('A`)達は月に願い事をするようです

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/24(金) 01:45:29.34 ID:dNukkUDBO

第十一月話


『永遠友達』



5: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 00:42:36.86 ID:dNukkUDBO
朝起きる。

親友と一緒に登校する。

小学生の頃から一緒の親友。

そいつと授業中に馬鹿な話をする。

下校も親友と一緒だ。

寄り道してゲーセンで遊ぶ。

帰り道で俺が好きな子と偶然出会う。

俺は照れまくって名前を呼ぶのがやっとだ。

好きな子の目をちらりと見る。

可愛い。

親友はニヤニヤとこっちを見ている。

話が終わって声をかける。

『じゃあな、また明日!』

俺はそんな夢見てた。



6: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 00:44:06.84 ID:dNukkUDBO
(*'A`)「夏休みに告白しようと思ってんだが」

( ^ω^)「誰にだお?」

おいおい、そんな事恥ずかしくて言える訳ねぇだろ。
全くブーンは気の利かない奴だな。
だが、俺はブーンのそんな所が好きだぜ。

('A`)「禁則事項に決まってんだろうが」

(*^ω^)「はいはいわろすわろす」

何だ、今の含みのある言い方は?
もしかしてバレてる?
いや、そんな筈はねぇ。
俺はクールで有名なドクオ様だ。

('A`)「さて、そろそろ帰っか」

明日からは夏休みだ。
精一杯遊びまくってやんぜ。

( ^ω^)「あっ、帰りにゲーセン寄って良いかお?」

('A`)「おっけい。格ゲーでフルボッコにしてやんよ」



8: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 00:45:20.89 ID:dNukkUDBO
(#^ω^)「ぬおおおお!!強過ぎるお!!」

そりゃ、そうだ。
俺はこの格ゲーをやり込んでいる。
ブーン程度じゃ、俺の足元にも及ばんぜ!

(*'A`)「サーセン!おっと今のは良い攻めだったな」

危ねー、たまにブーンはミラクルを起こしやがる。
気を引き締めて、かからんとな。

(;^ω^)「あっ、負けたお……」

くっくっく、ミラクルだけじゃ俺には勝てんぞ!
まだまだフルボッコにしてやんよ!

('∀`)「こんなもんか?もっかいやろうか?」

(#^ω^)「むきぃ!全力で挑むお!!」

ブーンは挑発に乗り易いな。
でも、そんな所も好きだ。



10: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 00:46:40.01 ID:dNukkUDBO
( ;ω;)「おっ……」

結果、俺の23連勝。
ブーンは筐体に顔を突っ伏している。
面白い奴だな。

('A`)「わりぃ、遅くなり過ぎたから家に電話するわ」

( ;ω;)「あいおー」

ゲーセンの外に出て家へと電話をかけた。
俺は両親を不慮の事故で亡くしてから、親戚の家に引き取られた。
ペニサス叔母さんもロマネスク叔父さんも、優しくしてくれている。
従妹のヒートも騒がしいが、結構好きだ。
というか皆、好きだ。

('A`)「あっれ?居ないのかな?」

電話を何度かけても繋がらない。
どっかに出掛けてんのかな?



12: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 00:48:40.13 ID:dNukkUDBO
そうこうしてる内に、ブーンがゲーセンから出て来た。
ふらふらしながら歩いてくる。
ちょっとやりすぎたか。

( ´ω`)「もうドクオとは格ゲーせんお」

(*'∀`)「フヒヒ!またやろうな!」

( ´ω`)「もう勘弁だお……」

俺とブーンは夜の街を歩く。
たわいない話をしながら歩く。
夜風が気持ち良い。
何より、親友と歩く事が気持ち良い。

( ^ω^)「でさー」

('A`)「何だよ?」

( ^ω^)「ドクオが好きな子って誰なんだお」



13: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 00:49:54.48 ID:dNukkUDBO
またか、またその話かよ。
学校で言ったじゃねぇかよ。
じゃあ、俺も同じ事を言ってやろう。

(*'A`)「禁則事項です」

(;^ω^)「みくる……。似てないし、きめぇお」

うっせ、俺はみくるが好きなんだ。
彼女の魅力が分からない素人はすっこんでろ!

('A`)「大分、遅くまで遊んじまったなぁ」

携帯の時刻表示は22時23分。
やべぇ、叱られっかもな。

( ^ω^)「…………」

('A`)「ん?どうした?ブーン」

夜空見上げてどうしたよ?
何?ブーンって意外とロマンチスト?
柄に合わねぇ、きめぇよ!



14: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 00:50:56.04 ID:dNukkUDBO
( ^ω^)「―――」

何だ?
ブーン、何て言ったんだ?
気になっていると、背後から声が聞こえた。

川 ゚ -゚)「お前だったのか」

聞き間違えるもんか。
俺の大好きな人の声だ!
俺はドキドキしながら振り向いた。

(*'A`)「クー!」

目茶苦茶可愛い。
今すぐ告白したい!
頑張れ、俺!

川 ゚ -゚)「―――」

('A`)「…………」

( ^ω^)「―――」

川 ゚ -゚)「―――」



15: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 00:51:44.37 ID:dNukkUDBO
('A`)「違う」

( ^ω^)「―――」

('A`)「違う違う」

川 ゚ -゚)「―――」

('A`)「俺が見たかった物と違う」

(    )「―――」

川   )「―――」

なぁ、ブーン、クー。俺はお前らの事、大好きなんだぜ。
だから、もう一度さぁ。

………。
……。
…。



18: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 00:53:47.48 ID:dNukkUDBO
ドクオは、VIPタワーの屋上の隅で身体を横にして眠っている。
今宵は満月、淡い黄色い光がドクオの顔を照らす。
ドクオの幸せそうな寝顔と、頬を伝う涙を映し出した。
数日間、家に帰っていないのか、ドクオの服や肌は血塗れだった。
胸で強く抱き締められている弥生も、赤く染まっていた。

('A`)「ん……もう夜か」

満月の光が目に入り込み、ドクオは目を覚ました。
静かに起き上がり、鼻歌を奏でながら屋上の真中へと歩いて行く。
左手に握られた弥生が、ドクオが歩くリズムで揺らされる。

('A`)「ふーふふふーん、ふーふふふん♪っと……」

屋上の真中で立ち止まった、ドクオは満月を見上げた。
ドクオ視線の先には、大きくてまぁるい満月。
とても綺麗だ、ドクオは満月へと喋りかけた。

('A`)「俺の願い事『人を―しても良い世界』叶えてくれよ」

その願い事に反応したかの様に、満月は一層光を輝かせた。
光を浴びたドクオは、満月から視線を外し、真直ぐに顔を向けた。



20: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 00:55:42.78 ID:dNukkUDBO
超高層VIPタワーの屋上からは、星空が見える。
精神を集中させ、ドクオは月極の気配を探った。
ドクオの月極察知能力は、モリタポ市全体を捉えるまでに成長していた。
しかし、最近一向に捉える事が出来ない。

('A`)「全員殺したか?だが月は願い事を叶えて……!?」

ドクオは捉えた、月極とは何故か少し違うが、よく知っている気配を。
二人でこちらへと向かって来る。
ドクオは弥生を握る左手に力を入れ、胸を踊らせた。
そうだそうだそうだ!あいつらが居た!
あいつらは簡単に死ぬ訳が無い、死んで貰っても困る。

('∀`)「あははは!だよなぁ、だよなぁ!」

ドクオは笑いながら待つ。
どんどん近付いて来る二人を。
とってもダイスキな二人を。

('∀`)「来る来る来る来る……来た!」



24: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 00:57:23.14 ID:dNukkUDBO
ドクオの叫び声と同時に、二人は屋上へと着地し、現れた。
ドクオの眼前には、学校の制服を着た男女の姿。
ドクオは懐かしさの余り、弥生を構える。

('∀`)「久し振りだな。ブーン、クー!」

ドクオの挨拶に、クーとブーンは応えた。

( ^ω^)「僕はこの前会ったばかりだお。ドクオの忘れん坊!」

川 ゚ -゚)「私は久し振りだな、ドクオ。この制服似合ってるか?」

ドクオは、弥生を構えながらクーとブーンの姿を見遣る。
いつも学校で見ていた、二人の制服姿。
大好きな親友と、愛して病まない娘が目の前に居る。
その事実で、ドクオの胸は張り裂けそうになった。

('∀`)「はぁっ……はぁっ……嬉し過ぎて殺したくなって来た」

弥生を握る、ドクオの左手が震える。
禍々しい気配が、ドクオを包み込んだ。



26: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 00:59:17.95 ID:dNukkUDBO
( ^ω^)「やはり正気には戻せないかお……」

川 ゚ -゚)「……行くぞ。ドクオを『止める』」

ブーンは両手を天に翳した。
クーは左手の掌に力を込める。
そして二人同時に、満月を斬り裂かんばかりに叫んだ。

( ^ω^)「『僕に力を貸せお!』文月!」

川 ゚ -゚)「『私の願いに応えてくれ』霜月!」

クーとブーンを包み込む光、それは何処か優しかった。
過去はやり直しが利かない。
だから、これから未来を紡いで行く。
例え、この先に待ち受けている物が死だとしても。
優しい光が、クーとブーンの心を形作った。
ブーンが両手で握っている武器は、過去を斬り裂く『文月』
クーが左手に力強く握っている武器は、未来を紡ぐ『霜月』



28: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 01:01:15.67 ID:dNukkUDBO
('A`)「気持ち悪い……見てるだけで吐気がするぜ」

ドクオは、二人の穏やかな表情と武器を見て、気分が悪くなった。
ドクオの目に映るのは優しさを秘めた、二人。
狂気が無い、望んでいた物とは違う。
ドクオは怒りに震え、弥生の不可視の弦を思い切り引っ張った。
それに因って現れたのは大きく長い、赤い光の矢。
その赤い矢は、ドクオの心その物なのだろうか。
クーとブーンは、悲痛な表情を浮かべながら、武器を構える。

(#゚A゚)「お前ら全員消え去れ!満月!!」

ドクオはクーとブーンにではなく、夜空に向かい、赤い矢を放った。
凄まじい音を轟かせながら、赤い矢は夜空へと消え去った。
次の瞬間、数十本の赤い矢が高速で降り注いで来た。

( ^ω^)「駆けろお。僕がクーを守る」

川 ゚ -゚)「信じているぞ。ブーン」

( ^ω^)「あいあいおー、後は手筈通りに」

川  - )「……分かった」



31: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 01:03:31.37 ID:dNukkUDBO
クーはドクオに向かい、駆け出した。
上から降り注ぐ矢を躱しながら、ひたすら駆ける。
赤い矢が突き刺さった地面は、深く抉られている。
ブーンは地を蹴り、宙でクーへと降り注ぐ赤い矢を、次々と斬り裂いている。

('A`)「協力?本当に気持ち悪い」

川 ゚ -゚)「ドクオ、止めに来たぞ」

('A`)「!?」

いつの間にか眼前に居たクーに、ドクオは驚いた。
クーの想いを込めた最終技が、ドクオへと迫る。

川 ゚ -゚)「好きだ、ドクオ―――『晦』」

心落ち着く黒い光を放つ霜月が、全方向からドクオの身体へと、一瞬で振るわれる。
ドクオは僅かの動作で、クーの攻撃を全て躱した。
隙を見計ってドクオは後ろへと飛び退いた。そして、再び弥生を構え、クーへと赤い矢を放つ。

(#゚A゚)「好きってなんだよ!?『晦』!」



33: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 01:05:18.96 ID:dNukkUDBO
弥生から放たれた10本の細長い赤い矢。
それぞれ不規則な動きをし、高速でクーへと襲いかかった。
クーは霜月を脇構えで、切り払おうと神経を集中させる。

川 ゚ -゚)(見切れん……)

諦めかけたクーの前に、ブーンが守る様に立ちはだかった。
文月を中段の構えを取りながら、ブーンは10本の矢を見据える。

( ゚ω゚)「あの時と同じ……」

一本、二本、三本、四本とブーンは文月で目にも止まらぬ速さで、斬り払う。
しかし、それ以上は捉え切る事が出来無かった。
ブーンの肩、腕、胸を赤い矢が貫く。

川 ゚ -゚)「ブーン!」

( ゚ω゚)「ッ!強くなったお……。ドクオ……」

(゚∀゚)「ひゃははは!!ブーンが弱くなったんだよ!!」



36: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 01:07:19.30 ID:dNukkUDBO
身体から血を流しながら、ブーンは愉悦しているドクオへと口を開く。
親友へと喋り掛ける様に優しい声で、語り掛けた。

( ^ω^)「痛いお……。でも、ドクオは親友だから許すお」

その言葉を聞いたドクオは動きを止め、怒鳴った。

(#'A`)「さっきから好きだの親友だの!うぜえよ!!」

(#゚A゚)「ああ、もう死ね死ね死ね死ね死ね!!」

ドクオは呪詛の言葉を吐きながら、弥生を構えた。
弥生に殺意を孕んだ巨大な赤い矢が、形成される。
全てを終わらせるつもりなのだろう。

(  ω )(そろそろかお)

( ^ω^)「クー、頼んだお」

川  - )「……分かった」



37: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 01:10:13.23 ID:dNukkUDBO
クーは決意すると、全速力でドクオの周囲を駆け回った。
ドクオは、クーに狙いを定め、巨大な赤い矢を放とうとする。

(゚∀゚)「おせえ!行くぞ………」

赤い矢をクーに放とうとした時、ドクオはすぐ側に気配を感じ取った。
目の前にはブーンの姿。
ブーンは文月をドクオに向け、横薙で一閃しようとしている。

('A`)「!」

( ^ω^)「大好きだお、ドクオ―――『満月』」

力強く光輝いている文月を、ブーンは横へ薙いだ。
しかし文月は空を描き、衝撃波が事故防止柵を潰すだけに終わった。
ドクオはブーンの攻撃を軽く見切り、素早く上へと跳躍している。

(゚A゚)「ばーか!同じ手を使うな!クソが!!」

(  ω )(予想通り。届け、届いてくれお)



40: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 01:12:54.93 ID:dNukkUDBO
ブーンもドクオの後を追い、全身をバネにして上へと跳躍。
そして―――ドクオの足首を掴んだ。
届いた。
ドクオに届いた。

(#゚A゚)「な!?てめえ!放せ!」

( ^ω^)「やーだお。ドクオは僕の親友だから放さないお」

ブーンはドクオの足首を掴んだまま、地面へと降下して行く。
二人は地面へと、身体を叩き付けられた。

(#゚A゚)「放せ!絶対殺す!死ね死ね死ね!!!」

その言葉を無視し、ブーンはすかさずドクオの両脇に腕を回し、締め付ける。
がっちりとブーンの両腕で締め付けられ、ドクオは身動きを取れない。

(#゚A゚)「てめぇら、ハメやがったな!」

クーがドクオの注意を向けさせ、その隙にブーンが迫る。
ドクオが跳躍する事を予想し、ブーンもそれを追い跳躍。
そして足首を掴み、ドクオの身動きを取れなくする。
ブーンがクーに、必死に頼み込んだ作戦であった。
そして、ブーンの命を賭けた作戦でもある。



41: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 01:16:29.72 ID:dNukkUDBO
( ^ω^)「さて、クー。後は頼んだお」

ドクオを地面で組み伏せながら、ブーンはクーへと話掛けた。
ドクオは身体を激しく動かし、脱出しようとしている。
それでもブーンは必死に堪え、放さない。

(#゚A゚)「俺はまだまだ殺したいんだ!放せ!殺すぞ!!」

クーは、地面に倒れている二人の側に立った。
そしてクーは二人へと視線を落とし話掛けた。

川 ゚ -゚)「私も愛しているぞ、ドクオ」

クーの声に、ドクオの動きが止まる。
ブーンも組み伏せているドクオの顔に向け、笑顔で話掛けた。

( ^ω^)「悪い事言ってごめんだお。ドクオは僕の大親友だお」

ドクオはただ二人の声を聞いている。
色々な感情が、ドクオの顔に浮かんでは消えて行く。
そして、ドクオは小さな声を絞り出した。



45: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 01:20:31.01 ID:dNukkUDBO
(゚A゚)「遅ぇよ……。本当に……遅ぇよ……」

ドクオはため息をついた。
本当に遅かった。
全て遅かった。

川 ; -;)「しかし、何だな。男同士が抱き合ってる姿は少々アレだな」

( ;ω;)「フヒヒ!さもありなんだおー!」

いつかの言葉。
今度は全然内容が違う。
夢の続きを見られる気がする。

( ;ω;)「クー、よろしく」

川 ; -;)「……これからも仲良くな」

( ;ω;)「おk!任せろお!」

('A`)「…………」

川  - )「『望』」

クーは、霜月を振り上げ、ドクオとブーンを―――。
クーとブーンとドクオ。
三人は、心で、繋がった。



46: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 01:21:55.92 ID:dNukkUDBO












川 ゚ -゚)( ^ω^)('A`)
















48: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 01:23:52.49 ID:dNukkUDBO
『月が綺麗だおー』

『はいはいわろすわろす』

『ちょ!……お?あの子は……』

『クー!』

『お前達だったのか』

『お前達でしたおー』

『うるせーよ、ブーン!』

『お前達と話してると頭が痛くなる』

『僕達は頭痛の種ですかお……』

『その通りだ』

『それよりドクオがクーに言いたい事があるそうだお』

『ブーン!おま……知ってたのか……』

『何だ?早く言え』

『んと、えっと……あのさ、俺はクーの事が』

『おっおっ♪』



50: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 01:24:58.61 ID:dNukkUDBO
『大好きなんだ!付き合って欲しい』

『……私の何処が良いんだか』

『クー、照れてるおー』

『うるさいな』

『クー、こんな俺で良かったらさ……』

『良いぞ』

『……まじか?』

『私は、嘘は付かん』

『カップル成立だおー』

『俺、嬉しさのあまり全裸になりそうだ!』

『そ、それはやめとけお』

『ん?クー、何処に行くんだ?』

『大事な用事がある』

『そっかお、またおー』

『じゃあな、また明日!』



52: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 01:26:41.73 ID:dNukkUDBO
一抹の静けさの後。
クーは、一気に霜月を引き抜いた。
クーの足元には、親友同士が仲良く眠っている。

川  - )「…………」

クーはしゃがみ込み、ドクオとブーンの身体に触れる。
非情な選択肢を選んでくれた、ブーンの頭を撫でてあげた。
愛してくれていたドクオに、そっとキスをした。

川 ゚ -゚)「任せてくれ……。直ぐに後を追うから」

川 ゚ -゚)「月を倒してからな」

凛とした強い口調で、クーは決意を固め立ち上がった。
霜月を強く握り締め、肩に携える。
VIPタワーの屋上に強い風が吹き付け、クーの髪を揺らす。

川 ゚ -゚)「……来た」



54: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 01:29:45.69 ID:dNukkUDBO
クーの背後から足音が聞こえる。
もっと超常現象的な現れ方をするかと思っていたが、違うみたいだ。
クーの背後へと近付くにつれ、うっすらと笑い声が聞こえ始める。

川   )「実に、お前らしいな」

肩に携えた霜月を、より一層、力強く握り締める。
もう月は、クーの直ぐ後ろに居る様だ
人を馬鹿にする、明るい笑い声が鮮明にクーの耳に入る。

川   )「お前は此処で終わりだ。私もな」

足音が止んだ。
クーは振り向かず、真直ぐ夜空を眺めている。
そんなクーに背後から祝辞が投げ掛けられた。

『優勝、おめでとう』

その言葉に反応せず、クーはじっと夜空を眺めている。
月は無視される事等どうでも良いのか、次々と喋り出す。



59: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 01:32:01.36 ID:dNukkUDBO
『なかなか、面白い映画だったわ』

『さ、今度はがっかりさせないでね』

『オチが駄目な映画は、もう懲り懲りだわ』

『貴女は最高の結末、見せてくれるわよね』

『期待してるわよー』

川   )「残念だが、この映画は」

クーは、言葉を一旦止めた。
数秒間、目を深く瞑る。
そして勢いよく目を開けて、後ろへと振り返り叫んだ。

川 ゚ -゚)「お前の『死という結末』で終わる!」

VIPタワーの屋上にクーの大きな声が響いた。
月は笑顔のままで、その声を聞く。



60: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 01:33:38.01 ID:dNukkUDBO
クーは月の風貌をじっと見つめている。

可愛い笑顔。
白いYシャツにジーンズ。
白い運動靴。
服の上には黄色のエプロン。
エプロンの胸元には名札。

一見、どこかでバイトをしている風な普通の格好。
そして、普通の人間の様に見える。

しかし、クーは知っている。
こいつは普通の人間ではない。
人を嘲り笑いながら操っている魔王だ、と。



61: ◆iFirHT6FV. :2007/08/24(金) 01:35:41.01 ID:dNukkUDBO
月は、楽しそうに笑いながら喋る。

『あら、ドクオ君と似た事を言うのね』

『楽しみだわぁー』

『でも、その前にね』

『清く、正しく、美しく』










ζ(゚ー゚*ζ「そんな願い事を、叶えてあげましょう!」





月は笑っている。



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