('A`)達は月に願い事をするようです
- 2: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 16:39:16.93 ID:vPWFhTC2O
- 手は血塗れ。
服は血塗れ。
武器は血塗れ。
心も……血塗れ。
自分の姿を見て、絶望する。
「俺は……」
願い事の答えよりも、もっと側にある答え。
その答えに、最後の最後に気付いた。
『ふふふ、最高の喜劇だったわ』
『また、今度も観ようかしら』
『さぁ、願い事を叶えてあげる』
許さねぇ……。
いつか……。
「俺を、不老不死にしてくれ」
『つまらない、つまらなさ過ぎるわ……』
『もっと面白い物を期待してたのに……』
『……まぁ今回は良いわ、次に期待するから』
『あははははは!!人間なんて所詮、遊び道具よ!!!』
- 3: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 16:40:48.98 ID:vPWFhTC2O
- クーとブーンは我が耳を疑った。
渡辺が、何百年も昔から生き続けている事。
渡辺が、月極の優勝者であった事。
クーとブーンは、シューへと滲み寄る。
川 ゚ -゚)「……どういう事だ」
(;^ω^)「あの娘は、一体」
太陽が沈み始め、空は夕焼けと夜空が交じり合っている。
まるでクーとブーンの心境を、映し出しているかの様だ。
そんな中、シューは全身を震わせながら、クーとブーンの質問に答えた。
lw;´‐ _‐ノv「おおおおおちつけ!まだ、あああ慌てるような時間じゃない!」
( ^ω^)「いや、シュー姉さんが落ち着けお」
lw*´‐ _‐ノv「てへっ」
舌を出し、シューは頭をコツンと叩いた。
本来の、シューのペース全開である。
- 5: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 16:42:11.43 ID:vPWFhTC2O
- 川 ゚ -゚)「どういう事か真面目に答えてくれ」
クーはしつこく食い下がる。
余程、渡辺の事が気になっている様子だ。
正気に戻す為に、手助けしてくれた。
そして、友達にもなってくれた。
クーは、真実を知りたかった。
lw´‐ _‐ノv「クーちゃん……あのさ」
シューは、真剣な口調でクーへと語りかける。
lw´‐ _‐ノv「真面目な時の私と、クーちゃん。似てなくなくない??」
lw;´‐ _‐ノv「まさかドッペルゲンガー!?私死ぬの?」
lw;´‐ _‐ノv「嫌だ!テレポーター!こやのなかにいる!」
一通り叫び終えると、シューは小屋の中へと颯爽と、入って行った。
クーは唯、呆然と立ち尽くしている。
- 6: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 16:44:03.44 ID:vPWFhTC2O
- (;^ω^)「クー、気にしない方が良いお。あれが普段のシュー姉さんだお」
川 ゚ -゚)「……変わった従姉を持ってるな」
(;^ω^)「だおだお。シュー姉さんは意味不明だお」
川 ゚ -゚)「まぁ、私達も中に入ろうか」
クーとブーンは、小屋に入った。
小屋の中は埃の臭いが酷かったが、畳が敷かれており、
部屋の真中には、丸い卓袱台も置かれていた。
卓袱台の上には古めかしい電気スタンドが置かれている。
壁には古めかしい四角い窓。
昔、誰かが住んで居た生活臭が、仄かにする。
卓袱台を前にして、シューは座禅を組んでいた。
そして右手を差し出して、シューは口を開いた。
lw´‐ _‐ノv「業魔殿へヨーソロー。ささ、米は出せないが私の前に座り給え」
川 ゚ -゚)(;^ω^)「…………」
- 7: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 16:47:05.18 ID:vPWFhTC2O
- シューの言葉を半分無視するかのように、クーとブーンは並んで座った。
ブーンは足を崩し座っており、クーは正座をしている。
四角い窓から入ってくる夕日が、三人を照らす。
数分間、静寂に包まれていた中、クーが静かな声でシューに話掛けた。
川 ゚ -゚)「……ふざけないで、渡辺の事を教えて欲しい」
その言葉にシューは真剣な表情をした。
クーに顔を向けて、先程までとは一転し、真面目な口調で語り出した。
lw´‐ _‐ノv「……渡辺さんは月に願いを叶えて貰った。
『不老不死』という願い事。
それからは、一睡もせずに各地を巡って生きて来た」
川 ゚ -゚)「だからあんなに目が虚ろなのか……」
( ^ω^)「でも、何の為に寝ずに各地を飛び回って来たんだお?」
次に、シューはブーンに顔を向けた。
その顔は暗く、重く、ブーンは少し寒気を覚えた。
一言、たった一言をシューは口にした。
しかし、その一言はどんな長話よりも、濃い物であった。
- 9: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 16:48:54.74 ID:vPWFhTC2O
- lw´‐ _‐ノv「月を殺す為」
川 ゚ -゚)(;^ω^)「!?」
『月を殺す為』に渡辺は今まで生きて来た。
クーとブーンは思考を張り巡らせるが、壮大過ぎて、追付かない。
一体何が、渡辺をそんな意思へと、駆り立てているのだろうか。
lw´‐ _‐ノv「私は渡辺さんから聞いた事を話している」
lw´‐ _‐ノv「だから、私の言葉は渡辺さんの言葉として聞いて」
夕日の色が、段々と暗くなって行く。
夜が近い。
嘲り笑う月が、もうすぐ姿を見せる。
lw´‐ _‐ノv「何百年も昔、王様や貴族が闊歩していた時代。
渡辺さんはそんな時代に、貧民層として生を受けた。
普通の生活もまともに出来ない日々。
その中で、月に願い事をした。
『大金持ちになりたい』と」
- 11: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 16:50:15.98 ID:vPWFhTC2O
- 川 ゚ -゚)「ちょっと待て。願い事は『不老不死』と言って無かったか?」
(;^ω^)「そうだお。願い事は一つだけの筈だお」
シューは、二人の言葉に耳を傾けた。
何か考えているのだろうか、口は一文字に閉じられている。
オレンジ色の夕日が徐々に消え、部屋を夜の闇が占拠し始めた。
ブーンが卓袱台の上に置かれている、
電気スタンドのスイッチを押そうと手を伸ばした時、
シューの声が響いた。
lw´‐ _‐ノv「私達と同じ。答えに辿り着いた。最後の最後で、だけど」
( ^ω^)「お?『頑張って働けば良かった』とかかお?」
暗闇で、うっすらとしか見えないシューの唇。
その唇がゆっくりと動き、ブーンの言葉を否定した。
lw´‐ _‐ノv「違う」
川 ゚ -゚)「なら、どんな答えなんだ?」
- 12: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 16:52:19.64 ID:vPWFhTC2O
- すぐ側にある答えより、もっと側にある答え。
『人間』として、生きて行く為に必要な答え。
血に染まりに染まった渡辺は、最後に気付いた。
絡み付いた狂気の根を断ち切るのが、遅過ぎた。
lw´‐ _‐ノv「人を……。人を殺してはいけない」
川 - )( ω )「―――」
部屋を静寂が、闇が、支配する。
静寂の中に、今まで殺して来た、月極達の断末魔の声が聞こえる。
闇の中に、血を浴びて笑っている自分の姿が映し出される。
クーとブーンは、喉の奥に熱い物が、込み上がって来るのを感じた。
川 - )「……もう駄目だ。今すぐ自首しよう」
( ω )「……そうだお。それか、自殺しても良いお」
声にならない声で、ぶつぶつと呟く、クーとブーン。
項垂れ、力無く二人が倒れ込みそうになった時、光が灯った。
- 13: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 16:53:41.73 ID:vPWFhTC2O
- シューが、電気スタンドのスイッチを押している。
それによって、周囲の物がはっきりと見える様になった。
シューは立ち上がり、窓に向かい歩き出した。
腰の下まであるシューの黒髪が、光で煌々と映る。
窓を開け、シューは空を見上げた。
そして、独り言の様に呟いく。
lw´‐ _‐ノv「何十人もの命を奪っておいて、自分一人の命で償う」
lw´‐ _‐ノv「ま、それはそれで良いと思う」
川; - )「そ、それは」
(; ω )「また自分勝手かお?ならどうすれば良いお……」
何十人もの命と、自分一人の命。
秤にかけたらどちらが重いのだろうか。
クーとブーンは、頭を抱え嘆き苦しむ。
- 14: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 16:54:50.91 ID:vPWFhTC2O
- 二人が狼狽していると『パン』と部屋に音が響いた。
驚き、音がした方向に二人は顔を向ける。
そこには両手を合わせ、二人の方向へと向いているシューの姿。
lw´‐ _‐ノv「それは後で考えればおっけ。話はまだ途中」
川 - )「渡辺の……願い事の話か……」
シューは頷くと両手を放し、窓辺へともたれかかった。
そして、再び語り始めた。
lw´‐ _‐ノv「渡辺さんが願い事を叶えて貰おうとした時、月は言った」
『また、今度も観ようかしら』
lw´‐ _‐ノv「ってね。つまり」
シューが話を続けようとすると、ブーンの叫び声が遮った。
- 17: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 16:56:58.60 ID:vPWFhTC2O
- (# ω )「今度とは僕達の事かお!?
僕達を月は嘲り笑っているのかお!?」
シューは一つ頷いて、話を続ける。
lw´‐ _‐ノv「また今度開催される愚かな殺し合い。
その為に、渡辺さんは不老不死へと願い事を変えた。
各地を一睡もせずに巡り、やっと今回の『異変』に辿り着いた」
川;゚ -゚)「異変……とは……?」
シューは窓辺から離れ、卓袱台の前へと戻り、座禅を組んだ。
そして、顔を真っ直ぐに向け、クーとブーンを見えない目で射抜く。
見えない物が見える、シューの閉じられた目が、二人を捉える。
二人は身体の中で、何かが蠢いているかの様な感触を覚えた。
シューは大きく呼吸をして、二人の心を潰す言葉を、口にした。
lw´‐ _‐ノv「ドクオ君」
川;゚ -゚)「何?」
(;^ω^)「ドクオ?」
- 19: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 16:58:17.08 ID:vPWFhTC2O
- クーとブーンは、思考がシューが言った言葉に、追い付けなかった。
シューが言うには、つまり『異変はドクオだ』という事である。
しかし、全く意味が分からない二人は、目を白黒とさせた。
川;゚ -゚)「全く意味が分からない……」
(;^ω^)「異変はドクオ……?」
lw´‐ _‐ノv(……ごめん。ブーン君、クーちゃん)
シューは、ブーンとクーを見遣る。
目の見えないシューに、ひしひしと伝わる二人の感情。
疑問、焦躁、不安、それら全てを受け入れ、シューは口を開いた。
lw´‐ _‐ノv「ドクオ君は生まれつき、狂気を孕んでいた」
(;^ω^)「それは月が仕掛けた事では……」
シューは首を左右に振った。
否定の証に、ブーンは息苦しくなったが、話の続きを聞こうと沈黙する。
- 21: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 16:59:58.98 ID:vPWFhTC2O
- lw´‐ _‐ノv「ドクオ君は生まれ付き、狂気を持っている。
自分では気付いていなかったようだけど。
月はドクオ君の『狂気』に興味を持ち、付け込んだ。
付け込んだと言っても、唯ドクオ君を眺めてただけだけど」
(;^ω^)「……いつ?僕達が戦った時かお?」
シューは、ブーンの疑問を聞くとその場に立ち上がった。
そして、天井を見上げながら口を開く。
lw´‐ _‐ノv「凡そ十二年前、満月の夜、ドクオ君は御両親を殺害した」
川;゚ -゚)(;^ω^)「!?」
クーとブーンは、驚きを隠せず立ち上がった。
そして、シューの側へと駆け寄る。
クーは、シューの眼前に立ち、縋る様な目を向ける。
ブーンはシューの右腕を掴み、激しく揺さぶった。
- 23: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 17:01:46.43 ID:vPWFhTC2O
- 川;゚ -゚)「生まれつきの狂気なんて……有り得ない」
(#^ω^)「嘘だお!ドクオはそんな奴じゃないお!月がさせたんだお!!」
シューは天井から顔を降ろし、ブーンとクーを見遣った。
そして、優しく二人の頭を撫でながら話掛ける。
lw´‐ _‐ノv「クーちゃん、それは有り得るよ。
人は一人一人、心を持っている。
優しい心だったり、嫌味な心だったり様々。
その中に狂った心があっても、何ら不思議では無い。
」
川 - )「…………」
クーは、暗い表情で沈黙した。
心の形は一人一人、色々な形をしている。
心の色は一人一人、様々な彩りを持っている。
そして、心そのものは一人一人、色々な特性を持っている。
ドクオは、そんな無限にある『心』の中の一つ、『狂った心』の持ち主。
- 24: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 17:04:09.61 ID:vPWFhTC2O
- lw´‐ _‐ノv「そしてブーン君、月が仕組んだ事じゃないよ。
ドクオ君は無意識下の元で人を殺した。
まぁ、私が想像するに、月という人物はとても高慢なようだ。
きっと『自分が仕組んだ』と思い込んでいるだろう。
ぶっ飛んだ思考の持ち主、私は知り合いに欲しく無い」
( ;ω;)「信じない、僕は信じないお!」
ブーンは泣きながら、掴んでいるシューの右腕を強く握る。
ドクオは、生まれ持っての殺人狂。
月は高慢で、そんなドクオにとり憑いた。
そして今は、殺し回っているドクオを見て嘲り笑っている。
ブーンは頭が狂いそうになり、シューの右腕を放し、座り込んだ。
そこに、再び『パン』という大きな音が響いた。
ブーンとクーは、再び驚き、音の主へと目を向ける。
- 26: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 17:06:14.20 ID:vPWFhTC2O
- lw*´‐ _‐ノv「今日も、良い米日和だ」
そこには、先程とはまるで調子の変わったシューが居た。
手には、何処からか取り出したのか、クラッカーを持っている。
クラッカーから放たれた、小さな紙がひらひらと、地面へと落ちて行く。
lw*´‐ _‐ノv「もう、おっけでしょ?全部分かったっしょ?っしょ?」
軽いノリでクーとブーンへ、シューは問掛けた。
二人は力無い声で、シューへと返答する。
川 - )「……ドクオを完全に狂わせたのは私達だ」
( ω )「正気になれた今なら分かるお。あの晩のドクオは変だったお」
クーとブーンの返事を聞き、シュー頷いている。
そして、再び座禅を組んで座った。
- 28: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 17:07:52.43 ID:vPWFhTC2O
- lw*´‐ _‐ノv「渡辺さんも、何とか軌道修正しようとしたんだけどね。
あの人は本当に人付き合いが下手。
カウンセリングも微妙。
美味しいご飯でも食べて出直して欲しい」
川 ゚ -゚)「軌道修正?」
クーはシューが喋った一つの単語に、疑問を覚えた。
その疑問に対して、妙なノリを崩さずシューは答える。
lw*´‐ _‐ノv「クーちゃんとドクオ君は昔、此所でよく遊んだ。
渡辺さんは、月が仕掛けた罠のドクオ君を何とかしようとした。
しかし、その策は失敗に終わった。
三行きたこれ!?」
lw;´‐ _‐ノv「あっ、四行になっちゃった……」
シューは頭を抱え、卓袱台へと突っ伏した。
何やらぶつぶつと、呟いている。
そんなシューを見遣りながらクーは、昔を思い出していた。
- 30: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 17:09:45.25 ID:vPWFhTC2O
- 川 ゚ -゚)(そうか……あの時の友達はドクオだったのか……)
川 ゚ -゚)(ドクオ、渡辺すまなかった……)
クーは、深く反省をした。
あの時を、思い出しながら。
クーが目を瞑り、胸を締め付けられていると、怒鳴り声が響いた。
(#^ω^)「ムカついて来たお!月の野郎、僕達を目茶苦茶にしやがってお!!」
(#^ω^)「僕は月を叩きのめすお!自分がした責任はその後に取るお!!」
川 ゚ -゚)「そうだな。渡辺の気持ちが分かった。私も月をぶん殴りたい気分だ」
クーとブーンの声を聞いて、シューは机から顔を勢いよく起こした。
目元には涙の跡。
シューは先程の失敗で、マジ泣きしていた様だ。
シューは笑顔で、二人へと語掛ける。
lw*´‐ _‐ノv「月を倒すと言うのか、勇者達よ」
川 ゚ -゚)「うむ、流石に許せん」
(#^ω^)「フルボッコにしてやんお!!」
- 31: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 17:11:07.55 ID:vPWFhTC2O
- クーとブーンの固い決意。
今、月という魔王を倒しに行く勇者が、誕生した。
lw´‐ _‐ノv「ふーむ、なら一つ問題がある」
川 ゚ -゚)( ^ω^)「??」
lw´‐ _‐ノv「渡辺さんによると、月は優勝者の前にしか姿を現さないそうだ」
川;゚ -゚)(;^ω^)「―――」
優勝者の前にしか姿を現さない月。
それはドクオを殺し、尚且つクーかブーン、
どちらかが死ななければいけない、という事である。
月はどこまでも姑息で、卑怯で、狡猾であった。
まさに、魔王が為せる、業。
- 32: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 17:12:44.67 ID:vPWFhTC2O
- 勇者は時として、避けられぬ選択肢に悩む。
葛藤し、抗い、そして選ぶ。
誇らしく、ただ前だけを見て。
( ^ω^)「ドクオを倒すお……そして僕が死んで、クーに生きて欲しいお」
川 ゚ -゚)「何を言う。私は人を殺し過ぎた。ブーンこそ生き残るべきだ」
(;^ω^)「僕よりクーの方が強いから、月を倒せる可能性が高いお」
川 ゚ -゚)「いや、ブーンの方が強いだろう。あの晩、手も足も出なかったぞ」
そんなクーとブーンの会話を聞き、シューは立ち上がった。
そして、鼻歌を奏でながら小屋の外へと、歩いて行く。
lw*´‐ _‐ノv「ふんふふふーふ、ふふふ、ふふふん♪」
( ^ω^)「シュー姉さん、どっかに行くのかお?」
- 34: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 17:13:56.13 ID:vPWFhTC2O
- ブーンの問掛けに、シューは鼻歌を止め、あっさりと答える。
lw´‐ _‐ノv「いやー、運動しようかと」
( ^ω^)「運動?こんな時間にかお?」
lw´‐ _‐ノv「うん、貴方達は私の米運動をそこで見てて。
激しい運動だから、もし私が死んだら此処に墓を立てて」
川 ゚ -゚)「どんな運動だ」
シューは再び鼻歌を奏でながら、外に出て行く。
クーとブーンは部屋の中から、その様子を見ている。
小さくなって行くシューの背中。
そしてある程度小屋から離れた所で、シューはクーとブーンの方へと向きを変えた。
lw´‐ _‐ノv(嫌。本当に嫌。でも、これしか無い)
- 35: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 17:16:04.16 ID:vPWFhTC2O
- シューは、大きな声で叫んだ。
lw´‐ _‐ノv「渡辺さんは、貴方達が月を倒してくれるのを、確信しているらしい!」
lw´‐ _‐ノv「じゃ、あとは頼んだ!よろしく!」
シューは叫び終えると、右腕を前に伸ばした。
ブーンは、シューの真相を語る長話の中で、忘れていた。
故に、シューを計算の内に入れて無かった。
あの構えは―――。
( ゚ω゚)「シュー姉さん!!」
ブーンの叫び声を無視し、シューは口を開く。
lw´‐ _‐ノv「この愚かな連鎖を断ち切れ『神無月』」
途端、眩しい光がシューを包み込んだ。
数秒後、光が晴れて、シューの姿が視認出来る様になった。
シューの手には、大きな鎌の柄が握られていた。
lw´‐ _‐ノv「いっくぞぉ―――『満月』」
シューは、神無月を天高く、放り投げた。
- 36: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 17:17:41.14 ID:vPWFhTC2O
- 神無月は白く光を輝かせながら回転し、夜空へと上昇していく。
白く輝く神無月が、満月の様に見えた。
神無月が限界地点に達し、今度は降下し始めた。
( ゚ω゚)「まさかまさかまさか」
川;゚ -゚)「シューさんはもしかして」
( ゚ω゚)「駄目だお!!」
瞬間、ブーンの姿は消え、シューの身体を両手で押していた。
しかし、シューの身体は微動だにしない。
( ゚ω゚)「クー!神無月を!」
川;゚ -゚)「分かっている!霜月!」
霜月を手にしたクーは、目にも止まらぬ速度で神無月へと飛んだ。
霜月で神無月を斬るが、潰す所か、軌道を変える事すら出来ない。
- 38: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 17:19:11.03 ID:vPWFhTC2O
- 川;゚ -゚)「くっ!小望月!」
クーは全力を出し、神無月を連続で斬り付ける。
木々を揺らす、衝撃波。
辺りに響く、金属音。
しかし、相手は最強に属する技、満月。
回転を止めず、下降していく。
クーは、神無月の柄を掴もうとしたが、手を弾かれた。
( ゚ω゚)「ちっくしょおおおお!文月ぃぃ!!」
ブーンも、シューから両手を放し、神無月へと飛び上がる。
( ゚ω゚)「ぶっ潰せお!宵待月!!」
ブーンも全力で神無月を、叩き斬ろうとする。
力強い連続技が、神無月を襲う。
だが、神無月はビクともしない。
ただ、ただ、回転しながらシューに向かい降下して行く。
- 41: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 17:20:50.42 ID:vPWFhTC2O
- lw´‐ _‐ノv「ほう……」
月極二人を相手にしてこれ。
もしかして私、最強?
でも、人を殺すだなんてしたくない。
ただ戦わずに、じっとしてるのも嫌。
だから、私は決めた。
渡辺さんから、話を聞いた時から決めていた。
ブーン君とクーちゃん。
どちらかは分からないけど、月を倒してくれる。
ああ、そう言えば貴方達は今、何をしているか分かる?
人を助ける為、必死に戦っているんだ。
そういう人達を、何て呼ぶか知ってる?
人々は、そういう人達を。
lw´‐ _‐ノv「勇者って呼ぶ」
シューの背中を、神無月の刃が貫いた。
- 43: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 17:22:20.26 ID:vPWFhTC2O
- ( ゚ω゚)「お……」
川 - )「くそ……」
間に合わなかった。
力が足りなかった。
ブーンとクーは、地面に着地し、呆然と立ち尽くしている。
シューの身体がゆっくりと、地面に倒れて行く。
( ;ω;)「シュー姉さん!?」
川 - )「っ!」
クーとブーンは、シューに駆け寄り、抱き起こした。
月の光に映える、白いシューの顔。
小さく口を動かし、弱々しく呼吸をしている。
川;゚ -゚)「ブーン、救急車を!!」
( ;ω;)「分かったお!」
しかし、その手をシューが払い除けた。
そして、笑顔で、消え入る様な小さな声でシューは言った。
- 44: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 17:23:55.07 ID:vPWFhTC2O
- lw*´‐ _‐ノv「激しい運動だったでしょ?」
( ;ω;)「シュー姉さん、馬鹿な事言うなお!今救急車呼ぶからお!」
lw*´‐ _‐ノv「いらない、私は不死身。此処で米神様として生きよう」
川 - )「何故こんな……」
クーの悲愴に溢れる声に、シューは反応した。
lw*´‐ _‐ノv「貴方達を勇者にする為……。そして、月を倒させる為」
川 - )「馬鹿な……。こんな事、悲しいだけだ」
小さくなって行く、シューの声と息。
シューは最後の力を振り絞り、笑顔で口を開く。
lw*´‐ _‐ノv「そう、人が死んだら悲しい……。
人が死んだら悲しいだけ……。
だけど、それを『美』と捉え、笑う者がいる……」
- 45: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 17:25:32.32 ID:vPWFhTC2O
- シューは視線を月に移す。
人の死を『美』とし、嘲り笑う者の姿があった。
lw*´‐ _‐ノv「かーなり……許せないよねー……。
ちょっと…説教して来て……くれない?」
( ;ω;)「分かったお!だから、もう喋らないで欲しいお!」
川 ; -;)「分かった。説教どころかぶん殴ってやる」
クーとブーンは、涙を流しながらシューを抱き締めた。
シューは、震える手でブーンとクーの頭を、撫でてあげた。
そしてシューは、自分の身体を抱き締めている、
クーとブーンの姿を、じっと見つめる。
lw*´‐ _‐ノv「見つけた……ご飯の白い色って」
『幸せの色』
- 47: ◆iFirHT6FV. :2007/08/19(日) 17:28:13.82 ID:vPWFhTC2O
- 第九月話
『優者二人』
終わり。
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