喋るアンパンを食う度胸は無い

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/25(金) 18:40:44.79 ID:F3jISvOM0
 一方その頃、ジャム連邦共和国政府統合司令本部兼中央兵站基地、通称「パン工場」。

「バタコ少佐、状況を説明してくれたまえ」

戦略会議室の奥の大型ビジョンに映された初老の男が白い頭髪を
神経質に撫で付けながら静かに、しかし有無を言わせぬ口調で促した。
壁全体にひろがるスクリーンの中で一同を見下ろすかのように座っている男こそ、
ジャム連邦共和国大統領兼三軍統合元帥兼最高裁判官、ジャムである。
もっともその肩書きは滅多に使用せず、部下たちは専ら「総統」と呼んでいた。
しかし市井の民衆の前では「ジャムおじさん」で通っているし、本人もその呼び名を好んでいる。

「はっ!昨日のヴァイキン側のわが領土内への侵犯目的は、
 当該地区での兵站補給、及び食糧の調達かと思われます」
「『思われます』ね。まあ、それはいい。ところで現在、我が国はヴァイキン陣営に対して経済制裁を実施している」
「存じております」

会議室で一人、起立しているバタコの手に汗がにじむ。

「彼らに対しては食糧もまた重要なカードの一枚だということもかね?」
「は」
「では国防の礎を揺るがす売国奴の処分はどうなっている?少佐」



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/25(金) 18:43:47.04 ID:F3jISvOM0
 バタコは胃から十二指腸にかけての辺りに鈍いような鋭いような、
もう馴染みの違和感を覚えたが直立不動のまま指先を軍服のズボンの側面の縫い目から
一ミリメートルも動かさずに聞き返した。

「ヴァイキンに食糧を売った者のことでしょうか」
「ワ、ワタら…私の質問にィ!し、質問でぇ返すんじゃぁあなァいィッ!」

突如としてジャム総統は激昂した。その声を伝えるスピーカが
ハウリングを起こして少し蒸し暑かった会議室が凍りつく。

「申し訳ありません!」

「当日当刻、空中での哨戒中に不審な動きのあった容疑者たちを十七名捕らえて尋問いたしましたが……」

空気を見計らって食パンマンが立ち上がり進言する。
ジャムはモニタの中で椅子に掛けなおし、息を整えながら目だけを向ける。

「十七名全員が自白しましたので即刻、ショクパンチにより射殺しました」
「バカな!」

 先程よりは小規模な爆発を今度はバタコ少佐が起こした。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/25(金) 18:47:50.77 ID:F3jISvOM0
「十七名!ヴァイキンはそんな大規模なコンタクトは行なわない!」
「私もそうは思ったのですが、彼らは空中から地面に降り立った私と
 目が合うなり、『ひぃ、ごめんなさい』などと謝罪の言葉を発したので
 外患誘致罪自供と認定し、規定通りに裁判を省略して処刑を行なったのですが、
 なにか問題でも?バタコ少佐」

食パンマンは紳士的ながら慇懃な笑みを浮かべて上官に問う。

「…………」
「食パンマン」

 押し黙るバタコのかわりにジャムが口を開いた。

「君の愛国心は買うが、今は有益な情報が欲しいのも事実だ。
 スーツとグローブを装備したパン戦士の君の一撃を受けた者は話す事もままならぬではないか」

 ジャムのジョークにバタコ以外の全員が肩を揺らして笑った。
装甲の無い民間人がパン戦士の鉄拳を受ければ、一瞬で蒸発して跡形も残らない。

「では諸君、義務を果たしたまえ」

 それから定例の議題をいくつか消化したあと、ジャムのお決まりの一言で戦略会議は閉幕した。

「少佐、後で私の部屋に来るように」

書類をまとめるバタコにジャムが画面から声をかける。



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/25(金) 18:48:31.24 ID:F3jISvOM0
「了解いたしました」

(どうやら「会議」の続きが)
(らしいな)

あからさまな意を含ませた笑みを交わす隣の席の食パンマンとカレーパンマンを彼女は見逃さなかった。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/25(金) 18:51:02.12 ID:F3jISvOM0
「おいでチーズ」

バタコは自室に戻ると主人の帰りを待ちわびていた愛犬を抱き寄せた。

「お腹すいた?ちょっと待っててね」

 ごてごてと重い装備をぶら下げた軍服の上着を脱いでソファに投げると、
作りつけの簡易キッチンに向かい冷蔵庫からミルクと老犬向けシリアルを出して
鼻歌まじりに小さな伴侶の晩餐を作り始める。

 眠たげにのろのろと食事を摂るチーズを、ソファに後ろ前に座り背もたれに
半ば突っ伏した姿勢でぼんやりと眺めていたバタコはノックの音で現実に引き戻された。

「どうぞ」

 と言いながらも、無意識に上着と一緒に転がっていたガンベルトを手元に手繰り寄せて
ホルスタの留め具を外し、拳銃の握把に触れる。

「アンパンです。入ります!」

扉が九十度ちょうどに勢い良く開き、
少し首を傾げるような姿勢で頭をぶつけないようにしながら身長二メートルを越すパン戦士が入ってきた。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/25(金) 18:53:33.41 ID:F3jISvOM0
 アンパンマンはパン戦士たちの中でも基本設計の最も古いプロトタイプであった為か、
新式のカレーパンマンや食パンマンに較べてかなり大型である。
攻撃力に特化されたカレーよりもひと回り大きい割にはパンチ出力はその七割程で、
最大戦速と旋回能力は空中機動戦向きの食パンの六割程度だが、
実戦の勝敗を決するのはカタログスペックではない。

 彼は長い間、ほぼ週に一度のペースで続いているヴァイキンとの会戦において、
ただの一度も辛酸を舐めたことがない。そして自らの力量を正確に把握しており、
自分が必要であると認めた任務は隙を見せず着実に実行する。
そして何より、彼は今日の己の輝かしい戦歴が幸運によるものである事も知っている。

 アンパンマンはプロの軍人だった。

「バタコ少佐、総統執務室に直ちに出頭して下さい」
「了解したわ」

 バタコは上着に袖を通し、ベルトを締めると愛犬をひと撫でして部屋を後にした。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/25(金) 18:55:34.41 ID:F3jISvOM0
大型のエレベータはパン工場地下最下層のジャムの執務室に向かって静かな唸り声と共に降下する。

「ねえ、アンパンマン」

背筋を伸ばして無表情でパネルの前に立つパン戦士にバタコは尋ねる。

「昔のこと、まだ覚えている?あなたがまだ人間だった頃のこと」

 コツコツと踵を返し上官の方に向き直ったアンパンマンは一瞬間を置いて答える。

「その質問の意味がよく分かりません、少佐。自分は志願してパン戦士に改造されました。
 戦闘に関する情報以外はコード化されていないのはご存知のはずです」
「……そうだったわね」

 バタコの溜め息とエレベータ到着を告げる、乾いた音のベルが同時に響く。

「エスコートはここまででいいわ」
「いえ」

 アンパンは、今度は向きなおらずにパネルに暗証番号を入力しながら応える。

「自分にも総統より出頭命令が出ているのです」



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/25(金) 18:57:35.36 ID:F3jISvOM0
「入りたまえ」

 アンパンマンのノックに室内からドアを通して、ややくぐもった返答があった。

「待っていたぞバタコ少佐、そしてアンパンマン」

 古風な調度品の揃えられた執務室の正面突き当たりの壁にビルトインされた
モニタの中のデスクの奥でナットシャーマンの紫煙を燻らせていたジャムは立ち上がって二人を迎えたが、
それは単なるポーズである事をバタコもアンパンも知っていた。

 ジャムは現在の支配体制の整うのとほぼ同時期に誰の目の前にも、
直接的に姿を現すことをしなくなっていた。この国で唯一の純粋な人間であるバタコを除いては。
しかし、年中ずっと執務室に篭っている割には血色も鮮やかで、
その双眸もはっきりした光を宿しており、詰襟からのぞく首の筋肉は
その歳に釣り合わない、鍛え抜かれたものだった。

「実は現在検討している大規模な進攻作戦について、二人の意見を聞きたくてね」

と言いながらジャムが手元のスイッチを操作すると、
壁のレーザー投影装置が作動して天井の高い広い部屋の空間いっぱいに三次元ホログラフィックを映し出した。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/25(金) 18:59:36.60 ID:F3jISvOM0
 海、森林、川、湖、山岳……この惑星に唯一残された、大陸と呼ぶにはあまりに小さい島の縮図である。

バタコも職業柄、かなり細かいところまで記憶しているし、
アンパンに至ってはこの精密な三次元図と同じデータをデジタル情報として持っている。

 さらに一瞬遅れて、パン工場からヴァイキン城に伸びる複数の矢印と各種ユニットの戦力データ、
それにスケジュールなどの複合的情報がマップに描き込まれる。

「パン戦士の連隊…千名規模のパン戦士の投入……」

 その勢力図を一瞥したバタコは思わず呟く。
 それを見たジャム連邦共和国三軍統合元帥は、にやりと笑った。

「言っただろう少佐、大規模な進攻作戦だと」



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/25(金) 19:01:36.81 ID:F3jISvOM0
「大規模な進攻、ね」

 受け取った番茶をひと口すすってから、あぐらをかいている尻の下の座布団を少し直して、
ヴァイキンはカービイに応えた。ところ変わってここはヴァイキンの居室である。

「はい、近々ジャム側が大きく攻勢に出るのはどうやら間違いありません」

 ヴァイキンは湯呑みを置くと、もう一度座り直して直属の部下でもあり、
旧来の友でもある男の眼を見て率直に尋ねてみた。

「この城は、岩山のてっぺんに建って攻め難く守り易いなんて能書きなんだが、どうだろう、厳しいだろうか」
「ジャムはパン戦士の量産に踏み切ったそうです」
「……本当か」

 ヴァイキンは急に咽喉の中の水分が、大気に大きく蒸発していくかのような錯覚を感じて、また茶に口をつける。

「パン工場地下に潜入しているカビルンルンからの情報です。すでに生産ラインは稼動準備を終えています」



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/25(金) 19:03:38.30 ID:F3jISvOM0
 カビルンルンの不思議な生態はその統領たるヴァイキンも全ては把握していない。
この惑星に古くから存在している彼らは全体の総数が常に一定である。
すなわち、一体のカビルンルンが死ぬと、だれか違うカビルンルンが分裂してその定数割れを補うのだ。

 さらに彼らは何がしかの方法で常に互いにリンクしており、
各個の持ち寄った情報を種族全体のものとして共有している。
電波などを介さずに彼らの間では感覚的に行なわれるこのコミュニケーション能力は
スパイ活動には最適といえた。一体の力は弱いが、
その一にして全、全にして一であるネットワーク網は近代戦において強力な武器だった。

 ヴァイキンの軍はヴァイキンから側近であるカービイに下命があれば、
一瞬で軍全体の意思を統一して各個の任務を認識し、状況を開始できる機動力を持っている。

 しかし意思だけで戦に勝つことはできない。
一体投入されただけで情勢ががらりと傾くパン戦士が徒党を組んで襲来したら―――
ヴァイキンは大きく息を吐き出して天井を見上げた。

「カービイ」
「ドキン様のUFOのINS慣性誘導装置には既に例の場所を入力してあります」
「その時は頼んだぞ」



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/25(金) 19:08:42.96 ID:F3jISvOM0
 暗闇の奥の方から、誰かが自分を呼んでいる声がする。
しかしそちらに行こうとすると、全身が鉛にでもなったかのように重く、
全く足は動かないし、声を出して応えることもできない。そのうちに彼を呼ぶ声は次第に遠ざかり―――

 掌に指先が食い込む自分の拳を強く握り締める感覚に、アンパンマンは定時よりかなり早めに覚醒した。
彼の意識レベルをモニタリングしている壁に立てかけられた棺桶のようなパン戦士冷蔵カプセルは、
圧縮空気の音を部屋に響かせながら自動的にそのハッチを開き、
連動している室内環境管理システムが蛍光灯のスイッチを入れる。

 カプセルから出て少し歩いてみるが、どうも妙な浮遊感を持て余し、
地に足がつかない。なんとなしに顔を触ってみる。

「私が、夢を見て汗をかいたというのか」

 顔がじっとりと濡れていた。力が入らない筈だった。
 彼は部屋の入口に近い電話機までなんとか左右の足を交互に前に押し出して近づくと
受話器を制御の利かない右腕で乱暴に取り、記憶しているバタコの内線ナンバを叩く。

「少佐、直ちに新しい顔を……」



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/25(金) 19:11:14.05 ID:F3jISvOM0
「どうしたのアンパンマン!」

 うっすらと汗を滲ませて軽く肩を上下に揺らして息を弾ませながら、
その手にはやや持て余す軍用拳銃を両手で保持してバタコはパン戦士休眠室に駆け込んできた。

「……申し訳ありませんバタコ少佐。冷蔵カプセルの湿度設定を失念いたしました」

 受話器のぶら下がる電話機の下で壁に背をつき座り込む顔の濡れたアンパンマンを見て、バタコは吐息を漏らした。

「ヴァイキン側が基地内に侵入したかと思ったわ……」
「その場合には少佐に連絡する前に警報を発令します」
「それもそうね。さ、パン窯室に行きましょう。歩ける?」
「問題ありません」

 そういうとアンパンは立ち上がり、いつものように胸を張ってドアの方に歩き出すが、
全身に供給される頭部のエネルギー源の異常は、意志の力ではどうにもならず、
唐突にバランスを崩して壁に手をつき、そのままずるずるとしゃがみ込んだ。

「アンパンマン、私の肩に掴まりなさい」
「……了解。申し訳ありません」

 ピントの合わない視界の中で彼に手を差し伸べるバタコ。
 彼はふと、その光景に既視感を覚えたが今はメモリをデータ検索に割く余裕は無かった。



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/25(金) 19:13:15.85 ID:F3jISvOM0
 窯の脇に取り付けられたタイマが鳴り、バタコが厚手のミトンを着けた手で
大きな窯の扉を開けると室内に焼きたてのパンの芳香が充満する。

 鉄製の長柄のヘラを差し入れてこんがりとキツネ色に焼きあがったアンパンを取り出すと、
彼女は表面が冷めないうちにスプレーガンでショ糖水をまんべんなく、吹きかける。
これで常温に冷えた時にパン表面に光沢を出すのみならず、撥水コーティングにもなる。

 そして作業台の上に用意しておいた無線式のチップを指先にぐいと力を込めて、首の付け根あたりに埋め込んだ。



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/25(金) 19:15:16.71 ID:F3jISvOM0
「さぁできた!新しい顔よアンパンマン」
「了解しました。頭部エネルギーユニット交換に伴う一部運動機能の凍結、
 エネルギー回路の遮断確認。交換実施準備ヨシ」

 椅子に腰掛けたまま交換前の確認作業を終えると、
アンパンマンはそのまま意識を失い、体重が背もたれにかかって少し軋む音がした。

「交換実施」

 バタコがスリークォータ投法でまだ熱いアンパンを投げる。
 新たな顔が接続され、ボディ内のバックアップデータが
頭部に埋め込まれたチップとリンクして瞬時にフィードバックする。

「アンパンマン、アクティベート!」

 生命の息吹を吹き込まれたかのように、アンパンマンは立ち上がった。

「私はジャム連邦共和国所属、パン型戦士アンパンマン第七百八十二号です」

 いつもの張りのある声でパン戦士は起動した。



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/25(金) 19:17:18.73 ID:F3jISvOM0
「おはようございます、バタコ少佐」

 視界に上官を捉えて反射的に、というよりプログラム上の反射で椅子から素早く立ち上がり、
挨拶の文言を言い終わってから、挙手の敬礼をとる。

「おはよう、アンパンマン」

 と、アンパンは空中を見据えたまま動かなくなる。が、一呼吸置いて無機質に口を動かし始める。

「メインシステム……異常なし。サブシステム、異常なし。
 運動システム……異常なし。戦闘システム………異常無し」

 バタコはアンパンが平時顔面交換プロセスにおける自己診断モードに入るのを確認すると、
床に膝をついて彼の足元に転がっている古いアンパンに手を伸ばし、
切断面に指を挿し入れて古いチップを回収すると上着のポケットにしまう。
そして両手でずしりと重い大きなアンパンを持ち上げると、
二十四時間火を絶やすことの無いパン焼き窯の方へと運んだ。

「さようなら、アンパンマン七百八十一号……」

 バタコはかつてはパン戦士の口であった部分に自分の唇を重ねると、
古いパンをめらめらと踊る紅蓮の炎の中へと投げ込んだ。

 一瞬、焦げ臭い匂いが彼女の鼻をついたが、自動制御のオーブンが火勢を強めると
古い顔はすぐに燃え尽き、室内には新しいパンの匂いしかしなくなった。



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/25(金) 19:19:26.10 ID:F3jISvOM0
「ヴァイキン様!」

 珍しい、というより初めて見るカービイの走り姿だった。
無数の触手を器用に操ってヴァイキンの執務室のドアを後ろ手に閉じながらデスクまで駆け寄ってくる。

「なんだカービイ、カビだけに意外と足が速いじゃないか」

手にしていた書類を置いてのんびりと声を掛けたヴァイキンだったが、
普段はエスプリに富んだ執事も、そのジョークを拾わずに単刀直入に本題に入る。

「三日ほど前に傍受した、ジャム側の暗号電文の解読資料です」

そう言ってカービイは2枚の用紙を机の上にパサリと置いた。

「随分と速い仕事だな」

通常、スクランブルをかけた上に細切れにされてさらにコード化した挙句、
デジタル信号で送られる高度に暗号処理されたジャム側の通信を復調解読するには、
古代文明の失われた文字をも解読してきたヴァイキン達の技術でも一月から、運が悪いと一年は掛かる。

「実は、全く同じキャッシュの通信が一年ぐらい前に星外に向けて超光速方式で打たれていたのです。
 今回のはパン工場内でジャムからバタコに転送されたものでした。
 基地内有線通信網に接触したカビルンルンがほぼ偶然に傍受し、気になって解析を急いだのですが」

 カービイはそこまで言うと黙ってヴァイキンが書類に目を通し終えるのを待った。



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/25(金) 19:21:27.57 ID:F3jISvOM0
報告書  


先立って送付した報告書の通り、本惑星には優秀な先住民族が存在していた。

各地に見られる遺跡群や「ゴミラ」などの古代生命体はその遺物である。

その文明のテクノロジーの中でも特に優れていたのが食品を動力とした人造兵士製造技術であった。

なぜ、食品が動力に適しているのかは現段階でも調査中であるが、

我が母星の汎用ネコ型ロボットの事例に見るように、

ある種の動力源を使用する場合、 燃焼効率の面で優れているためと考えられる。



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