( ^ω^)と夏の日のようです

5: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/21(土) 19:15:33.20 ID:i1nggAI80
『( ^ω^)と夏の日のようです』   第十一話



月が一際明るい夜。
僕は今、ドクオさんの家にお邪魔している。


(;^ω^)「…………」

突然ドクオさんに呼ばれたので、僕は戸惑っていた。
目の前にはお酒と、豊富なおつまみが並べられている。
  _
( ゚∀゚)「……うむ、まあ飲まんか」

(;^ω^)「だから未成年ですお」

この場に集まったのは、僕を除いて4人。
ショボン叔父さん、ドクオさん、ジョルジュさん、荒巻のお爺さん。
本来この家の一員であるはずのクーさんは、叔父さんの家に一晩泊まりに行っていた。
ドクオさん曰く、「女は邪魔だから追い出した」とのこと。



8: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/21(土) 19:18:07.57 ID:i1nggAI80
この集会は、一体何なんだろう。

なぜかは知らないが、ドクオさんとジョルジュさんは僕を見てにやにやしている。
僕は痺れを切らし、質問することにした。

(;^ω^)「あの……この集まりは一体何ですかお……?」

('A`)「うむ、お前がそう聞くのももっともだ」
  _
( ゚∀゚)「実はよ、この集まりはな……」

('A`)「『ブーン君、童貞卒業おめでとう!』の会だ」

(;´・3・`)「ブ―――っ!」

とんでもない発言に、叔父さんが盛大に吹き出した。

(;´・ω・`)「や、やっぱりなのか! ブーン君、そうなのかっ!!」

(;^ω^)「ちょwwwww落ち着いてくださいおwwwwwww」

錯乱状態の叔父さんに思いっきり首を掴まれた。
その光景を、お爺さんは「ほっほっ」と笑いながら見ていた。



9: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/21(土) 19:20:31.26 ID:i1nggAI80
(;^ω^)「というか、何を言ってるんですかお!?」

('A`)「いやよ、お前がツンちゃんとデートに行ったっつーからな」
  _
( ゚∀゚)「いやー最近の若ぇもんは盛んやのー!」

二人はグラスを傾けながら、どういう訳か嬉しそうな顔をしている。

(;^ω^)「な、何を勘違いしてるんですかお。ただ遊びに行ってただけですお!」

('A`)「ん? でも帰りが遅かったそうじゃねぇか」

(;^ω^)「いやいや、7時前には帰りましたお!」
  _
( ゚∀゚)「……はぁ? 7時?」

ジョルジュさんが気の抜けた声を出した。

('A`)「……ショボンさんよ、全然健全じゃないすか」

(´・ω・`)「何言ってるんだ! 未成年がそんな時間まで出掛けるなんて!」

('A`)「……あんた過保護すぎるぜ」



10: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/21(土) 19:23:02.56 ID:i1nggAI80
どうやら、叔父さんの「帰りが遅かった」をいう話を受けてドクオさんが早とちりしたらしい。
僕は一部始終を説明して、身の潔白を証明した。

(´・ω・`)「じゃあ、何もなかったということなんだね?」

(;^ω^)「そうですお。考え過ぎですお」

(;´・ω・`)「ああ、よかった……すまないね、勘違いしちゃって」

叔父さんが心底安心した様子で、自分のグラスにビールを注ぐ。
浮かんでくる泡が少しだけこぼれた。

  _
( ゚∀゚)「まったくよぉ、頼んますぜ」

(´・ω・`)「いや、すまない。どうも娘のことになると視界が狭くなってね……」

僕としては迷惑な話だったけど、叔父さんがツンを心配する気持ちはよく分かった。

僕は机上の冷奴に手を伸ばす。
きんと冷えた豆腐は、少し噛むだけで舌の上で崩れた。



11: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/21(土) 19:25:07.38 ID:i1nggAI80
('A`)「しかしまぁ、用意したもんが無駄になっちまったな」
  _
( ゚∀゚)「無駄じゃねーやろが! 宴会に変更すりゃええ!」

/ ,' 3「ほっほっ、それは名案じゃの」

('A`)「……つーか、飲めりゃなんでもいいんだな、お前ら」

ドクオさんはそう愚痴りながらも、お爺さんのグラスに日本酒を注いで上げた。
お酒の飲めない僕はお茶をもらい、並べられたおつまみに舌鼓を打った。


今夜は本当に月が明るい。
外を見ると、海に映った月がゆらめいている。



13: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/21(土) 19:27:23.32 ID:i1nggAI80
お酒が入ったところで、ドクオさんがくだけた調子で話しかけてきた。

('A`)「でもよ、お前がデートに誘うとはな。そんな奴には見えなかったんだが……」

( ^ω^)「ドクオさんのおかげですお」

('A`)「ん?」

( ^ω^)「あの時言われた『自分を変えろ』って言葉、覚えていますお」

( ^ω^)「……だからちょっとだけ、積極的になってみましたお」
  _
( ゚∀゚)「なんでぇ、ちゅーことはおめー、ツンちゃんが好きってことか?」

( ^ω^)「……まあ、そういうことですお」
  _
( ゚∀゚)「かーっ! 言うようになったのー!」

('A`)「……しかしまあ、お前もショボンさんの前でよく言えるな……」

(;^ω^)「おっ!?」



14: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/21(土) 19:29:34.60 ID:i1nggAI80
(´・ω・`)「…………」

ショボンさんは黙ってビールを飲んでいた。
僕は少しバツの悪そうな顔を作る。

/ ,' 3「ほっほっ、ブーンもなかなか難儀だの」

('A`)「ああ、さっきの取り乱しようを見たら……恐ろしや恐ろしや」

(;^ω^)「あうあう」

ドクオさんとお爺さんは「御愁傷さま」といった感じで僕を見る。
ジョルジュさんはまだにやついていた。


(´・ω・`)「何言ってるんだい。僕が言うことなんて何もないよ」

沈黙が辺りを支配する中、叔父さんは何の前触れもなく口を開いた。

(;^ω^)「――――へっ?」

(´・ω・`)「……それに、もう分かっていたことだしね」



15: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/21(土) 19:31:35.14 ID:i1nggAI80
叔父さんの話は続く。
その声は穏やかで、遠い昔を振り返るように語った。

(´・ω・`)「君がまだ小さかった頃、ツンと一緒によく家の庭先で遊んでいたよ」

(´・ω・`)「それはそれは楽しそうにね」

( ^ω^)「……覚えていますお」

(´・ω・`)「あの頃の君は、本当に元気で、太陽のように明るかった」

/ ,' 3「ほう」

(´・ω・`)「そして何より、ツンを喜ばせてくれた」

( ^ω^)「…………」

(´・ω・`)「二人は時々喧嘩もしていたけど、毎日のように笑っていた」

(´・ω・`)「……きっと、昔の君とツンはお互いに惹かれあっていたんだと思う」

(´・ω・`)「恋心とかとは、違うんだろうけどもね」

(´・ω・`)「そして再開を果たした今、君がツンを好きだと思うのも不思議じゃない」



16: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/21(土) 19:34:00.48 ID:i1nggAI80
叔父さんはそこで少し話を区切り、グラスに残ったビールを一気に流し込んだ。

(´・ω・`)「大体、ここ最近の君の態度を見ていたら、ね」

( ^ω^)「おっ?」

(´・ω・`)「君がツンのことをどう思ってるかなんて、分かるに決まってるじゃないか」

(;^ω^)「そんなにバレバレでしたかお……」

(´・ω・`)「まあね。君は意識してなかったのかも知れないけど」

叔父さんが僕の目を見る。
その目は優しくて、僕の気持ちを落ち着かせてくれた。
  _
( ゚∀゚)「なんな、ハナっからお見通しかい」

('A`)「……だったら、さっきあそこまで必死にならなくても」

(#´・ω・`)「それとこれとは話が別だ!」

/ ,' 3「ほっほっほっ、複雑な父親心じゃの」



17: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/21(土) 19:36:07.08 ID:i1nggAI80
その後、宴会は夜遅くまで続いた。
用意された一升瓶はあっという間に空になり、ビールの缶が乱れ飛んだ。
枝豆のさやは皿に山のように盛られ、じゃこの天ぷらはどんどん胃袋の中に消えていった。

(*'A`)「おーし! お前も飲んどけ!」

酔っ払ったドクオさんがお酒を勧めてくる。

( ^ω^)「……お受けしますお!」

/ ,' 3「ん? ブーンは飲まないんじゃなかったんか」

( ^ω^)「まあ、ちょっとぐらいなら」
 _
(*゚∀゚)「おっしゃ、ええ心がけじゃの! 一気にいかんか一気に!」

そう言ってジョルジュさんが僕のグラスにビールをなみなみと注いだ。
ぎりぎりにまで注がれたグラスを、僕は高々と持ち上げた。

( ^ω^)「それでは、いただきますお!」



18: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/21(土) 19:38:13.36 ID:i1nggAI80
僕はそれを一気に飲み干した。
独特の苦味のある液体が僕の喉を通り過ぎていく。

(*^ω^)「ぷはー!」

前に飲んでいたおかげで免疫が出来たのか、不思議と気分は悪くならなかった。
頭は少しくらくらするけども、以前よりはずっと意識ははっきりしていた。


/ ,' 3「ほっほっ、ええ飲みっぷりじゃの」

(*'A`)「これで、お前も俺達の仲間入りだな!」

(*^ω^)「おっおっ」


上機嫌でみんなの言葉を受ける。
酔いが回ったのかもしれないな……。
ふらつく頭の中で、僕はそう思った。
 _
(*゚∀゚)「よーし、もう一杯いっとけぇ!」

(;^ω^)「ちょwwwwwさすがに二杯目は無理wwwwwww」



19: ◆zS3MCsRvy2 :2007/07/21(土) 19:40:58.07 ID:i1nggAI80
結局、四杯も飲まされ酔い潰れてしまった。
僕は赤い顔をして、畳の上に突っ伏していた。

(;^ω^)「これはひどい……うぇ……」

(*'A`)「はっはっはっ! ちょっとやりすぎたかな!」
 _
(*゚∀゚)「しばらく休んどけ! 俺らはまだ飲んどるけぇの!」

薄れゆく意識の中で、みんなの笑い声が聞こえた。


少し休んで酔いを醒ました後、再び宴の席に加わる。
いつまでも続く居心地のいい時間。
ショボンさんの楽しそうな顔が印象的だった。


外を見るときらめく星と月が夜を彩っていた。
僕たちの宴会は、その夜空を肴にして、馬鹿みたいに盛り上がった。



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