ξ゚听)ξは夏服翻すようです

83: 名無しさん :07/18(水) 23:40 Lxx4CKB+O


第六話 ライターと強盗と涙腺


よくはわからない。
でも、ジョルジュさんの解放されたような表情、ドクオさんの台詞からして……

('A`)「悔しいね」

ξ;゚听)ξ「え?!」

ドクオさんの意外な台詞に思考が中断した。

('A`)「涙が流せない俺の体が悔しいんだよ。なんでかこうしておしゃべりすることは出来ても、涙腺の無い骸骨には涙が流せない」

もう少し都合良くてもいいだろと呟いた後に彼は私を視聴覚室に行くように促した。

クーさんは自らの血の足跡を残していた。
ポツポツと廊下に垂れた鮮血は女子トイレに消えている。
追うべきだろうか?

('A`)「クーはちょっとほっといてやれ。お前にはジョルジュのビデオを見せたい」

私は学ランを着た骸骨の背中を追って視聴覚室に再び入室した。



85: ◆uAn5dIn1Sw :07/18(水) 23:57 Lxx4CKB+O


ドクオさんは手慣れた手つきでビデオを交換した。
ビデオのラベルにはジョルジュとシンプルかつ丁寧な字で書かれていた。
私のビデオのラベルとは書いた人が違うらしい。

セットしっぱなしのプロジェクターにはカウントダウンが映った。

D

C

('A`)「めんどいから早送りするぞ」

手元のリモコンを操作して早送りした。

プロジェクターには防犯カメラのアングルでコンビニの店内が映し出された。
私のビデオと似たような存在なのなら、これから映るのはジョルジュさんの最期の瞬間だ。

私は固唾をグッと飲んで暗い室内で唯一明るいプロジェクターに目を据えた。



89: ◆uAn5dIn1Sw :07/19(木) 23:22 36uVO1XCO


防犯カメラの映像は少し不鮮明だ。レジには店員の女性が一人。
歳は私と同じくらいだ。

自動ドアが来客に反応して開き、大学生と思われる男が入店してきた。
体格、歩き方からしてジョルジュさんなのは間違いない。
ジョルジュさんは店員の女の子に話しかけている。親しげに。
音声までは録音されていないので会話の内容まではわからない。
でも、どちらも笑顔だ。

ジョルジュさんが女の子の頭を撫でた。
女の子は髪型が崩れたのを気にしたようで、髪型を自分で直しながらジョルジュさんに怒っているような身振りをした。
ジョルジュさんは笑いながら謝っているのかもしれない。
きっと恋人か妹か、かなり親しく相手なんだ。


私はブーンとあんなに親しくしたことは無いな……



93: ◆uAn5dIn1Sw :07/20(金) 17:41 LWdTd+vvO


ほのぼのとした時間がプロジェクターの中に流れている。
しかし、ジョルジュさんの時間は止まる。

深夜のコンビニに不自然な足取りの男が入ってきた。
まるで寝ながら起きているようなおぼつかない足取り。

ジョルジュさんが手を振りレジの女の子におひらきだと伝えたようだ。

おぼつかない足取りの男とジョルジュさんがすれ違った。


ジョルジュさんが胸を抑えてうずくまった。


右胸からは果物ナイフの柄が。
デイトナグリーンのシャツはみるみるうちに鮮血に赤くなる。
ここに来る前の私なら思わず目を背ける光景だ。

悲劇は、まだ続いた。



94: ◆uAn5dIn1Sw :07/20(金) 17:51 LWdTd+vvO


レジの女の子は後ずさりして、ただ床に広がるジョルジュさんの鮮血を見つめていた。
状況が理解できないんだ。

男はジョルジュさんにすれ違いざまに突き刺したナイフを抜き、女の子に迫った。

ジョルジュさんの首がゆっくりと持ち上がり、何かを叫ぶように口が動いた。

だが、男は店の隅に棚につまずきながらも逃げる女の子を追い詰め、

右目に

血糊のついたナイフを

突き立てた。



96: ◆uAn5dIn1Sw :07/20(金) 18:08 LWdTd+vvO


ジョルジュさんの精いっぱい伸ばした右手は興奮に震える男を止められずに、ただ空を掴んだ。



ビデオはここで終わっている。

('A`)「あの男はヤク中だった。ジョルジュは出血多量で死亡したよ。無力とあの男を恨みながらな」

リモコンを操作しながらドクオさんが脚注を入れてくれた。
それより、聞かなくてはならないことがある。

ξ゚听)ξ「あの状況、さっきにそっくりですよね。関係あるんですか?」

さっきクーさんはナイフを握り締め、私の目を刺そうとした。
ビデオでもヤク中の男は女の子の目を刺した。
偶然とは思えない。

('A`)「あるとしたら?」

私の中にある仮説が浮かんできた。
あの状況を作る為に、クーさんは私を襲ったのではないか?
クーさんがジョルジュさんに見えない角度で見せた笑みはことがうまくいっている高揚感が作ったのでは?



97: ◆uAn5dIn1Sw :07/20(金) 18:19 LWdTd+vvO


ふと、焦げ臭い臭いが鼻を突いた。
ドクオさんが手にしたライターで、ジョルジュさんのビデオテープに火を付けていた。

ξ;゚听)ξ「何しているんですか!」

プラスチックのビデオテープは熱に歪み、嫌な臭いを撒きながら小さくなっていく。
ジョルジュさんのことは友達じゃなかったの?
もう成仏して、声を聞くことのできない友達のビデオテープを燃やすの?

('A`)「これはルールなんだ。先輩達と決めたな……」

ξ;゚听)ξ「先輩……?」

('A`)「俺達より前にここにいた連中だよ。引きこもりやってて餓死した俺が初めてここにたどり着いた時、迎えてくれたのが先輩達とクーだった」

ビデオテープは燃え尽き、ドクオさんの指は黒く焦げていた。



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