( ^ω^)ブーンはクドリャフカの孤独に触れるようです
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/04(水) 20:03:01.34 ID:pDVE8xJ20
- 川 ゚ -゚)「父さん。私はアンドロイドなのにどうして仕事をしていないんだ?アンドロイドは、仕事をするために作られるんだろう?」
/ ,' 3「クー。お前は確かにアンドロイドだが、それとは関係なく私の娘なんだ。お前の父親であるわしはまずお前を育てなきゃならん。お前は今、毎日一生懸命生きるのが仕事だよ」
川 ゚ -゚)「つまり、私が父さんの納得行くまで成長したら、その時に仕事をすればいいのか?」
/ ,' 3「それはお前が決める事だ。人であったり、あるいは他の何かのために働きたいと思うのならそうすればいいし、そうじゃなかったらずっとここにいればいい」
川 ゚ -゚)「じゃあ、私は父さんのために働きたい」
新巻はその言葉を聞いて表情を緩めた。私はなんだかそれがとても嬉しかった。
/ ,' 3「クー。お前が存在することだけで、お前は充分わしのためになっているんだよ」
川 ゚ -゚)「もっとちゃんと父さんのためになりたい。だって父さんは研究も手伝わせてくれない。父さんの使っているマシンよりも私の方がずっと高性能なのに」
/ ,' 3「お前は研究よりも、よく本を読んだり、森で遊んだり、綺麗な絵を見たりする必要があるからの。父さんの研究なんて気にしなくてもいいんだ」
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/04(水) 20:04:22.00 ID:pDVE8xJ20
- 私は愛されていた。朝に夕に、おはようと声をかけられ、おやすみと頭を撫でられた。
川 ゚ -゚)「父さん見て!犬だ!まだ赤ん坊だ!」
/ ,' 3「ふむ…。野犬か…。親犬とはぐれたのかの。クー、そいつを見てどう思う?」
川 ゚ -゚)「不思議だ!こんなに小さいのにコロコロ動くんだ!興味がある!もっとたくさん観察していたい!」
/ ,' 3「なるほど…。よし。クー。もっとたくさん観察したいのならそいつの世話はお前がしなさい。お前の一番最初の仕事だ」
川 ゚ ー゚)「わかった」
だから、知らなかった。この研究所の外で、この森の外で、人間が、どれだけ傷付いて、どれだけ傷付けているかを。
ある日の事だった。いつものように森で犬と戯れている私の前に彼が現れた。
('A`)「………」
川 ゚ -゚)「お前は、誰だ?」
そうして彼は、酷く暗い表情で伺うように私を見た。
あんなに解り易くその顔に孤独をたたえていたと言うのに、未熟な私はそれがわからなかった。
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/04(水) 20:05:38.93 ID:pDVE8xJ20
- ('A`) 「それ、なんだ?」
川 ゚ -゚)「犬の事か?面白いだろう?毎日毎日体重が少しずつ増えていくんだ。予想もしない変化が多くてな」
('A`) 「お前が飼っているのか?」
川 ゚ -゚)「ああ、私が世話をしている」
('A`) 「そうか。新巻スカルチノフは?」
川 ゚ -゚)「父さんなら家だ。父さんに用か?」
父さん、と言葉にした時、ドクオは、信じられないようなものを見る目で私を見た。
('A`) 「…家?父さん?お前は、何だ?」
川 ゚ -゚)「私はクー。父さんの娘だ」
('A`) 「むす…め…?」
川 ゚ -゚)「ああ」
('A`) 「何で…。何でだ…っ。だって、お前は、アンド、ロイドだろ?」
川 ゚ -゚)「それがどうした?」
('A`) 「………っ!」
ドクオは、睨みつけるように私を見たが、すぐ耐え切れなくなったかのように俯いて、そのまま森の奥へと走り去って行った。
気付けば犬が、足元から心配そうに私を見上げていた。私はなんだか悪い事をした気分になって、その日の事を新巻には伝えられなかった。
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/04(水) 20:06:18.30 ID:pDVE8xJ20
- ( ´∀`)「お邪魔します」
川 ゚ -゚)「…誰だ?」
そして私にとって二人目の来客。彼が訪れてきたのは私が製作されてから195日目。夏の終わりの事だった。
彼が、新巻以外で初めて私が目にした人間だった。
( ´∀`)「おぉ。君が試作品か。うん。中々。やはり組織の研究チームの物より動きがなめらかだ」
川 ゚ -゚)「………」
私を試作品と呼んだ彼の目は、どこか私に期待するような色を含んでいた。
/ ,' 3「誰かお客さんかいクー。 モナー…か。何の用だ」
( ´∀`)「お久しぶりです新巻さん。今日は、悪い知らせを」
/ ,' 3「悪い知らせ…ね。クーには聞かせたくない。奥の部屋に行こうか。クー。少し遊んでおいで」
川 ゚ -゚)「わかった。父さん」
( ´∀`)「父さん…?」
/ ,' 3「さて、部屋へ案内する。クー。あまり遠くへ行くんじゃないよ」
何か言いかけた客人を制して新巻はそう言った。あんな厳しい目をした新巻を見たのも、その日が始めてだった。
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/04(水) 20:07:19.79 ID:pDVE8xJ20
- 川 ゚ -゚)「父さん、奥の部屋、と言っていた…」
私には知的好奇心も、あるいは無邪気な好奇心も備わっていた。
だから当然、父とモナーと呼ばれた客人の会話も気になったし、試作品と呼ばれた自分に聞く権利があるとすら思った。
この子どもらしいとも言える感情を我慢する事が出来れば、あるいは聞かせたくないと言った新巻の気持ちを慮る事が出来ればもう少し。
もう少し、新巻の子どもでいられたかも知れないのに。
私は音を立てないようこっそりと家の裏手に回り、そうしてそうっと地面に寝転がり目を瞑った。
他に余計な処理を行わなくても良いように。
川 ゚ -゚)「(聴覚に、意識を、集中。父さんと、お客さんの声以外をノイズとして処理。おk。拾った。レベルを上げる…もっと。認識出来るまで…もう少し…もう少し…)」
( ´∀`)「ざ…です…こ…ても…せいいっぱい…てを…」
/ ,' 3「や…そくが…ちが…わたしはなんのためにっ!」
父さん。怒ってる?
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/04(水) 20:08:43.82 ID:pDVE8xJ20
- ( ´∀`)「ですからシェルターごとやられたのです。外からの物理的な攻撃ではなく、セキュリティを抜かれたようです」
/ ,' 3「馬鹿なっ!あのセキュリティを作ったのは私だ!外側からいじろうとした時点で強固なロックがかかるはずだ!」
( ´∀`)「しかし、原因を探ろうにもデータ自体が残っていなくて…。そしてどうやらそれを実行したのは、人間ではなく、極めて優秀なアンドロイドではないかと」
/ ,' 3「…っ! なるほど…。そんな事が出来るのは…」
( ´∀`)「はい。我々はそのアンドロイドは間違いなく6年前に持ち出された人工知能「DK-0」だと思って追跡を行っております」
/ ,' 3「まさか…自分の作った物に自分の家族を殺されるとはの…」
( ´∀`)「それもこれも全て我々がむざむざ3年前に人工知能「DK-0」を持ち出されてしまった所為です…本当に何と言って詫びたらいいか…」
/ ,' 3「いや、いい…。研究員を信用しすぎた私にも非はある…」
( ´∀`)「ですが本当に、このたびの、奥様と娘さんの事は大変申し訳なく思っております。…それで、今後このような事を起こさないためにも、試作品を軍事使用する許可を頂けませんか?」
/ ,' 3「………」
( ´∀`)「迷う気持ちはわかります。先ほどの新巻さんの様子を見ても、とても可愛がられているのは痛いほど理解出来ました。ですがどうぞ平和のために。奥様や娘さんのような被害者を二度と出さないためにも、ご決断して下さいませんか?」
/ ,' 3「考えさせて…くれ…。だから今日は…今日はどうか、帰って欲しい」
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/04(水) 20:10:14.72 ID:pDVE8xJ20
- ( ´∀`)「はい。二週間後にもう一度お伺いします。どうぞご決断を。良い返事をいただけるのを、お待ちしております」
川 ゚ -゚)「(父さんの奥さんと本当の娘が、殺された?私と同じ父さんが作ったアンドロイドに?私が…軍事、使用?)」
たくさんの事に頭がパニックになった。
−おかしくはないかい?ただのポンコツに過ぎないこの私がだよ?−
だからモナーが帰ったあとに、私は耐え切れなくて、私よりも辛い思いをしている父さんに、ぶちまけた。
それが、どんなに残酷な事かもわからずに。
川 ゚ -゚)「父さん…?」
父さんは、モナーを見送る事もせずに、奥の部屋で来客用のソファに座ったまま、ずっと自分の膝を眺めていた。
私が呼びかけると、驚いたように顔を上げて私を見た。
31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/04(水) 20:11:17.17 ID:pDVE8xJ20
- / ,' 3「クー…。すまないが今日は気分が優れない。お勉強もメンテナンスもお休みだ。バッテリーは大丈夫かい?今日はもう、ゆっくりおやすみ」
川 ゚ -゚)「父さん。父さんには、本当の子どもと、奥さんと、私よりも前に作った人工知能…アンドロイドがいて、そいつが、父さんの子どもと、奥さんを殺した?」
/ ,' 3「…クー!?聞いてたのか!?」
川 ゚ -゚)「私は、軍事利用…?されるの?父さんが、作ったから」
/ ,' 3「…クー!?」
言葉にすればするほど、なんだか焦るような、胸に大きな空白が出来て、そこに冷たい風が流れ込むような感じがした。
この気持ちを、「不安」と呼ぶ事を知ったのは、もっとずっと後になってからだ。
川 ゚ -゚)「父さん…私は…人間にはなれなくて、やはり、道具、なのか?父さんの。父さんが、父さんが作ったから!」
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/04(水) 20:12:16.39 ID:pDVE8xJ20
- / ,' 3「クー…」
父さんの頬には涙の筋が出来ていた。
私は、泣きもせずただ父さんの顔を見続けていた。
父さんは、私に泣く機能を与えてくれていたというのに。
そして父さんは、なんだか戸惑ったような表情から、ふっと酷く優しい顔になり、言った。
/ ,' 3「クー。お前は、私の娘だよ。お前を軍事利用などさせるものか」
父さんは、優しい父さんだ。幼い私はそう思った。
だが違ったのだ。
家族を失った彼の孤独は、彼をもうポンコツの本当の父親にはしてくれなかった。
/ ,' 3「おいで。お前が戦えないように、お前の身体に少し手を加えようね」
その時父さんが私に伸ばした手は
いつも通りの父さんの手で
なんだかとても冷たかった。
( ^ω^)「…(思い出したお。新巻。新巻スカルチノフ。人型ロボットの先駆者で、57歳の時に、自殺してるお…)」
川 ゚ -゚)「そして私が軍事利用される事はなかった。父さんの所属してた組織は酷く憤ったみたいだがね」
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/04(水) 20:13:51.03 ID:pDVE8xJ20
- その時、今まで訥々と喋り続けていたクーが、はっと顔を上げた。
川 ゚ -゚)「来たか…。ここで待っていてくれないか。すぐ戻る」
( ^ω^)「………?」
川 ゚ -゚)「いいか。私が良いと言うまでこの部屋から出てはいけない。声を出してもいけない」
(;^ω^)「ちょ、ちょっと待つお!何が来たお?警察が追ってきたお?」
川 ゚ -゚)「いや。警察がここを特定するまではまだかかるだろう。何、これはいつもの事だ」
心配はいらない、とクーが言葉を続けようとしたところで、ガシャン、不快な音を立てて幾筋かのヒビが入っていた部屋の窓ガラスが割れ、男が進入してきた。
どうやら窓ガラスを蹴り割って入ってきたらしい。
('A`) 「よぅ。今日は男連れんでんのかよ。良いご身分だな。クー」
散らばったガラスを踏みしめながら、まるで親しい友人に会いに来たような気安さで男は言う。
見たところ二十歳前後と言ったところの、痩せぎすの、辛気臭い表情の男だ。右手にはアンティークだろうか、今時本物の金属を使った銀色のナイフが握られ、左手にはそれより一回り小さい白いセラミックのシンプルなナイフが握られている。
川 ゚ -゚)「彼は、関係ない。何の用だ。ドクオ」
('A`) 「何の用。だと?」
川 ゚ -゚)「用がないなら帰って貰おうか」
('A`)「あ?そんなの、用って言ったら、戦争に、決まってんだろーが!」
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/04(水) 20:14:55.34 ID:pDVE8xJ20
- 言った瞬間、ドクオはクーに向かい左手の白い小ぶりのナイフを投げた。
クーは焦る様子もなく、顔だけ動かしそれを避ける。
川 ゚ -゚)「いい加減にしろ。戦争は、お前の戦うべき戦争は、もう140年前に終わっている」
('A`) 「俺の戦うべき戦争は終わっている?はっ。馬鹿か?」
ドクオは今度は右手に握る大降りのナイフを持ち出してクーに襲い掛かった。
まるで無駄の感じられない動きでまずクーの上半身を狙い一閃。クーは上体を後ろに逸らし、受け流しながらドクオの手首を捕まえにかかるが、ドクオはそれも予想していたのか手首を素早く翻して、そのままバックステップでクーと一歩半の距離を取る。
('A`) 「俺の戦争が終わる時はなぁ!お前が死んだ時に決まってんだろ!クー!」
川 ゚ -゚)「ふむ。今日はナイフか。ついには銃すら手に入れられなくなったのか。ドクオ」
('A`) 「うるせぇポンコツが!てめーだって反応速度が153時間前に比べて99.6%まで落ちてるじゃねーか!」
再び、今度はナイフで十字を切るように襲い掛かるドクオ。
川 ゚ -゚)「ポンコツはお互い様だドクオ。貴様こそ左足のふくらはぎの一部の人工筋肉に信号が行ってないんじゃないか?それをカバーするためなのか処理が0.034秒も遅れたぞ」
やはり難なく受け流しながら、言葉を紡ぐクー。
('A`) 「っくそ!ムカつく女だな!死ね!」
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/04(水) 20:17:33.83 ID:pDVE8xJ20
- ドクオは優雅な動きでドクオのナイフを避けたクーに回し蹴りを叩き込もうとする。
が、ひらりとクーはそれを避け、逆にその右足を左手でがっしりと掴んだ。
川 ゚ -゚)「お前に私は殺せんよ。スペックが違う。私の方が新しい」
('A`) 「っは!153年前のポンコツがスペックも新しいも糞もねぇだろうが!」
足を捕まれたままドクオが吼える。
川 ゚ -゚)「156年前のポンコツに言われたくないな」
クーはドクオの足を掴んだまま、思い切り捻り上げる。
ドクオの身体が空中で半回転して、床に叩きつけられた。
ガシャン、と、その柔らかな身のこなしから想像し難い音がした。
(;^ω^)「り、リアル格ゲーktkr」
('A`) 「っくそ」
散らばるガラス片に頓着する様子もなく、床にゴロリと転がったままドクオが毒づいた。
川 ゚ -゚)「どうする?いつものようにバッテリーが切れるギリギリまで戦い続けるか。本気で動いたらあと2時間46分15秒ってところか?」
('A`) 「あー…なんでお前はそんなにタフなんだよ…。同じ旧型だろ?」
川 ゚ -゚)「言ったろう。スペックが違う。頭だけ新巻製のお前と違って、私はフル装備で彼の作品だからな」
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/04(水) 20:18:37.64 ID:pDVE8xJ20
- ('A`) 「畜生。なんか萎えた」
川 ゚ -゚)「そうか。気をつけて帰れよ」
('A`) 「土産は?」
川 ゚ -゚)「私の美しい姿を目に焼き付けておけ」
('A`) 「お前みたいな貧乳興味ねーよ。じゃーなまた今度………なんっっって、言うと思ったか!」
ドクオは反動をつけずに上半身を勢い良く起き上がらせる。そしていつの間にやら左手に握っていたガラスの破片をクーに投げつけた。
川 ゚ -゚)「馬鹿の一つ覚えか」
ひらりと避けるクー。ここまでは先ほどと同じ。
だが、既に立ち上がり体制を整えたドクオは今度は右手に握っていた大降りのナイフを投げつけた。
そして同時にクーとの距離を詰めにまるで飛ぶように走り出す。
川 ゚ -゚)「なっ」
流石にそのナイフを投げるのを予想していなかったのか、クーに一瞬の隙が生じた。
辛うじてナイフを素手で叩き落としたが、その後に控えているドクオの蹴りには反応しきれない。
ゴスっ。と、その皮膚の下の硬い物質を思わせる重い音が響く。
ドクオの蹴りはクーの鳩尾に綺麗に入っていた。
(;^ω^)「クーちゃん!」
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