V         (のようです)

226: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 22:14:15.23 ID:XbRaDYE30

明くる日

今日で六日目 一週間なんてあっという間です

乏しかったはずの 通帳の中身
それがいまや 0が一桁増し
ぼくはもう うきうきです


( ^ω^)「さーて……」


定刻どおり公園につき あたりを見回します
ツンちゃんたちは まだ来ていないようです


(;^ω^)「クマさんのことで、ごねなければいいけどお」


昨夜ようやく ネットのショッピングモールにて 同じぬいぐるみを発見
早速注文したところ 到着には 一週間程度かかるとのこと

塗装の剥げたベンチに腰掛け 小さな来訪者を待ちます



229: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 22:16:48.90 ID:XbRaDYE30

それから

10分がすぎ


     20分たって


( ^ω^)「……」


結局 30分ほど待ってみたけれど 女の子たちは来ませんでした
ひょっとしたら 親御さんに怒られたりしたのかな


( ^ω^)「ふむ、来ることを忘れちゃったかお?」


ひょっとしたら 時間を間違えているかも などと考え
さらに15分ほど待ってみましたが

相変わらずこの界隈 しんと静まり返っています


( ^ω^)「……バイト行くかお」


お家で 二人仲良く お人形遊びをしているといいなあ



232: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 22:19:30.19 ID:XbRaDYE30

合鍵を差し込み けだるくノブを捻ります

いつもと変わらない 薄暗い部屋の中
生ぬるいような ひんやり冷たいような
よくわからないけど どこか重い空気

ぞわり 頬を撫で付けてゆきました


( ^ω^)「おいすー。……元気してたかお?」


あがりこむと
木箱の白い顔 ぺしぺし叩きつつ ベランダへと近づきます

たまには 空気を入れ替えよう
殺風景な部屋に これまた無愛想な白塗りの木箱
明るくなれば 少しは 印象が変わるかも知れません

カーテンを引き 窓をいっぱいに開放します


( ^ω^)「ふぃー……風が気持ちいいお」


外は曇り空ですが
暗いままでいるよりは いくぶん マシになりました



239: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 22:22:06.15 ID:XbRaDYE30

それでもやはり 後方より発せられる 威圧感
誰かに見られているような感覚です


( ^ω^)「ぴーーーーーーーす!」


わざと明るく 右手でチョキをつくります
腕をいっぱいに伸ばしつつ 『Vの箱』へと 振り返りました

人差し指と中指の中心
そのすき間で標準を合わせ 箱の側面を確認します


( ^ω^)「やっぱりだお」


上から三列目 まさに5つ目のVマークが描き込まれていました
これで印の数は 7個×二列と 三列目に並んだ5個を足して 19個


( ^ω^)「ここの住人、本当に妙な趣味してるお」


まあ 趣味というよりは 日課なのでしょうが
どちらにせよ 変わっていることに違いないでしょう



243: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 22:25:03.87 ID:XbRaDYE30

それから トイレを借りることにします
便器の蓋は閉じたまま 紙もこないだと同じくらい 減った様子はありません


( ^ω^)「お? 使ってないのかお……?」


しかし 手を洗おうとして気付きました
洗面台に張り付いた 長い長い髪の毛


( ^ω^)「ペロ……これは! アパートの住人は女の人だお」


本当は 雇い主の毛ではない ということしか わからないのですが
女性だと仮定したほうが ぼくとしては なんとなく嬉しいので


(;^ω^)「まあ、ろくな女じゃなさそうだけどお」


あの木箱 宗教関係のアイテム という線が 色濃くなってきた気がします

山のように積んであったはずのタオルは 数枚にまで減っていました
洗濯機は空 クリーニングにでも出したのでしょうか



247: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 22:28:00.48 ID:XbRaDYE30

まあ
他人の生活事情を これ以上詮索するのも 気が咎めます


( ^ω^)「明日、あの人に聞いてみようかお?」


居間に戻ると 『Vの箱』を眺めつつ 周りをぐるぐる歩きます

やがてそれにも飽き 窓とカーテンを閉じると 帰り支度

もう一度だけ 赤いマークを一瞥し それから部屋をあとにしました


( ^ω^)「ひょっとしたら……」


念のため もう一度公園へと向かいましたが
中学生らしきカップルが 一組 ベンチに座っているだけ


( ^ω^)「……ぬいぐるみ、渡せる日は来ないかもお」


ちょっとした寂しさを覚えつつ 帰り道 辿りました



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