流石兄弟が殺人ゲームに参加するようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/21(火) 20:06:49.88 ID:4ZhGUL5L0
1.

高級時計2000万円分を盗み出してから数ヶ月。

現金化したもののほとぼりが冷めるまでは使うわけにもいかず、相変わらず二人は

安アパートでラ王をすする生活を続けていた。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「ズズズ…うむ、秋になってもやはりラ王だな、弟者」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「流石だよな俺ら。しかし前より生活が苦しくなったような気が…」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「あの金、少なくとも一年は使わん方がいいと言ったのは弟者だろう」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「うむ…」


押入れの中には札束が山積みになっているというのに毎日毎日ラーメンばかり。

しかしそれでも二人は幸せだった。

かつては欠片もなかった「将来への希望」が限りなくあふれているからだ。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「来年になったら俺は海辺に家を買ってペンションをやるぞ、弟者」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「渋いな兄者。俺もそれを手伝わせてくれ」



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/21(火) 20:08:30.38 ID:4ZhGUL5L0
2.

そんなある日の明け方ごろ。

安いだけが取り柄の居酒屋で痛飲した二人は、千鳥足で家路についていた。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「オエッ。こんな生活がいつまで続くんだ…」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「何も悲観することはないぞ、弟者! 未来は確かに俺らの手の中にある」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「それもそうだな、その通りだ! ヒャッホウ」


記憶はそこで途切れている。

次に眼が覚めたとき、弟者は暗い部屋に一人、倒れていた。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「う、うーん…ここはどこだ、あれからどうなったんだ…?」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「俺は確か、兄者と酒を飲んでて…その帰り道に…」


部屋に置かれたデスクの上にテレビがあるが、砂嵐しか写っていない。



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/21(火) 20:09:44.66 ID:4ZhGUL5L0
3.

  ∧_∧
弟(´<_`  )「どこなんだここは…」


照明の類はなく、テレビの画面だけがぼんやりと周囲を照らしている。

弟者が立ち上がると同時に画面が変わり、文字が表示された。


『このゲームのルール

クリア条件…時間内にゴールへ到達すること

クリア報酬…人質の命と君たち兄弟の免罪

1.ゴールまでの道のりには“モンスター”が配置されている

2.モンスターを倒すことができるのは“聖水”のみ(君のポケットに入れておいた)

3.制限時間は君がその部屋から出た瞬間から3時間

4.時間切れになったり君が死んだ場合、人質は死ぬ』


  ∧_∧
弟(´<_`  )「???」



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/21(火) 20:10:53.96 ID:4ZhGUL5L0
4.

また画面が変わり、椅子に縛り付けられた兄者の姿を映し出した。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「兄者!! 人質って兄者のことか!?」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「兄者、兄者!」


弟者が画面をゆすっても向こうは気付く様子がない。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「こっちの声は聞こえてないみたいだな。行くしかないってか…」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「どこのどいつか知らんが悪趣味なマネを」


ポケットを探ってみると、見覚えの無いプラスチックのケースが出てきた。

蓋を開くと透明な液体の入った注射器が三本入っている。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「これが聖水?」



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/21(火) 20:12:20.62 ID:4ZhGUL5L0
5.

部屋を出るとカビくささと湿気の混ざった不快な臭いが押し寄せてきた。

弟者のいた部屋には「駅長室」という表札が降りている。

通路に窓は一つもなく、頼りない裸電球の明かりだけがポツポツと暗闇を照らしていた。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「地下鉄の廃駅みたいだな…」


腕時計は付けたままで、夜2時を指している。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「朝5時がリミットか」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「くそう、兄者が人質に取られているのでは行くしかない…」


部屋に戻ると弟者は念のために武器を作った。

放置されていたスタンプや文鎮、花瓶の破片などを集めて脱いだシャツに詰め込む。

これを振り回せば多少の攻撃力はあるだろう。素手よりはマシだ。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/21(火) 20:14:08.95 ID:4ZhGUL5L0
6.

壁にはご親切にもペンキで矢印が描かれ、ゴールへの道のりを示している。

弟者はところどころに設置されたカメラがこっちを睨んでいることに気付いた。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「チッ、変態どもめ。俺がビビる様子を見て笑っているな」


そのとき、行く先の明かりの下に弟者は動くものを見つけた。人影だ。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「あれはモンスター…じゃないよな。人間だ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「もしや俺と同じように拉致されてきたのか?」


不安と心細さで助けが欲しくなっていた弟者は思い切って声をかけることにした。

それに相手が自分よりもずっと小柄だったので、取っ組み合いになっても勝てるだろうと

踏んだのだ。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「おい、あんた」



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/21(火) 20:15:34.26 ID:4ZhGUL5L0
7.

( ゚ρ゚ )「ウー?」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「(な、何だこいつ? 眼が飛んでいる…)いや、あの…」

( ゚ρ゚ )「ウー、ウー」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「あんたももしかして、俺と同じ…ち、近寄るな、おい」


弟者は武器を振り上げて威嚇したが、相手はまったくひるむ様子がない。

弟者は思わず思い切りその脳天に武器を振り落ろした。


( ゚ρ゚ )「アー」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「?! き、効かない!?」


効いていないというより、殴られたことに気付いてすらいないようだ。

恐怖に捕らわれた弟者は後ずさりしながら相手の顔面を殴りまくった。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「死ね、死ね! コノヤロウ!」



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/21(火) 20:17:04.62 ID:4ZhGUL5L0
8.

顔面の骨が陥没し眼球が飛び出しても相手は動きを止めなかった。

とうとう壁際に追い詰められ、弟者は首を両手で掴まれた。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「うぐぐぐ…」

( 。ρ゚ )「アー、ウー」


チビのくせに恐ろしい力だ。

意識が薄れかけたとき、弟者は武器を捨ててポケットからケースを取り出した。

中の注射器を手にとって相手の腕を突き立て、ピストンを押し込む。


( 。ρ゚ )「ウ…」


激しく痙攣したあと、テコでも動かなかった体が地面へ崩れ落ちた。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「ぜえ、ぜえ、なんてこった…こいつが“モンスター”か…」



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/21(火) 20:18:24.22 ID:4ZhGUL5L0
9.

ややあってから、弟者は恐る恐るモンスターの首筋に触れてみた。

脈は止まっている。確かに死んだようだ。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「何かこの顔、見覚えがあるような…」


ボコボコに変形してしまっているが元の顔を思い出すと何か引っかかる。

首を捻っていた弟者の頭に、昔の上司の顔が浮かんだ。

弟者がヤクザの使いっぱしりをしていたころに何回か顔を合わせた男だ。

しかし彼は保険金殺人に何回も関わっていたことが露呈し、逮捕されて服役中の筈だった。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「確か無期刑を食らった筈だ。その兄貴が何故ここに?」


答えをくれる者はいない。

弟者は不安を抱えながら再び矢印に従って歩き始めた。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/21(火) 20:19:52.22 ID:4ZhGUL5L0
10.

モンスターは道中に点々と配置されていた。

さっきの奴もそうだったが、彼らは明らかに挙動がおかしい。

ずっと頭を壁に打ち付けている奴。

悲鳴を上げながらあたりを走り回っている奴。

仲間同士で殺しあっている姿も見た。

幸い注意力が散漫になっているようなのでかわすのはそれほど難しくなく、弟者はそれから

さしたる問題もなく先に進むことができた。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「分岐か…ん?」


十字路の一方を防火シャッターで塞いだT字路で、弟者は立ち止まった。

矢印は右に続いているが、左の通路から光が漏れている。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「まさか外に…?」



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