普通の人がエロゲーっぽい世界の主人公になったようです
- 1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 21:21:02.83 ID:vU1AgEN30
- 目覚まし時計の音がうるさいので、とめた。
気付けば、ベッドの上で自分の生殖器が屹立しているのが分かる。
別に関係ないので、俺は着替えと洗顔を済ませた。
「そろそろ起きなさい。ごはんよー」
自分の部屋から少し離れた場所、そこから声が聞こえてくる。
老いさらばえたばあさん声だ。
自室のカーテンを開けて、陽光を体に浴びたのちに出る。
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 21:27:35.43 ID:vU1AgEN30
- リビングに到着した。
親父は、新聞を読んでテレビを見ながらごはんを食べている。
アメリカならば離婚ものの態度だろうが、ここは日本なのでンなの関係ない。
最近、小じわが目立ってきた母の顔を見、挨拶をすると同時に席についた。
そのまま朝食を摂取する。ピザトーストとインスタントスープとサラダ。
明らかに手抜きであるが、養われている身なのでえらそうなことは言えない。
もそもそと食べ物を詰め込みながら、母の愚痴を聞く。
「最近、お父さんがごはんのたびにテレビばかり見て……どうにかしてほしいわ」
多分、そういうのは一生直らないと思う。指摘されると嫌な顔しそうだし。
夫婦喧嘩は犬も食わぬ、として流しておく。高校生は朝早いから忙しい。
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 21:35:13.61 ID:vU1AgEN30
- トイレなどを済ませ、ひととおり状態を確認したと同時、玄関のチャイムが鳴った。
「おはようっ! 今日もいい朝だね。えへへっ」
いきなり朝っぱらからテンション高い女が俺の前に出る。
飾り気のないセーラー服をまとった、やや小柄な赤い髪の少女。よく校則違反にならなかったものだ。
というより、それ以前に、高校生にもなって『えへへっ』はねぇだろ、素直にそう思う。
そろそろ、黄色い救急車の情報を得るのも悪くないのかもしれない。
俺の目の前でその女は、ツインテールとかいう髪を揺らしながら、俺の手を引っぱってきた。
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 21:40:52.47 ID:vU1AgEN30
「学校、一緒に行こう?」
「ふたりとも、いってらっしゃい」
家が近所だからって迎えに来るのはどうかと思う。世話焼き、というのはよく分からん。
俺のことを笑顔で送る母を見ながら、少しは不審がれと考えること数秒。
こんな年齢になってまで、稚気丸出しの態度と容姿を見せる赤ツインテール女。
ぶっちゃけ、そばにいるこっちの方が恥ずかしい。
汗顔の至り、忸怩たる思い、とかいうやつだろう。まあ、とにかく嫌だ、その思いだけは確かである。
だのにこの赤色ツインテール……あーもう面倒だから円谷でいいや。
とにかくその円谷は、俺の腕を引っぱって、駅前まで引きずりやがった。腕痛い、恥ずかしい。
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 21:48:04.21 ID:vU1AgEN30
- 俺と円谷は電車に乗り、高校への道を急いだ。
途中、円谷がなんか痴漢に遭ったとか言ってたが、無視することにした。
いわれのないことを言われたサラリーマンの将来、テメェはどうなるのか予測してみろ、と言いたくなった。
でも円谷がなんか怖くて言えない俺、マジチキン。
というより、グドンのエサであるこの小娘のケツを、誰が触りたいと思うんだろう? 自意識過剰もいいところだ。
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 21:55:20.82 ID:vU1AgEN30
- いくつか電車を乗り換えて、俺と円谷は学校近くの駅にたどり着いた。
腕に巻かれた時計を見れば、時間はそれなりにある。
歩いて行けるのに、いつも落ち着かない円谷は小走りだ。そろそろ蹴り飛ばしたくなってきた。
歩道を歩いて、高校へたどり着く。
生徒の数もまばらだが、その中でも円谷は特に目立った。
赤い髪をしている時点で、どこぞのパンクロッカーと間違えられてもおかしくないのに、皆は知らん顔。
アレか、顔がいいからなのか。
容姿主義社会日本、万歳万歳。そんなこと考えている奴原は、みんな死ね。
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 22:02:39.92 ID:vU1AgEN30
- 見慣れた教室に足を進める。
薄汚い廊下が目についたが、俺もあまり掃除は真面目にやらなかったので偉そうなこと言えない。
とりあえず、自分の席に座った。同時、そのまま突っ伏そうとするも、誰かに止められる。
「相変わらず遅いわね」
せっかくの眠気を癒そうとしたのに、俺の目の前に出たのは金髪女。
背もやや高く、やったらめったらきらきら光る髪が目立つので、ある日俺は聞いてみたことがある。
「その髪見て思ったんだけれど、お前さんってハーフか?」
まあ、ちょっと失礼な、詮索するような言葉かもしれないが、とにかくやってみたわけだ。
そしたらこいつの反応は、俺の想像の斜め後ろを飛びやがった。
「え? この髪が綺麗だなんて…そんな……。べ、別に照れてなんかいないんだからねッ!」
あんまり、人のことを差別したりするの好きじゃないんだけれど、俺はその時思った。
こいつ、基地外?
つーか、こっちはハーフかどうかたずねただけじゃん。勝手に自己完結して照れる辺り、キモい以前に怖かった。
なんというか、原初の恐怖というものを味わった気がした。色々な意味で次元が違ってた。
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 22:12:33.36 ID:vU1AgEN30
そんなコミュニケーションの出来ない女が、今、俺の目の前にいる。
うんざりするな、という方が無茶な話だ。つーか、寝かせろ。俺は日本語の通じる相手と対話したい。
「なによ、朝っぱらから元気ないわね」
それはテメェがいるからだよ、と言いたかったが、俺は怖くて言えなかった。
基本的に、相手を否定する言はつつしんだ方が良い。人間社会で生きるコツだ。
特に、日本という島国では。
言いたいことも言えない国ってやだ。マジで気力萎えるわ。
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 22:20:39.12 ID:vU1AgEN30
- コミュニケーション出来ない女が、俺の席を離れると同時に、ホームルームが始まった。
とりあえず、プリント類は整理してクリアファイルに入れておく。
あとで何か忘れたら困るし。
一時限目は国語だった。
朝、眠いのに、クソつまらん日本語を聞かされるのもどうかと思うが、教師も大変なのだろうから黙っておく。
とりあえずそこそこ真面目に授業を受けたものの、誤字脱字が目立つプリントはさすがに萎えた。
先生は50過ぎのおばさん教師であるが、クラスでも人気の女子ばかり当てるのはどうかと思う。
答えられないとスゲェ罵るし。
女の嫉妬は醜いが、熟女飛んで半ババァの嫉妬は、もう見るに堪えなかった。
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 22:29:36.66 ID:vU1AgEN30
- 二時限目は社会だった。
教師は、30くらいの若い男の人。
それなりに顔立ちも整っていて話術もあるので、生徒からの人気はなかなか高い。
俺もこの人の授業は好きだった。まあ、歴史の人物とか覚えるのは面倒なんだけれど。
普通に雑談しても面白い先生だし、正直、今回の授業も期待していた。
しばし楽しい授業を聞いていたら、いきなりクラスの中で女子がひとり、泣き出した。
いじめうんぬんとか言って、ごたごたになって、結局その授業は流れた。
あとでクラスメイトに話を聞いたら、ただ悪口書いてある紙飛行機を喰らっただけらしい。
悲劇のヒロインぶって人に迷惑かけるバカは、マジで死んだ方がいいと思う。
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 22:37:26.42 ID:vU1AgEN30
- 三時限目と四時限目は普通だったが、二時限目が潰れてブルーな俺は、あまりやる気が出なかった。
学費無駄にしているみたいで親には申し訳ないが、まあ終わったことは終わったことなので、割り切ることにする。
中休みになったので、どこかで弁当を食わねばならない。食はエネルギーなり。
弁当もって食堂に行くのは、なんか気がひけるので教室内で食べることにした。
「よう! ひとりで寂しく弁当か?」
俺がもそもそと弁当を食べていると、いきなり寄ってくるのは男子生徒。一応、俺の友人である。
身長高い、顔が綺麗、文武両道、家が金持ち。だのにもてない不思議な人間だ。
高校生なら、顔と金さえあれば股を開くのに、おかしい。
俺がその友人と話をしていると、いつの間にやら、そいつは俺の近くにあった机をくっつけてきた。
特に断る理由もないので、俺は弁当、そいつは惣菜パン、互いに互いの食物をむさぼることにする。
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 22:44:28.19 ID:vU1AgEN30
- 「そういやさ、お前、どんな子がタイプなの?」
いきなりその友人に話を振られた。まあ、内容的には男の子がよくするものだと思う。
俺は深く考えず、正直に言った。
「そういうの、あんまり考えたことないな」
「なんだよ? このクラスにはさあ、色々とかわいい子がいるじゃないか。たとえば…(ry」
俺がそう言った瞬間、その男はいきなり目を見開いて語り始めた。えんえんと。
ぶっちゃけ、死ぬほどウザかった。話題変えようとしても、こっちの言葉を無視するし。
こいつもコミュニケーションが出来ない男か、そう思って離れようとしても、引き止められる。
とみに思ったが、俺はなんでこいつと友人なんだろう? もう友人とかそういう呼び方したくない。つーか、一緒にいたくない。
でも社会的な視線が怖いので黙っている俺、あくまでチキン。
友人……もういいや、こいつ死ぬほど粘着質だから、接着剤って呼ぶ。
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 22:54:25.40 ID:vU1AgEN30
- 「何の話をしているの?」
接着剤のトークが始まって五分後に、俺のご近所さんである円谷がやってきた。
赤い髪を流すその姿は、やっぱりパンクロッカーにしか見えない。ぶっちゃけちょっと怖い。
「いや、コイツの好みのタイプとかの話」
接着剤はそう言うが、俺は全力で否定したかった。
一方通行の言葉ブチ当てを、話と称するこいつのドタマに、俺のこぶしをブチ当てたかった。
でも俺は喧嘩が弱いから怖くて出来ない。暴力事件で退学になるのも嫌だ。就職口に困る。
やっぱりそれなりの経歴がないと、将来、楽が出来ないし。
人生プランをひとりのアホに破砕されるなど、まっぴらごめん。あー、やだやだ。
なんかよく分からんが、色々と話が転がって、気付けば俺の机の周りには、人が三人もいた。
あっという間だった。俺がぼうっとしすぎなのも、原因かもしれないけれど。
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 23:09:36.67 ID:vU1AgEN30
- 現在、俺の周りには、基地外…まあ、人間が三人いる。
ひとりは、円谷。赤い髪のパンクロッカーもどきで、頭のネジが飛んだ人間だ。
そろそろ黄色い救急車を与えてやらないといけないかもしれない。
高校生にもなってツインテールとやらをやっている、正真正銘のキャットかぶりメルヒェン女だ。
ふたりめは、接着剤。顔立ちとかは良いが、人の話を聞かないウザい人間だ。
恋愛に興味あるというか、がっついている節がある。別にそれでも構わないんだが、俺を巻き込まないでほしい。
知らない趣味の話をえんえんとされるとむかつくよね? ぶっちゃけ、そんな感じです、こいつのトークは。
最後に、人の話を聞かない金髪仮ハーフ。こいつは、円谷と接着剤の悪いところ足して二で割ったような人間だ。
呼び名は思いつかんので、適当に金髪でいいや。こいつも黄色い救急車予備軍だし、名前なんて覚えてられない。
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 23:25:19.85 ID:vU1AgEN30
「で、お前はどうなんだよ。あいつとか?」
「べ、別にアイツのこととか気にしているわけないじゃない!」
「えへへっ、顔が赤いよぉ〜?」
なんで俺、こんな奴らと近くにいるんだろう。
自分が分からなくなる今日この頃。
痛む胃を抑えて、母が作ってくれた弁当をかき込んだ。
ピーマンの肉詰めが美味かった。けど、いつもより塩味多めな気がした。
授業が全て終わったので、俺は帰路を急ぐ。円谷は部活なので、一緒に帰ることはない。正直、助かる。
特にやるべきこともないので、自室で復習でもしながらゆっくりまどろんでいるか、と考える俺は枯れているのかもしれない。
まあ、それはともかくとして、学校の最寄り駅に行こうとしたら、いきなり小さな女の子が出てきた。
いや、小さな女の子ではない。
『変な』小さな女の子だ。
- 43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 23:37:24.29 ID:vU1AgEN30
- 何故ならば、このやや暑いなか、なんかゴスロリと呼ばれるような服を着ていたから。
女の子の顔立ちは整いに整っていたが、それがますます痛々しさを加速させるというか。
流す髪の色は日本人っぽさの欠片もなく、肌も白い。美人って、大抵は変人なのかもしれない。
幼女っぽい女の子を美人と呼ぶのも変かもしれないけど。
俺は、その幼女のそばを素通りしようとした。周りに人がいないのが気になるが、ぶっちゃけどうでもいい。
と、いきなりその幼女、俺の服のはしをつまんできた。
これにはさすがに反応せざるを得ないが、ゴスロリ女と一緒だと思われるのは生理的に嫌だ。
文句のひとつでも言おうとして幼女の顔を見れば、いきなりそいつはにっこりと笑って、言った。
「あなたは……忘れているのね。そう、回るわ……運命は、どこまでも……」
瞬間、俺の背筋に悪寒が走り、鳥肌が立った。
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/02(月) 23:50:58.17 ID:vU1AgEN30
- こいつは。
こいつは、とんでもない……電波である。
なんか、どっかの宗教に入っていそうな発言だ。
やばい、一緒にいると、『幸運になるツボ(200万円)』とか買わされそうだ。
俺は、色々な意味で危機だと判断し、幼女……否、電波から間合いをとった。
電波はくすくすと笑っていた。それがいっそう、俺の恐怖を助長させる。
暑い道の中、くすくすとゴスロリ姿で笑う女を見かけたら、引くに決まっている。
こんなファッキンクレイジーな状況の中、俺は身動き出来なかった。
黄色い救急車の呼び方を、そろそろ切に考えていたからである。
「どうしたの? わたしが、こわいの?」
電波幼女は笑いながらそう言う。一方、俺は動けなかった。
実際、怖かったのだ。
何故ならば。
- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 00:01:00.11 ID:ufRg5Jdv0
- 何故ならば。
こんなゴスロリ女と対峙して、学校の奴らに情報が漏れて、近所の評判が落ちたらどうしよう、そう考えていたから。
外聞悪いと社会生活に支障が出るし、そうするとストレス解消とか大変だし。
それ以前に、幼女と知り合いということをいいがかりにして、あらぬことを言いふらされたら大変だ。
俺の人生プランがゴスロリ電波によって破砕される。そんなのはまっぴらごめんである。
そう考えると、怖くて怖くて仕方なかった。
とりあえず、俺はこの場から脱出せねばならない。
すぐさま俺は電波幼女から離れて、一目散に逃げ出した
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