('A`)ドクオが宇宙を駆け抜けるようです

33: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 00:28:20.19 ID:c95FO1Uv0
  
第09話 ドクオの変化

朝が来た……というわけではないが、
ドクオの目を覚ましたのはまぶたを突き抜けてくる光りだった。
ア・バオア・クーに向かう連邦軍艦隊が、第三種戦闘配置に就いた証拠だ。

それまでの休憩に入っていたドクオは、
起きなければならないと思いながらも腕で光りを遮って、また眠りにつこうとする。


( ^ω^)「大尉? ブリーフィングが始まるお?」


何分経ったか分からないが、
再びドクオの意識を覚ましたのはインターホンからのブーンの声だ。
ドクオは、ベッドから飛び起きるようにしてシャツとパンツだけの姿を直した。

制服に着替え終わったドクオは、ふと窓の外を見る。
別に、なんて事はない風景。
味方のサラミス級の艦隊が、編隊を組んで宇宙を走っている。



34: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 00:29:55.82 ID:c95FO1Uv0
  
('A`)「すまないな……」

( ^ω^)「いいんだお」


すぐにドアを開けて、ブーンと視線を合わせた。
これから戦闘が始まるというのに、お気楽な顔をしている。


( ^ω^)「僕の顔に何かついてるお?」


そんなドクオの視線に気づいたのだろう。
ブーンは首を傾げるようにしてドクオを見た。



35: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 00:30:29.87 ID:c95FO1Uv0
  
('A`)「いや、なんでもないよ」


ドクオはヒョイと飛ぶと、無重力の羽を使って通路を駆けた。


( ^ω^)「なんだお? 気になるお」

('A`)「何でもないって」

( ^ω^)「気になるお〜」

(;'A`)「しつけぇ!」


ブーンを尻に付けながら、ドクオはブリーフィングルームへ急いだ。



36: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 00:31:04.09 ID:c95FO1Uv0
  
川 ゚ -゚)「大尉、軍曹……アナタ達が最後です」


クーが、いつも通りの冷静な声で迎えた。


('A`)「すまない、クー中尉」

( ^ω^)「ごめんなさいだお」

(`・ω・´)「みんな揃っているな!」


2人が席に着くと同時に、シャキンがハキハキとしたいつもの声で、
集まったパイロットやらオペレーター全員を見渡した。

フレンドリーが宇宙軍第4大隊の旗艦に任命されたから、
シャキンが張り切るのも無理はない。

4大隊の僚艦の艦長らも、このブリーフィングには参加している。



37: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 00:32:15.74 ID:c95FO1Uv0
  
(`・ω・´)「諸君、おそらく……これで最終戦となるだろう!
     敵のコロニー・レーザーによって、我が将軍が戦死し、戦力も減少した。

     しかしだ! 敵も疲弊しているのは明らか!
     勝てない戦ではない! 負ける戦であるはずもない!
     我々は宇宙の秩序を得るために、戦い抜くのである!」


シャキンの演技クサい演説に、ドクオは納得を見せなかった。


('A`)(秩序の為だと?

   政府がそれを管理できなかったから、
   ジオンなんてモノが生まれたと言うことを、
   コイツらは覚えているのか……)


こう考えていた。



38: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 00:33:02.67 ID:c95FO1Uv0
  
(´・ω・`)「気持ちは分かりますが、シャキン中佐だって指揮官として……ね」

(;'A`)「またかよコノ野郎」

(´・ω・`)「大尉の考えは理解してますからね」

(;'A`)「なんだそりゃ」

(*゚ー゚)「大尉。どうです?」

('A`)「え? あぁ、ありがとう」


しぃがパックコーヒーを持ってきてくれた。
気が利く子だ。


川 ゚ -゚)「我々、第4大隊はこのままSフィールドに直進し、
     敵防衛部隊との戦闘を行います。

     我が隊は第2大隊の攻撃と連動して……」


意味深に言うが、要は戦ってきなさいという事だ。
この総力戦に、難しい話などいらない。



39: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 00:34:51.32 ID:c95FO1Uv0
  
( ゚∀゚)「気に入らないっての! 何でお前が一緒なんだよ!」

('A`)「知るかよ。艦長かクー中尉に言えや」


同じ隊で動くというのが嫌なのか……ジョルジュがドクオに突っかかる。


( ゚∀゚)「チキショー! 調子に乗るなよ!」

(;'A`)「変に拘ってるのはお前だろ」


ジダンダを踏むように文句を言っているジョルジュに、皆が苦笑いを見せる。


(*゚ー゚)「ジョルジュ大尉! 静かにしてください! ブリーフィング中ですよ!!!」

('A`) ( ゚∀゚)「…………」


ドクオもジョルジュも、シャキンさえも唖然と口を開け、他の艦長らも豪快な声にビックリしている。



40: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 00:35:53.55 ID:c95FO1Uv0
  
(´・ω・`)「一番、響きましたね」

川 ゚ -゚)「しぃ軍曹……」

(*゚ー゚)「す、すいません」


しぃは顔を真っ赤にして、俯くように頭を下げる。


( ^ω^)「……おっおっお♪」

( ゚∀゚)「ハハ、ハハハハハ♪」

(´・ω・`)「フフフフフ♪」

(*゚ー゚)「笑わないでください!!!」


また、しぃの声が響いた。



42: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 00:37:41.60 ID:c95FO1Uv0
  
ブリーフィングが終わって、ドクオとジョルジュはブリッジに呼ばれた。


(`・ω・´)「まったく、君達には参るよ」

( ゚∀゚)「ケッ! ドクオが騒ぐからだろ」

(;'A`)「お前だろ」

(`・ω・´)「まぁいい」


シャキンは艦長席に座ったままで、ドクオ達を見下げる形になっている。


(`・ω・´)「ドクオ大尉。君には前線に出てもらう。いつものような単独行動は無い」

('A`)「ん、了解です」

(`・ω・´)「ジョルジュ大尉。君は今回も中隊長を頼む」

( ゚∀゚)「了解」

('A`)「以上ですか?」

(`・ω・´)「ん? あぁ……」


ドクオがそう言うと、シャキンはゴホンと咳払いをして、ジョルジュの方をチラリと見る。



44: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 00:39:33.14 ID:c95FO1Uv0
  
( ゚∀゚)「……俺は失礼しますよ」


それに気がついたジョルジュは、そそくさとブリッジを出て行った。


('A`)(アイツめ……こんな時だけ気を使いやがって)

(`・ω・´)「大尉……」

('A`)「なんでしょう?」

(`・ω・´)「私は君が苦手だ。
     大尉に隊を任せないのは、前にも君に言われたとおり、
     君を信用していないからだ」

('A`)「……どうしたんです? いきなり正直になって」


シャキンは今まで、ドクオへの不信感を態度には表していたが、言葉には出さなかった。



45: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 00:41:21.00 ID:c95FO1Uv0
  
指揮官として、部下の士気に関わる。
ドクオへの説教で、自分の評価が下がるかもしれない。
こんな事を考えているのだろうと、ドクオは推測していた。

そして、このシャキンの態度をドクオは嫌っていた。


(`・ω・´)「多分、君が私を嫌っている理由は、君が想像している通りだ。
     私は私の立場を維持したくて、君には強く言えなった。
     嫌な噂は立てられたくないからな。

     だが、最後の戦いになるかもしれん。言いたいことは、今言っておこうと思ってな」

('A`)「…………」

(`・ω・´)「だが、今日は言わせてもらう。勝手な行動は許さん。
     ジョルジュ大尉をサポートしてやってくれ」


そう言われて、ドクオはドアへ足を向けた。



46: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 00:42:01.78 ID:c95FO1Uv0
  
(*゚ー゚)「ドクオ大尉……」


ブリッジクルー達は無言で立ち去るドクオが、怒っていると思っていた。


('A`)「俺は中佐が嫌いですよ。
   新型もジョルジュにやっちまうし、俺の事は本気で避けてましたからね〜」

(`・ω・´)「ん……んん……」

('A`)「でも、今日の中佐は良いですよ」

(`・ω・´)「え?……お、おい大尉」


明らかに動揺しているシャキンを背に、ドクオはブリッジを出て行った。


(`・ω・´)「まいったな……彼はどうしたんだ?」

(*゚ー゚)「さぁ……でも、もっと素敵になってます」

(`・ω・´)「…………」

(*゚ー゚)「あ! えっと……その、何でもありません!!!!」


今度はブリッジにしぃの声が響いた。



47: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 00:42:40.20 ID:c95FO1Uv0
  
自分では『自分が変わっているのだ』とは実感できないものだと思う。
実感できている人は、ナルシストか、余程の覚悟を持って変えようとした人だろう。

ドクオは、自分の変化には気づいていない。

今までうざったかった存在が、急に愛おしく思えて、一緒に居たくなる。

こんな思いがドクオの中に溢れていたが、彼自身は何も実感できず、
いつも通りの反応を見せていたつもりだった。

第09話 ドクオの変化 終



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