手伝い、トーチャンのマッサージ、小遣いの前借り。
軍資金は、前日にはなんと五千円ほどにまで増えていた。

そしてとうとうやってきた8月8日――。
俺はその日朝から家をでた。カーチャンには「ちょっと出かけてくる」と言った。



439: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 23:40:00.59 ID:DXpNuSU90

俺はひたすら自転車をこいだ。国道にそって、とにかくこぎまくった。
俺は風だけを感じる。他のものはなにもいらない。
今日はワックスをつけていない俺の髪の毛が、風によって軽くなびくのが、すごい気分が良かった。

途中のコンビニで昼飯を買うと、すぐにまた自転車に乗って走り出す。
夕方ごろになったときには、隣県のVIP県まで来てしまっていた。
俺はそれでもまだ走り続ける。どこまでも、どこまでも走り続けてやる――

('A`) 「あ、なんか祭りやってる」

俺はすぐに自転車を止めた。ごめん、やっぱどこまでも走るのは無理でした。
その祭りはとても賑わっていた。様々な出店がある。俺は夢中で祭りを楽しんだ。

('A`) 「けっ、やっぱりカップルが多いな」



442: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 23:42:20.77 ID:DXpNuSU90

祭りといえばカップル、カップルといえば祭り。
俺はまたドンドン暗い気持ちになっていた。
しかし、よく見るとカップルのほとんどは同じ方向に向かっている。俺もついついつられて同じ方向へと歩く。
すると、周りはカップルだけじゃなく、家族連れ、友達連れ、と増えていった。そして、その全員が――同じ方向へ向かっていた。
そして行き着いた先は――少し大きめのホールだった。

('A`) 「入ってみるか……」

俺は吸い込まれるようにホールへと入っていった。
そしてそこにはおよそ300〜500人は入れそうな座席と、その前にある大きなステージ。
俺はとりあえず一番後ろの列の座席に座ることにした。

しばらく経ってから、場内アナウンスが流れた。どうやら、そろそろなんか始まるようだ。
そしてアナウンスされてすぐ、四人の男女がやってきた。一番後ろなので、顔はよく見えない。
楽器があるなぁ。ギター、ドラム、マイク……ピアノ?

('A`) 「なんか変なバンドだな」

出てきた本人たちもこの大舞台に戸惑ってるし。どーせたいしたものじゃないんだろ。gdgd進行間違いなし。
そう思って見てた時期が俺にもありました――



451: 期待をかわして描写カットです ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 23:44:45.38 ID:DXpNuSU90

('A`*) 「すごかった……。俺もあんな仲間とあんなことしてー」

俺は四人のライブを見終わって、ホールを後にした。
俺はいつまでもさきほどのライブの感動の余韻に浸っていて、外が暗くなっているのに気づかなかった。

しばらくしてから、俺はふとホールの前にある時計を見た。――九時!?

('A`;) 「やべえ、どうすればいいんだ」

俺は再び自転車に乗り、寝るところを探すために彷徨った。
しかし、どこの宿泊施設へいっても、未成年だからという理由で断られる。
一旦休憩するために、近くの公園に来たときには、俺はもうクタクタだった。

('A`;) 「やっぱ家出なんてしなきゃ良かったよ」

(;A;) 「うっうっ……カーチャン」

俺はなんて馬鹿だったんだろう。
ほんの下らないことで家出なんかしちまって、カーチャン本当にごめん。今頃俺のこと探してるのかなぁ。
俺はやっぱり疲れていたんだろう。そのままベンチに座り込むと――深い眠りに落ちていった。



455: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 23:47:06.98 ID:DXpNuSU90

次の日、朝起きると、まず俺の目に入ったのは、青いビニールのようなものだった。
そしてその青いビニールは俺の周りに広がっていて――あ、これテントだ。

('A`;) 「なんで俺こんなとこにいるんだ?」

昨日俺は公園に来た。
そして、俺はベンチで眠りに落ちて――昨夜の回想をしていると、突然目の前に汚らしいジジィが現れた。

('A`;) 「わっ!」

/ ,' 3 「やっと起きたか……」

('A`;) 「あ、あんた誰?」

/ ,' 3 「やれやれ、最近の若いもんは言葉遣いも知らんのかい。外でお前が寝ていたんじゃぞ。最近ここらはホームレス狩りが多いから、被害にあわないよう助けてやったというのに」

('A`;) 「あ、ありがとうございます。……んで結局誰なんですか?」

/ ,' 3 「そんな気になることかのぅ。私はただのホームレスのジジィじゃ」

('A`;) 「ホームレス……!?」

ホームレスといえば、俺らが常に馬鹿にしてきた存在だ。
汚い、卑しい、貧乏、悪いイメージしか持っていない。
そんな思いが俺の顔に出ていたのか、ホームレスのジジィは顔をしかめてこう言った。



457: 1 ◆bAt3E3sVXo :2007/06/23(土) 23:49:29.20 ID:DXpNuSU90

/ ,' 3 「わしはこれから出かけるからな。小僧、お前はもう出て行け」

('A`;) 「え、そんな! ちょっと待ってよ!」

/ ,' 3 「だめだ。お前はもう帰れ。親も心配しとるじゃろう」

('A`;) 「そりゃ帰るけど、俺帰り道わからないんだよ! だから教えてくれないか?」

/ ,' 3 「そこまで面倒見切れん。わしはもう行く」

ジジィはそう言うと、カッターとダンボールをもってテントから出ていってしまった。
俺は慌てて追いかける。

('A`;) 「なあ、待ってくれよ」

/ ,' 3 「……」

ジジィは振り返りもせず、どんどん歩いていく。ジジィとは思えない速さだ。
俺はついていくのがやっとで、周りを見る余裕なんて無かった。
そして、ジジィがやっと止まり、ダンボールを道端に置いて腰を下ろす。俺もその隣りに腰を下ろした。



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