( 'A`)はアルバムを捲るようです

4: ◆IgPB3k.W/o [プロローグ] :2007/07/16(月) 14:24:39.62 ID:I9YqKW7PO


『どうしてもいくのかお?』

『あぁ、もう決めたんだ』

『あのコトが原因なのかお?』

『ちげーよ、それにまた、何時か戻ってくるさ………またいつか…な』




――晴れ渡る空、見渡すかぎりに広がる青い海――

人々はゆっくりとしたリズムで日々を過ごす。
人々はゆっくりと日々を刻む。
誰もがこの町を田舎と呼ぶ。しかし此処に住む人々はみな自分達の町、゛VIP町゛を愛していた。

ドクオも例外ではなかった



5: ◆IgPB3k.W/o [プロローグ] :2007/07/16(月) 14:25:30.81 ID:I9YqKW7PO

――――( 'A`)はアルバムを捲るようです―――


「相変わらず何にもないところだな」

バスからの車窓を見て呟く。あるのは海と空、そして昔ながらの作りをした木材の色が黒く変色している民家だけだ。ローカル線を乗り継ぎそこからバスに乗り換える。ここは本当に田舎だな
バスだってこのバスを乗り遅れてしまえば次は7時間後だ。ここには始発と最終のバスしかない。

( 'A`)「よいしょっと」

何年ぶりだろう。高校卒業し、東京にでて就職してから一度も戻ってないから六年ぶりか。

( 'A`)「それにしても本当に何にも変わってないなぁ」

タバコを取出し火を付ける。錆びれたベンチに腰掛け煙を吐き出す。

なんだろう、この暖かい気持ちは。今、俺は安心している。なにも変わっていないこの町に。
この町は俺が過ごした青春時代の頃と姿を変えずに、また俺を迎えてくれた
カモメの鳴き声も、この水平線も、丘の上にある高校も全てあの時のままだ。
不意にカモメが忙しなく鳴きだした

( 'A`)「お帰りってか…」
心の中で『ただいま』と呟く。やっぱり故郷は良い。
「お帰りだお」

後ろから誰かが声をかけた。優しく、安心感に包まれる。誰なのかなんてもうわかっていた。



6: ◆IgPB3k.W/o [プロローグ] :2007/07/16(月) 14:26:39.08 ID:I9YqKW7PO

( 'A`)「ただいま、ブーン」

――かつての親友がそこに立っていた――

( ^ω^)「六年ぶりだお」

六年か、短いようで長かったな

( 'A`)「変わらねーな、この町も。お前も」

久しぶりに逢う親友のブーン。いつもの笑顔。いつもの語尾。ややピザなところもなんにも変わってない

( ^ω^)「ドクオがなかなか帰ってこない所為だお」
非難めいた口調でブーンが言う。コイツが怒ったところは十二年間付き合ってきたが一度しかない。

( 'A`)「すまないな、中々仕事が忙しくて」

いや、帰ってこようと思えばいつでも帰ってこれた。ただ自分のなかで"あの事"にケリを付けるまで帰る気になれなかっただけだ。

( ^ω^)「ボク達7人だけの同級生なんだからもっと連絡よこせおw」

七人かぁ……言葉にならない声で呟いた

(* ^ω^)「ん?どうしたんだお?ポンポン痛いのかお?」

ったく、コイツもう笑ってやがる。
コイツの中でアレは既に綺麗サッパリ片付いたことなんだろな。



7: ◆IgPB3k.W/o [プロローグ] :2007/07/16(月) 14:29:02.26 ID:I9YqKW7PO

从'ー'从「本当にその通りだよぉ」

間の抜けた声が聞こえる。ブーンの物であろう車の後部座席の窓から一人の女性が顔を出して言う

彼女の名前は渡辺。俺の初恋の女だ。奥手な俺は結局自分の気持ちをちゃんと伝えないまま上京ちまったな

ξ゚听)ξ「ドクオはの面倒くさがりは死ななきゃ治らないわ」

助手席からも声が響く。懍とした綺麗な声だ。

( 'A`)「ツンまでいるのかよ、悪かった。まぁこれからは気を付けるよ」

俺はツンに平謝りする

ξ゚听)ξ「どうだか、ドクオは捻くれてるからね」



9: ◆IgPB3k.W/o [プロローグ] :2007/07/16(月) 14:31:57.85 ID:I9YqKW7PO

さすがツン。俺が心から謝っていないことを見抜いたようだ。
しかし……

( 'A`)「お前に言われたきゃねーよwww」

( ^ω^)「違いねーおwww」
渡辺が吹き出した

ξ///)ξ「べっ、別にアンタが連絡してこないから心配してたとか
そんな事、全然コレっぽっちも、ミジンコ程も思ってなかったんだからね」

从'ー'从「はい、はい。ツンちゃんもドクオ君が居なくて寂しかったのよねー」
ツンが真っ赤になり顔を伏せる

不意に心地良い浜風が俺の髪をなびく

帰ってきたんだなぁ、コイツ等と話してやっと実感が湧いてきた



( 'A`)「ツンとは仲良くやってんのか?」

ブーンに訊ねる。この二人は高校から付き合っていた。端から見てもなかなか似合いのカップルだった



10: ◆IgPB3k.W/o [プロローグ] :2007/07/16(月) 14:34:09.84 ID:I9YqKW7PO

( ^ω^)「相変わらずだお、そろそろ結婚したいんだけどなかなか言いだせなくてヤキモキしてるお」

結婚か……そういや俺達24か、もう充分家庭を持てる年齢だ

( 'A`)(まぁ相手のいない俺には関係のない話か)

無意識に俺は渡辺の方を見つめていた

从*'ー'从「ふぇ?どーしたの?ドクオ君」

久しぶりに見た初恋の女性はやはり美しかった


何かが変わるかもしれない。そんな気のする三月のある日の出来事

――居酒屋『バーボン』――
( ゚∀゚)「よく来たな。此処はショボンの経営する居酒屋だ。薄汚くてスマナry」

(´・ω・`)「ぶちころすぞ」

この二人も相変わらずだなぁ。ジョルジュはいつも人を驚かせようとして色々な悪戯をしてた



11: ◆IgPB3k.W/o [プロローグ] :2007/07/16(月) 14:35:32.63 ID:I9YqKW7PO

( ゚∀゚)「よく戻ってきたな、三年ぶりか」

バカなところも変わってないようだ

(´・ω・`)「六年ぶりだろうが、このバカ」

( ゚∀゚)「客にバカとはなんだ、ぶちころすぞ」

(´・ω・`)「人のセリフを二回連続でとるな、ぶちころすぞ」

コイツ等は本当に面白い。いつまで見てても飽きない。

(´・ω・`)「同窓会に六人全員が揃ったのは初めてだね」

( 'A`)「すまんな」

(´・ω・`)「いや、良いんだ。都会もなかなか忙しいんだろう」

( 'A`)「まぁな」

ショボンとの会話はいつもこんなものだ。淡々とした他愛のない会話。しかし今はその全てが懐かしく暖かく感じれた

(´・ω・`)「今日は貸し切りだ。思う存分飲んで騒ごう」

ショボンの言葉を合図に全員がグラスを持つ



12: ◆IgPB3k.W/o [プロローグ] :2007/07/16(月) 14:36:59.42 ID:I9YqKW7PO

(* ^ω^)「愛しいツンに」

ξ///)ξ「もっ、もう、何言ってるのよ!!
……じゃあブーンに」

从'ー'从「久しぶりに仲間と飲める私に」

( 'A`)「六年経っても変わらない暖かい故郷に」

( ゚∀゚)「オレ達六人に」
(´・ω・`)「これからの未来に」

一同『 乾 杯 ! !』

それから俺たちはヘロヘロになるまで飲んだ。ショボンの作った料理はとても旨かった

( 'A`)「お前料理巧いなあ」
俺は思わず言ってしまった
(*´・ω・`)「そうかい?まぁ六年も居酒屋やってたらそれなりにはなるよ」

どことなくショボンの顔が赤い。

『ウホッ』

……何処からか聞こえてきた。同時に背筋に寒気が走る

ダメだ、悪酔いしてんのかな



13: ◆IgPB3k.W/o [プロローグ] :2007/07/16(月) 14:38:22.88 ID:I9YqKW7PO

ξ*゚听)ξ「今日はコレを持ってきたの」

不意に、ツンが持ち出してきたのは高校時代のアルバムだった

厚みのあるそのアルバム

綺麗な表紙には
『VIP中学仲良し七人組』と色とりどりの油性マジックで書かれてある


瞬間一気に俺は酔いが覚めるのを感じた
周りの皆も同じようだ。

ξ゚听)ξ「ドクオも帰ってきたわ。これ以上過去のことに捉われる止めましょう。
それにドクオも帰ってきたって事は遅かれ早かれ皆にこの話をするつもりだったんでしょ?」

やれやれ、ツンにはお見通しだったか

まぁもう一人わかってた奴もいるみたいだけど


(´・ω・`)「はい、この水はサービスだよ。みんなとりあえず酔いを醒まそうか」

みんな水を口にする。冷たい水によって体が冷やされていくのが感じられる。心地よい酔いから醒め冷たい現実へと引きずり込まれていく。



15: ◆IgPB3k.W/o [プロローグ] :2007/07/16(月) 14:40:43.84 ID:I9YqKW7PO


(´・ω・`)「この話をするのに、酔ってたらツーに失礼だからね」

ショボンも気付いていたんだろう。俺がこの話を切り出すことを。


ツー……ここに居ない、もう一人の俺達の親友。


从*'ー'从「じゃあ、みんなでアルバムを見ながら話そぉか」


渡部の可愛らしい声が場の雰囲気を和らげる


こういう所に惚れたんだよな

不謹慎にも俺は思う





ツンは頷くとそっとページをめくっていった。



プロローグ  終了



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