( ^ω^)ブーンがネオファイターになるようです
- 7: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 16:25:59.52 ID:+W3F0ucl0
第一話「ネオファイター」
( 〇ω〇)「もう二度とこの家に帰ってくるなバカ息子がっ!!」
(#^ω^)「上等だお! クソオヤジッ!!」
冬の風が混じり始めた十一月。
ブーンが高校を卒業する際に進路のことで親と大喧嘩をして、家を飛び出したのが今年の春のこと。
それが切っ掛けで、ブーンは一人暮らしをするハメになった。
( ^ω^)「あーあ、かったりーおー」
ため息を吐きながら、ブーンはどんぶりを洗っていた。
ブーンは大学にも行かず、就職もせず、ただラーメン屋のバイト代でのみ生活している。
そのラーメン屋のバイトがこれまた楽なのだ。
自給が九五〇円と高いのだからそれなりに忙しいのは覚悟していたのだが、
いざやってみればこれまでに行ったバイトのどれよりも楽で簡単で儲かるバイトだった。
これには随分と助けてもらった気分だ。
- 8: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 16:27:21.81 ID:+W3F0ucl0
( ^ω^)「うおっ! 今日も寒いお……」
ラーメン屋のバイトを終え、十一月の夜空の下へ歩み出た。
秋に混じった冬の風は信じられないくらいに冷たくて、体の芯から凍えそうだった。
ポケットから煙草と百円ライターを取り出す。
手がかじかんで上手くライターを点けられないことに悪ヤを付きながらも何とか火を点けて煙草に灯す。
( ^ω^)「ふぅ……」
肺に煙を入れると、唐突に今日もこれで一日が終ったなんだと思えた。
寒い道を五分ほど歩き、自分のアパートへと辿り着く。
いつものように茶漬けでも食おうと思ってアパートの部屋の電気を点けて初めて、ブーンは気づいた。
( ^ω^)「……お?」
ドアの郵便受けに、一通の封筒が入っていた。
不思議に思ってそれを手に取る。
その封筒には差出人は愚か、ブーンの名前と住所さえも記入されていなかった。
つまり、誰かが郵便局を通さずに直接この郵便受けにぶち込んだのだろう。
ご苦労なこった、とブーンは思う。
- 9: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 16:28:47.45 ID:+W3F0ucl0
( ^ω^)「ったく、一体誰の仕業だお?」
ベットの上に腰掛けて赤外線ヒーターの電源を入れながら封筒の開け口を無造作に破く。
中には一通の手紙と、ビー玉サイズの緑色の硝子玉が入っていた。
開けた拍子に床に落ちてしまった硝子玉を拾い上げる。
( ^ω^)「どこからどう見てもビー玉だお……」
しかし何故ビー玉などを封筒に入れるのか。
こんなことをするのはアホしか居まい。取り敢えずビー玉を保留とし、手紙の方を開いてみた。
そこには、こう書かれていた。
- 10: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 16:30:40.15 ID:+W3F0ucl0
『 ブーン様。
こちらネオファイト執行協会本部。貴方はこの度、公平な抽選の結果、
第十二期のネオファイターに当選致しました。
ブーン様、おめでとうございます。
さて、それに付きまして幾つかのルールを掲載しておきますので、
お忘れないようにお目をお通しください。
最初にネオファイターにご登録するか否かを決めて頂きます。
登録するのであれば、封筒の中に入っておりました緑の硝子玉――ネオスを噛まずにお飲みください。
登録しないのであれば、そのまま放置してください。
期限は本日より七日とさせて頂きます。
その期間内にネオスをお飲み頂ければネオファイターに晴れて登録、
そうでなければネオスは消滅するようプログラムしてあります。
もちろんこれは強制ではありません。よく考えた上で、慎重に決めてください』
「……」
丁寧な言葉使いとは裏腹に、内容はまるで理解しがたいものだった。
捨ててしまおう。そう思ったが、気まぐれで続きを読んでみることにした。
- 11: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 16:33:17.82 ID:+W3F0ucl0
『次にウェポン、ネオファイターについての説明をしておきます。
ウェポンとは、大気中に存在する物質を決められた形に具現化した道具、又は武器のことをいいます。
その詳しい詳細はすべて、ネオスに詰め込んでありますので省略させて頂きます。
ネオスをお飲みになってもらえればその意味はすぐに判るはずです。
そしてネオファイターとは、ウェポンを用いて戦闘を行う者のことを言います。
つまりネオスを飲んだ方のみが、ウェポンを具現化させられるネオファイターになるということです。
貴方と同じように、ネオファイタ−として当選した方が合計で十人。
率直に言わせて頂きます。
その十人で、最後の一人になるまで戦闘を行ってください。
そして勝ち残った最後の者を優勝者とし、その者の望みを一つだけ叶えます。 』
( ^ω^)「ネオファイター……? ウェポン……?」
手紙に羅列してある用語は、まるで聞いたことが無いものばかりだ。
ブーンは、さらに続きを読む。
- 12: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 16:34:04.15 ID:+W3F0ucl0
『本戦の開催日は七日後、期間は三十日間。
ネオファイター同士の戦闘の勝敗については、相手のウェポンを破壊することで決します。
ネオファイターの意志に反してウェポンがその形を失った際に、ネオファイターの体内にある
ネオスが体外へ排出される仕組みになっています。
戦闘に勝利したネオファイターはネオスをお忘れないように回収してください。
ネオスを参加者分集めて初めて、その方を優勝者と決定します。
敗者の生死は勝者の意思にお任せ致します。殺してもネオスは回収できますし、
殺人犯にはなりませんのでご安心願えます。
それではご登録頂いた方のみ、これより七日後に追って参加者人数と貴方のネオファイトをお伝えします。
存分に楽しんでくれることを願い、今回はこれで終わりとさせて頂きます。
ネオファイト執行協会本部 』
- 13: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 16:36:09.32 ID:+W3F0ucl0
( ^ω^)「くだらないイタズラだお」
思わず声が出た。
( ^ω^)「悪戯をするのならもっとマシなことを書けお。
こんなもんに誰が引っ掛かるかお」
ため息を吐き出しながら手紙の方をくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に放り込んだ。
ビー玉の方は、取り敢えず燃えるゴミか燃えないゴミなのか調べてから捨てよう。
たぶん燃えないゴミなんだろうけど、これまた保留だ。
これからどうするか。煙草を吸いながらそんなことを考える。
( ^ω^)「寝るのにはまだ早いお……」
ごろん、と横になり体を休める。
唐突に、明日はバイトも休みだしドクオでも呼ぶか、と思った。
そうと決まれば行動あるのみである。
ズボンのポケットから携帯電話を取り出し、ドクオに電話をかけた。
- 15: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 16:39:19.97 ID:+W3F0ucl0
('A`)「もしもし?」
( ^ω^)「ドクオかお。僕だけど、今から家に来ないかお?」
('A`)「んー。了解」
案の定だった。
ドクオは小学校時代からの付き合いで、よく吊るんで悪さをしていた仲である。
が、ドクオは秀才に部類される男で、難関であるVIP大学にストレートで合格した強者である。
( ^ω^)「んじゃ待ってるお」
そう言ってブーンが通話を切ろうとしたとき、ドクオが思わぬことを口にした。
('A`)「あのさブーン、ネオファイトって知ってる?」
時間が止まった。
( ^ω^)「――は?」
- 17: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 16:41:24.53 ID:+W3F0ucl0
('A`)「今日おれん家にネオファイト執行協会本部って所から手紙が来た。
中に変なこと書いていある手紙とビー玉みたいなヤツが入ってた。
――ブーン知ってる?」
まさかドクオにも同じ封筒が届いているなどとは思ってもみなかった。
手に持っていた煙草を灰皿で揉み消し、ゴミ箱に放り込まれたくしゃくしゃの紙を引っ張り出す。
それを広げて中をもう一度確認する。
そこには確かに、ドクオが言ったネオファイト執行協会本部との文字が書かれていた。
ブーン一人なら悪戯で片付けられることだった。
なのに、この封筒はドクオにまで届いていたのだ。
――それはつまり、何かしらの陰謀が背後に迫っているのではないか。
口は無意識に、先の問いに少しだけ方向の違う答えを返していた。
( ^ω^)「……その手紙、僕のトコにも来たお」
受話口の向こうで驚くような息遣いが伝わってくる。
('A`)「……ホントに?」
- 18: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 16:43:17.62 ID:+W3F0ucl0
沈黙。やがて、ドクオが言葉を紡ぐ。
('A`)「……ネオスってビー玉、もしかして飲んだ?」
(;^ω^)「そんなわけないお」
もし餓死しそうになっていたとしても、無機質な硝子玉を食うほど馬鹿じゃない。
しかも、これはただのビー玉ではないのだ。
意味不明な手紙と共に突っ込まれていた、意味不明な名前が付いた意味不明なビー玉である。
そんなものを何が楽しくて飲まなきゃならんのか。
('A`)「だよな、もう飲んだかと思って焦った」
そこで一瞬だけドクオの口調が変わる。
('A`)「……ブーンの家にまでこの手紙が来てたのなら話は早い。
少しだけ気になる所があるんだ。手紙とビー玉を持ってそっちに行くから、
何か温かい食べるもの用意しといて」
( ^ω^)「カップラーメンしかないお」
('A`)「じゃ、お湯沸かしといて」
( ^ω^)「ん、了解だお」
- 19: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 16:45:22.79 ID:+W3F0ucl0
そうして通話は切れる。
沈黙した携帯電話をテーブルの上に置き、手に持ったままのシワだらけの手紙に視線を落とした。
( ^ω^)「しっかし、読めば読むほど胡散臭い話だお」
手紙をテーブルの上に置いて、ビー玉を手に取って立ち上がる。
台所に行き、水道水をカップ麺二人分くらいを鍋に注ぎ込み、コンロに乗せて火を点ける。
円状に点火された火をぼんやりと見つめながら、ブーンはビー玉を指で弄くる。
( ^ω^)「どう見ても、どう触っても、どう考えても、これはビー玉にしか思えないお」
紙に書かれた内容がふと頭を過ぎる。
ネオファイターに選ばれたのは十人と書かれていた。
つまり、ブーンとドクオを含めてあと八人の所にもこれと同じような封筒が郵便受け突っ込まれているのだろうか。
それともその十人というのはカモフラージュで、狙いはブーンとドクオの二人だけなのか。
( ^ω^)「僕、誰かに恨まれるようなことしたっけ……?」
昔はよく他校のヤツらと喧嘩をしたが後味の悪い喧嘩は何一つなかった。
その線での犯行は薄いだろう。だったら――、
- 20: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 16:47:12.37 ID:+W3F0ucl0
お湯が沸き始めていた。ふっと我に返る。
( ^ω^)「って、何真面目に考えてんだお。どう見てもこれはイタズラだお」
こんなものどうせ飲む訳はないのだからどうでもいい。
ビー玉を台所の流し台に放り込む。
水に沈むそれに中指を突き立て、コンロのスイッチを切ろうと思った際にチャイムが鳴った。
ドクオが来たらしかった。コンロを切って玄関へ歩き出す。
鍵を開けると、そこには防寒着に身を固めたアホがいた。
(;^ω^)「……なんという重装備」
呆れながらブーンがそう言うと、ドクオはズズっと鼻を啜った。
('A`)「原チャリで来るのはなかなかに辛い……」
( ^ω^)「車は?」
('A`)「親が二台とも乗ってってなかった……」
(;^ω^)「そりゃご愁傷様だお。取り敢えず上がってくれお」
- 21: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 16:49:12.39 ID:+W3F0ucl0
ドクオは部屋に上がると、赤外線ヒーターに走り寄ってその場にしゃがみ込んだ。
( ^ω^)「カップラーメン何がいいお?」
('A`)「とんこつならなんでもいい」
( ^ω^)「把握」
沸かしたばかりのお湯を二つのカップ麺の容器に注ぎ、散らかったテーブルの上にそれを置いた。
( ^ω^)「三分後には天国だお」
('A`)「こんなことで死ねるか」
大分温まってきたのか、ドクオに冷静さが戻りつつあった。
('A`)「相変わらず汚いなあ」
ドクオは部屋を見回し、呟く。
そしてその視線がやがて、テーブルの上に置かれた一枚の紙切れで止まった。
ドクオの表情が研ぎ澄まされ、それを手に取って文面をさっと流し読む。
- 25: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 16:55:11.74 ID:+W3F0ucl0
( ^ω^)「――で、どうだお? 内容は一緒かお?」
ドクオは肯く。
('A`)「名前が違うだけで、他は全部一緒。ビー玉はどこにあるの?」
( ^ω^)「流し台で水に浸してあるお」
('A`)「……これが俺の手紙とビー玉」
ポケットから取り出したドクオ宛の手紙を見ると、やはり内容は最初の名前が違うだけで他は全部一緒だった。
ビー玉も緑色のただの硝子玉で、変わった所は何もない。
つまり、まったく同じものがブーンとドクオの郵便受けに突っ込まれたのだろう。
その真意は一体何なのか。
('A`)「このことで気になることがあるんだよ」
( ^ω^)「気になること?」
('A`)「随分と前からネットで噂があるんだよ、ネオファイトとネオファイターについて。
いちばん定番なのが、ウェポンを操るネオファイターが生死を賭けて戦う
バトル・ロワイアルだってヤツかな」
( ^ω^)「バトル・ロワイアル……?」
- 26: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 16:56:44.05 ID:+W3F0ucl0
ドクオは続ける。
('A`)「まあ結局はどれも不確かな噂なんだけど。
だからネオファイトっていうのは噂だけが一人歩きしている。
それに関しての証拠が何も無いから、誰も信じなかった都市伝説みたいなものなんだ。
……でも、おれたちの元にはその証拠に成り得るものが届いた。面白いと思わないか?」
ドクオがまだ二分しか経っていないのにカップ麺のフタを開ける。
ドクオ曰く、カップ麺はお湯を入れてから二分後がいちばん美味いらしい。
('A`)「もしこれが本物だったらって思うと楽しいだろ。
そうなったらおれたちはネオファイターだ。選ばれた十人での戦闘。
勝ち残った者が望みを叶えることができる。男のロマンだな、それって」
ドクオは子供のように微笑む。
('A`)「この封筒はドコの誰が差し出したのかは知らない。
ただおれが大学から帰って来た七時にはもうすでに家にはこれがあった。
しかしその間に誰かがおれの家の郵便受けに近づいた形跡はない。つまり――」
(;^ω^)「ちょっと待つお」
堪らずにドクオの話を打ち切る。
- 29: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 16:58:06.52 ID:+W3F0ucl0
('A`)「何だよ、これからが良い所なのに」
ドクオは口から麺を垂らしながら呟く。
(;^ω^)「お前、まさかこの手紙が本物だって思ってんのかお?」
もちろん、とドクオが肯く。
( ^ω^)「正気かお? じゃあお前、このビー玉飲むのかお?」
もちろん、とドクオが再度肯く。
(;^ω^)「馬鹿言うなお、もしかしたら何か変な薬かもしれないお。
そうだったらどうすんだお、死んでからじゃ遅いお」
カップ麺の容器に口を付けてスープを啜っていたドクオは口を離し、割り箸でビー玉を摘み上げて笑う。
('A`)「だいじょうぶだ。その辺りに抜かりはない。
様々な検査及び実験の結果、これはただビー玉だって判明した。
だから俺はこれを飲む」
( ^ω^)「ただのビー玉とわかってるのにかお?」
わかってるからだよ、とドクオは苦笑する。
- 30: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 17:00:14.34 ID:+W3F0ucl0
('A`)「得体の知れないものなら幾らなんでもおれも飲まないさ。
ただこれはビー玉だ。もし飲み込んで何もなければ近い内にそのまま排出される。
しかしもしこれが本物だったら、俺はネオファイターになる」
ドクオの目が、好奇心に溢れた子供のように輝く。
('A`)「選ばれた十人で戦闘をして優勝者を決めて望みを叶える云々はどうでもいいんだ。
ただ、おれは知りたい。痕跡も無く郵便受けに近づいてこれを入れたヤツは何者なのか。
果たして世に広まっている噂は真実か否か。
少しでも可能性があるような気がする限り、おれはこれに賭けてみるつもりだ」
カップ麺の容器をテーブルの上に置き、ドクオはブーンを見据える。
('A`)「これは強制じゃないって書いてある。ブーンはどうする? やる? やらない?」
五秒だけ考えた。そして、最も訊きたいことを口にする。
( ^ω^)「……それで死ぬかもしれないんだお? ドクオはそれでもいいのかお?」
ドクオは、至極当然という感じで答えた。
('A`)「死にはしないさ。だって、俺が優勝すればいいだけの話なんだから。無傷で勝ってみせるよ」
( ^ω^)「…………しゃあねえお」
- 32: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 17:02:26.92 ID:+W3F0ucl0
まったくもって、ドクオは馬鹿なのか天才なのか時々わからなくなる。
だがまあ、そこがドクオの長所であり短所であり、ブーンがいちばん好きな所なのだ。
ブーンは立ち上がる。
台所に向かって歩き出し、流し台で水に浸かっているビー玉を取り出す。
それを手に持ちながらまた歩き出してドクオの前に座り込んで、
まだフタを開けていなかったカップ麺を襲いかかるかのように食べ始める。
それに続いてドクオも残っていたカップ麺を食べ出し、しばらくは部屋にカップ麺を啜る音だけが響いていた。
そして、食べ終わるのは二人同時だった。
掌にあるビー玉――ネオスを見つめながらブーンは笑う。
( ^ω^)「悪さをやるのは昔からずっと一緒だったお。付き合うっきゃねえお」
('A`)「それでこそブーンだよ」
( ^ω^)「ただ、ドクオは優勝できないお」
('A`)「……どうして?」
- 34: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 17:04:15.00 ID:+W3F0ucl0
ブーンは言う。
( ^ω^)「僕が優勝するからに決まってるお」
ドクオが笑った。
('A`)「上等上等。それでは、デザートを食べるとしますか」
( ^ω^)「おっお。同時に食べるお」
('A`)「それじゃ、一、」
( ^ω^)「二の、」
('A`)( ^ω^)「「三」」
二人の口へと、同時にネオスが放り込まれて、同時にそれが飲み込まれた。
呆然と二人が向き合う。
沈黙が部屋の中を支配する。
ネオスが食道を通って胃に辿り着くのがはっきりとわかるのが異様な気分だった。
後味は最悪で、味などこれっぽっちもしなくて、胃は当然の如く感じが悪い。
しかし何かしらの変化は起きない。
もしかしてこれは偽物でただのビー玉なんじゃないのか、という当たり前のことが頭を過ぎる。
- 36: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 17:06:05.72 ID:+W3F0ucl0
( ^ω^)「……なあ、何か変わったかお?」
ブーンがそう訊ねると、ドクオは首を振った。
('A`)「いいや。おかしいなあ、ただのビー玉だったのかな」
それが普通だろう、とブーンが思った刹那にそれを感じた。
(;^ω^)「ぐっ……!」
――――胃に感じていた重みが一瞬で消えた。
その事実を理解した瞬間にはすでに体は燃えるような熱を持っていた。
体から蒸気でも吹き出すのではないかと本気で思った。
目の前が真っ赤に染まる。
その場に蹲って全身から迫りくる吐気と寒気を必死で抑えつける。
(;゚ω゚)「う……お……!」
口からは無意識に呻き声があふれ出ていた。
すぐ近くで同じような声が聞こえる。ドクオの声だった。
小さなアパートの部屋の中で、十九歳の男が二人揃って蹲って苦悶の声を漏らしている。
異常な光景だったのに違いない。
- 38: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 17:07:16.36 ID:+W3F0ucl0
(;゚ω゚)「あ……あ……!」
崩壊しそうな意識の中で、ただ騙されたと思った。
何がネオファイトか、何がネオファイターか、何が選ばれた十人か。
これはただの毒薬ではないのか。
そうじゃなければこんな気分にはならないはずだ。
体の芯が劫火の中に放り込まれたように熱いのになぜか寒くて仕方がない。
全身の毛穴から嘔吐するのではないかというくらいに気持ち悪い。
(;゚ω゚)「おおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
すべてを逃がすためにそこで絶叫した。
それに反応するようにドクオも絶叫する。
――――そして、唐突に体からすべての感覚が消え失せた。
部屋に静寂が戻って来る。
そのときにはすでに、二人の意識は無かった。
- 39: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/14(土) 17:08:06.85 ID:+W3F0ucl0
――――結論を言おう。ネオスは本物である。
選ばれた十人の内、これで二人の参加者が決まったことなる。
これから、ウェポンを用いるネオファイター同士の戦闘が開始される。
第十二期のネオファイターは優秀であることを、今はまだ誰も知らない。
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