( 'A`)はアルバムを捲るようです

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 19:29:07.37 ID:KPmdzgq7O
『Page:7 そしてツーは……』

SIDES BY 残された彼ら

アルバムに詰まった彼らの思い出。

その期間、三年。長い人生においてその期間は長くないのかもしれない。


しかし、決して軽いものではない。


o川*゚ー゚)o「皆さん、色々な思い出をお持ちなんですね」

そう言ってから彼女は気付いた。

彼らは嫌がっている。次のページを捲るのを。

何故なのか、彼女には見当が付いた。



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 19:30:09.90 ID:KPmdzgq7O


('A`)「……次のページ、まぁ最後だが……捲るぞ」

(´・ω・`)「………」


( ´ω`)「………」


ξ゚ー゚)ξ「………」


从'ー'从「………」


( ゚∀゚)「………」


いつの間にかシャキンは、帰ってしまったようだ。


沈黙が七人を包む。



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 19:32:22.83 ID:KPmdzgq7O



(´・ω・`)「この写真はね、僕達七人が最後に撮った写真なんだ」






今から九年前。

中学校三年生。

長い冬を越えた桜が、芽をだし始めたその季節に……






ツーは転校した。



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 19:33:23.89 ID:KPmdzgq7O




  ―――◆―――


(#'A`)「どういう事だよ!!引っ越したって!!」

ξ;゚听)ξ「ちょっと、落ち着きなさいよ、ドクオ!!」

从;'ー'从「そうだよ!!ビロード先生も困ってるよ!!」

(#'A`)「……チッ」


今まで彼が、こんなに感情を吐露することがあっただろうか?

いや他の五人も見たことが無いはずだ。



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 19:34:39.51 ID:KPmdzgq7O


(;><)「わかんないんです!!いきなり校長から連絡が入って、そこからはあっという間でした!!」

(;^ω^)「僕達に何も言わないで一体どこに引っ越したんだお!!」

六人は、全く事態を飲み込めずにいた。
当然だろう。昨日まで当たり前のように隣に居た友人が、いきなり居なくなったのだから。

( ><)「ツーさんからなんの連絡も受けていません。
彼女の両親が昨日学校に来て、仕事の都合でアメリカに行くとだけ言ったそうです」

ξ;゚听)ξ「アメリカですって!?」

皆、予想外の答えだった。誰も海外だとは予想してはいなかった。

しかし一人だけ、納得したような顔をした者がいた。



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 19:38:11.94 ID:KPmdzgq7O



(´・ω・`)「なるほどね。聞いたことあるよ。ツーの両親って外交官だったらしいんだ」

(;^ω^)「おっ、そう言われればツーの両親については何も知らなかったお」

( ゚∀゚)「アイツは一人暮らしだったからな……」

从'ー'从「授業参観にも誰も来なかったしね」

(#'A`)「クソッ!!ふざけた野郎だ!!なんで今更ツーを……」

(´・ω・`)「多分ツーは高校から海外に行くつもりだったんじゃないかな?」


(#'A`)「そうなのか!?ビロード!!」

(;><)「確かに……そう言ってたんです……でもツーさんからは、あたしが言うからお前は何も言うなと……」

(# ゚∀゚)「クソッ、散々俺達に説教垂れておいて……あの野郎」



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 19:40:09.60 ID:KPmdzgq7O


从'ー'从「先生!!ツーちゃんの引っ越し先わからないんですか!?」

( ><)「それはわかってるんです!!」

ビロードは机の中からゴソゴソと一枚の紙を取り出した。


そこには、『ニューヨーク』とデカデカと書かれているだけだった




そこにいる全員が、等しくため息を吐いたのは言うまでもない。



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 19:41:05.24 ID:KPmdzgq7O



  ―――◆―――


何たってこんな事になってしまったんだ。


悔やんでも悔やみきれない。


僕は気付けなかった。いつも一緒にいたのに……


( ^ω^)「ツー……」

ツーは引っ越した、僕達に何も話さず、僕達に何も語らず。

( ´ω`)「ニューヨーク……遠いお」



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 19:42:38.65 ID:KPmdzgq7O


ツーの引っ越し先はニューヨーク。

引っ越したんだ。これが旅行ならどれだけ良かったか、お土産を両手一杯に提げ

(*゚∀゚)ノ『おーす』


などと言うツーの姿が容易に想像できた。


( ´ω`)「ツー……」


ツー、君が居なければあの時僕は勝てなかっただろう。

君が、ジョルジュにトップでタスキを繋いでくれたから、僕は勝てたんだ。



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 19:45:17.16 ID:KPmdzgq7O



君とこの町に生まれてから十六年。


思い出にするには、悲しすぎる……



  ―――◆―――



涙が止まらなかった。

どうして?

幾度も自分と彼女の胸に尋ねた。

ξつー゚)ξ「ツー……」



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 19:46:14.64 ID:KPmdzgq7O


高校から引っ越す事が決まっていた。


――なのに


――――なのに私は


気付けなかった。


一体ツーは、どのような思いで私達と一緒に居たのだろうか?


あの子はなんでも気付いた。誰よりも早く。


あの時だって。



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 19:47:17.00 ID:KPmdzgq7O



嗚咽が漏れる。


抑えきれない想いが、涙となって瞳に溢れてくる。


部屋の障子が開く。


そこに父が居た。


( ФωФ)「何をしてるんだ?」

ξつ;)ξ「ううん、なんでもないの……」


父に話したところでどうしようもない。



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 19:48:43.78 ID:KPmdzgq7O


( ФωФ)「あぁ、そういえば友達が引っ越したんだってな」

びっくりした。何故父がもうそれを知っているのかと。

ξつ;)ξ「ぅん」


( ФωФ)「ほら、引っ越し先の住所だ。仕事のついでに調べてきてやったぞ」


信じられなかった。

父がどうしてツーの住所を。

いや、それよりも仕事一辺倒だった父が、自分の仕事時間を割いて調べてくれたことが。


( ФωФ)「海外か……遠いな……」

ξつ;)ξ「ありがとう、お父さん」



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 19:50:04.72 ID:KPmdzgq7O


おいで、っと父は私を呼ぶ。


近づくとそのまま抱き締められた。


(; ФωФ)「俺はこういう時なんて励ましてやれば良いかわからん。今まではデレに任せっぱなしだったからな……」

顔は見えない。恐らく慣れない事をしたもんだから真っ赤に染まっているのだろう。


( ФωФ)「しかし、お前の悲しみは、私の悲しみだ。それだけは忘れないでくれ」


今までギリギリで抑えていた感情が爆発する。


堰を切ったかのように涙が、とめどなく流れた。



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 19:51:21.19 ID:KPmdzgq7O


ξ;;)ξ「お父さん!!ツーが!!ツーが!!」


父の胸は、暖かかった。


あの日、ツーが私の家に来なければ今は無かっただろう。


私は、押し潰されていたかもしれない。


貴方がくれたものは、余りにも大きい。

私は、貴方になにかを返せたのだろうか?



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 19:52:37.74 ID:KPmdzgq7O



貴方とこの町に生まれてからの十六年。


思い出にするには、切なすぎる……



  ―――◆―――


( ゚∀゚)「ふぅ」


ツー、今どうしてんだ?


まだ飛行機のなかか?



82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 19:55:08.29 ID:KPmdzgq7O


それとも、もうニューヨークにいんのか?


頭の悪い俺には、ニューヨークにまで要する時間も、時差もわからねぇ。


ただこの喪失感の理由だけは……ハッキリわかる。


いつだってお前は、俺に付き合ってくれ。

どんな馬鹿な事だって一緒に盛り上がれた。

そんなお前はもう居ない……


あの時だってお前、部屋から飛び出していきそうだったよな。


ドクオが止めなきゃ本当に行ってただろうな。



84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 19:58:06.25 ID:KPmdzgq7O


あの時は済まなかった。

俺には分かってた。お前が仕返しに行こうとすることを。


まぁ皆わかってたろうがな。


俺達は大丈夫だ。離れたりなんかしない。


お前が、唯一残していった置き土産が俺達の友情だったのかもな……



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 20:00:09.75 ID:KPmdzgq7O


俺は忘れねーよ。


お前と過ごした十六年をな。


また会おうぜ。


このまま思い出にするには、勿体なすぎるからな……


  ―――◆―――



今でも思い出す。あの祭りの夜。


私は一人有頂天だった。ドクオ君に浴衣を誉められた。

そんな些細なことで舞い上がって、ツーちゃんに対して少なからず優越感に浸っていた。



88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 20:01:43.71 ID:KPmdzgq7O


でも、今思えばなんと愚かだったんだろう。


从;ー;从「ごめんなさい、ごめんなさい」


私は何度もツーちゃんに謝る。


彼女は最後の祭りだと分かっていた。


それなのに私は……


ツーちゃんにはかなわないや……
こんな別れ方したら、絶対ドクオ君の頭から貴方が、離れることなんて無いもんね。



91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 20:03:39.32 ID:KPmdzgq7O


でもね、勝負だよ。ツーちゃん。


私は、貴方の思い出に勝つんだからね。


次貴方に会うときは、ドクオ君の彼女になってるから。


――でも今は


――――今だけは……


从;ー;从「ツーちゃん、逢いたいょぅ……」


貴方に逢いたい……



93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 20:05:20.84 ID:KPmdzgq7O


この町に共に育って、十六年。


思い出にするには、ちょっと重すぎるかな……


  ―――◆―――


(´・ω・`)(ちょっと突然過ぎるよね)


カクテルグラスを磨き終えた僕は、一息つく。


はぁ、一体君はどこまで僕達を引っ張り回すつもりだい?



94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 20:06:34.42 ID:KPmdzgq7O


そういえば以前から、ずっとツーにカクテルを飲ませて欲しいとせがまれたな。

未成年に出す酒はないと断った時の彼女の顔は、言い様の無い寂しさで染まっていた。


(´・ω・`)(こんなことなら……)


作ってあげれば良かったな。


ふと部屋の端に視線を移す。


其処には『バーボンハウス』と書道六段の父の手によって書かれた、看板があった。

バーの看板に筆はどうかと思ったが、なかなか様になっていた。



96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 20:07:55.57 ID:KPmdzgq7O


(´・ω・`)(こんなこと、あの時は考えられなかったな)


あの時、ツーは僕に言った。

私達を、信じろと。


――だから


――――だから僕は


(´・ω・`)(君を信じて待ってるよ)



98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 20:09:00.36 ID:KPmdzgq7O


リキュールとチェリーは切らさないでおかないと。


ツー、もう君に出すカクテルは決まってるんだ。


君の誰よりも純粋で、暖かい心にピッタリだと思うんだ。


転校してから五年間。ほかの五人と比べれば多少短いけど……

君との五年間を思い出にするには、僕達は若すぎるよね……



  ―――◆―――


ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!



99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 20:10:35.55 ID:KPmdzgq7O


なんど壁を殴っても気持ちが晴れることはない。


どうして何も言わず行っちまったんだ?


俺等にできる事はなにも無かったのか!?


お前は、他の六人の中でも、一番俺の近くにいただろ。

お前が居なくなって、俺がどれだけ悲しむか……分からなかったとは言わせない!!


いつの間にか、拳からまっかな血が流れていた。


(#;A;)「畜生!!!!」



101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 20:12:12.20 ID:KPmdzgq7O

なんて格好悪いんだ、俺。


ツー、どこだよ。どこにいるんだ!!


二階の自室から町を見下ろす。


いつの間にか陽も暮れていたようだ。


おい、傑作だ、見てくれよ。


はしゃぎ回った浜辺、勉強した覚えの無い学校、当りを引くまでホームランバットを買った駄菓子屋……



(;A;)「どこ見てもお前だらけじゃねーか」



102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 20:13:11.84 ID:KPmdzgq7O

十六年、短い、短すぎる。

俺は、もっとお前と居たかった。

お前と思い出を作りたかった。


だから終わらせない。


思い出なんかじゃ、絶対に……



  ―――◆―――



それぞれが、それぞれの想いを抱き、様々な形でツーの居なくなった喪失感を受けとめていく。



103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 20:14:35.15 ID:KPmdzgq7O


近くはないが会えなくはない。住所だって分かってる。


逢うことだってでき無くはない。





――――しかし



106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 20:15:41.08 ID:KPmdzgq7O


しかし、彼らが卒業を控えた2001年、世界を揺るがす事件が起きた。



そして、その余波は彼らにも及んでしまった。




('A`)がアルバムを捲るようです



SIDES By 残された彼ら

END



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