流石兄弟が再び殺人ゲームに参加するようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/06(木) 20:15:10.26 ID:yV8TszJ20
流石兄弟が完全犯罪を企むようです
流石兄弟が殺人ゲームに参加するようです
の続きです。

1.
流石兄弟が殺人ゲームに参加してから一年後。季節は再び夏。

海水浴客で賑わう海辺の近く、廃墟と見間違えんばかりのボロ屋敷に二人の姿があった。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「ズズズ…どんな時でもラ王だな」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「流石だよな俺ら」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「…」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「…」


表情は一様に暗い。

弟者が食べ終わったラ王の器を床に置く。コトン。

同時にメキメキと音がして部屋の奥にある柱が倒れた。

まるでドリフだ…

しかし今の二人にそれを笑う余裕はない。



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/06(木) 20:15:49.32 ID:yV8TszJ20
2.
ようやく買った二人のペンション。

駐車場・大浴場付き、駅から10分で浜辺は歩いて行ける距離。

それでこの値段は確かにおかしいくらい安かった。

だがまさか、本当にここまで欠陥だらけとは…

  ∧_∧
弟(´<_`  )「そう言えば兄者、水道管だがまた漏水していたぞ」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「…」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「それから外壁だが…」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「わかっている。塗り直しても塗り直してもヒビ割れるんだろう」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「あの不動産屋! 訴えてやる」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「もうとっくに会社を潰して消えているぞ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「…」


二人の表情は益々暗くなるのだった。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/06(木) 20:16:26.72 ID:yV8TszJ20
3.
  ∧_∧
弟(´<_`  )「このままでは客を呼ぶどころではないな。リフォーム屋は何て?」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「完全に建て直しとなるともう1千万はかかるそうだ…」


当然ながらそんなカネがあるわけはない。

このペンションを買うときに虎の子の2千万は使い切ってしまい、二人はすでにスカンピンだった。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「甘かった…もう少しリサーチしていればこんな事には」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「過ぎたことは仕方ないだろう、兄者」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「うむ。幸い土地には特に問題はないんだ」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「だから土地を売れば前の生活に戻るくらいは何とか…」


すでに前住んでいたアパートは引き払っていた。

またあそこに戻るのか?



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/06(木) 20:16:55.93 ID:yV8TszJ20
4.

前の生活。

ボロアパートで毎日毎日自分たちの不遇を嘆きながら若さをすり減らす毎日。

確かに今このペンションを売り払ってしまえば明日からはさぞかし楽な生活が待っていることだろう。

だがその先には何もない。あんな生活の先には何もないのだ。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「それだけはイヤだ」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「俺もだ弟者。何とかこのペンションを建て直さねば」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「しかしもうカネはどこにもないぞ」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「知り合いを総当りして貸してもらうしかあるまい」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「みっともないな…」


とは言え他に方法は思い付かない。

二人はその日から金策に駆け回ることになった。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/06(木) 20:17:28.82 ID:yV8TszJ20
5.
二人は数日間に渡って方々手を尽くした。

しかし1千万円もの大金はそうそう借りられるものではない。

近所の公園で合流し、二人は木陰のベンチに腰を下ろした。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「こっちはダメだ。お前はどうだ弟者」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「全滅だ」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「何てこった…」


ぐったりして頭を抱えた。もう諦めるしかないのか…


( ´・ω・` ) 「そこのお二人…」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「ん? 今の声はどこからした?」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「後ろだ兄者」


ベンチの後ろにホームレスが寝転がっている。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/06(木) 20:17:59.01 ID:yV8TszJ20
6.
( ´・ω・` ) 「振り向かないで、そのまま」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「何だこのおっさんは」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「恵んでやるものはないぞ」

( ´・ω・` ) 「私はお二人が参加させられた殺人ゲームを追っている者です」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「!!」


反射的に二人は何気ないふうを装ってケータイをいじるふりをした。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「何者だ?」

( ´・ω・` ) 「所属は言えません。ショボンとお呼び下さい」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「いいだろう。俺たちに何の用だ?」

( ´・ω・` ) 「三日後にゲームの主催者が貴方たちを再び拉致する筈です」

( ´・ω・` ) 「もちろん新たなゲームへの参加を強要するためです」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「待てよ、もう高級時計の件は免罪になったんだろ?」

( ´・ω・` ) 「前回、ルール違反と知りながら女を一人逃がしたでしょう?」



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/06(木) 20:18:49.71 ID:yV8TszJ20
7.
  ∧_∧
弟(´<_`  )「クーか…くそっ!」

( ´・ω・` ) 「今回はそのことの免罪と引き換えです」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「それでどうしろって言うんだ?」

( ´・ω・` ) 「ゲームに参加し、我々の指示に従ってゲームの内情を探ってもらいたい」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「お前らの目的は何だ?」

( ´・ω・` ) 「ゲームを潰してこの事実を世間に公表することです」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「ならいいぞ。俺はやる」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「おい、こいつの言うことを信用するのか弟者!」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「報復できるなら願ってもない話だ。ただし条件がある、ショボン」

( ´・ω・` ) 「?」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「ペンションを建て直すだけのカネを報酬にくれ」

( ´・ω・` ) 「いいでしょう。明日アカヒ新聞の勧誘がお二人の家に行きます」

( ´・ω・` ) 「彼に『三ヶ月と12日分だけ取る』とお答え下さい」



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/06(木) 20:19:20.27 ID:yV8TszJ20
8.
ボロボロのペンションに戻った後も兄者は弟者を責めた。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「正気かお前は!? 死にに行くようなもんだぞ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「俺は前のゲームから生還したぞ」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「今度もできるとは限らないだろ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「なあ兄者。このペンションが俺たちの人生最後の砦だと思う」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「…」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「俺はもうあんなボロアパートの生活はイヤだ」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「その為なら命も惜しくないか?」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「命なんかいらない。だが人生は惜しいんだ!」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「よく考えろ兄者、職歴学歴なしの俺らに人並みの幸福を得る方法が他にあるか?」


とうとう兄者は何も言えなくなり、弟者が押し切る形になった。

そして翌日。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/06(木) 20:19:47.55 ID:yV8TszJ20
9.
昼に来たアカヒの勧誘員にショボンから聞いた通りの暗号を伝えると

彼は黙って洗剤を渡して立ち去った。

洗剤の箱を開くと紙切れと親指大のカプセルが入っていた。


『ある二国間で戦争が始まろうとしている。

人間をモンスター化する薬は戦力的に不利な方の国が

日本のとある宗教団体の協力を得て作らせているものらしい。

戦後占領した国での布教の独占が報酬とのこと。

ゲームはモンスターが実戦で役に立つかの実験のようだ。

カプセルには小型の通信機が入っているから、体内に隠して持って行ってくれ。

詳しいことはゲーム中に再び連絡する。

生還を祈る(このメモは焼き捨てること)』

  ∧_∧
弟(´<_`  )「えーと、体内ってつまり…アッー!か?」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「アッー!だろ」



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/06(木) 20:20:27.26 ID:yV8TszJ20
10.
そして運命の日。

自分の部屋で眠っていた弟者は顔に何かが被さるのを感じて目を開いた。

何者かが自分の顔に塗れた布のようなものを押し付けている。

暴れる暇もなく再び意識が遠退いた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

弟者は顔に当たる荒涼とした風で目が覚めた。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「う、うーん…」


そこはどこかの廃屋らしかった。

木で出来た壁や床は朽ち果てて腐っており、草が生えている。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「ここはどこだ?」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「うぐぐ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「兄者!?」



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