('A`)ドクオは惚れ薬を浴びてしまうようです

3: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 13:54:47.59 ID:xL9+cTeo0

从 ゚∀从「おい、おばちゃん! これで文句ねぇだろ?」

「当たり前だよ。払うもんキッチリ払ってくれりゃお客様さ。はい、特性タイヤキ一丁!」

あたふたする俺を他所に、少女はタイヤキを購入し満面の笑みを浮かべている。

从*゚∀从「うはーっ! 甘ぇしうめぇしサイコーだな!」

少女がタイヤキを頬張るその隣で、俺は必死にツンのご機嫌を直そうとしていた。

(;'A`)「ほら、ツン。タイヤキ奢ってあげるから……」

ξ゚听)ξ「……」

(;'A`)「ふ、二つ奢るから」

ξ゚ー゚)ξb「よし、許す」

地獄の沙汰も食い物次第とはこのことだ。

ああ、俺の財布から小銭が消えていく。



4: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 13:57:24.08 ID:xL9+cTeo0

……



从 ゚∀从「さっきはありがとな! 自己紹介が遅れたけど、俺っちはハインリッヒ。
     なげーからハインって呼んでくれ」

('A`)「俺はドクオ。よろしく」

ξ゚听)ξ「……ツン」

タイヤキを奢ってあげたのに、なぜかツンは不機嫌なままだった。

俺達はタイヤキを購入した後、公園で休みつつタイヤキを食べることにし、今に至る訳だが



6: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 14:00:30.63 ID:xL9+cTeo0

从 ゚∀从「ドクオは16歳なのか。俺っちとタメじゃん!」

('A`)「え? じゃあ、君……ハインも、高校生なの?」

从 ゚∀从「いんや。俺はアメリカでファーバード大学卒業したから、今は学生じゃないな」

(;'A`)「へー……って、えぇ!?」

ファーバード大学といえば、アメリカで最も頭のいい大学だ。

从 ゚∀从「ま、そこで研究をしてたんだが、ちょいと色々あって日本に戻ってきた訳よ」

('A`)「そうなんだ。すげぇな……」

タイヤキを食うのも忘れ、その凄さに改めて驚く。

俺なんて、勉強よりエロゲのことばっか考えてるからなぁ……。

なんか自分が惨めになってくる。鬱だ……。



12: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 14:04:38.00 ID:xL9+cTeo0

('A`)「ん?」

ふと、隣からぐしゃり、と何かが潰れるような音が聞こえた。

そちらに視線を移す。

ξ )ξ「……」

恐らく、俺が生きてきた中で最恐の光景が、そこにあった。

(;'A`)「つ、ツン?」

ξ )ξ「ナアニ?」

(;'A`)「その……怒ってますよね。確実に」

ξ )ξ「ベツニ アンタタチ フタリデアソンデレバ?」

ぐしゃっ! と盛大な音を立て、ツンが持っていたタイヤキが潰れる。

俺は命の危険を感じた。



16: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 14:09:08.11 ID:xL9+cTeo0


(;'A`)「なぁ、ツン。その――」

ξ#゚听)ξ「ドクオのバカ――――!! もう知らな――――い!!!!」

言い終わる前に、ツンの怒号と鉄の拳が俺の口を塞いだ。

俺は悲鳴をあげる暇も無く、ベンチの後ろにあった公園の木まで吹っ飛んだ。

(;'A`)「あ……がぁ……ぐふっ」

从;゚∀从「お、おい! 大丈夫か!?」

意識が遠のいていく。

最後に見たのは、ハインの心配そうな顔と、ツンの走り去る後姿だった。



19: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 14:12:55.89 ID:xL9+cTeo0


夢を、見ていた。

俺がまだ小学生の時の夢だ。

ブーン達と出会った、小学生の頃の記憶。

('A`)『なぁ、ぶーんとつんってカップルなのか?』

( ^ω^)『かっぷる?』

ξ゚听)ξ『な、なにいってるのよ! そんなわけないじゃない!』

('A`)『そうなのか。いや、仲いいからそういう関係なのかと……いやはや』

( ^ω^)『ねえ、かっぷるって何だお?』

('A`)『おたがいに、好きって言える関係のことだよ』



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/08(月) 14:17:16.94 ID:xL9+cTeo0

ああ、そうか。

この頃から、俺はツンのことを意識していたのかもしれない。

ただ、それは触れてはいけない物のような気がして、表には出さなかったんだ。

自分の中で、抑えていたのかもしれない。

それを出してしまえば、この心地よい関係が壊れてしまうから。

……ブーンも、ツンも、きっと同じ事を感じていたんだろう。

でも、ツンはそれを壊してまで、俺のことを好きと言った。

こんな俺のことを――――好き、と。



25: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 14:19:40.08 ID:xL9+cTeo0

嬉しかった。

俺の事を好きなんて言ってくれる人は、いないと思っていたから。

貧弱で、頭も悪いし、顔もぱっとしないし、根暗な俺を好きと言ってくれた。

こうやって、今まで隠してた気持ちを表に出してしまったんだ。

もう、三人の関係には戻れない。

……戻れないんだ。



27: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 14:22:07.87 ID:xL9+cTeo0


('A`)「う……」

从 ゚∀从「おう、大丈夫か?」

ぼんやりと、意識が戻ってくる。

目を開けると、ハインが心配そうに俺の顔を覗き込む。

('A`)「そうだ……俺、ツンに吹っ飛ばされて……」

そうだ。俺はツンを怒らせてしまったんだ。

('A`)「ツンは!? 痛ッ……」

从;゚∀从「おい、急に起き上がるなって! もうちょっと休んどけ」

('A`)「う、うん」

俺はハインの言葉に甘え、もう一度ベンチに寝転がる。

と、頭に心地よい枕の感触がした。



28: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 14:24:21.45 ID:xL9+cTeo0

('A`)「あれ……? 最近のベンチには枕がついてるのか?」

从 ゚∀从「んなわけねぇだろ。俺っちの膝貸してやってんだ。ありがたく思えよ」

不意に、自分の置かれた状況について気付いた。

この感触。このアングル。

これって、まさか……。

(;'A`)「え、ちょ、膝枕!?」

从 ゚∀从「ああ、だから動くなって。くすぐったいっつーの!」

ハインが俺の頭を押さえ込む。

柔らかい膝の感触が、より一層強くなった。

(;'A`)「ちょ!! あの、こういうのはその、嬉しいけど……」

从 ゚∀从「タイヤキ奢ってもらったお礼だ。これで貸し借り無しな!」



31: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 14:28:26.54 ID:xL9+cTeo0

少年のようにハインが微笑む。

その屈託の無い笑顔に、俺の心臓がドクン、と揺れる。

(;'A`)「も、もう大丈夫だから! うん、元気になった!」

从 ゚∀从「ん? そうか?」

これ以上、膝の感触に触れ続けていると、色々爆発してしまう。

俺は限界を感じ、ハインから離れようとする。

(;'A`)「うん。ありがとう。もう起き上がれるっす!」

从;゚∀从「お、おい。そんな勢い良く起き上がると、また傷が――――はうっ!」

('A`)「ぶっ!」

顔に何やら、柔らかい感触が伝わってくる。



34: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 14:33:00.51 ID:xL9+cTeo0

从;゚∀从「うぁ……?」

('A`)「……」

ぷに。ぷにぷに。

('A`)「えーっと……」

何と言ったらいいのだろうか。

この状況を簡素に説明すれば、俺の顔がハインの胸に触れている、と言った所か。

(;'A`)「あ、その、これは……」

体が固まる。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/08(月) 14:35:29.49 ID:xL9+cTeo0

从 ∀从「……」

やばい。何かやばいですよ。

(;'A`)「ご、ごめ(ry

从#゚∀从「ぎゃお――――!!」


天を貫くようなアッパーカットが、俺に炸裂する。


俺は、現世にさよならを告げ、空に輝く一つの星となった……。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/08(月) 14:38:23.40 ID:xL9+cTeo0


从;゚∀从「いや、マジですまん!」

ハインが顔の前で手を合わせ、頭を下げる。

なんとか一命を取り留めた俺は、公園の木陰で休んでいた。

(;'A`)「こういうのは慣れてるから大丈夫だよ、うん。俺の方こそごめん」

从;゚∀从「いやー、なんで俺、会ったばかりの人に膝枕なんかしちゃってんだろ。
      おまけに電撃アッパー炸裂させちまうし……」

ハインはポリポリと頭をかきながら言った。

俺はそんなハインをぼうっと見ていると、ある事に気付く。

('A`)「あれ、ハイン。ポケットが赤く光ってるけど……」

从 ゚∀从「ん? ああ、これか。これは惚れ薬センサーって言って――――」

そう言いながら、ハインは白衣のポケットから手のひらサイズの機械を取り出す。

瞬間、ハインの表情が固まった。



40: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 14:40:51.48 ID:xL9+cTeo0

从;゚∀从「うわっひょおおぉぉぉい!?」

(;'A`)「どわっ!」

突然、ハインが奇声をあげる。

从;゚∀从「そうか……どうりで……」

('A`)「ど、どうしたんだよ?」

ハインは機械を手に持ち、ぶつぶつと呟く。

やがて、ハインは真面目な顔に戻り、俺の顔を真っ直ぐに見つめた。

从 ゚∀从「ドクオ、悪い。俺っちは家に帰って確認しなきゃいけない事が出来ちまった」

('A`)「確認したい事?」

从 ゚∀从「ああ。ドクオ、お前が俺っちの探していた人物かもしれない」

ハインが静かに、そう言った。



42: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 14:42:57.80 ID:xL9+cTeo0

('A`)「俺を……探していた? どういうこと?」

从 ゚∀从「悪い、確認してみねーと詳細は言えないんだ。
     んじゃ、俺っちは家に戻るぜ!」

びゅん、と風を切り、ハインは俺に背を向け駆け出した。

(;'A`)「お、おい。まだ話は――――」

从 ゚∀从「あ、ドクオ――――!!」

遠くでハインが振り返り、手を大きく振る。

从 ゚∀从ノ「タイヤキの事、ありがとな――――!! んじゃ、また会おう明智君!!」

最後にそう言い残し、ハインは走り去っていった。

一人残された俺は、ぽつんと立ちすくむ。

('A`)「結局、何だったんだろう……?」

夕日が差し込む公園。

後ろの方で、カラスが間抜けな鳴き声を響かせていた。



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/08(月) 14:46:41.67 ID:xL9+cTeo0


朝の通学路。

俺とツンは、いつものように二人で学校へ向かう。

……はずなのだが。

('A`)「それでさ、そのドラマ面白くてさ」

ξ゚听)ξ「……へぇ」

('A`)「なんつーか、脚本がよくできてるよね」

ξ゚听)ξ「ふーん」

(;'A`)「その……」

ξ゚听)ξ「何?」



49: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 14:49:35.98 ID:xL9+cTeo0

(;'A`)「ご、ごめん」

俺は空気に耐え切れず、謝る。

しかしツンは、足を止めずに早足で歩く。

ξ゚听)ξ「何が? 別に怒ってないもん」

(;'A`)「いやいやいや、どう見ても怒ってるよな」

ξ゚听)ξ「だから怒ってないもん」

ツンは立ち止まり、頬を膨らませ俺の方を見る。



51: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 14:51:01.66 ID:xL9+cTeo0

('A`)「……俺、バカだから、どうしてツンが怒ってるかわかんないけど……
    何か気に障るような事しちゃったなら、ごめん」

俺は頭を下げ、ツンに謝る。

どうしてツンが怒ってるかは、考えたけどよく分からなかった。

でも、俺が気付かないだけで、ツンに凄く失礼なことをしてしまったのかもしれない。

ξ゚听)ξ「……」

ツンは黙ったまま、俺をじっと見つめる。

やがて、小さなため息を吐き

ξ゚听)ξ「……って、言ったら、許す」

('A`)「え?」

消えるような声で、ツンが呟いた。



53: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 14:53:46.59 ID:xL9+cTeo0

ξ;゚听)ξ「二回も言わせないでよ! だ、だから……好きって言ってくれたら……ゆるす」

(;'A`)「ぶふぃっ!?」

思わず噴出してしまった。

まさか、そんな事を言われるなんて、思ってもいなかったのだから。

(;'A`)「え、えーっと……」

ξ///)ξ「……う、うん」

ツンは顔を真っ赤にしながら、俺の言葉を待つ。

手を後ろでもじもじと動かし、落ち着かない様子だ。

やばい……可愛すぎる。



55: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 14:55:54.12 ID:xL9+cTeo0

('A`)「お、俺は……ツンのこと……」

ξ///)ξ「うん……」

ごく、と唾を飲み込む。

赤面したツンを見て、俺の心臓の鼓動は限界を突破していた。

恥ずかしがるな。俺の正直な気持ちじゃないか。

よし、言うんだ。気持ちを言葉にするんだ――――

(;'A`)「す、す、好――――」


「おや!!ドクオさんにツンさん!! おはようございまーす!今日も朝から熱いっすねー!」



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/08(月) 14:57:48.38 ID:xL9+cTeo0

(#'A`)「……」

ξ#゚听)ξ「……」

「あれ? どうしたんですか? ハハハ、こりゃお邪魔虫だったかな?
 空気を無視するだけに!! あはははは!」

若ハゲ……。

そうやって、空気を読めないから、ハゲるんだぜ。

「あれ? どうしたんですか? あれ……?」

俺とツンはゆっくりと若ハゲに近づき、思い切り拳を引く。


(#'A`)ξ#゚听)ξ「死に晒せ――――!!!」


「ぐわあああああああああああぁぁぁぁ――――……ぁぁぁ……」



若ハゲは星になった。



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