( ^ω^)ブーンがネオファイターになるようです
- 2: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 10:57:16.91 ID:rQqcYBQ+0
第六話「軌瀞砲」
『ブーン様。
こちらネオファイト執行協会本部。
この度、第十二期ネオファイターによるネオファイト本戦開始から、本日で十六日が経過しました。
第十二期のネオファイター参加者数が、残り五名となりました。
本戦開始から十六日で残り参加数が五名というのは、大変素晴らしい結果です。
第十二期ネオファイターは優秀です。今までこれほどまで白熱したネオファイト戦はありませんでした。
皆様のご健闘、心よりお褒め申し上げます。』
- 3: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 10:59:19.45 ID:rQqcYBQ+0
『残り参加者数が五名にまで減ったことにつきまして、一つだけ言わせて頂かなければならないことがあります。
参加者数分のネオスを集めたネオファイター、つまり優勝者になったときのことです。
ネオスが九個体内に蓄積されますと、無条件でこちらに赴いて頂くことになっております。
ただ、皆様は何も行動に移さなくても構いません。こちらですべて制御します。
こちらへ辿り着くまでの道のりは、九個のネオスに詰め込んでありますので、
皆様はただ優勝することだけを考えていてください。
そして、ここで新たな報告をさせて頂きます。
これからの戦闘をより深く知り、戦術を練って頂くために、残りの五名が持つウェポンを発表させてもらいます。
それでは、五名の持つウェポンの発表です。
打撃型・孤徹
打撃型・羅刹(らせつ)
斬撃型・風靭
射撃型・軌瀞砲(きせいほう)
幻竜型・荒巻
以上が、生き残っているネオファイターが持つウェポンの型及び真名です。
ここまで来たのなら、皆様、悔いが無いように優勝者となるために勝ち残ってください 』
- 5: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:01:42.50 ID:rQqcYBQ+0
――……
ウェポンが何なのかを聞いたとき、荒巻は『貴様等とは違う軸を生きる人間の戯れの産物だ』と答えた。
違う軸、というのはつまり、単純に考えてこの世界とは別の世界のことを言っているのではないか。
今こうして過ごしている地球とは別に、もう一つの地球があるのではないか。
簡単に言えば、異世界みたいなものなのだろう。
そして、その異世界の技術は地球などとは比べ物にならないくらいに発達していて、
しかも地球で生きる人間とコンタクトを取る方法を知っている。
そこで一種の戯れとして、ネオファイト執行協会本部なるものを作り出した。
地球で生きる人間には想像もできない莫大な情報が詰まったネオスを手渡し、
地球の技術の遥か彼方にあるウェポンを与えてただ遊んでいるのかもしれない。
ネオファイターに選ばれた者達は皆、その異世界の住人の掌の上で転がされているのだろう。
以上のことから考えて、ネオス及びウェポンというのは異世界の産物なのだろう。
('A`)「……っていうのが、おれの考えだ」
(;^ω^)「……」
- 7: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:03:38.22 ID:rQqcYBQ+0
嬉しそうに疑問と説明をし続けるドクオにそろそろ飽きてきたブーンは、
茶を啜りながら全く別の疑問を浮かべていた。
なぜこいつは、こんなどうでもいい話を、こんなに嬉しそうに話すのだろう。
そこが秀才君の悪い所だ、とブーンは思う。
自分の理論を完璧に伝えなければ気が済まないのだろう。
('A`)「それで、だ。そもそもウェポンは……」
(;^ω^)「……ドクオ、話はストップだお。ちょっとスーパー行くお」
いつまでも小難しい考えを聞くのはちょっと辛い、と思いブーンは話を切る。
良い所で話を止められたドクオは少しだけ不愉快そうな顔をして、
('A`)「何しに?」
( ^ω^)「食料と、ベーコンと卵を買いに行くお」
その二つの単語に荒巻としぃが同時に反応する。
別に誘ってなどいないのに、しぃはイルカを残してベットから起き上がってお気に入りの赤いコートに腕を通す。
- 10: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:05:41.70 ID:rQqcYBQ+0
荒巻はテレビの上からのっそりと起き上がり、翼を羽ばたかせてしぃのコートのフードの中へと舞い降りる。
荒巻がフードに入ったのを確認すると、しぃはそのまま玄関まで歩き、ブーンとドクオを振り返ってにっこりと笑う。
(*゚ー゚)「早く行こう」
早いっつーの、とブーンは呆れる。
( ^ω^)「……で? ドクオはどうするお? 行くかお?」
ドクオは重たい腰を上げ、ため息を吐く。
('A`)「誰もいない部屋に取り残されるっていうのも悲しいから行くよ。
それに荷物持ちがいないと困るんでしょ?」
( ^ω^)「わかってるじゃないかお」
('A`)「そりゃあね」
荷物持ちが行く気になったところで行動開始である。
壁に掛けてあるダウンジャケットに袖を通し、テーブルの上の煙草とライターを回収してポケットに突っ込む。
ブーンが部屋の電気を消す頃にはしぃとドクオは玄関から外へと出ていた。
- 13: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:07:41.83 ID:rQqcYBQ+0
外は、気分が良くなるような快晴だった。
頬に触れる緩い風を感じながら空を仰ぐ。
雲一つない青空を、一機のジェット機が飛行機雲を引き伸ばしながら進んでいる。
(*゚ー゚)「〜♪ 〜〜♪」
視線を動かすと、前を歩いていたしぃが楽しそうな顔をして早足にアスファルトを駆けて行く。
無邪気に笑ってくるくると回るしぃの姿が、このまま消えてしまいそうなほど美しくて、しかしどこか儚かった。
('A`)「あのさ」
前を小鳥のように歩くしぃを見つめながら返答する。
( ^ω^)「お?」
ドクオもブーンの視線を追いながら、こう言った。
('A`)「ネオファイターは残り五人にまで減った」
( ^ω^)「そうだおね」
('A`)「おれに、ブーンに、しぃちゃん。そしてまだ知らない二人」
( ^ω^)「そうだお」
- 15: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:09:30.58 ID:rQqcYBQ+0
('A`)「その中でいちばん強いのはしぃちゃん……いや、荒巻だと思う」
( ^ω^)「そりゃわかってるお」
('A`)「次に強いのが、このおれだ」
( ^ω^)「――……なに?」
歩みを止め、隣を歩いていたドクオへ視線を向ける。
ブーンの少し前を歩いていたドクオも足を止め、ゆっくりと振り返って真剣な表情で続けた。
('A`)「仮定の話だよ。もしかしたらまだ知らない二人の方がおれより、もしかしたら荒巻より強いかもしれない。
けど、もしそうならもっと行動に移してるはずだ。荒巻より強いのだとしたら、その力は圧倒的だ。
でももしそんな力を持っているのなら、絶対にもっと積極的に行動しているはずなんだ」
( ^ω^)「……」
ドクオの目を見つめたまま、話に耳を傾ける。
- 18: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:14:11.68 ID:rQqcYBQ+0
('A`)「今回のネオファイト参加者数は九人。その内の一人はおれが倒して、一人はブーン、もう一人は荒巻が倒した。
残りの一人は打撃型ウェポン・羅刹か射撃型ウェポン・軌瀞砲を持つネオファイターが倒したことになる。
言い換えればその二人のどちらかが強くて、どちらかが弱い。
だって、片方のネオファイターはまだ一度も戦っていないんだから」
ドクオはそこで一息つき、続ける。
('A`)「強いとしたらネオファイターを一人倒した方だ。
もし、荒巻以上の力があれば絶対におれたちを狙いに来るはずだ。
ブーンもわかるでしょ? 自分が強ければ強いほど戦いたいって気持ち」
ドクオの鋭い視線が、ブーンを突き刺す。
('A`)「でも、そのネオファイターはおれたちを狙って来ない。
つまり、それほど強い力を持っている訳でもなく、様子見をするのが精一杯ってことなんだろうね。
だから今現在生き残っている中で優勝候補のネオファイターはしぃで、
最強なのは幻竜型ウェポン・荒巻ってことになる」
――――そしておれは、その最強に後一歩で並べる所まで来てる
- 21: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:16:18.07 ID:rQqcYBQ+0
('A`)「おれの風靭は、荒巻をも超えるウェポンだと信じてるんだ。おれは優勝者になるまで止まる気はない。
ただ、このネオファイト戦が何なのか知りたい。そのためだけに、おれは戦ってる。
……ブーンとは最後に戦いって言ったの覚えてる?」
ドクオの目を見据えたままで、しっかりと肯く。
ドクオは笑う。しかしその笑みはすぐに消え、思うことをはっきりと口にした。
('A`)「おれは、今のブーンには負ける気がしない」
( ^ω^)「――――っ!」
胸のどこかがドクンと鼓動を打った。
('A`)「もしブーンがこのまま成長しないようなら、おれが最後に戦うのは荒巻になる。
ここがブーンの強さの限界だと悟ったら、おれは遠慮無くブーンを潰して超えて行く」
無意識の内に拳を握って歯を食い縛る。
ドクオの言っていることが心の奥底を刺激する。
言い表せない怒りだけがあふれ出てくる。
- 25: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:18:12.66 ID:rQqcYBQ+0
拳を肌の色が変わるほどに握り締め、歯を圧し折る勢いで食い縛った。
ドクオの決めつけたような言い方に腹が立つ。
今まで対等だと思っていた奴に見下されるようなこの感覚が我慢できない。
そして何より、これだけ言われても何も言い返せない自分自身がいちばんムカつく。
――――諦めていたんだと思う。
自分は、ドクオのように努力し、限界を超えようと努力することを、諦めていたのだろう。
あの日、荒巻と初めて対峙したときから今までずっと、自分は、荒巻の強さに脅えていたのだ。
どれだけ努力して強くなっても超えられない壁がある。その壁が荒巻だ。
迸るあの殺気を前にすれば、自分などひとたまりもないのだろう。
努力しても結局は無駄、だったら最初から努力などするな。
でも格好悪い所は見られたくない。だから表では必死に強くなろうとする意思があることを出すのだ。
裏では何を思ってもいい。表だけは強くあれ。
それが、ブーンが必死に隠してきた心の底だった。
そしてその奥底の闇を、ドクオは完璧に見抜いていた。
- 27: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:20:36.19 ID:rQqcYBQ+0
('A`)「戦友としてではなく、一人のネオファイターとしてブーンに聞きたい。
ブーンは、強くなろうと思う意思がある?」
心の奥底から意識を浮上させ、目の前の戦友を見据える。
('A`)「もしブーンが強くなろうとすることを放棄するなら、おれは今ここで、ブーンを脱落者にする。
……いや、違うね。もしそんな腑抜けたことを言うんだったら、おれは、今ここで、ブーンを殺すよ」
( ω )「――――ぉ」
頭の中で、カツン、と何かが外れた。
吹っ切れた。外れた何かは、そのまま心の奥底に落ちて、すべてを破壊した。
今まで塞いできた思いを木っ端微塵に砕いた。
何もかも、吹っ切れた。
ブーンは思う。殺されるくらいなら殺してやろうではないか。
上等な口をよくも聞いてくれたな。いくら友達でもそんな口を聞いて無事でいられると思うなよ。
- 29: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:22:33.09 ID:rQqcYBQ+0
お前が僕を殺すと言うのなら、いいだろう、受けて立ってやる。
――――僕も、お前を殺すために戦ってやる。
握ったままの拳をドクオに向かって突き上げ、絶叫した。
(#^ω^)「上等だおっ!! 受けて立ってやるおっ!! どっちが本当に強えか勝負しようじゃねえかお!!」
拳の自分の胸に当て、さらに叫ぶ、
(#^ω^)「強くなるってやるおっ!! ドクオもっ!!
荒巻も凌駕して僕が最強のネオファイターになってやるおっ!!」
ブーンは、言い切る。
(#^ω^)「ぶっ倒してやるおっ!! 覚悟してやがれおドクオっ!!」
ドクオが、本当に嬉しそうに笑った。
('A`)「――……それでこそブーンだ。待ってる。おれと荒巻の領域まで上がって来い。
ブーンはまだ、強くなれる。……やっぱり、ブーンとは最後に戦いたいからね」
ドクオの拳が前に差し出される。
その意図を察したブーンは、遠慮無くその拳に自らの拳を打ち当てた。
- 32: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:23:58.42 ID:rQqcYBQ+0
ブーンは笑う。最強の戦友に最高の感謝をここにしよう。
僕はまだ、強くなれる。孤徹を知ろう。孤徹はこんなモンじゃないはずだ。
自分が孤徹を理解し、その能力を百パーセント引き出せれば自分は最強のネオファイターになれる。
孤徹は荒巻にも引けを取らないウェポンである。
そして荒巻を超えたとき、今度は自分がドクオに向かってこう言ってやるのだ。
――お前には、負ける気がしない。
このネオファイト本戦で、必ず優勝してみせる。
それが、僕の望みだ。
- 34: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:25:14.78 ID:rQqcYBQ+0
◎
小さな窓から見える世界。
それが、しぃの世界の全てだった。
その世界を解き放ってくれた荒巻のおかげで、自分は今、こうして世界を広げることができる。
こうして外を歩くことだってできるのだ。
今まで考えるだけしかできなかったすべてのことが、荒巻と一緒なら何だってできる。
だから、荒巻とずっと一緒にいたかった。
大好きな友達と一緒に、ずっと一緒にいたかった。
そのために、しぃは戦っている。荒巻と共に。
優勝者になり、望みを叶えるために。
/ ,' 3「しぃ。ネオファイターは残り五人だ」
(*゚ー゚)「……うん」
いずれ来るとわかっていたこと。いつまでも、一緒に卵焼きは食べれない。
それが、ネオファイター同士の宿命なのだ。
- 36: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:26:52.30 ID:rQqcYBQ+0
/ ,' 3「今までは何も言わなかったがそろそろ頃合だ。
もし、しぃが望むのであれば、ここで小僧とドクオを殺す」
しぃは何も言わない。
/ ,' 3「おれはしぃのためだけに戦う。
それがしぃをネオファイターに選んだおれの使命だ」
わかっている。荒巻と出会ったときからずっとわかっている。
荒巻は他の誰よりも、この自分のことを想っていてくれる。
荒巻が大好きだ。でも。
(*゚ー゚)「……荒巻。もう少しだけ、このままでいちゃ……ダメ?」
/ ,' 3「……どういう意味だ?」
- 39: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:28:40.44 ID:rQqcYBQ+0
こんなことを言ったら荒巻に嫌われるかもしれない。
だけど、想いは口にしないと伝わらないから。
小さな拳をきゅっと握り締め、しぃは口を開く。
(*゚ー゚)「ブーンは、その……友達、だから……。だから、最後までこのままでいちゃ、ダメ……かな……?」
楽しかったから。
一緒に暮らして、一緒に卵焼きを食べて、一緒に過ごすのが、ただ楽しかったから。
荒巻は大好きだ。でも、その『好き』とはまた違う『好き』で、ブーンが大好きだった。
ブーンの作ってくれる卵焼きをもっと食べていたい。
あの家で、もっともっと一緒に暮らしていたい。自分と、荒巻と、ブーンと、三人で。
初めてだったのだ。友達ができるということが。
そして、誰かを好きになるということが。
何もかも新鮮で、何もかも嬉しかった。このまま一緒にいたいと、ずっと思っていた。
楽しい時間は、いつまでも続くと信じていたかったのだ。
- 42: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:30:24.71 ID:rQqcYBQ+0
でも。でもそれはできないこと。
自分がネオファイターで、ブーンもネオファイターである限り、いつかは崩れる。
だったら、同じ崩れるのだったら、それは最後がいい。
自分は荒巻と戦うと決めた。それは、ブーンとも戦うということ。
わかっていたことだ。だから、ブーンとは最後に戦いたい。
その最後の瞬間までは一緒にいたい。わがままなんだと思う。
だけど最初で最後のわがままだから。だから、もう少しだけ、このままでいさせて欲しい。
――――荒巻とブーンが、大好きだから。
/ ,' 3「好きにしろ。おれは、しぃに従う」
心が、暖かくなった。
しぃは、本当に嬉しそうに笑う。
(*゚ー゚)「うん!」
青空を再度仰ぐ。
青空は、果てしなくどこまでも続いている。
気持ちのいい風が、どこからか吹いてくる。
――――それは、音の無い弾丸だった。
- 44: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:32:34.49 ID:rQqcYBQ+0
◎
('A`)「……来る」
それに気づけたのは、風を感じられるドクオだけだった。
ドクオは風靭を具現化させずとも、大気の流れを明確に感じ取れる段階にまで進化を遂げていた。
音の無い何かかとんでもない速度で大気を切り裂きながら突っ込んでくる。
その軌道から、狙いは自分自身なのだと、ドクオは理解していた。
目の前のブーンを押しのけながら、ドクオは我が最強の相棒の真名を呼ぶ。
('A`)「風靭」
ドクオの掌から緑色の光の粒子があふれ出し、一振りの刀を具現化させる。
風靭がドクオの手に握られたその刹那、台風のような突風が吹き荒れた。
- 46: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:34:23.31 ID:rQqcYBQ+0
ドクオを中心として辺りを爆風のような風が襲う。
その風に煽られてブーンの体が後ろに飛ばされる。
(;^ω^)「っつ……ドクオ!?」
('A`)「ブーンはそこで見てて。この敵は、おれ一人で十分だ」
目を閉じて神経を集中させる。
('A`)「――――風刃」
荒れ狂っていた風が一つの意思の元に統括されていく。
形の無い風は一箇所に凝縮され、五枚のカマイタチの楯を作り出し、音の無い弾丸の軌道に割って入る。
- 49: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:36:33.06 ID:rQqcYBQ+0
弾丸が風と激突した。
弾丸はその威力にものを言わせて二枚のカマイタチの楯をぶち破る。
しかしそこで威力が激減し、三枚目のカマイタチに触れた弾丸はズタズタに切り裂かれ、
四枚目のカマイタチで跡形も無く消滅させられた。
そしてドクオは二撃目の弾丸に備え、一瞬で二十五枚のカマイタチの楯を発生させる。
それを自分を守るように配置させ、どこから来られてもいいように体制を整える。
(;^ω^)「ドクオ! ……!」
横でブーンが何か叫んでいるが聞こえない。聞くつもりもない。
('A`)「ブーン、これから目指す高みがどれほどのものか。
荒巻の領域に達したネオファイターの本当の力を、目に焼き付けておけ」
風靭を空高く掲げ、叫んだ。
('A`)「これが、このおれのウェポン・風靭だ!」
ドクオが力を解放させる。
二十五枚のカマイタチは、一瞬でその倍の五十枚にまで膨れ上がる。
近くにあった木々がその風に触れた瞬間に見るも無残に引き裂かれた。
- 52: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:38:22.56 ID:rQqcYBQ+0
二撃目は、すぐに来た。
音の無い弾丸はさらに速度を上げて突っ込んでくる。
その軌道から進行方向を一瞬で見極め、五枚のカマイタチを楯とする。
('A`)「何度やっても同じだ。……おれに弾は届かないよ」
しかしそれは、普通の弾ならば、という話である。
真っ直ぐに飛ぶしか脳が無いのなら、ドクオには傷一つつけられない。
だが、その弾丸は違った。そのことを、ドクオは目にして、知った。
(;'A`)「な、に……!?」
在り得ない現象が起こった。
音の無い弾丸が、その軌道を捻じ曲げた。
カマイタチに触れる瞬間に、真っ直ぐに固定されていた弾丸の軌道が無理矢理変更され、ドクオの横を通り過ぎる。
それまで気づけなかった。そして気づいたときにはカマイタチはすべて掻い潜られていた。
そして、その弾丸の本当の狙いに気づくのに遅れた。
- 57: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:40:11.78 ID:rQqcYBQ+0
(;'A`)「しまった……!」
弾丸は、出鱈目に軌道を変えながら、ドクオの後方にいるしぃに向かって突っ込んでいた。
(#'A`)「っつぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
無意識でドクオは地面を蹴る。
目の前にある風をすべて掻き分け、ドクオは弾丸としぃの間に割り込んだ。
(*゚ー゚)「ドクオ……!?」
何を思ってやったことではない。
ただ、己が思慮の浅さを呪った。自分ともあろう者が油断した。
そしてその一瞬の隙を完璧に突かれた。
これでしぃが脱落者になったら自分のせいだ。だから、守るのだ。
(#'A`)「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
弾丸の軌道に風靭の刃を乗せ、タイミングを合わせて振り抜く。
刃が弾丸に当たったその刹那、弾丸が一瞬だけ光った。
(;'A`)「何……!? 光っ……!!」
それが、終わりの合図だった。
- 61: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:45:26.35 ID:rQqcYBQ+0
弾丸が、風靭の刃を砕いた。
(;'A`)「嘘だろ……風靭……!?」
スローモーションのように過ぎ去る光景だった。
砕ける風靭の破片一つ一つが目で追えた。
そしてもちろん、風靭を砕いた弾丸の行方もはっきりと見えた。
軌道が狂った弾丸は方向を変え、ドクオの肩を貫通する。
(;'A`)「がっ……!」
風靭がゆっくりと緑の光の粒子に包まれてその形を消す。
ドクオの体内からネオスが排出された。
――――すまねぇ……ブーン……約束……守れなかっ……
ドクオは、ゆっくりと地面へと倒れこんだ。
- 67: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:46:57.41 ID:rQqcYBQ+0
そして倒れ込んだドクオの後ろで、状況を理解できていなかったしぃの顔に弾け跳んだ血液が付着する。
(* ー )「……あ」
それをぼんやりと手で触れ、しぃは目の前に運ぶ。
それを見た瞬間、頭の中で忌まわしき記憶がフラッシュバックする。
顔に付いた生温かい感触が何よりも恐ろしかった。
目に見える信じられないくらいに赤い血痕に、頭の中で何かが音を立てて外れた。
(* ー )「あ……あ……」
その場に膝を着き、しぃは小刻みに震えながらふるふると首を振る。
見開かれた瞳には虚空しか映っていない。
小さく何事かをつぶやき、たちまちにその声は大きさを増す。
(* ー )「――あ、荒巻ぃぃぃぃッッッ!!!!」
- 69: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:48:36.26 ID:rQqcYBQ+0
悲鳴に近い叫びだった。
そして、その真名に荒巻は反応する。
今ここに存在するすべての空間が歪み、圧倒的なまでの緑の光の粒子があぶれ出す。
しかしそれは、今までの比ではなかった。
少ないのではない。多過ぎるのだ。
膨大な量の粒子はあふれ続け、まだ具現化していないのにも関わらずにすべてを射殺す殺気が迸る。
粒子は形を成し、空間に巨大な真紅の竜を具現化させる。
その幻竜型ウェポンは、今まで見たどの荒巻とも違った。
真紅の体は劫火に包まれ、眼光は燃え盛る程度では済まない。眼光は、灼熱を宿していた。
- 72: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:51:00.34 ID:rQqcYBQ+0
/ ,' 3「オオオオオオオオオオオオォォォォォ―――――!!!!!!」
荒巻が口を抉じ開けて虚空に吼えた。
その咆哮は大気を裂いて地面を揺るがせる。
しぃが錯乱していたのが原因だった。しぃが荒巻のストッパーの役目を果たしていた。
だがそのストッパーが外れた。
だから、荒巻が開放される。
荒巻の内に秘められていた強大な力。それが開放されている。
そして、強大な力は荒巻から知性を奪い、理性を崩壊させた。
荒巻にあるのは本能ただ一つ。
――敵は、皆殺しだ。
しぃに牙を剥く者に容赦はしない。皆殺しにしてやる。
その巨大な翼を広げ、神速の速さで荒巻が空を舞った。
- 74: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 11:52:56.46 ID:rQqcYBQ+0
◎
(*゚∀゚)「やばっ!」
ビルの上から、射撃型ウェポン・軌瀞砲を構えるネオファイター。
名をつーという。
刀を構えた青年を潰したまではよかった。
だが、あの竜はなんなのだ。
(*゚∀゚)「こりゃヤバキチだね。一旦逃げ……」
竜がその一歩を踏み出し、つーが必死で逃げようと――――あ、
真っ赤な血飛沫が世界に舞った。
竜がつーの首から上を噛み砕く。
首から上が弾けたのにも関わらず、首無しとなったその屍を貪りながら、竜は虚空に向かって咆哮を上げる。
ドクオ・つー ――脱落。
第十二期ネオファイター残り参加者数――三名。
- 85: たけし ◆SXCV.2heRo :2007/07/21(土) 12:02:40.93 ID:rQqcYBQ+0
- 第六話補足です。
軌瀞砲が何故風靭をぶち壊せたのかと言うと軌瀞砲の特性によるものです。
軌瀞砲の特性は、一つ目が物質の粉砕。二つ目が自動追尾です。
カマイタチで防げた弾も、物質である風靭自体では防げなかったと言うことです。
それを知らずに焦って風靭で防いでしまったドクオ涙目ということです。
('A`)「まぁ仕方ないな。運が悪かった。でも、おれはまだ物語から降りる気はないぞ」
以上です。では。
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