( ^ω^)ブーンが機械と戦うようです

4: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/04(水) 23:00:12.45 ID:FVBZ2F9W0
  
――バキン!! ガン!! ギヂュン!!

内藤の耳元で大きな音が聞こえる。
同時に、頭がガクガクと大きく揺らされて内藤の意識はゆっくりと覚醒した。

意識して深呼吸をしてみる。
鼻に残るのは枯れた文明の匂い。
ツンの甘い匂いでも病室の薬品の匂いでもない、現実世界の匂いだ。



5: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/04(水) 23:05:18.34 ID:FVBZ2F9W0
  
( ^ω^)「んぉ……なんか頭が痛いお」

ゆっくりと目を開けると、目の前に銀色の光。
小型の機械が、内藤に覆い被さるようにして機能を停止していた。

(;゚ω゚)「ぷおっ!?」

思わず奇声をあげて、慌てて機械の下から這い出る内藤。
2mほど離れてからよく見ると、その体には無数の穴が空き、煙が立ち上っている。

( ゚д゚ )「内藤!! 平気か!?」

銃を持ったミルナがこちらに駆けてくる。
手には旧式のアサルトライフル。
おそらく機械を破壊したのもこのライフルだろう。



8: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/04(水) 23:13:25.81 ID:FVBZ2F9W0
  
(;^ω^)「あ、ありがとうだお、ミルナさん……っつ!!」
( ゚д゚ )「痛みがあるのか? 無理はするな」

内藤が立ち上がるのに合わせて、ミルナが手を貸す。
力強い手に支えられて、内藤は埃っぽい床から立ち上がった。

( ^ω^)「この機械は……?」
( ゚д゚ )「ああ、こいつか。倒れているお前に覆い被さって、何かをしていたようだった」

慌てて破壊したが、弾はあたらなかったか?
中々に恐ろしいことを平気で聞くミルナ。
内藤は冷や汗をかきながらも首を振った。

( ゚д゚ )「そうか。まあ、無事で何よりだ。遅れてすまんな、崩落場所を迂回していたら時間がかかってしまった」
( ^ω^)「わざわざありがとうだお……」

感謝しながらも、内藤は複雑な気持ちが隠せない。
ミルナが内藤を探しに来たのは何故か?
それは、内藤の脳から、何かの情報がもれることを恐れたからではないだろうか。

それを裏付けるように、ミルナは内藤に覆い被さった機械をライフルで射撃している。
内藤の生死に関わらず、ミルナは機械を破壊したことだろう。
もしかしたら、ミルナは内藤の救出ではなく、回収に来たのではないだろうか。



9: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/04(水) 23:20:27.95 ID:FVBZ2F9W0
  
( ^ω^)(でも、こんなことを考え始めたらキリがないお)

内藤は無理矢理その考えを頭から追い出した。
友人の姿をしたシステムと会話をしたからといって、偏った目を持つのは危険だ。
それに、破壊だけを考えるならミルナの胸にぶらさがる手榴弾の方が確実だっただろう。
それを使わなかった以上、内藤を救出に来たというミルナの言葉は十分に信じられる。

( ゚д゚ )「内藤、後頭部から血が出ているぞ」
( ^ω^)「おっおっおっ、どうやら崩落させた岩にやられたみたいだお」
( ゚д゚ )「そうか。もう血は止まっているようだが、帰艦したら荒巻に診てもらえ」
( ^ω^)「はいですお」
( ゚д゚ )「それと」

内藤に肩を貸しながらエア・スクーターに向かっていたミルナの足がピタリと止まる。

( ゚д゚ )「あの機械はシステムに直結した小型の通信端末型だ。何か夢を見なかったか?」

ミルナの目は、これが本題だと言わんばかりに真剣な色を見せていた。



12: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/04(水) 23:34:59.32 ID:FVBZ2F9W0
  


時間は少し巻き戻る。


六日目朝、その日内藤はいつも通りの衝撃と艦内照明で起床した。
昨日から続くタシーロ号の停泊は未だ続行中。
とはいえ荒巻やジョルジュはエア・スクーターの修理に勤しんでいたし、流石兄弟は船外作業を行っている。
フサギコは作戦に使用するための爆弾を改良しようとして、トレーダー港に資材を受領に行っている。
内藤は一人、タシーロ号の甲板でぼんやりと海を眺めていた。

( ゚д゚ )「暇そうだな、内藤」

トレーダー族の集落から朝帰りしてきたミルナが、内藤を見つけて声を掛ける。
昨日はおそくまでウマーと共に飲んでいたようだが、顔色に疲れは全くみえない。

(;^ω^)「別に暇にしているわけじゃ……」
( ゚д゚ )「魂の抜けそうな顔をして暇じゃないと言われてもな」
(;^ω^)「おっしゃる通りですお」

小さくなってしょんぼりとする内藤。
そんな内藤を見て、ミルナは一つの提案を告げた。

( ゚д゚ )「内藤。暇なら、俺に少し付き合ってくれんか」



17: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/04(水) 23:46:53.21 ID:FVBZ2F9W0
  
/ ,' 3「地下道が?」
( ゚д゚ )「そうだ。おそらく大坑道南東部へと続くものだろう」
( ゚∀゚)「ひぇー、すっげぇな。大坑道まで1000q以上あるんじゃね?」
( ゚д゚ )「詳細はわからん。が、過去のリニアラインだったようだ」
/ ,' 3「ふむ、ここへの物資輸送用といったところですかな」
( ゚д゚ )「おそらくはな。そして、驚いたことにラインは生きている」

内藤にはいまいちピンとこないことだが、どうやらかなりおどろいた事態であるらしい。
ミルナが話している地下道とは、島の北部にある森の中で発見された物だそうだ。
3Dマップに投影された矢印には、素っ気なく[Gate]と表示されている。

( ゚д゚ )「これは推測だが、機械は襲来にアレを利用したのではないかと見ている」
/ ,' 3「ありえますな。もともとリニアライン等を管理していたのは機械なのですから」
(;゚∀゚)「おいおい、じゃあ早いとこ防がないとあぶねーじゃねーか」
( ゚д゚ )「もちろんだ。だから、今から俺と内藤で防いでくる」
(;^ω^)「おっおっおっ!?」

いきなり自分の名前が出て驚く内藤。



19: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/04(水) 23:56:04.58 ID:FVBZ2F9W0
  
(;゚∀゚)「内藤は暇だからわかるとして、なんで艦長が?」
( ゚д゚ )「昨日の作戦の成功により、VIPはトレーダー族に認められた。俺が取り持つ必要はもうあるまい」
/ ,' 3「しかし、リーダーが前線に赴くのは関心できませんな」
( ゚д゚ )「問題ない。爆破を行って速やかに離脱するだけだ」

ミルナは現在で最も重要度の低い者を選出して作戦にあたらせる。
自分の重要度が下がった今、最も適当と思われる人選を行っただけなのだろう。
それにしても、それはかなり思い切った判断であると言えた。

( ゚д゚ )「ジョルジュと荒巻には引き続きエア・スクーターの修理を」
( ゚д゚ )「流石兄弟とフサギコにはそれぞれ優先させることがある。当然の人選だ」
/ ,' 3「ふむ……まあ、危険度もそれほど高くありませんからな」
(;^ω^)「で、でもボクはあまり役に立たないと思うお」
( ゚д゚ )「それは承知の上だ。だが、これからも闘争を続ける以上、お前にも成長してもらわねばならん」

つまり、これは内藤の教育も兼ねているということだ。
今更ながらに内藤は闘争を続けることの重要性に触れた気がした。



21: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/05(木) 00:04:51.27 ID:yCKrSAZS0
  
( ゚д゚ )「出発は1時間後。行きはリニアラインを利用できるが、帰りは自走となる」
/ ,' 3「では、修理済みのエア・スクーターを2機。それと食料を用意しましょう」
( ゚д゚ )「頼む。爆薬は今ある分だけでいい、全て持って行く」

どのくらいの規模を爆破するかわからないため、必要十分の装備を指示するミルナ。
それから1時間後、修理されたエア・スクーター2機がタシーロ号を出発。
森の中に口を開けるゲートから地下道に侵入、リニアラインを利用して大坑道に到着した。

だが、付近を警戒中だった機械が発見されたため、作戦を急遽変更。
予定されたポイントよりも若干はずれた場所で一旦崩落を起こすことになったのだった。


しかし崩落は失敗、内藤が囮として機械を引きつけるも、巻き込まれた内藤は昏倒。
分断されたミルナが内藤を回収するまで、およそ30分。
そして現在に至る。



24: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/05(木) 00:14:53.45 ID:yCKrSAZS0
  
――( ゚д゚ )『あの機械はシステムに直結した小型の通信端末型だ。何か夢を見なかったか?』

そう聞いたミルナの目。
あの目は、戦士の目だった。
常に最悪の状況を想定しながら、危険な部分を切り捨てようとする非常な目。
その目に気圧されるようにして、内藤は思わず、何も見ていないと答えてしまった。

内藤の答えを聞いたミルナはしばらく内藤を見つめた後、そうかと呟いて再び歩き始めた。
エア・スクーターに乗って内藤のエア・スクーターも回収。
その後、改めて崩落作戦は実行され、リニアラインは破壊され、その道を塞がれた。

帰り道。
およそ1000qの直線を高速で飛行しながら、内藤は考える。
もしあそこで夢を見たと言ったなら。
システムに様々な話を聞いたと言ったなら、ミルナはどのような反応を示しただろう。

内藤はミルナに出会ってまだ一週間も経っていない。
彼は内藤のことを以前から知っていたようだが、内藤はあまりにも彼のことを知らなさすぎる。

信頼していないわけではない。
だが、無条件で信用できるわけでもない。
そんな難しい関係。
長い道のりをひたすらに疾走しながら、会話はなかった。



26: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/05(木) 00:24:50.80 ID:yCKrSAZS0
  
タシーロ号にミルナと内藤が到着したのは、すでに日が暮れてからだった。
長時間の操縦により体の筋肉はカチコチに固まっている。

(;^ω^)「体がバッキバキだお」
ミ.,,゚Д゚ξ「無事だったか、内藤。ご苦労さん」

すでに戻ってきていたフサギコが内藤に労いの声をかけた。
爆弾の改良をしていたというフサギコだが、何か失敗をしたのだろうか。
いつもツンツンに立っている髪の毛の一部が焦げてパーマをかけたようになってしまっていた。

( ^ω^)「ぷ、ぷぷっwwwwwwwwwwおまwwwwwwwwwww」
ミ.,,゚Д゚ξ「あん? なんだ、いきなり人の顔を見て笑うなんて失礼な奴だなゴルァ!!」
( ^ω^)「だ、だってフサギコの髪の毛wwwwwwテラアホスwwwwwwww」
ミ.,,゚Д゚ξ「髪の毛だぁ?」

内藤の視線を追って髪の毛に触れるフサギコ。
自分の状況を把握すると、その顔が照れと怒りで真っ赤に染まる。
よく見れば顔も煤だらけで、擦りでもしたためか赤と黒のまだら模様になってしまっていた。

ミ#,,゚Д゚ξ「だっ!! なっ、なんじゃこりゃあああああああああああ!!」
( ^ω^)「気づくの遅すぎだおwwwwwwwしかも顔も真っ黒だおwwwwwww」
ミ#,,゚Д゚ξ「うるせぇ笑うんじゃねぇ!! ぶん殴るぞゴルァ!!」



27: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/05(木) 00:33:00.07 ID:yCKrSAZS0
  
やいのやいのぎゃーのぎゃーの。
二人がやかましくしていると、荒巻が丸い容器と細かな容器を持って現われた。

/ ,' 3「なんじゃい、やかましいやつらじゃの」
( ^ω^)「あ、荒巻さん……お?」
ミ.,,゚Д゚ξ「荒巻さん、その格好は何なんですか?」

喧嘩をしていた二人も思わずその手を止めて、荒巻の格好について質問する。

/ ,' 3「これか? 見ての通り浴衣じゃよ」
( ^ω^)「それは見ればわかるお」
ミ.,,゚Д゚ξ「聞きたいのは、何故そのような格好をしているかということです」
/ ,' 3「ふ。それは、そこに温泉があるからじゃ」
( ゚∀゚)「そうだぜ!! 温泉なんだぜ!!」

どこぞの登山家のような発言をする荒巻と、その後ろから現われるジョルジュ。
それが当然であるかのように、ジョルジュも同じ浴衣姿だった。



28: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/05(木) 00:39:30.70 ID:yCKrSAZS0
  
( ゚∀゚)「なんか集落の近くに天然の温泉があるらしくてよ。俺たちも使っていいんだってよ」
/ ,' 3「先ほど水質調査に行ってみたが、人間でも問題はないようじゃしのお」
( ^ω^)「それで、浴衣なのかお……」

温泉といえば浴衣。
当然の組み合わせではあるが、このためだけにわざわざ浴衣を作ったのか。
しかもご丁寧に、手には木でできた桶と自家製の石けんまで準備している。

/ ,' 3「船の留守番は流石兄弟が担当するそうじゃし、ひとつ裸の付き合いといかんかね」
(*゚∀゚)「うひひひひwwwwちなみにそこ、混浴らしいぜwwwwww」

妙に浴衣が似合ってしまっている荒巻と、興奮して腕を振り始めるジョルジュ。
そんな二人に完全に毒気を抜かれて、内藤とフサギコは顔を合わせて苦笑した。

( ゚д゚ )「そういうわけだから二人とも、すぐに着替えてこい」

ブリッジからミルナが姿を現す。
その姿はもはや当然と言わんばかりに浴衣姿であり、手には残る二人分の浴衣と風呂道具を持っていた。



30: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/05(木) 00:50:35.97 ID:yCKrSAZS0
  
トレーダー族集落の北、火山の裾野近く。
大きな岩がごろごろと転がる中、かなり広い範囲にわたって温泉は沸いていた。
小さな物から大きな物まで、およそ野球場と同じくらいの範囲で温泉は続いている。
もっとも、源泉近くの物は熱すぎるため、入ることができるのは近くを流れる川に隣接した部分のみだ。

到着した温泉にはすでに簡易的な脱衣所まで設置してあった。
一体誰がここまでと思ったが、その横を見て疑問は氷解した。

【荒巻温泉】

きっと、内藤達が作戦を行っている間中、こんな物をせっせとこしらえていたのだろう。
手の込んだことに看板は一枚板の立派な物に、達筆な字を掘り込んだものだった。

/ ,' 3「トレーダー族にもここは解放されておるし、その整備に力を貸しただけじゃよ」

とは荒巻の説明くさい言い訳。
きっと自分がやりたいからやったのに違いない。
その証拠に、あからさまに『女湯はこちら→』などという看板が近くの地面に刺さっている。



31: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/05(木) 00:59:41.42 ID:yCKrSAZS0
  
/ ,' 3「さてと、では行くか」
(*゚∀゚)-3「おっぱい! おっぱい!!」

興奮しすぎて、ジョルジュはもはや人語すらあやしい。
迷いない行動からして、すでに女湯に誰がいるかは判っているようだ。

ミ.,,゚Д゚彡「行くって、まさか覗きに……?」
( ゚∀゚)「ばっかやろう!! そんな下世話な言い方すんなよ!!」
/ ,' 3「その通りじゃ。わしらは覗くのではない、ちと人生の潤いを貰いに行くだけじゃよ」
ミ.,,゚Д゚彡「どんなことを言っても覗きは覗きでしょう……」

あきれた顔をして溜息をつくフサギコ。
その顔は心底あきれたと言わんばかりの表情だ。

( ゚∀゚)「なんだよ、物わかりの悪いやつだなー。実はお前も行きたいとか?」
ミ.,,゚Д゚彡「先輩と一緒にしないで頂きたい。自分は正しい道を示そうと……」
/ ,' 3「何をごちゃごちゃと。相変わらず堅苦しいやつじゃな。面倒じゃ、ジョルジュ」
( ゚∀゚)「あいよー。さー、行こうか!!」
ミ;,,゚Д゚彡「ちょ、何を!? や、やめ……アッー!!」

フサギコは荒巻とジョルジュに羽交い締めにされて連れて行かれてしまった。
その目は助けを求めていたように見えたが、内藤にはどうすることも出来なかった。
ただ、立ちつくしているしかできなかったのだ。

( ^ω^)「っていうか、アホすぎてつきあってられんお」
( ゚д゚ )「まったくだ」



32: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/05(木) 01:07:45.47 ID:yCKrSAZS0
  
ミルナと二人、温泉につかる内藤。
皆で一緒に居たときは気にならなかったが、やはりミルナと二人になると気が重い。

( ^ω^)(……しかも無口だから話が続かないお)

ミルナは静かに目を閉じて温泉につかっている。
トレーダー族である彼だが、その様は温泉と風情を楽しんでいるようにも見える。
浴衣も似合っていたし、実は日本びいきだったりするのかもしれない。
内藤がそんなとりとめのないことを考えていると、思いがけずミルナから声を掛けられた。

( ゚д゚ )「……内藤」
(;^ω^)「おっお、なんですかお」
( ゚д゚ )「何を見た?」

機械に繋がれた脳の中で。
システムに直結された状態で、お前は何を見聞きした?
あまりにも直球でこられたため、口元まで温泉につかっていた内藤は思わずお湯を飲んでしまった。

(;゚ω゚)「けへっけへっ!! な、なんのことですかお?」
( ゚д゚ )「隠すな。もうわかっていることだ」

何せ、俺にも体験があるのでな。
顔にザブリとお湯を掛けながら、ミルナが答える。



34: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/05(木) 01:16:28.30 ID:yCKrSAZS0
  
( ゚д゚ )「俺があの機械を見たのは、闘争を始める前だった」
( ゚д゚ )「俺の闘争はあの機械を通じて2チャンネルシステムを体感したその時に始まった」

夢の中に作られた、幸せだけが存在する世界。
偽りの中に生きる人間。
そしてそれを管理する機械。

( ゚д゚ )「俺はその時、幸せを初めて恐ろしいと思った。体中から力が抜けるようだった」
( ゚д゚ )「同時に、俺はシステムと機械に対して激しい嫌悪感を覚えた」

それは内藤も少しは感じたことだ。
だが、ミルナの感情は内藤のそれよりも遥かに激しい。

( ゚д゚ )「俺のやっていることはエゴかもしれん。だが、俺は信じている」
( ^ω^)「信じる?」
( ゚д゚ )「そうだ。人間の種としての成長性を、俺は信じている」
( ゚д゚ )「人間は我々よりも力において劣る。だが、知恵と知識の活用において、我らは人間に遠く及ばない」

トレーダー族であるミルナの口から、人間を認める発言を聞くのは正直驚きだった。
だが、考えてみればそれは当然だ。
ミルナはトレーダー族でありながら、人間を助けるための闘争をたった一人で始めた人なのだから。



35: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/05(木) 01:22:35.17 ID:yCKrSAZS0
  
( ゚д゚ )「人間があのシステムに捕らわれている以上、人間は、いや地球の生命はいつか滅んでしまうだろう」
( ゚д゚ )「機械の作り上げたシステムは全てが完結しているがゆえに発展性がない」
( ゚д゚ )「いつか資源を食いつぶしたシステムは、その問題を解決できずに破綻するだろう」

その時、システムから解放された人間を導く組織を作りたい。
そして、出来れば能動的に彼らを解放し、システムを破壊したい。
それがミルナの考える闘争の理由だった。

( ゚д゚ )「俺はシステムとの接触で闘争を始めた。だから、お前が見聞きしたことを知りたい」
( ゚д゚ )「システムで生まれ、成長し、そして一旦離れたお前に機械が接触した理由を俺は知りたい」

自分の言うことは終わりだと言うように、ミルナはそれっきり口をつぐんだ。
まっすぐにこちらを見つめるミルナに、内藤は考えを巡らせた。

ミルナの言うことは、とてもよくわかる。
だが、それはやはりミルナ一人が考えて始めたことで、時代が違えばテロリズムにも成りうることだ。
そんな彼に自分の見聞きしたことを――システムの語ったことを伝えて良いのだろうか。



36: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/05(木) 01:27:59.89 ID:yCKrSAZS0
  
( ^ω^)「……わかったお」

しばらくの逡巡の後、内藤は話すことに決めた。
決めたというのは、正しくない。
内藤は投げてしまったのだ、考えることを。

自分だけで考えるには、あまりにも大きすぎる問題。
その問題を前にして、内藤はすでに逃げてしまっていた。

システムが見せた夢のこと。
友人の顔をしたシステムが語った歴史と事実。
人間の管理計画。

( ゚д゚ )「……そうか」

すべてを聞いたミルナは大きく頷いた。

( ゚д゚ )「良く話してくれた。何故機械が一気呵成に責めてこようとしないのかと思っていたが、そうだったのか」
( ^ω^)「……」

内藤は大きく息をついて、温泉に口元までつかる。
重い荷物を下ろした感覚と共に、取り返しのつかないことをしてしまったような罪悪感が内藤を襲っていた。



37: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/05(木) 01:34:57.84 ID:yCKrSAZS0
  
本当にミルナを信じてよかったのか。
システムが自分に語ったことを漏らしてもよかったのか。
自分はもっと考えるべきではなかったのか。

だが、内藤は疲れていた。
無理もない、わずか一週間に満たないうちに、あまりにも多くの事が起こりすぎた。
システムがただ一つ見誤っていたとすれば、それは内藤の心労を考えなかったということだろう。

( ^ω^)「ボクは……ボクは……」

熱い温泉につかりながら、内藤は思い悩む。
だが、賽は投げられた。
もう取り返しはつかないのだ。

(   )「…………」

温泉の脇にある岩の影。
そこから、一人の人影が歩み去る。
その顔は苦渋に満ち、何かを思い悩んでいた。

( ゚д゚ )「風が、出てきたな」

空を見上げてミルナが呟く。
明日は雨が降りそうな気配だった。




この日、ミルナに話したことを。
内藤は後になって、激しく後悔することになる。



38: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/05(木) 01:38:10.74 ID:yCKrSAZS0
  
――といったところで、六日目終了です。
機械と戦うようですとスレタイにあるにもかかわらず、全く戦闘せずにいてすみません。
次回はついに最終回、ばんばん機械と兵器と秘密を出すつもりですのでご勘弁を。



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