ξ゚听)ξはいたずらっ子のようです

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/11(火) 20:44:30.45 ID:agJKuQGK0

やっぱり怒ってる…
脇をくすぐるのはいいけど、時々肉を捻るのが妙に痛い。
痛いって言えばやめてくれるけど。
雪が解けて滑りやすくなった薄暗い道を、無言で漕いだ。自転車が揺れるたびに、ツンの腕力がブーンの脇を抑えるんだお…


( ^ω^)「ツン、転ぶと危ないから一度降りて歩くお」

ξ゚听)ξ「…」
すっ

( ^ω^)「?」(……案外素直に降りたお)
ガーッ

(;^ω^)「!!ちょっ!じ、自転車を押すなお!ブーンまだ降りてないおっ!」

ξ゚听)ξ「転ばないように漕げばいいじゃない!それっ」

(;^ω^)「はぉっ!?どうみても下り坂だお!ほ、本当に危ないお!」

ξ゚听)ξ「うるさry」

ずるっ!

ズシャー

ξ゚听)ξ「きゃっ!」

( ^ω^)「ツン!?」



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/11(火) 20:45:20.25 ID:agJKuQGK0

突然荷台から手が離れたかと思うと、後方からツンの悲鳴が聞こえた。
あわててブレーキを握って振り返ると……やっぱりツンは死ぬ時は前のめりだお……


ξ゚听)ξ「痛っ……いったぁい……」

(;^ω^)「ツン!?大丈夫かお!?」

ξ゚听)ξ「…」

( ^ω^)「ツン?」

ξ;凵G)ξ「……うぅ」

( ^ω^)「ツン……ほら、立つお。制服もびしょびしょだからブーンのジャージを着るんだお」


雪解け水でどろんこになったツンのブレザーをブーンの鞄に入れて、ブーンの体操ジャージを貸してあげた。
この際だぼだぼなのは我慢してもらうお。鞄が泥だらけになるよりも、ツンに泣かれるほうが嫌だお。



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/11(火) 20:46:22.68 ID:agJKuQGK0

( ^ω^)「どこも怪我してないお。どこか痛いかお?」

ξ;凵G)ξ「大丈夫よ……ひっく、ブーンのジャージ汗臭いから目に沁みてるのっ」

( ^ω^)「そのジャージは今日使わなかったから綺麗だお。」

ξ;凵G)ξ「…」

( ^ω^)「ほら、もう転ばないように自転車に乗れお。ブーンが押すから荷台に乗ってるだけでry」

ξ;凵G)ξ「海」

( ^ω^)「へ?」

ξ゚听)ξ「海観たい。連れてって」

( ^ω^)「今からかお?もう暗いお」

ξ゚听)ξ「波の花が見たいの。いいわよ、じゃあ一人で行く」

( ^ω^)「…」



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/11(火) 20:46:50.81 ID:agJKuQGK0

これ以上ツンを怒らせると明日の朝が怖いお。
今日はツンに従って、ちょっと遠いけど海に行こう。波の花が咲いてるかはわからないけど……
ツンが行きたがってるなら連れて行ってあげるお。
こけないようにゆっくりと…ツンももうくすぐりはしないお。信号待ちの度に足で自転車を止める以外は大人しいお。


( ^ω^)「着いたお」

ξ゚听)ξ「あら……」


やっぱり海岸に花吹雪は舞っていなかったお。
岩のくぼみにふわふわとした花が少しずつ浮いているだけで
お世辞にも今日は綺麗だとは言えない景色になってるお…


( ^ω^)「風が吹いてないからかお?今日は傘もいらないお」

ξ゚听)ξ「いいじゃない。こうやって浮いてるだけでもりっぱな花よ」

( ^ω^)「なんだか黄色くなってるお」

ξ゚听)ξ「仕方ないわよ。プランクトンだもの」

(:^ω^)「ツンは現実と想像どっちがいいのかお」

ξ゚听)ξ「あ、真っ白発見」



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/11(火) 20:49:57.98 ID:agJKuQGK0

ツンはそういうと海岸に並んだゴツゴツした岩の間から、ふわふわした真っ白な波の花を拾ってきた。
プランクトンの死骸なんだろうなって思うけども、そのふわふわを両手で抱えて嬉しそうにしてるツンが可愛いお。


ξ゚听)ξ「ほらブーン」

( ^ω^)「おっお」

ξ゚听)ξ「こっち来なさいよ」

( ^ω^)「お?」

ふーっ

(;^ω^)「おっお!なにすんだお」

ξ゚听)ξ「あははwwブーン真っ白www」

(;^ω^)「ぺっぺっ!口にも入ったおww」

ξ*゚ー゚)ξ「よけないブーンが悪いの。それっ!」

(;^ω^)「ちょっww」

走って逃げるブーンの後ろから、波の花を吹きかけてツンが飛ばしてくるお。
服に付いたら染みになるかもしれないから、器用に避けようとしても顔を狙ってきて…
ようやくツンの両手から花がなくなったころには、二人とも息が切れてたお。



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/11(火) 20:52:22.16 ID:agJKuQGK0

(;^ω^)「うぅ、顔がなんだかベトベトするお」

ξ゚听)ξ「私だって両手がベトベトするからおあいこよ」

( ^ω^)「水道で顔を洗いたいお」

ξ゚听)ξ「そうね」


( ^ω^)「おっお。洗ったのはいいけど拭くものがないお」」

ξ゚听)ξ「バカねぇ。タオル持ってるから貸してあげるわ」

( ^ω^)「ありがとうだお」

ξ゚听)ξ「ジュース一本ね」

(;^ω^)「……そういえば今日はツンにジュース奢る約束だったお」

ξ゚听)ξ「じゃあそれとあわせて二本買ってきなさい。温かいコーヒーとお茶ね」

( ^ω^)「わかったお」

ξ゚听)ξ「二分ね」

(;^ω^)「なっ」

ξ゚听)ξ「はいスタート!」



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/11(火) 20:52:51.45 ID:agJKuQGK0

急いで自販機に向かったお。でも手洗い場から20メートルも離れてなかったから、なんとか時間内に。
ツンはブラックコーヒーが飲めないお。だから甘いコーヒーとお茶。
手洗い場に戻るとツンは自転車に跨ってゆらゆらとペダルを漕いでた。スタンドを立てて、海を見ながら。

( ^ω^)「…」

ξ゚听)ξ「遅い」

( ^ω^)「え?間に合ったお」

ξ゚听)ξ「でも遅いの。ほらコーヒー頂戴」

( ^ω^)「はい」

ξ゚听)ξ「ん」

( ^ω^)「ブーンも座っていいかお?」

ξ゚听)ξ「前にね。ほら」

ツンは器用に荷台に移動した。
ブーンがサドルに座ろうとしたら、ちょうどいいタイミングでスタンドを上げられて、転びそうになったお。
ツンはまた嬉しそうににやにやしてる。そういえばいつの間にか機嫌も治ってるお…



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/11(火) 20:53:25.38 ID:agJKuQGK0

( ^ω^)「……なんで怒ってたんだお?」

ξ゚听)ξ「え?」

( ^ω^)「だからさっき」

ξ゚听)ξ「さぁ」

(;^ω^)「…」

ξ゚听)ξ「海に連れてきてくれたお礼に、お茶おごってあげる。はい」

( ^ω^)「それはブーンがry」

ξ゚听)ξ「もうおごってもらったから私の。だから私のおごりよ」

( ^ω^)「……いただきますお」

ξ゚ー゚)ξ「うん」



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/11(火) 20:53:58.51 ID:agJKuQGK0

辺りはもう真っ暗になってた。
海沿いの道に続く街頭が、ブーン達の家までの道を照らしていて
もう溶けてなくなってしまった雪が海に戻っていく音を聞きながらお茶を飲んだ。
ツンはブーンの後ろでずっと海を見つめているお。

ξ゚听)ξ「……ブーンはさ」

( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「ここの海、好き?」

( ^ω^)「もちろんだお。生まれ育ったこの街が大好きだお」

ξ゚听)ξ「そうじゃなくて。ここの海が好きかって聞いてるの」

( ^ω^)「?うん」

ξ゚听)ξ「……そっか」

( ^ω^)「小さい頃から何度もツンとここに来たお。なんだかその度に追いかけられてる気がするお」

ξ゚听)ξ「来る度に追いかけてる気がするわね」

(;^ω^)「おっおww」

ξ゚ー゚)ξ「ふふっww」



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/11(火) 20:55:19.31 ID:agJKuQGK0

( ^ω^)「ツンは好きかお?」

ξ゚听)ξ「え?」

( ^ω^)「海」

ξ゚听)ξ「……もちろん」

( ^ω^)「ツンはなにかあるとすぐにここに連れて行けって言うお。そんなに波の花が好きなのかお?」

ξ゚听)ξ「い、いいじゃない!冬しか観られないんだから!」

(;^ω^)「?う、うん。そうだお」


昔から。
喧嘩した日も、ツンがいなくなったって思ったらここにいた。
その度にブーンが誤って、こうやってツンを後ろに乗せて家に帰った。
ツンが学校で校長先生の銅像にいたずらして怒られたときも、一人でここにいたお。
二人で一緒に先生に謝りに行ったお。ブーンはいつも、ツンと二人でここに来たお。



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/11(火) 20:55:49.59 ID:agJKuQGK0

ξ゚听)ξ「……クー先輩、合格してるかな」

( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「大学」

( ^ω^)「大丈夫だお。クー先輩なら無問題だお」

ξ゚听)ξ「私もそう思うけど……美大って難しいのよ?」

( ^ω^)「そうなのかお?ブーンはよくわからないお」

ξ゚听)ξ「……来年かぁ」

( ^ω^)「?」

ξ゚听)ξ「私たちも来年受験でしょ?なにその顔」

( ^ω^)「あ、そっか。ブーンはあんまりそういうの考えたことないお」

ξ゚听)ξ「どうするの?」

( ^ω^)「なにをだお?」

ξ゚听)ξ「だから、進路」



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/11(火) 20:56:18.13 ID:agJKuQGK0

( ^ω^)「おっお……」

ξ゚听)ξ「まったく、ブーンはなにも考えてないんだから」

(;^ω^)「あぅ」

ξ゚听)ξ「…」

( ^ω^)「ツンはどうするんだお?」

ξ゚听)ξ「え?私?……私は……」

( ^ω^)「ブーンは頭も悪いから、多分この町で働くお」

ξ゚听)ξ「…」

( ^ω^)「ツンは絵が上手いから、もっともっと絵の勉強をするといいお。ブーンは応援するお!」

ξ゚听)ξ「そ、そうね……うん」

( ^ω^)「ツンも美大に行くのかお?」

ξ゚听)ξ「えっ?」



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/11(火) 20:57:01.58 ID:agJKuQGK0

( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「……わ、私は……私もここに残るわ。別に地元の大学でも絵の勉強はできるもん」

( ^ω^)「そうかお。ならブーンもずっと応援してるお」

ξ////)ξ「い、いらないわよブーンの応援なんかっ」

( ^ω^)「おっおww」


そうだお。
ブーンはずっとツンの応援をするんだお。
ツンはいたずらっ子で、たまに度が過ぎるようなこともするけど
そんなツンがブーンは大好きなんだお。

できることなら……

ずっとツンと二人で、この波の花を観ていたい。
ツンにいたずらされても、それでもブーンはツンの傍に居たいんだお。



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/11(火) 20:57:47.75 ID:agJKuQGK0

( ^ω^)「……そろそろ帰るかお」

ξ゚听)ξ「そうね」

( ^ω^)「ところでツン」

ξ゚听)ξ「なに?」

( ^ω^)「ブーンの鞄をどこに隠したお?」

ξ゚听)ξ「私を捕まえたら教えてあげる」

( ^ω^)「…」      すっ

ξ゚听)ξ「…」         すすっ

( ^ω^)「…」           たったっ

ξ゚听)ξ「そぉい!」          すたたっ!

(;^ω^)「ちょっwww逃げるなおwww」

ξ*゚ー゚)ξ「逃げないと捕まるでしょ!鞄の在り処を知りたければ捕まえてみなさいっ!」



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/11(火) 20:58:35.57 ID:agJKuQGK0

(;^ω^)「こら、待つおっ!」     

ξ゚ー゚)ξ「待たないっ!」        

(;^ω^)「ツーンっ!」     

ξ*^ー^)ξ「♪」        


ほんの一時間前の、ふくれっ面になってたツンが嘘みたい。
来た道を逆に逃げるツンを追って、捕まえた時には自転車からかなりの場所に来てた。
戻るときも、ツンはまた道を引き返そうとするから手を繋いだ。
鞄の隠し場所から、自転車のある場所に戻ってくるまで
ブーンはツンの手を離さなかったお。

ξ゚听)ξ「ねぇブーン」         

( ^ω^)「お?」           

ξ゚听)ξ「なんでブーンは、私がどんないたずらしても怒らないの?」         

( ^ω^)「それは……ツンだからだお」           

ξ゚听)ξ「?」



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/11(火) 20:59:10.19 ID:agJKuQGK0

( ^ω^)「ツンがするいたずらだから、ブーンは怒らないんだお」

ξ゚听)ξ「じゃあ私以外がいたずらしたら?」  

( ^ω^)「むしろツン以外誰もそんなことしないお」 

ξ゚听)ξ「…」  

( ^ω^)「むしろこんないたずらっ子、ブーン以外の人に廻したら大変なことになるおww」       
      

( ^ω^)「だからツンは、ずっとブーンだけにはいたずらしてていいお。ブーンはずっとツンの傍に居るお」 

ξ゚听)ξ「……ブーン」

ぎゅぅ

( ^ω^)「お?どうしたんだお?これじゃ自転車漕ぎにくいお」 

ξ////)ξ「疲れたからこうしてないと落ちそうなの!黙って漕いでなさい!」  

(*^ω^)「おっお」 


('A`)「……なんだってんだあの二人……漫画そのものじゃねーか……ハァ」



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/11(火) 20:59:56.18 ID:agJKuQGK0

( ^ω^)「?なんか今ドクオの気配が」 

ξ゚听)ξ「えっ?」

( ^ω^)「……気のせいだったみたいだお」 

ξ゚听)ξ「?」




( ^ω^)「それじゃ、また明日だお」 

ξ゚听)ξ「このジャージ、洗って明日返してあげるわね」

( ^ω^)「おっお。別に洗わなくても平気だお」 

ξ////)ξ「なっ、へ、変態!ブーンのマニアっ!」

( ^ω^)「おっお。じゃあブーンは帰るお。暖かくして眠るんだお」 

ξ゚听)ξ「こら」

( ^ω^)「?」 

ξ゚听)ξ「私の制服」

( ^ω^)「おっ」



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/11(火) 21:00:33.74 ID:agJKuQGK0

ξ゚听)ξ「…」

(;^ω^)「……わ、忘れてただけだお!わざとじゃないお!」 

ξ゚听)ξ「……ブーンマニア」

(;^ω^)「そんなどこかのゲームみたいな言い方やめてくれおww」 

ξ*゚ー゚)ξ「まったく。私じゃなかったら警察に突き出してるわよ?」

( ^ω^)「!」 

ξ゚ー゚)ξ「ほら、制服返して」

(;^ω^)「ごめんなさいだお」 

ξ゚ー゚)ξ「あと鞄も。私の制服のせいで泥だらけになったんでしょ?仕方ないから一緒に洗ったげる」

( ^ω^)「や、悪いお」 

ξ゚ー゚)ξ「いいから貸しなさい。別にブーンのためじゃないわよ?私が汚したようなものだもん」

( ^ω^)「そうかお?じゃあお願いするお」 

ξ*^ー^)ξ「仕方ないわね〜♪」



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/11(火) 21:01:57.40 ID:agJKuQGK0

( ^ω^)「それじゃまた明日だお」 

ξ゚ー゚)ξ「おやすみ」

( ^ω^)「おやすみだお」 



ξ*゚ー゚)ξ「…」

ξ゚ー゚)ξ「……進学かぁ」

ξ゚听)ξ「私も美大に行きたいって言ったら……ブーンは……」


ちなみに次の日。
ブーンは10個の目覚まし時計音色で起こされたお。しかもブーンの上に馬乗りになって耳に直に目覚まし時計を設置されて……
返してもらったブーンの鞄には飴が沢山詰め込まれてて、裏返しにされてボタンを閉められたシャツを着て
ちょうちょ結びにされたズボンを履くと、またブーンの自転車はサドルを隠されてたお。
そういえば……ブーンは自分の自転車に乗った記憶があまりないような……??



それから数日後、クー先輩から意外な事を聞かされたお。
それはブーンとツン、二人が忘れられない出来事に繋がっていったんだお…



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