ξ゚听)ξは夏服翻すようです
- 47: ◆uAn5dIn1Sw :07/12(木) 23:04 zYcxKPuPO
第三話 ビデオテープとガラスと学ラン
目が覚めた。
また保健室だった。
……またスクール水着を着ていた。
私はシャワー室で本日?いや、ここには時間の感覚が無いらしい。時計の類が見つからないから。
とにかく三回目の気絶をしたわけだ。
……全裸で。
は、恥ずかしい……
裸を男に見られたのは小四の時が最後だった。
プールの授業の後、女子が着替えている教室にブーンと叫びながら突っ込んできたバカがいた。
あいつがブーンと呼ばれるきっかけとなった事件だった。
ブーンは女子からはフルボッコにされ、男子からはある意味尊敬される存在となった。
私はもちろんフルボッコにした。
どんなに懐かしんでも、戻れない。
裸を見られたのが悔しくて、過ぎた日々が恋しくて、
枕に顔を押し付けて静かに泣いた。
泣いてばっかり……じゃない……
ブーンと一緒にいた時の強気な私はどこにいったの?
きっと強気な私は青空の広がる世界に置いてきてしまったんだ。
ここに残っているのは弱くて、ウサギみたいに震えているだけのみっともない私。
寂しくて寂しくてしょうがない私。
私を自問自答の現実逃避から現実へ戻したのは、
化け物達の悲鳴だった。
- 49: ◆uAn5dIn1Sw :07/12(木) 23:40 zYcxKPuPO
金切り声と同時に保健室の引き戸が倒れて、
ところどころ欠けた骸骨と頭の半分になったゾンビが転がってきた。
('A( 「いや、俺悪くなくね?」
(;゚∀#; 「不可抗力っすよ!よこしまな気持ちはなくて、ただシャワー浴びようとしただけっす!」
川#゚‐゚)「うるさい。裸を異性に見られるのは女の子にとっちゃあそりゃあもう恥ずかしいことなんだよ!」
('A( 「だから俺には悪意はなくてな……」
川#゚‐゚)「悪!即!喰!」
(;゚∀; 「た、食べないで!噛まないで!いやあ!」
保健室に響くは骨を噛み砕く鈍い音と肉の千切れ血液が飛び散る湿った音。
川゚‐゚)「すまない。友達が粗相なことをしでかしたようだ。代表して謝る。
ごめん」
コートの内ポケットから取り出したハンカチで口を拭きながらぞんざいに謝ったクーさん。
コートも髪も返り血で真っ赤だ
反省してますか?
てかさ……
ξ;゚听)ξ「喰ったりしないって……言ってましたよね……?」
川゚‐゚)「ああ、君は喰わないよ。あの男どもとは別格だからね」
そう言って指差すのは首のない学ランを着た胴体二つ。
ホラー映画も真っ青だ。
- 51: ◆uAn5dIn1Sw :07/13(金) 21:58 Jm3rGBpCO
川゚‐゚)「突然だが君に見せたい物がある。廊下に出てから突き当たりの試聴覚室で待っていたまえ」
ξ;゚听)ξ「……わかりました」
逆らうべきじゃない。
川゚‐゚)「私は後始末をしてから向かうから座っていてくれ」
彼女は散らかした真っ赤なグチャグチャを片付けてから向かうようだ。
ハイヒールがグチャグチャを踏みつけて湿った音を立てる。
気持ち悪い。
保健室を出た私は玄関の水飲み場に向かって、
吐いた。
胃の中身は空っぽで、酸っぱい胃液しか出なかった。
逃げだしたい。
だが、この学校から逃げだしたところで他に何がある?
この世界にはここ以外には泥の海しかない。
私は臆病だ。
化け物であるとわかりながら、言葉の通じる彼女達に一握りの安心を覚えている。
独りでいるのが嫌なんだ。
だから逃げだせない。
- 52: ◆uAn5dIn1Sw :07/14(土) 00:11 BAiaPMMEO
逃げだせない以上、
彼女達とは接しなくてはならない。
腹をくくって試聴覚室に向かって歩き出した。
試聴覚室にはプロジェクター、投影機がセットしてあり、
青い待機画面を映し出していた。
何か映画でも見せてくれるのだろうか。
今ならホラー映画でも受け入れられる。
今の状況は限りなくホラー映画的だから。
川゚‐゚)「遅かったな?まあいいや。これから君にはこのビデオテープを見てもらう」
手にしているのは黒い何の変哲もないビデオテープ。
ラベルにはシンプルに『ツン』と書いてあるだけ。
……私の名前?
( ゚∀゚)「ツンちゃんのビデオか!楽しみだな!」
('A`)「割とどうでもいいんだがな」
いつの間にか復活している。
なんで?
……深く考えるのはよそう。
よく考えれば声帯やら筋肉やらのない骸骨が喋っているんだ。
突っ込んでも無駄だろう。
今は私の名前が書かれたビデオテープに集中するのが正解だと思う。
川゚‐゚)「……始めるぞ」
クーさんがプロジェクターにつながったビデオデッキにビデオを挿入した。
ビデオは吸い込まれるようにビデオデッキに収まった。
プロジェクターにカウントダウンが映る。
D
C
B
A
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