ξ゚听)ξは夏服翻すようです
- 56: ◆uAn5dIn1Sw :07/14(土) 21:13 BAiaPMMEO
第四話 現実と青鬼
青い空、白い雲。
プロジェクターの中にしかない世界だ。
高校の中庭のベンチに腰掛ける私を見下ろす視点で映し出している。
……見たくない。
この後に何が起こるのかはわかっているから。
ξ )ξ「……もういいです。ありがとうございました」
席を立ち、立ち去ろうとした私はクーさんに止められた。
川゚‐゚)「退場は許さない。君は見なくてはならない」
ξ )ξ「ごめんなさい」
川゚‐゚)「ダメだ」
私の肩に強い力が加わった。
やめて
ξ )ξ「自分の死ぬところなんか見たくないですよ!」
川 ‐ )「それでも見ろ。現実を受け止めろ!」
激しい口調で叫ぶクーさん。
ドスの効いた声に萎縮してしまった。
体が震えて力が入らない。
や……やだ……
- 57: ◆uAn5dIn1Sw :07/14(土) 21:33 BAiaPMMEO
ξ ;;)ξ「やめてよ!」
入るだけの力を振り絞って腕を突き出して、クーさんを突き飛ばした。
意外と軽かった。
川; ‐ )「ま、待て!」
尻餅をついているクーさんから離れて試聴覚室を必死で退室する。
足がもつれて転びそうになった。
('A`)「待てって!」
(;゚∀゚)「おいおい、これからだぜ?」
骸骨と生ける屍が追ってくる。
……私も生ける屍か。
ξ ;;)ξ「ハア……ハア……」
息切れを起こしながらも図書室に逃げ込み、棚の後ろに隠れている。
……私は逃げてばかりだ。
彼女達とは接しなくてはならないんじゃなかったの?
こんなところに隠れたところであっという間に見つかるのはわかりきったことだ。
この学校に一番詳しいのは彼女達のはず。
私を捕まえたら、間違いなくあのビデオの続きを見せられるだろう。
再び襲いくるであろう恐怖に、膝を抱えて小さくなる。
足音が近づいてくる
逃げたい。
逃げられない。
- 60: ◆uAn5dIn1Sw :07/15(日) 00:50 3Fvn8MXjO
('A`)「みっけた」
棚の後ろに骸骨男が回り込んできた。
カタカタと震える私の顎からは声は出せない。
足も痙攣したように震えて立ち上がることもままならない。
『そっち居たか?』
('A`)「んあ?図書室には一人もいねぇよ」
………!?
『わかった。私は他をあたろう。一階は任せたぞ』
固いハイヒールの足音が遠くなったころ、ドクオさんが骨だけの顎を動かした。
('A`)「……行ったな」
ξ;゚听)ξ「なん……で?」
('A`)「なんとなく。俺気まぐれなAB型だから」
ξ;゚听)ξ「血なんて一滴もないじゃないですか」
('A`)「それもそうだな」
変な骸骨だ。
なんとなく。ただそれだけなの?
('A`)「つーかさ……ツンちゃんだっけ?悪いな。
脳みそないから物覚え良くなくてさ」
ξ;゚听)ξ「はい……私の名前はツン デレ です」
('A`)「まあいいや。
本題に入ろう。
ツンちゃん、俺達のこと嫌いだよな?」
ξ )ξ「−−ッ」
- 64: ◆uAn5dIn1Sw :07/15(日) 20:15 3Fvn8MXjO
バレていた。
当然だろうね。
悲鳴を上げて、コソコソ逃げ回った挙げ句に突き飛ばしたんだ。
今だって知らず知らずの間に距離をとっている。
でも、正直に答えたら何されるかわからない。
あえて嘘を答えた。
ξ;゚听)ξ「そんなことないですよ!」
('A`)「じゃあなんで逃げんだよ?」
ξ; )ξ「それは……」
('A`)「まあ、俺達はみんなしてこんなナリだもんな。普通なら逃げ出すよ」
ξ )ξ「…………」
まさにその通りだ……
私は彼等の人間離れした容姿に恐怖している。
そして何より、彼等の真意がわからないのが恐ろしい。
('A`)「骸骨にゾンビに口裂け女だ。怖くない奴はいねぇよな」
ξ )ξ「……ごめんなさい」
彼は抑揚なく続けた。
('A`)「謝るなって。……ここは図書室だ。
なんか本でも読んで落ち着けよ」
そう云って彼は白い骨の指で一冊の絵本を取り出した。
ξ゚听)ξ「これって『泣いた赤鬼』ですか?」
赤い鬼と青い鬼が描かれた絵本だった。
- 65: ◆uAn5dIn1Sw :07/15(日) 20:39 3Fvn8MXjO
泣いた赤鬼。
人間から嫌われた赤鬼の為に親友の青鬼が自らを犠牲にして、
赤鬼を人間と仲良くした。
そんなおはなしだ。
ξ゚听)ξ「この話……良い話ですよね」
('A`)「俺はそう思わない。もっと別の方法もあった筈だ」
ξ゚听)ξ「……え?」
('A`)「結果としてだ、赤鬼は幸せになったのか?
親友の青鬼はどこか遠くに行っちまったんだ」
驚いた。
彼は人間らしい冷静な思考をしている。
彼等は容姿こそ化け物だ。でも、
心の中、つまり中身は人間じみた心を持っている。
……こんな考え方は失礼だ。
彼等は見た目が変わっているだけの人間なんだ。
ξ )ξ「ごめんなさい!ずっと私怖がってた!」
クーさんに謝らなければならない。
私を誰より心配しているのはクーさんだ。
泥だらけだった服を洗ってくれたり、
シャワー室で気絶した私を保健室まで運んでくれたのも、
友達の頭を噛み砕いたのも多分、
私を心配しての行為。
私は大馬鹿女だ。
容姿にとらわれて、本質、いや本心を感じとれなかった。
右足に力を入れて、力強く床を蹴って走り出した。
('A`)「……まあ、がんばれよ」
- 66: ◆uAn5dIn1Sw :07/15(日) 23:29 3Fvn8MXjO
図書室の扉を乱暴に開いて飛び出した。
クーさんは二階にいる。
階段を駆け上がり、手当たり次第に教室の扉を開け放った。
川う‐゚)「どうした?そんなに慌てて」
いた。
二の三のプレートが張り付けてある教室に、
一人椅子に座って机にうなだれていた彼女は、私が扉を滑らせる音に反応して頭を上げた。
顔には涙が乾いた跡が一筋、白磁のように白い肌に残っていた。
彼女はどんな気持ちで一人だけの教室に座っていたのか。
優しくしたのに否定され、避けられ、突き飛ばされる。
自分がクーさんの立場だったらと考えると、激しい後悔と自己嫌悪が襲いくる。殴られても構わない。
最悪、喰われるのも覚悟した。
ξ ;;)ξ「ごめんなさい……私……私……私……」
川 ー )「いいよ。無神経に見せようとした私も悪い」
ξ ;;)ξ「私、ずっとあなたたちが怖かった。
見た目がも中身も化け物だと思ってた。
ずっと誤解してた!
ごめんなさい」
川 ‐ )「……いいよ」
ゆっくりと手を伸ばし、私の頭を優しく撫でるクーさん。
優しくて、どこか懐かしい……
ーーお母さんみたいな手だった。
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