('A`)ドクオは惚れ薬を浴びてしまうようです

1: :2007/08/03(金) 22:50:29.48 ID:wTUwub4h0

( ^ω^)「……で、その薬はアフリカ像の骨から作られているらしいお」

('A`)「ここまで胡散臭い話は初めてだわ」

授業が終わり、下校する生徒達の声で教室は騒がしい。
そんな教室の窓側の席で、俺とブーンは雑談をしていた。

話題は、最近ネットで騒がれている『惚れ薬』について。

( ^ω^)「とにかく、その惚れ薬はヤバイくらい効果があるらしいお!」

('A`)「そんなもんがあったら世の中混乱するだろ……常識的に考えて」

( ^ω^)「うん。だから、開発が終わった段階で廃棄されたらしいお。
       でも、どこからか流失した試作品がまだどこかにあるらしいお!」

('A`)「それなんて都市伝説?」



6: :2007/08/03(金) 22:53:02.68 ID:wTUwub4h0

( ^ω^)「ふひひ……僕が見つけたら憧れの女優さんとww」

ブーンは妄想の世界に入ってしまったようだ。

俺は呆れ気味にため息をつく。

('A`)「大体、お前にゃツンがいるだろうが」

( ^ω^)「ふぇ? なんでツンの名前が出てくるんだお?」

('A`)「そりゃお前……あ、お前ら付き合ってないんだっけ。まぁどう見てもお前らは――――」

直後、頭部に衝撃が走った。

('A`)「かゆ……うま……」

ああ、天国が見える。
さらばこの世。そしてこんにちはあの世……。

(;^ω^)「ド、ドクオ! 死ぬなおぉぉ!」



8: :2007/08/03(金) 22:55:58.63 ID:wTUwub4h0

ブーンが俺の体を左右に振る。

抜けかけていた魂は何とか体に舞い戻ることができた。

('A`)「ぶはっ! 死ぬかと思った……ってオイ、これ殺人未遂だろ」

俺は背後を振り返り、殺人鬼の面を見る。

そこには、見慣れた女子が腕を組んで仁王立ちしている。

ξ゚听)ξ「何よ。あんたが勝手なこと言ってるから悪いんじゃない」

ベスト・オブ・ザ・暴力のあだ名を持ち、かつブーンの幼馴染であるツンがそこにいた。

(;^ω^)「お、おいすー。先に帰ったのかと思ってたお」

ξ゚听)ξ「掃除」

ツンは箒を肩に乗せ、すごい剣幕でそう言った。

ξ#゚听)ξ「あんたらも掃除当番でしょうがっ!」



11: :2007/08/03(金) 22:57:14.27 ID:wTUwub4h0

('A`)「んだよ。掃除なんてしなくても大丈夫だって。先生いないし。めんどいし」

ξ#゚听)ξ「あんたねー、その無気力な考えやめなさいよ」

ツンが俺のケツを箒でバシン、と叩く。

('A`)「痛っ! 俺のプリティなおケツが……うっう」

ξ゚听)ξ「キモッ」

シンプルながら、一番ダメージがでかい悪口を普通に言うから困る。

ツンと知り合った頃は何度も泣かされたものだ。

( ^ω^)「まぁ、ツン一人が掃除してたら不公平だお。ドクオ、僕達も掃除するお」

('A`)「あいよー」

ブーンはこういうところは真面目な奴だ。

平等主義というか、思いやりが深いというか。

とりあえず、いい奴ってことだ。



16: :2007/08/03(金) 22:59:28.49 ID:wTUwub4h0

( ^ω^)「ツン、後は僕達で掃除するから大丈夫だお」

ξ゚听)ξ「べ、別にそこまで気を使わなくてもいいわよ……!」

( ^ω^)「そうかお?」

ξ///)ξ「そ、そうよ。その代わり、家まで送ってよね!」

素直に一緒に帰りたいと言えばいいのに。

ここまで感情がわかり易いのもある意味すごいもんだ。

( ^ω^)「わかったお! ボディーガードは任せてくれお!
       はっ! ワンモアセッ!」

そして、ここまで鈍感なのも、珍しい。



20: :2007/08/03(金) 23:02:04.48 ID:wTUwub4h0

学校を出て、三人で帰路を歩く。
俺達の家は高校から近いところにあり、通学はかなり楽である。

('A`)「そういや、もうすぐ期末テストだな」

(;^ω^)「何にもやってないお……ヤバスwww」

ξ゚听)ξ「はぁ。ブーン、あんた中間の時もそんなこと言ってなかった?」

('A`)「いや、一年の時も同じ台詞を聞いたような気がする」

(;^ω^)「中学の時も言ってた記憶があるお」

ブーンは勉強ができない。

いや、やらないと言った方が正しいか。

やれば出来る子は出来ない子。まさに、その言葉どおりである。



23: :2007/08/03(金) 23:03:56.44 ID:wTUwub4h0

(;^ω^)「誰か……テストの範囲下さいお……」

('A`)「そこからかよっ!」

ふと、ツンがため息をつく。

ξ゚听)ξ「ったく、しょうがないわね。ブーン、今週の土日空いてる?」

( ^ω^)「うん、空いてるお!」

ξ゚听)ξ「勉強教えてあげるから、準備しときなさい」

( ^ω^)「ほんとかお!? ツン、ありがとうだお!」

ブーンは満面の笑みを浮かべ、ツンにお礼を言う。

その笑みを向けられたツンの頬は、赤く染まっていた。

ξ///)ξ「べ、別にあんたのためじゃないからっ!
    幼馴染が留年したんじゃ世間に顔向け出来ないからよっ!」



24: :2007/08/03(金) 23:05:51.92 ID:wTUwub4h0

('A`)「はいはい。ごちそーさんっと」

相変わらず、見ているこっちが恥ずかしくなりそうなやり取りだ。

このやり取りの時だけは蚊帳の外なのでちょっと寂しい。

( ^ω^)「そうだ! ドクオも一緒に勉強しないかお?」

('A`)「いんや、俺はいいよ。一人の方が集中できるし」

ξ゚听)ξ「とか言っちゃって。あんま勉強しないくせに」

('A`)「あ? 俺は平均点を取ることに関しちゃスペシャリストだぜ?」

ξ゚听)ξ「はいはい。そりゃ素晴らしい頭脳ですこと」

まったく、気を使ってやってんのに口の悪い奴だ。



27: :2007/08/03(金) 23:07:10.11 ID:wTUwub4h0

('A`)「んじゃ、また明日な」

( ^ω^)「ばいばいだお」

ξ゚听)ξ「ちゃんと勉強しなさいよ!」

俺は二人と別れ、家へと歩き出した。


――――……


('A`)「あーあ、中間テストか。だりぃ」

勉強は嫌いじゃないが、好きでもない。

今回も適当にやって、平均点くらいとれればいいや。

('A`)「今日はエロゲでもやるか」

そう呟いた瞬間だった。

('A`)「ぶぐぁっ!?」

ばしゃん、という音と共に空から水が降ってきた。

髪の毛は濡れ、その場で呆然と立ち尽くす。



28: :2007/08/03(金) 23:08:56.54 ID:wTUwub4h0

('A`)「んだよ……雨か!?」

空を見上げる。

だが、空は雲ひとつ無い快晴で雨雲なんて一つも無かった。

('A`)「うわ、ひでえ……びしょびしょじゃん」

頭から思いっきり何かの液体を被ってしまったようだった。

('A`)「最悪だ……。早く帰ってシャワー浴びよ」

俺は不快感を覚えつつ家まで走った。

不幸中の幸いというべきか、水を被った場所は家の近くだった。



29: :2007/08/03(金) 23:10:10.48 ID:wTUwub4h0



('A`)「ふう……」

シャワーを浴び終わり、バスタオルで頭を拭く。

リビングへ入り、麦茶を飲みながら一休みする。

('A`)「カーチャ……あ、そういやカーチャンは旅行行ってんだっけか」

三日ほど箱根に泊まってくる予定だと記憶している。

つまり、この家は三日は俺以外に誰もいないということになる。

('A`)「これは心置きなくエロゲが出来る……! こりゃ勉強どころじゃないな」

勉強なんていつでもできる。

だけど、エロゲが心置きなく出来るのは今しか無いんだ。


――――俺はその日、深夜までエロゲに没頭した。



30: :2007/08/03(金) 23:11:29.59 ID:wTUwub4h0

翌日。

まぁ予想通りというべきか。

( ^ω^)「ドクオ、おいすー!」

('A`)「うぃっ……す」

寝不足でフラフラの俺がいた。

(;^ω^)「ちょwwwドクオ、大丈夫かお?」

('A`)「大丈夫……ちょっと……寝てないだけ……」

千鳥足で通学路を歩く。

お日様の光がこんなにも辛いと感じたのは初めてだった。



33: :2007/08/03(金) 23:13:26.30 ID:wTUwub4h0

ξ゚听)ξ「おはよー」

( ^ω^)「ツン、おはようだお!」

('A`)「うぃっす……」

ξ゚听)ξ「うわっ。何そのクマ! あんた一体何やって……」

ツンが俺の顔を見て声をあげる。

だが、その言葉は途中でぴたりと止まった。

('A`)「なんだよ。キモすぎて声も出ないってか? ったく、お前もう少し遠慮って物を……」

ξ゚听)ξ「……カッコいい」

ツンの瞳が俺を捉える。

その瞳は、まるで少女漫画のヒロインのようにきらきらと輝いている。

('A`)「はい?」



35: :2007/08/03(金) 23:14:50.33 ID:wTUwub4h0

当然、ツンが俺の腕を掴み体を寄せてきた。

('A`)「んなっ……!?」

ξ///)ξ「ドクオ……」

ぎゅっ、とツンは俺の腕を握る。

その顔はほんのりと赤く染まっていた。

(;^ω^)「おおっ!?」

(;'A`)「お、おいツン。これは新手のネタ振りか?」

寝不足の頭が一気に覚醒する。

ξ///)ξ「ドクオ……なんか……その、私、ドクオのこと好き……かも」

(;'A`)「何ぃぃぃ――!?」



38: :2007/08/03(金) 23:16:21.61 ID:wTUwub4h0

落ち着け。これは孔明の罠だ。

俺は瞬時に予想されうる考えを頭に浮かべる。

(;'A`)「わ、わかった! これ罰ゲームだろ! 誰かに言われて……」

ξ゚听)ξ「ううん、違う」

ツンが俺の目を見る。

無論、腕を組んだままだ。

ξ゚听)ξ「本気で、ドクオのことが好きなのっ!」

通学路を行きかう人々が一斉にこちらを振り向いた。

(;'A`)「……は」

思考が停止する。

ツンは、俺の目から視線を離さない。



40: :2007/08/03(金) 23:17:55.33 ID:wTUwub4h0

(;^ω^)「ドクオ、ぼ、僕、先に学校行ってるお!!」

(;'A`)「お、おいブーン!」

ブーンはあっという間に走り去ってしまった。

追いかけようとするが、ツンが腕をぎゅっと握っているので走ることが出来ない。

ξ゚听)ξ「ドクオ……」

ツンは泣きそうな目で俺を見る。


「おいおい、なんかトラブってるぜ」
「どうしたの?」
「何か修羅場らしい……あれ何組の人だ?」



42: :2007/08/03(金) 23:19:28.98 ID:wTUwub4h0

(;'A`)「ああ、もう! 話はじっくり聞かせてもらうからな!」

ξ゚听)ξ「うんっ!」

俺はツンの手を繋ぎ、学校まで走る。

寝不足の体に全力疾走はかなりきつかったが、俺の頭にそんなことを考える余裕は無かった。


――――


('A`)「で、どういうことなんだよ」

俺達はとりあえず体育館の裏に避難した。

完全に遅刻だが、そんなことはどうでもいい。

ξ゚听)ξ「何が?」

('A`)「お前、本気なのか!? その、俺のこと好き、とか」

自分で口に出しといて恥ずかしい気持ちになる。



45: :2007/08/03(金) 23:21:00.84 ID:wTUwub4h0

ξ゚听)ξ「うん。私はドクオのことが好き」

('A`)「おまっ……だって、お前はブーンのこと……」

ξ゚听)ξ「ブーン? なんでブーンが出てくるの?」

やっぱり、ツンはどこかおかしかった。

普段ならブーンとのことを茶化すと殴りかかってくるくらい気丈なのに。

何と言ったらいいのか、ツンの持っている雰囲気がまったく変わっていた。

(;'A`)「ツン、お前どうしちゃったんだよ。変なものでも食ったのか?」

ξ゚听)ξ「ドクオ」

('A`)「あん?」

ξ;凵G)ξ「私の気持ち……信じてもらえないの?」



47: :2007/08/03(金) 23:22:58.64 ID:wTUwub4h0

信じられないことが起こった。

あのツンが、涙を流していたのだ。

(;'A`)「え、ちょ……」

ξ;凵G)ξ「私……本気で……ドクオのこと……好きなのに……っ!」

ツンは、俺の胸に顔を押し当てる。

一気に接近度が上がり、俺の頭の中は真っ白になる。

ξ;凵G)ξ「バカ……好きっ!」

(;'A`)「んっ――――!?」

何が起こったのか、理解するのに一秒かかった。

俺の唇に何か柔らかいものが当たっている。



48: :2007/08/03(金) 23:24:25.95 ID:wTUwub4h0

目の前にはツンが見える。

ふと、ツンの髪から良い匂いがした。

俺の胸が、激しく高鳴り始める。

(;'A`)「ぷはっ!」

ξ;凵G)ξ「……これで、信じる?」

唇を離すと、ツンの手が俺の頬に触れる。

至近距離で俺に問いかけるツン。

……やばい、可愛い。

(;'A`)「そ、その。ツンの気持ちはよくわかった! わかったからちょっと離れてくれ!」

ξ゚听)ξ「……うん」

胸に手を当てて気持ちを落ち着かせる。

落ち着け、冷静になれ。



51: :2007/08/03(金) 23:25:53.33 ID:wTUwub4h0

ツンは本気、らしい。

そりゃ、ツンみたいな可愛い女の子が彼女になってくれたら万々歳だけど……。

だけど、やっぱり何かが引っかかっていた。

ツンに何が起こったのかはわからないが、何かが不自然だった。

('A`)「と、とにかく、一旦教室に行こう」

ξ゚听)ξ「うんっ!」

ツンは俺の手をしっかりと握ってきた。

それを、俺はじっと見つめる。

ξ゚听)ξ「どうしたの?」

(;'A`)「え、いや。なんでもない……」

まさか、手を繋いだまま教室に行くのか?

それは……色々とやばいだろ……。



55: :2007/08/03(金) 23:27:11.66 ID:wTUwub4h0



教室に入ると、朝のホームルームが終わった直後だった。

わいわいと生徒達が思い思いに雑談をしている。

( ゚∀゚)「おいおいおいおい! ドクオとツンちゃんどうしちゃったんだよ!?」

ひっそりと入ったつもりだったが、見事にクラス一のお調子者ジョルジュに見つかってしまった。

結局、ツンの手を振りほどくわけにもいかず、手を繋いだまま教室へ入ったのだ。

('A`)「こ、これは……ちょっと事情があって」

ξ゚ー゚)ξ「えへへ、実はねー……私達付き合ってるんだ」

ちょっと待った。俺はまだ返事してないぞ。

そう弁解しようとした時には、もう遅かった。


( ゚∀゚)「何ぃぃぃぃ――――!?」


雑談をしていた生徒、勉強をしていたガリ勉、留学生、若ハゲ。

教室にいた全ての生徒が、俺達二人に視線を向けた。



60: :2007/08/03(金) 23:29:17.05 ID:wTUwub4h0

( ゚∀゚)「おまっ! それどういう―――ぶぎゃっ!」

ジョルジュを押しのけて、教室中の生徒が集まってくる。

あっという間に、俺達の周りに人だかりが出来上がった。

「おいおいおい! どういう事だドクオ!」
「お前だけは……魔法使いになれるって信じてたのにッ!」
「え、どっちから告ったのー?」
「予想外すぎて毛が抜けたじゃないか! くやしいっ!」

('A`)「お、おいちょっと待っ……」

ξ゚听)ξ「まぁまぁw ほら、授業始まっちゃうよ!」

教室はまるでコンサート会場のように熱気と興奮に溢れていた。

('A`)「あっ……」

教室の隅。

ぽつん、と一人だけ机に座っているブーンの姿が見えた。

( ^ω^)「……」

一瞬、目が合う。

しかし、ブーンはすぐに視線を逸らした。



63: :2007/08/03(金) 23:31:35.66 ID:wTUwub4h0

('A`)「ちょ、ブーン……!」

(#゚∀゚)「痛んだよさっきから! 俺を踏むな若ハゲがぁぁぁ!!」

俺の声はジョルジュの叫びでかき消される。

「ハゲって言ったね! 今ハゲていったなぁぁぁ!! ぼっこぼこにしてやるぁぁぁ!!」

(#゚∀゚)「上等! 中国拳法見せてやらぁぁぁぁ!! ほぁぁぁぁ――――!」

人だかりの注目は、やがてジョルジュと若ハゲの喧嘩へと対象を変える。

俺はなんとか人だかりを抜け、ブーンに声をかけようとする。

(;^ω^)「……」

('A`)「ブーン、これは……その」

言葉が出てこない。

何を、言えばいいんだ。

俺が沈黙していると、不意に誰かが俺の手を掴む。

ξ゚ー゚)ξ「ドクオ、先生来ちゃうから座ろう」



69: :2007/08/03(金) 23:34:19.58 ID:wTUwub4h0

('A`)「あ、ああ」

俺はブーンと言葉を交わさず、自分の席に戻る。

胸の中が何だかもやもやしてて、気持ち悪かった。

( ∵)「授業を始めるぞー。席に着……」

(#゚∀゚)「ほぁぁぁっぁあったたたたああああああ!!!」

「あーったたたたたたたたたたあぁぁ――――!!!」

ビコーズ先生が来たにも関わらず、教室ではまだジョルジュと若ハゲが喧嘩を続けていた。

「ジョ・ル・ジュ! ジョ・ル・ジュ!」
「いけ! ボディーに打てぇぇぇ!!」



( ∵)「痛……また、胃が……」



72: :2007/08/03(金) 23:37:14.69 ID:wTUwub4h0



( ∵)「えー、だからナポレオンは凄いんだ、とにかく凄い強い。あれは私もビビッたね」

上の空のまま、授業を受ける。

今考えていることは、勿論ツンの事についてだ。

('A`)「……」

ツンの方をちらり、と見る。

ξ゚ー゚)ξ

('A`)「っ!」

危うく声を出すところだった。

ツンが、こっち見て微笑んだ。

ただ、それだけじゃないか。何で俺はこんなにドキドキしてるんだ。



75: :2007/08/03(金) 23:38:43.60 ID:wTUwub4h0

('A`)(って、違う!)

今考えるのは、ツンについてだ。

えーっと、ツンは可愛いし、胸は小さいけど意外と優しいところもあって……。

('A`)「って違うっつーの!!」

ドン、と机を叩き叫ぶ。

('A`)「……あ」

思考が口に出てしまった。

クラスメイトの視線が一気に俺に突き刺さる。



76: :2007/08/03(金) 23:40:05.72 ID:wTUwub4h0

( ∵)「ど、どうしたドクオ? 先生、何か間違った事言ってしまったか?
    ごめんな、先生、最近ボケてるからごめんな……」

('A`)「あ、いえ。そうじゃなくて」

俺があたふたしていると、ジョルジュが手を高く上げた。

( ゚∀゚)「せんせー! ドクオの奴、さっきツンさんと見つめあってましたー!
     こういうのはいけないと思いま――――す!!」

(;'A`)「なっ!」

その一言で、クラス中が「おぉ――――!」と声を上げる。

こういう時だけ団結するクラスはどうかと思う。

「おい、ドクオ見せ付けんなよ――!」
「ツン可愛い――! 赤くなってる――!」

ξ///)ξ「ちょ……もうっ! 皆やめてよ!」

その反応がツボに入ったのか、クラスの冷やかしはさらにエスカレートした。



79: :2007/08/03(金) 23:41:27.86 ID:wTUwub4h0

( ゚∀゚)「おいおいおいおい! どうなっちゃってんのぉ!?
     これキスする場面じゃないのぉ――!?」

('A`)「なっ――――!」

ジョルジュが立ち上がり、呼びかけるように叫ぶ。

すると、周りの生徒達がそれに乗っかった。

「キ――ス! キ――ス!」



( ∵)「先生な、家のローンがきつくて大変なんだ。家庭では尻に敷かれてるし、
    お小遣いも一ヶ月1000円だし、娘にはシカトされるし、車ぶつけるし……」



87: :2007/08/03(金) 23:44:43.64 ID:wTUwub4h0

最初は数人だったキスコールも、あっという間にクラス中がキスコールで包まれる。

「キ――ス! キ――ス!」
「キ――ス! キ――ス!」
「キ――ス! キ――ス!」

ξ///)ξ「や、やめてよ……もうっ!」

( ゚∀゚)「とか言っちゃって、立ち上がってるってことはノリノリじゃないですかぁ!」

ツンは顔を真っ赤にしながら、手をぶんぶんと横に振っている。

('A`)「ちょ、待っ……」

( ゚∀゚)「ほらほら、ドクオも早くこっち来るぅ――!」

ジョルジュに引っ張られ、俺はツンの前に立たされる。

クラスの熱気が最大まで上がり、歓声が教室を揺らす。

「うおおおおおおお!! まじかよぉぉぉ!!」
「やめてくれあwせdrftgyふじこlp;」
「This gets excited!」
「毛が……くそったれぇぇぇぇ!!」

( ∵)「携帯無くしてイタズラ通話されまくるし、壺買わされるし、
    中学生にカツアゲされるし、プラモ全部捨てられるし……」



89: :2007/08/03(金) 23:46:30.48 ID:wTUwub4h0

( ゚∀゚)「キ――ス! キー―ス!」

ξ///)ξ「……ドクオ」

ツンが目を閉じる。

それは、キスOKの合図だった。

(;'A`)「だから、俺は……!」



(#^ω^)「やめるおっ!!!」



全ての騒音をかき消すような大声が、教室に響き渡った。

教室中のキスコールが嘘のように一斉に止まり、声の主に視線が集まる。



93: :2007/08/03(金) 23:48:12.54 ID:wTUwub4h0

(;^ω^)「ハァ……ハァ……」

そこには、息を切らし立ち上がっているブーンがいた。

静まり返った教室の中、ブーンの息遣いだけが聞こえる。

(;^ω^)「その、今は授業中だお……。先生も困っちゃうお……」

ブーンはそう言うと「ごめんお」と謝った。

( ゚∀゚)「悪ぃ……。皆、席に着こうぜ」

その一言を合図に、さっきまで騒いでいたのが嘘のように教室は元通りになる。



95: :2007/08/03(金) 23:49:14.23 ID:wTUwub4h0

(;'A`)「……」

俺は席に戻り、呼吸を整える。

――――ブーンが、あんなに取り乱す姿を初めて見た。

(;'A`)(何やってんだ……俺は)

体が震える。

『今まで』が壊れていくのを、なんとなく感じる。

('A`)(んだよコレ……どうすればいいんだよっ……!)

拳をぎゅっと握る。

考えても考えても、答えは浮かんでこなかった。


( ∵)(なにこの重い雰囲気。あ……また胃が……)



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