('A`)ドクオが宇宙を駆け抜けるようです
- 91: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 01:56:36.87 ID:c95FO1Uv0
- 戦場で閃光が煌けば、モビルスーツか戦艦か……はたまた戦闘機か補給艦か。
どれにしても、人の命が失われていくという事実を、閃光が知らせてくれる。
ショボン、ブーン、ジョルジュの命も、その閃光の中に消えていった。
この光りの中で、どんな人が死んでいくのか……。
戦いの中では誰にも分からず、誰も分かろうとはしない。
しかし、その閃光の戦士達を知っている人達は、その人がどのような者だったのか……。
思い返すのだろう。
時は宇宙世紀0079:12月31日。
年が変わろうとしていたこの日……。
後に一年戦争と呼ばれる戦いの終末が、訪れた。
第13話 一人の涙
- 92: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 01:57:11.38 ID:c95FO1Uv0
- ('A`)「ウォオオオオオ!」
両手のマシンガンが火を吹き、敵モビルスーツを撃破していく。
後方からの奇襲、目立たない漆黒のカラーリングで、敵は慌てた。
その間にも、ドクオは3機の敵機を行動不能に陥れる。
('A`)「フレンドリーは後方へ! 早く下がれ!」
(*゚ー゚)「私、信じてました。大尉!」
('A`)「そうかい!」
撃ち続けるドクオ。
フレンドリーは反転し、味方の部隊の方へ撤退を始めた。
- 93: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 01:57:43.97 ID:c95FO1Uv0
- だが、ドクオは撤退する素振りを見せていない。
(`・ω・´)「どうした!? ついて来い、大尉!」
('A`)「俺は敵を阻止します」
川 ゚ -゚)「無茶を……多対一で勝てるとでも!?」
('A`)「敵だって瀕死だ。俺が凌いでいる間に、フレンドリーは逃げ切れる」
(*゚ー゚)「やめてください! 死ぬつもりですか!?」
('A`)「そんなつもりはない! 生きてやる!」
ドクオは弾切れを起こしたマシンガンを投げ捨て、ビームサーベルを持つ。
- 94: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 01:58:50.43 ID:c95FO1Uv0
- (`・ω・´)「チィ! 援軍は!?」
川 ゚ -゚)「後、2分!」
(`・ω・´)「それじゃあ……遅すぎる……」
(*゚ー゚)「大尉!」
サーベルで敵を切り裂く。
その隙に回りこまれたザクに、左手を裂かれた。
ドクオは振り向きざまにザクを突き刺すと、
今度はリック・ドムのバズーカ砲に右足を破壊された。
(`・ω・´)「艦を反転させろ! 支援をする!」
(*゚ー゚)「やめてください! 艦長!」
(`・ω・´)「大尉がなぶり殺しにされるのを……黙って見ているつもりか!?」
生身でもドクオを助けそうなシャキンの勢いを、しぃが引き止める。
- 96: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 02:00:09.11 ID:c95FO1Uv0
- (*゚ー゚)「大尉の覚悟が、分かるでしょう!?」
(`・ω・´)「しかし、しぃ軍曹……君は……」
(*゚ー゚)「撤退を……シャキン中佐」
涙を浮かべた瞳が、シャキンに言葉を失わせた。
('A`)「アアアアアアアアアアア!!!!!」
遂には頭部も撃ち抜かれたドクオは、
ザブカメラで敵を捉えると、サーベルを投げて、攻撃する。
( ^ω^)『皆で生き残るお!』
お前が死んでんじゃねぇか……。
(´・ω・`)『今の方が、良いですよ……大尉、死なないで……』
俺は……変われたのかな……。
('A`)「ウワァアアア!」
機体のすぐ脇で爆発したバズーカ弾が、ジムの体を吹き飛ばして、デブリに叩きつけた。
- 97: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 02:01:38.49 ID:c95FO1Uv0
- 生きたい……生きたい……生きたい!
まだやりたい事がある! しぃとの約束もある! ショボンとブーンを迎えに行く!
死ぬのは嫌だ!
誰か助けて……。
心の奥底で、恐怖が込み上げて、ドクオの体を支配しようとする。
どんな覚悟をしても押し寄せる恐怖。
ドクオは無意識に涙を流し、失禁していた。
逃げろ。お前ならそうする。昔からそうだったじゃないか。
うるさい! 逃げられない……逃げるわけにはいかない。
ショボンとブーンの前で、迎えに来るって格好をつけた。
- 98: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 02:02:18.02 ID:c95FO1Uv0
- ('A`)「俺は生き延びて、何でもいいから……やりたい」
それが夢だった。
別に確定されたモノがあるわけではない。
盗みと冷酷さしか知らなかった少年が大人になり、殺しと無情を知る。
そんな人が持った些細な夢。
普通の生活。
それを叶えてくれたのが、フレンドリーの皆だった。
だが、それを求めれば今までの自分が否定される気がした。
それが怖くて、今までそれを遠のけていた。
今なら素直になれる。
- 99: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 02:02:59.47 ID:c95FO1Uv0
- ('A`)「好きだったよ……皆」
ようやく出た言葉を最後に、ドクオは閃光となって宇宙に散った。
(*゚ー゚)「う……あぁ……大尉ぃ――――!!!!」
その閃光を背にして、フレンドリーは味方部隊とすれ違う。
(`・ω・´)「クソォオオ!!」
肘掛けを殴りつけたシャキン。
(*゚ー゚)「うっ……うわあああああ!!」
しぃから流れた涙が玉になって漂った。
- 101: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 02:04:41.69 ID:c95FO1Uv0
- 戦争は終結した。
ドクオの閃光と共に来た援軍。
それと同時に発せられた停戦協定。
誰もが、もっと早ければ……。
と思い、それぞれの想い人へ涙を流していた。
(`・ω・´)「ドクオ、ジョルジュ両大尉は特別昇級で3階級特進だ。大佐だよ」
川 ゚ -゚)「抜かれましたね。中佐」
(`・ω・´)「そうだな……ショボン少尉とブーン軍曹も2階級特進だ」
フレンドリーは損傷が激しく、月へ向かうように命じられた。
- 102: ◆A57zIoS2yk :2006/10/08(日) 02:07:06.83 ID:c95FO1Uv0
- その休憩室で、シャキンとクーがソファーに座っている。
(`・ω・´)「ドクオ大尉……いや、大佐は好きだったな? ここが」
川 ゚ -゚)「らしいですね。いつもココから宇宙を眺めていたそうで……」
(`・ω・´)「そうか……いいものだな。ブリッジからとは一味違うような……」
彼らが見つめる宇宙。
先にはア・バオア・クーの異形さがまだ見え、そこに残った部隊の光も見える。
そして、残された人達。
ドクオ達の魂は、あの宙域に取り残されているのだろうか……。
しぃは一人、自分の部屋で泣いていた。
想いを伝え合ったわけでも、抱き合ったわけでもない。
だが、恋人同士には違いなかっただろう。
それを失った絶望感が、心臓を握り締めるように押し寄せるたび、しぃは涙を流していた。
この哀しみに、しぃは犯され続けた。
第13話 一人の涙 終
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