('A`)ドクオが宇宙を駆け抜けるようです

22: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 00:17:35.25 ID:c95FO1Uv0
  
第08話 好きですよ

艦隊が発進した。
生き残った将軍の部隊とも合流し、戦力は十分にまで揃ったが、
敵を圧倒するには少なすぎる。

ドクオ達はまだ休憩室にいた。
シャキンはブリッジに戻って、艦長席に座っているだろう。


( ^ω^)「星が綺麗だお」

(´・ω・`)「ホントですね」

('A`)「あぁ……」


ブーンは大きな窓に手をつけて、外の様子を見る。
ドクオとショボンはソファーに座ったままで星を見た。



23: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 00:19:41.98 ID:c95FO1Uv0
  
(´・ω・`)「これが最後の戦いになるんでしょうか?」

('A`)「……そうだな……ア・バオア・クーを落とせば、事実上のジオンの敗北だ。
   ギレン・ザビだって、本国まで攻め込ませようとはしないだろう」

( ^ω^)「ギレン……? ジオンの総帥の名前だお」

('A`)「そうだ。連邦が言う、悪の元凶だな」

(´・ω・`)「悪の元凶ですか」

('A`)「連邦のお偉いさんが勝手に言っているだけだ。
   自分たちがスペースノイドを苦しめておいて、反乱が起これば当事者を悪と言う……
   勝手すぎるんだよな。人間は……」

( ^ω^)「だったら、何で大尉は連邦軍に入隊したのかお?
     連邦が嫌いなら、ジオンに入ればよかったんだお」

(´・ω・`)「とんでもないこと言いますね、軍曹」

('A`)「核心を突いているがな……」


ドクオはフゥとため息を吐く。
その間にブーンはショボンの隣に座って、ドクオを正面にした。



25: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 00:22:06.15 ID:c95FO1Uv0
  
('A`)「俺の住んでいたコロニーは、経済状況が悪くてな……
   農業プラントはしっかりしていたんだが、連邦の宇宙移民計画で、
   各国からの多種多様な人種がコロニーに押し込められたんだ。

   そんな人たちばかりじゃ、文化の違いで争いが起こる。
   結果は想像の通りだ。

   殺し、盗み……なんでもありのコロニーになった」

( ゜ω゜) (´・ω・`)「…………」

('A`)「そんな環境で生きていくのは至難の技でな……。
   俺が連邦軍に入ったのは決められたようなもんだ……金の為にな」

少し沈黙が流れた。



27: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 00:23:18.84 ID:c95FO1Uv0
  
(´・ω・`)「……軽蔑しませんよ」

( ^ω^)「僕もだお」

('A`)「…………」

(´・ω・`)「私だって、同じようなモノです。
      空気の税金だけでも免除してもらおうと思って、連邦軍に……」

( ^ω^)「僕は両親がいなかったから、施設で育ったんだお。
     16歳になったら施設を出て行かなくちゃいけなくなって、
     しょうがなく軍に入ったんだお」

(;'A`)「お、お前16かよ!」

( ^ω^)「そうだお」

(´・ω・`)「う〜ん、若いねぇ」

( ^ω^)「だから、死ぬわけにはいかないんだお! 皆で生き残るお!」

('A`)「あぁ……そうだな」


ドクオは胸が痛んだ。



28: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 00:24:09.58 ID:c95FO1Uv0
  
死ぬわけにはいかない。

この言葉は自分も言った。
だが、ブーンのように純粋で、綺麗な言葉ではなかった。
誰かが死んでも、自分が生き残れれば……。
こんな思いだったのだ。



ブーンはドクオの命令で、モビルスーツデッキへ向かった。
『自分のモビルスーツとメカマンの顔は覚えておけ』
ショボンにも言った命令だ。



29: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 00:24:57.15 ID:c95FO1Uv0
  
2人だけ残った休憩室は、静かなモノだった。


(´・ω・`)「いい性格ですね。ブーン軍曹は」

('A`)「あぁ、コッチが最悪に見えるよ」

(´・ω・`)「そうですね」

('A`)「否定しないのか?」

(´・ω・`)「しませんよ。性格が最悪でも、それが大尉なんですから」

(;'A`)「褒め言葉か……それ」

(´・ω・`)「フフ、褒めてますよ」

('A`)「そうかい……」


ドクオはどんな顔をすればいいのか分からずに、立ち上がってショボンに背を向けた。
自分を認めてくれた人に出会ったのは、初めてだったのだ。
エースである自分ではなく、人である自分を認めてくれたヤツに……。



30: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 00:25:34.67 ID:c95FO1Uv0 ('A`)「俺は間違っていたかな……生きたいが為に、すべてを犠牲にしていた」

(´・ω・`)「……どうでしょうね。人の人生を評価するなんて、できませんよ」

('A`)「あぁ、そうだな。忘れてくれ……」

(´・ω・`)「忘れます。でも大尉」

('A`)「ん?」

(´・ω・`)「自分くらい、自分が好きでもいいでしょう?」

('A`)「ハッ、なんだよそれ」

(´・ω・`)「いいんですよ。自分大好きでも」

('A`)「……フフフ……アハハハハハ!!」


ドクオは窓越しに映るショボンの真剣な顔を見て、つい吹きだしてしまった。



31: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 00:26:21.94 ID:c95FO1Uv0
  
(´・ω・`)「ここで笑いますか」

('A`)「すまんな……だが、その通りかもしれん。自分くらいは……な」

(´・ω・`)「心配しなくてもいいですよ」

('A`)「ん?」


ショボンは立ち上がって、ドクオの隣に立ち、一緒に宇宙を見つめながら言った。


(´・ω・`)「皆ドクオ大尉の事、好きですよ」

(;'A`)「お、おいおい」

(´・ω・`)「変な意味じゃありませんよ。生き残りましょう、大尉」


ショボンは微笑の横顔をドクオに見せた。


('∀`)「あぁ」


ドクオは初めて見せるような笑顔で答えた。

第08話 好きですよ 終



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