ξ゚听)ξは夏服翻すようです
- 75: ◆uAn5dIn1Sw :07/16(月) 23:44 jpkIhjeeO
第五話 ジョルジュと切っ先とブルズアイ
『いいよ』
彼女は優しくそう云ってくれた。
私は許してもらえた……の?
川 ‐ )「いいんだよ……いいんだよ」
右手は私の頭を撫でてくれた。
左手はコートの外ポケットに入っていた。
私は信じることができただろう。
外ポケットから覗く鋭利なサバイバルナイフを見なければ。
ξ; )ξ「−−!」
脳が、脊髄が、本能が危険を告げる。
−−彼女は危ない!
右手を振り解いて彼女を見つめた。
多分私は檻から脱走した猛獣を見るような怯えた目をしているだろう。
腰も完全に引けている。
- 76: ◆uAn5dIn1Sw :07/17(火) 00:05 49/o3pskO
許されたと思っていた。
彼女はそんなに軽い女性ではなかったんだ。
頭下げて泣いたくらいで許してくれると思っていた自分がたまらなく浅はかな女だと自覚した。
自分のちっぽけな定規の規格でわかったつもりになっていた自分が情けない。
川 ‐ )「…………」
二三歩下がった私に彼女は人形のごとき無表情で迫る。
ナイフを握って。
川 ‐ )「私はいつもそうだ。死ぬ前も死んだ後までも」
教室の壁に追い詰められた。
右手は私の襟を掴んで壁に押し付け、
ナイフを握った左手は私の目の前をちらつかせている。
彼女は独り言を呟き続けた。
- 77: ◆uAn5dIn1Sw :07/17(火) 00:38 49/o3pskO
川 ‐ )「無愛想だから?表情を造るのが下手だから?」
ナイフの切っ先は私の右目に近づいてくる。
強く押し付けられて薄い胸が圧迫されて息が苦しい。
川 ‐ )「なんで私ばっかりなんだよ!生まれが貧乏なのは駄目なのか!私が必死にお金貯めて高いコート買っちゃおかしいか!生意気なのかよ!」
彼女は鬼気迫る表情で何かに向かって叫ぶ。
ナイフの切っ先は震えている。
川 ‐ )「私だって
人並みに恋して、結婚して!子供産んで!幸せになりたかったよ!」
『だからって八つ当たりすんじゃねえ!』
クーさんが視界から消えた?
(#゚∀゚)「八つ当たりなんかしたらよ……!
お前を妬んだ連中と一緒になっちまうだろうが!」
ジョルジュさんがクーさんを引き離してくれたんだ……
ξ )ξ「げほっ……」
息を吐き出して膝を床について崩れ落ちた。
息苦しかった……
(#゚∀゚)「ちょっとばかし幸せに見えたお前を妬んだ連中と、おんなじようなことして満足するような女なのかよ!」
川 ‐ )「一緒で結構!私はどんな形であっても満たされて、早く成仏したいんだ!」
川 ー )
クーさんが、私にしか見えない角度で口を歪めた。
- 78: ◆uAn5dIn1Sw :07/17(火) 01:02 49/o3pskO
川 ‐ )「邪魔しないでくれ!」
クーさんが左手を大きく振り、握っていたナイフがジョルジュさんの左目に突き刺さった。
( ∀+)「がっ!」
川 ‐ )「ド真ん中のブルズアイだ!静かにしていろ!」
沈黙したジョルジュさんを後目に私の首を両手で掴み、締め上げるクーさん。
ξ ;;)ξ「うっ………」
やめての声も出せない。
胸に黒い絶望が滲む。
ここはすでに死んだ人の集まる場所。
私はクーさんが満足するまでずっと殺され続けるの?
川 д )「がはっ……!」
途端に両手にかかっていた力が弱まった。
クーさんは口から真っ赤な血を吐き出して床に崩れ落ちた。
背中には、ついさっきまで彼女が握っていたナイフが突き刺さっていた。
ジョルジュさんだ。
−−私は自分の目を疑った。
( ゚∀;; ;
ジョルジュさんが、光り輝きながら薄くなっていた……!
- 80: ◆uAn5dIn1Sw :07/18(水) 02:00 Lxx4CKB+O
ξ;゚听)ξ「ジョルジュさん?」
間抜けな声が私の口から漏れていた。
ジョルジュさんはまるで螢のような淡い光を散らしながら憑き物がとれた、
そんな清々しい表情で呟いた。
( ;∀;; ; 「やっと……やっと……」
綺麗な目には涙が浮かび、止まることなく溢れ出していて……
('A`)「おめでとうだ。よくやったな。ジョルジュ」
教室の開け放ったままの扉からドクオさんが現れた。
状況を知っているかも。
私はドクオさんに質問した。
ξ;゚听)ξ「……どうなっているんですか?」
('A`)「…………楽になったんだ」
ジョルジュさんは立っている床が透けて見えるほどに薄くなった。
( ;∀;; ; 「みんな……ありがとな!一足先に楽になってごめんな!
体が……軽いぜ」
('A`)「気にすんな。……さようなら」
( ゚∀;; ; 「さようなら。次の人生でも、逢えるかな?俺達」
('A`)「逢えたらすっげえ幸せだな」
ジョルジュさんは小さな淡い緑色の光となって教室の窓をすり抜け、
紅い空を昇って、どこまでも昇ってーーー
いなくなった。
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