普通の人がエロゲーっぽい世界の主人公になったようです

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 00:13:26.08 ID:ufRg5Jdv0
怖いよ、電波はマジで怖いよ。何を考えているのか分からない辺りが怖い。

「怖いの? ねぇ、怖いの? ねぇ、ねぇ?」

俺が全速力で走って逃げているのに、幼女はにこにこ笑いながら俺を追跡してくる。
この幼女、足はえぇぇぇぇ! しかも、電波だけじゃなくてストーカー癖もあるのかよ!
俺は全身に氷をぶち込まれた感触に襲われた。ぶっちゃけちびりそうになった。

怖い。とにかく怖い。イカした……もとい、イカれた女がそこにいるという事実が怖い。
しかし、走り続けていると追いつかれる。
なので、発想の転換で止まってみた。と、次の瞬間、背中に小さな衝撃。

「いたっ!」

どうやら幼女は俺に衝突したらしい。その一瞬の隙をついて、俺は逃げ出す。
PTAとかにチクられたら、俺の人生は間違いなく終わる。
なので俺は走った。必至に走った。背後で「……もう」なんていう幼女の声なんて聞いてない。

どうして俺の周りは変な奴ばかりなのだろうか?
早急に人生プランを練り直さねばいけないのかもしれない。
そのまま俺は、電波の対処法を考えながら、家へと戻った。



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 00:26:30.52 ID:ufRg5Jdv0
朝である。

学校行きたくない。けど、行かなきゃならない。
出席はもう充分なのだが、なんか行かなきゃならん強迫観念に狩られている。
昨日、わけの分からん電波幼女に追われたせいか、気分が悪い。つーか、俺を囲む環境が気分悪くなる元凶だけど。

サボりたいのでサボろうとした。出席はちゃんとしているから、単位平気だし。
親に、「学校さぼっていい?」と聞いてみた。
みぞおちにコークスクリューかまされた。今日の朝餉である、目玉焼きが逆流しそうだった。

仕方ないので、俺は涙目で着替える。
ほどなくして。

「ねえねぇ、学校いこうよっ!」

パンクロッカー円谷が出た。もうこの辺りのくだりは、記憶に残すのすら面倒だ。



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 00:39:27.58 ID:ufRg5Jdv0
円谷と一緒に学校に行くのは、羞恥を通り越して屈辱ですらある最近。

なんで俺は、こんなピーターパンワールド永久滞在女と一緒に行かなければならないのか。
そんなこと考えても現状は変わらないので、とりあえず学校まで行った。


授業を消化。
やっぱりと言うべきか、教科書そのままなぞる授業はつまらない。
ノートだけ取っておいて、プリント区分けして、それで終わり。
予習はしていないが、復習はしているので、一応ついていける。



学校に行く、家に帰る、人生プランを練る。
そんな日が二回ぐらい続いた。



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 01:03:17.82 ID:ufRg5Jdv0
なんか淡々とした日常だけれど、俺にとっては良い傾向にあると思う。パンクロッカーの介入以外、平和だったし。
そんなことを考えていて、ばちが当たったのだろうか。

昼休み、今日は食堂で食べるか、などと思ってそこに行った際、接着剤と鉢合わせた。
本当なら、会釈ひとつして、他の人と食べたい。けれど、接着剤は俺と食べる気まんまんでいる。

断りたい。けれど、断れない。
よくあるパターンだ。向こうはこっちのこと友達と思っているようだが、実はこっちは違う、という例。

まあ、社会的外聞を尊重する俺は、愛想笑いと適当な言葉で接着剤と接して、一緒に食事をする。
俺はからあげ丼で、接着剤はカレーである。学食なので、美味くも不味くもない。安いだけがとりえだ。
が、俺なんぞが味について文句を口に出して言えるはずもない。自重はしておこうと思う。

「ここのカレー、なんか美味くねぇんだよなー!」

接着剤は声がでかい。
人を本気で殴りたいと思ったのは久しぶりだ。



89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 01:13:30.68 ID:ufRg5Jdv0
「どうしたのよ? 男ふたりで」

俺が内心唾棄しながらからあげ丼を食べていたら、金髪が寄ってきた。
とたん、何か周りから色々と視線が向けられる。俺に対しての哀れみのそれかと思ったら、違った。
なんで視線が来るのか接着剤に聞いたら、整った顔をゆがめて語った。

「いや、あいつ、結構目立つ容貌だろ? 顔だけなら綺麗だし。羨望の視線だな」
「ちょっと、顔だけってどういうことよ!」

にやにや笑いで言う接着剤に、食ってかかる金髪。わざわざ噛みつくこともないのに。金髪はカルシウムが足りないと思う。
たまには仏心でも出してやるか、などと思い、俺はカバンの中にあった牛乳パックを金髪によこした。
金髪は、きょとんとした顔で俺のことを見ている。

「なに、これ?」
「いや、カルシウム摂取した方がいいんじゃないかな、と」

俺がそう言うと、金髪は自分の胸を見、いきなり顔を真っ赤にしながら、俺の頭を殴った。
痛い。クソ痛い。一瞬、火花が飛んで、目の前が真っ暗になった。所持金半分になりかけた。
何をするんだ、と俺が講義してみたら、金髪は頬を赤く染めて俺のことをねめつける。

「失礼ね! 小さくなんかないわよ! むしろ大きめよ! なに、アンタ巨乳好きなの!?」



97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 01:28:25.42 ID:ufRg5Jdv0

あまりにわけの分からんことを言われて、俺の時間が止まった。周りの時間も。
つーか、金髪の言葉は脈絡がなさすぎる。それにすぐ噛みつくところも問題だ。
一回、落ち着いた大人の方を見習ってほしい。

やっぱり余計な仏心は出すものじゃない。そう思った俺は、金髪に渡せなかった牛乳を、自分で飲んだ。
飲みたくなさそうだったし、俺は牛乳好きだし。

「なに飲んでるのよ! くれるんじゃなかったの!?」

理不尽だ、金髪。
こいつは情緒とか道徳の面だけ、小学校からやり直した方がいいと思う。



学食から帰ったら、教室内の何人かに「おい、巨乳好き」と言われて死にたくなった。



104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 01:37:18.67 ID:ufRg5Jdv0
放課後になった。
特にやることもないが、天気が良かったので、俺は学校内を散歩することにした。
校内よりも校庭とかを散歩する方が好きなので、あてもなく歩いた。

丁度、裏庭のような場所にさしかかった際、ひとりの女子生徒がぽつりとウンコ座りで座っていた。
何かを見ているようだった。
邪魔するのも悪いので、通り抜けようとしたら、いきなりその女子生徒は口を開いた。

「あなたは……」

周りを見ても誰もいない。
俺はそこで、ようやく自分に声がかけられたのだと気付き、吐き気を覚えた。
なんでまた、こんな電波っぽい人に声をかけられなきゃならないのか疑問だった。しかもこの女、髪が緑色だし。



111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 01:44:31.93 ID:ufRg5Jdv0

緑色の女……もう抹茶でいいや。抹茶は、なんか地面に咲いた花に向かって、一心不乱になんかボソボソ言ってる。
こいつもどっかの宗教に入っているのかもしれない。そう考えると恐ろしくて逃げたくなる。だのに。

「あなたは、この地面に咲いた花を、どう思いますか?」

こんなことたずねられたら、怖くて動けない。
なんで俺の出会う人間は、常識的じゃない奴らが多いんだろう。もうマジで人間関係全部洗いたくなってきた。

洗剤で汚れが取れるんなら、俺につきまとう奴ら全部落とせると思う。

「さあ……。まあ、その花、綺麗だとは思うけど」



121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 01:53:00.49 ID:ufRg5Jdv0
地面に咲いた花はタンポポだった。
が、俺はあまり花など注視せんので、とりあえず当たり障りのないことを言ってみた。
この手のタイプは、玄人ぶるとキレそうで怖い。
電波を相手にするのが怖いのは、相手がいつキレるか分からないからだ。心の琴線とか、マジで把握無理。

「いいですよね、綺麗ですよね、花……。
 この、誰にも見られぬところで咲き誇る、一抹の美はことに映えて……」

俺は、逃げた。
怖かった。何が怖いって、あの抹茶は電波じゃなくて、メルヒェンポエマーだった。
ぶっちゃけた話、痛い子だった。はじめてのバイオハザードでゾンビと出会った時より怖かった。

なんで、初対面の相手にあそこまで話すことが出来るのだろう?
普通、初対面の相手には、まず自己紹介とか、そういうぎこちないところから始まって、猫かぶってるもんだと思う。
で、少しずつ自分をさらけ出すのが基本、俺はそう思っている。

だのにあの抹茶といい、電波といい、何故に『自己』をフル稼働してこちらに話しかける?
恐ろしい。何が恐ろしいって、「拒絶されねぇだろ」ということ前提の話し方が恐ろしい。でも、それを指摘しないで、表面上だけで対応している俺はやっぱチキンだ。



124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 02:00:35.29 ID:ufRg5Jdv0

散歩をやめた俺は、グロッキーになりながら帰路を急いだ。

しゃれにならない、というか、もうなんか嫌だ。精神的に磨耗して磨耗して、もう駄目駄目だ。
砥石でがりがり削られすぎて、ちびた日本刀状態である。

というより、何故に俺は今までこんな環境下に置かれて平気だったのか疑問である。
意図的に忘れようとしていたのか、意図的に気にしないようにしていたのか。
それが何かのはずみによりて、俺に鋭敏な感受性を植え付けるに至ったのか。


そこの辺りは考えてもとかく詮無いことであろう。
最近、変な電波に追われたから、気がおかしくなっているのかもしれない。



「――こんにちは」



128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 02:06:37.89 ID:ufRg5Jdv0
だのに、ねぇ。
どうして駅に急ぐ俺の前に、あの電波幼女が現れるのか。なんかもう、泣きたくなってきた。

電波は、相変わらずゴスロリ着用だし、犯罪的なぐらいに似合っている。バタ臭い容色も整いに整っている。
誰が見ても可愛らしいと称するであろうが、俺はそう思わない。だって、電波って怖いもの。
網膜に映る美醜を超越した存在なのである、この電波は。ゆえに俺は警戒したまま。

「あなたは」

話しかけられたので、無視して通り過ぎる。いや、だって電波怖いし。
俺は、意思を伝え合うことの出来る人間をこそ希求しているのだ。電波はどっかでミステリーサークルでも作ってくれ。
そう考えて早足で駅へと向かうも、ゴスロリ電波は俺をストーカーする。怖い、マジ怖い。ストーカーパワーはフレンジー。

「胸の大きい人が好き?」

こけた。
俺は思いっきり盛大にこけた。ズッシャアアァァァッ、と擬音が付きそうな勢いで。
幼女のくせに、なんつーませた言をするんだろうか。
奇しくも俺が昼休みの後に言われた言葉みたいだ。

「……! お前、まさか」

俺は、そこでひとつの答えを出した。否、出してしまった。
何の根拠があって思ったでもない。幼女は、俺の目の前で微笑んでいる。
だが、俺の言葉が放たれた際、まるで狙った鳥を銃でブチ殺したような凄惨なる笑みを浮かべたのだ。
それは、根拠ではなく、動かぬ証拠の領域であった。まさしく、幼女の笑みが、それだった。



133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 02:12:28.73 ID:ufRg5Jdv0
……間違いない。

「お前、学校に盗聴器かカメラを仕掛けているな!? いくら将来通いたい学校のことを調べたいからって、そんな手段は駄目だぞ」

「……え?」

俺の言葉に、何故か電波幼女は面食らったようで、しばしの間、ほうけた表情を見せる。
その顔だけは、仏蘭西人形が熱をもったようで、人ならざるほどの美しさを見せていたが、やっぱり電波なので怖かった。

「今なら回収が可能だ。俺は黙ってやる。場所を指定してやれば取りにいくぞ?」

人に親切にするのはあまり好きじゃないが、人の夢がついえていくのを見るのは嫌なものだ。
変なところでおせっかいなのである、俺は。まったく、今日の仏心といい、どうかしている。
このままだと犯罪になるであろう幼女の所業だが、俺はむしろその行為を微笑ましいものと感じた。

人間、いくらでも間違いはあるのだ。たとえそれが電波だとしても。
そう、今からなら、正しい道に進ませることだって出来る。

「え、あの、いや、その……。私、そんなのしかけてないんだけれど」


……ゑ?



138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 02:19:43.18 ID:ufRg5Jdv0
しかし、俺の予想に反して、電波が放った言葉はそれだった。
どういうことだろう? 普通の幼女なら隠しカメラとか無理そうだが、俺は、この電波ならやれそうだ…と素直に思った。

だからあんな発言をしたのだが……いや、勘違いだったとは。
俺も人のことを言えない。反省しよう。先入観だけで物事を決めては、いけない。

これからも、社会にもっと馴染んでいかなくては。
人の話をよく聞いて、ちゃんと自分なりの意見を、謙虚に、それでいて強く伝えなくては。
そうしないと俺の人生プランが破綻してしまう。それは非常によろしくないことだ。

これ以上、幼女に付き合うのも面倒なので、俺は人生プラン再構造計画のために家へ戻ることにした。

途中まで幼女がついてきて恥ずかしかった。

何故か持っていたべっこうあめをふたつあげたら、にこにこしながら舐めたので、その間に逃げた。
お前は口裂け女かよ、と言いたかったが、あの電波具合はマジで都市伝説になりそうだと思った瞬間、急に怖くなった。
ゆえに俺は走って家に戻り、復習を済ませたのちに人生プランを練った。

……やはり公務員が堅実だろうか。



144: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 02:27:08.42 ID:ufRg5Jdv0
週末の朝だが、起きる時には起きる。
やっぱり体がだるい。心も重い。
昨日は恥ずかしい勘違いをしたのと、痛い人間である抹茶に出会った、そのせいだ。
母の呼び声が聞こえないのを訝りながら、リビングに下りる。


……ふたりして、旅行しやがった。なんでも、世界一周だとか。

高校生の息子ひとりを家に置いておくなんてどないなこったい、とも思ったが、置手紙にあたっても仕方ない。
やばくなったらいとこに頼め、と置手紙にはあったが、あの人もちょっと電波っぽいので怖いから会いたくない。
リビングに残った置手紙と預金通帳を手に、俺はただただ茫然自失。

やはり、親がいないと心細いものである。最近、電波系の人が多いから、余計に。
朝は適当に栄養食で済ませて、これからの計画を考える。が、寝ぼけ頭のせいか、思いつかない。

そもそも、どっかのゲームじゃあるまいし、高校生ひとりを家に残すのは変だ。
が、文句言っても現状は好転しないので、学校行く準備をする。
本当はさぼりたかったんだけれど、出席日数を親に見られたらくびり殺されそうなので怖くて出来ない。

よくよく考えてもみれば、俺の行動って、大抵が恐怖とか社会的外聞とか、そういったことに後押しされて成り立っている。
それ、つまらない人生かもしれない。とみにそう思う。
でも、つまるとかつまらないとか、ンなこと言っても成績あがらんし、金ももらえん。現実って苛烈だし。

だから堅実に行くしかない。厄介な世の中である。
胸糞ちょっと悪くなったんで、トイレで痰を吐いた。かーっぺっ。



152: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/03(火) 02:34:48.15 ID:ufRg5Jdv0
円谷と一緒に学校に行った。
途中の電車で、円谷の後ろにいたおっさんがスカートの中に手を入れているような気がした。
円谷が俺に視線を向けてくるが、俺は見て見ぬふりをした。

だって、もしも痴漢冤罪だったらどうすんだ。その人、社会的に地位を失うんだぞ。
俺は、他人の家庭を壊したくないし、路頭に迷う家族を見るのも嫌だ。

円谷の視線に反応すれば、俺はなんかアクションしなきゃならんだろうし。
他力本願やめろ。ここで俺が行動しないと、どうせなんか言ってくるんだろう。
もうちょっとバッシング発言ひかえろ、マスコミュニケーション。


だいたい、何が悲しくて、グドンのえさを(ry
なんてことを考えながら、俺と円谷は学校に行った。

途中、円谷が

「なんで……たすけてくれなかったの?」

なんて、恨みがましい目でこっちを睨みつけながら言いやがった。

つーか、助けられること前提の発言されると、マジで怒り湧くんだが。
最近、なんか理不尽なことで怒られてばっかりだ。ぶっちゃけ、死にたい。でも死ぬの怖いから死にたくない。

とりあえず、人の力をあてにしている馬鹿は、一回殴られた方がいいと思う。グドンに食われてろ、円谷。



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