( ^ω^)ブーンは砂漠に生きるようです

7: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 20:41:16.16 ID:AodSa8fw0

第一話「少年と少女は力を持って」


(;^ω^)「うひょおおお! 遅刻、遅刻だお――!」


パジャマを脱ぎ捨てながら、どたばたと階段を駆け下りてくる少年。
彼は階段三段飛ばしを見事成功させ、トランクス一丁になる頃には一階に到着していた。


(´・ω・`)「おはよう、ブーン」

(;^ω^)「ショボンさんおはようございますお!
       って、何で起こしてくれなかったんですかお!」


慌てて服を着、握り飯を口に放り込みながらブーンは叫ぶ。



9: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 20:45:19.26 ID:AodSa8fw0

(´・ω・`)「いや、何度も起こしたよ。
      何をやっても起きなかったから、自然に目覚めるのを待った方が最善だと判断したまでだ」

( ;ω;)「ふぇっしょうだぼ――――! まだヅンにおぼられちゃうお――!」

(´・ω・`)「米粒飛ばすな。ぶち殺すぞ」


もぐもぐと握り飯を噛み砕き、ごくりと飲み干す。
程よく効いた塩の辛さが、米の甘さと交わって良い味を出している。
時間に余裕があれば、もっと味わって食べたい所だが、などとブーンはのん気に考える。

だが、生憎そんな時間も余裕も無かった。
今日で寝坊は三回目。

「仏の顔も三度まで……。わかった?」という脅し文句が脳内で自動再生される。



12: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 20:46:54.15 ID:AodSa8fw0

( ^ω^)「ングッ! よし、いってきますだお――!」


朝飯を飲み込み、ブーンはふ、と軽く息を吐き何かを呟く。
直後、風がブーンの足に纏い、台風の如くドアをぶち破り走っていった。

そんな光景を冷静に見つめて、ショボンはため息を吐く。


(´・ω・`)「まったく、朝から元気な奴だ」

ショボンは拭いていたグラスを置き、ブーンがぶち壊していったドアをはめ直した。

(´・ω・`)「今日も暑くなりそうだな……」


バーボンハウスと書かれた看板の下、ショボンは空を見上げてそう呟く。
空に輝く灼熱の太陽は、今日も変わらずに、砂漠の街VIPへと日差しを浴びせていた。



14: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 20:52:41.90 ID:AodSa8fw0

              ※


ξ#゚听)ξ「……」

('、`*川「ツン、そんなにイライラしちゃお肌に悪いわよ」


バーボンハウスからやや南に位置する砂漠地帯。
長い年月をかけて構築された巨大な岩石が並ぶその場所に、二人の人影があった。


ξ#゚听)ξ「だって、これで遅刻は3回連続ですよ!?
     3回! しかも連続! 理由は寝坊!」

('、`*川「まぁまぁ、落ち着きなさいって。
     まだ約束の時間には60秒ほどあるし、遅刻と決まった訳じゃ無いわ」


見るからに苛立った様子で、仁王立ちする金髪の少女。
それを穏やかな口調で宥める、黒髪の女性。



16: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 20:56:12.87 ID:AodSa8fw0

ξ゚听)ξ「むぅ……。ぺニサス姉さん、ブーンには甘いんだから」


ツンはむー、と言いながら頬を膨らませる。
そんなツンを見て、ぺニサスは優しい微笑みを浮かべながらツンの頭を撫でた。


('、`*川「そんなこと無いわ。ブーンもツンも、私の可愛い弟子ですもの」

ξ*゚听)ξ「……えへへ」


頭を撫でられたツンは、恥ずかしそうに笑いながらも、それを受け入れる。
ナチュラリストとは言え、まだまだ子供だとぺニサスは思った。



17: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 20:59:14.33 ID:AodSa8fw0

「――――ぉぉぉぉおおおお」


と、遥か遠くから何かの声が聞こえてきた。
その声は、徐々にツン達の方へと近づいてくる。


ξ゚听)ξ「ん? 何の音?」

('、`*川「噂をすれば……。ねぼすけさんの登場のようね」


ぺニサスが視線を向けた先。
そこには砂を撒き散らし、人間のものとは思えぬ速さで疾走してくる一人の少年。


(;^ω^)「遅れてごめんなさいだおぉぉぉ――――!」


その正体はブーンであった。
手を横に広げ、一直線にツン達目掛けて駆けて来る。



22: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 21:03:37.66 ID:AodSa8fw0

ξ;゚听)ξ「ちょ、こら! スピード落としなさいよ――――!」

('、`*川「5、4、3……」

ぺニサスが時計を取り出し、カウントを取り始める。

(;^ω^)「間に合え――――!」

ξ;゚听)ξ「きゃぁぁぁ! バカバカバカこっちくるな――――!」


ブーンはさらに速度を上げ、


轟音と砂埃をあげながら、ツンに突っ込んだ。


('、`*川「はい、ジャストー。ギリギリセーフだよ、ブーン」


ぺニサスが砂煙に向かい、親指を立てる。
少しずつ砂煙が晴れてくると、そこには目を回しているブーンと倒れるツンの姿があった。


( ^ω^)「うーん、目が廻るお。でも、間に合って結果オーライだお!」

ξ )ξ「あばばばば……」



24: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 21:08:11.33 ID:AodSa8fw0

('、`*川「ブーン、時間に余裕を持って行動しようね」

( ^ω^)「はいですお! あれ? ツンはどこにいったお?」

ξ )ξ「……」

( ^ω^)「あ、もしかしてツンは遅刻かお?
       ふひひww今日は僕がお説教する側だお!」


ゆらり、とブーンの背後に倒れていたツンが立ち上がる。


( ^ω^)「ついに弱みを握ったおwwこれで日ごろの恨みをたっぷり晴らせるお!」

('、`;川「うらみ? ブーン、それはちょっと大げさじゃ……」


ぺニサスのハンドサインにも気付かず、ブーンは思いっきり首を横に振った。



26: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 21:11:55.66 ID:AodSa8fw0

ξ )ξ( ^ω^)「そんなこと無いですお!
          この間だって、男でも家事ができなきゃダメ! とかいって
          洗濯を全部僕に押し付けるし……」

ξ#゚听)ξ( ^ω^)「人使いが荒いっていうか。
           おまけに腕っ節は女の子とは思えないほど強いし、鬼だお鬼!」

('、`;川「ブーンちゃん、お姉さん、そこら辺にしといた方がいいと思うなー……。
      これ以上は命に関わっちゃうかと」


ぺニサスがゆっくりと後ずさり、ブーンから距離を取る。
その怯えた視線はブーンの後ろに向けられていた。

その視線に気付き、ブーンはゆっくりと後ろを振り返る。



27: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 21:15:10.89 ID:AodSa8fw0

( ^ω^)「……?」


ξ#゚听)ξ「……」


(^ω^)


ξ#゚听)ξ「覚悟はいいわね?」


ギャー!!!!



29: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 21:20:16.67 ID:AodSa8fw0

……




('、`*川「じゃ、話はついたかな?」

(メメ^ω^)「2週間の間、家事は全て僕が担当するということで和解しましたお」


十分後。
ブーンの顔は、切り傷、打撃跡、痛々しいアザなどあらゆる傷により
世にも恐ろしい顔へと変わり果てていた。


('、`*川「それじゃ、今日も訓練はじめよっかー」

( ^ω^)ξ゚听)ξ「はい!」

そう言うと、ぺニサスは近くにあった岩石を指差す。

('、`*川「今日の標的は、これっ!」

(;^ω^)「おお! かなり大きいお!」



32: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 21:24:08.43 ID:AodSa8fw0

ブーンはぺニサスが指差した岩石を見上げる。
天まで貫くのではないか、と思えるほどの高さに、家の5軒は軽く入るであろう横幅。


ξ;゚听)ξ「硬そうな岩石……何年前からここにあるんだろう……」

ツンが岩石の表面に手を当て、強度を確認する。

('、`*川「じゃー、まずは小手調べに打ち込み百本いってみよっか!」

( ^ω^)ξ゚听)ξ「ラジャー!」

('、`;川「……あんたら、本当にお似合いね」


ぺニサスの呟きは、急に吹き荒れ始めた風の音によって消された。



34: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 21:27:58.44 ID:AodSa8fw0


( ^ω^)ξ゚听)ξ「エクシ――ド!」


二人の声が砂の海に響き渡る。
その言葉によって引き起こされるのは、生まれもって身についた不思議な力。


( ^ω^)「今日もいい風だお!」

ブーンの体を中心に、風が吹き始める。
風を操り、体に纏う。これが、ブーンの持つ特殊な力。


ξ゚听)ξ「よし……今日も絶好調ね」

ツンは拳の骨を鳴らし、ぶんぶんと腕を振り回す。

(;^ω^)「ツンの能力は相変わらず分かりにくいお」

ξ゚听)ξ「うっさいわね。アンタと違って目立たない分、相手にばれにくいでしょ」

ツンの能力、それは集中力の増大だ。
常時とは比べ物にならないほど精神状態を高め、判断力は常人をはるかに超える。



36: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 21:33:19.30 ID:AodSa8fw0

('、`*川「よし、二人とも発動したね。んじゃ、始め!」

( ^ω^)「おぉぉぉぉっ!」

ξ゚听)ξ「せぇい!」


ぺニサスの声と同時に、ブーンとツンは岩石に打撃を打ち込み始める。
硬い岩石の表面が、一発打ち込む毎に音を立てて崩れていった。

ブーンは自らの拳に風を纏い、岩石の表面を打ち込む。

対し、ツンは突きと蹴りを織り交ぜたコンビネーションで、舞のように岩石へ攻撃する。


('、`*川「うーん、やっぱり何回見ても凄いなぁ。
     あれで私より3つも年下っていうんだから……」

その光景を見て、ぺニサスは改めて感心する。
自分も鍛えているとは言え、いや、だからこそ常人との力の違いがはっきりとわかるのだ。



37: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 21:39:04.52 ID:AodSa8fw0

(#^ω^)「うりゃぁぁぁ!!」


ブーンが、攻撃の範囲を一点に集中させる。
正確に同じ位置を連続で突き、その部分が大きく抉れる。


('、`*川「ブーン、同じ場所ばかり狙わない!
     敵は絶えず動きまわってる物だと思って打ち込みなさい!」

(;^ω^)「うう……すいませんお」

ξ゚听)ξ「ったく、何も考えずに訓練しても効果無いわよ。
     ちゃんと対人戦を想定しながら、やるっ!」


ツンの回し蹴りが炸裂し、岩石が轟音を立て大きくひび割れた。
蹴り足を戻し、両手を胸の前で交差し、ツンは一息つく。



39: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 21:42:46.43 ID:AodSa8fw0

(;^ω^)「うう……難しいお」

ξ゚听)ξ「はい、百本終わりー。ブーン、今日もアンタの負けね」

(;^ω^)「ああ! 考えてる間に先にやっちゃうなんて酷いお!」

ξ゚ー゚)ξ「負けは負けよ。今日のデザートも、ごちになりまーす」

( ;ω;)「あんまりだおー……」


ブーンは泣きながら岩石を突き、百本の打ち込みを終えた。
ぺニサスはやれやれと言った様子で、二人のやり取りを見つめ、声を掛ける。


('、`*川「んじゃ、次は組み手ねー。ちゃんと寸止めするのよ? 特にツン」

ξ゚听)ξ「はーい。でもブーンがやる気無かったら、軽く叩く程度はいいですか?」

('、`*川「それは許す」

ξ゚听)ξ「よーし、ほら、ブーン。さっさと構える!」

( ;ω;)「デザートー。僕のデザート……」



40: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 21:47:50.95 ID:AodSa8fw0

――…

―…


(;^ω^)「ぐはー。疲れたお……」

2時間ほどの訓練を終え、ブーンは倒れるように岩の木陰に座り込んだ。
ブーンの額から汗が滝のように流れ、その汗で服が肌に吸い付く。


('、`*川「うん、今日はこのくらいにしとこっか!
     そろそろお昼ごはんの時間だしね」

( ^ω^)「おっお! そういえばお腹ペコペコだお!」

('、`*川「そろそろショボンさんが調理を始めてる頃だから
     バーボンハウスにつく頃には丁度いい時間ね」


ぺニサスが時計を見て言う。
その言葉を聞き、疲労困憊だったブーンの体に元気が舞い戻ってきた。



41: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 21:52:50.66 ID:AodSa8fw0

( ^ω^)「よーし、じゃあ早くバーボンハウスへ戻るお!
       ほら、二人とも早く早くだおー!!」


そう言うや否や、物凄い速さで街の方へ走り出すブーン。
さっきまでの疲労など微塵も感じさせないような動きだった。


ξ#゚听)ξ「こら! 待ちなさ――い! ……もう、調子いいんだから!」

('、`*川「ふふ。さ、私達も戻りましょう」


なだめる様に、ツンの頭を撫でるぺニサス。
ツンは遠くで手を振っているブーンにため息を吐きながらも、
呆れ笑いに似た笑みを浮かべて手を振り返した。



42: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 21:56:33.61 ID:AodSa8fw0

              ※


砂漠地帯から歩くこと僅か数分。

砂漠の真ん中に位置する小さな街『VIP』の中心部へと、三人はたどり着いた。
露店が立ち並び、あらゆる地域から商人によって運び込まれた色々な商品が陳列されている。


( ^ω^)「市場に来ると、何だか無駄にワクワクしちゃうお!」

ξ゚听)ξ「ほら、ブーン。しっかり前向いて歩かないと危ないわよ」


毎日、他の国や村から運び込まれる市場は、好奇心旺盛なブーンにとって
いつ見ても夢中になってしまう場所だった。
昔は何度も迷子になり、その度にショボンやペニサスを困らせていた。



45: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 22:01:50.96 ID:AodSa8fw0

('、`*川「帰るついでに、食料の買い溜めもして行こうか。
     二人とも、好きな物一つだけ買ってあげるから選びなさい」

( ^ω^)「え! いいのかお!? やった――って、痛ててて!」

ξ;゚听)ξ「そんな、いいですよ姉さん!」


喜ぼうとした途端、尻を抓られて涙目になるブーン。
理不尽な暴力に非難の目をツンに向けたが、小声で「空気嫁」と言われたので
仕方なく泣き笑顔のまま立ち尽くしていた。


('、`*川「こーら、子供が遠慮なんてするもんじゃないわよ。
     最近、二人共訓練を頑張ってるからご褒美よ」

(;^ω^)「それじゃ、遠慮なく僕はトロピカル汁マンゴージュー……痛い痛い痛い!!」

ξ゚听)ξ「んー。じゃあ、これが欲しい」

('、`*川「どれどれ?」



47: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 22:06:30.05 ID:AodSa8fw0

再び涙目になるブーン。そんなブーンを差し置いてツンが指差したのは、
南国イチゴジュースと書かれた赤い飲み物だった。


('、`*川「うん、いいわよ。すいませーん、これ下さいな」

「はいよ。100モリタポ頂戴するぜ。
 ……丁度だな。まいどー」

('、`*川「はい、ツン」

ξ゚听)ξ「ありがとうございます。それじゃ、はい」

('、`*川「え?」


ツンは渡された飲み物を、そのままぺニサスに渡し返す。
予想外の行動にきょとん、とした顔のままぺニサスはとりあえずそれを受け取った。


ξ゚ー゚)ξ「いつもお世話になってるから、姉さんにお返しです。
     私達、お金を稼げないから、これくらいのお礼しか出来ないけれど……」



50: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 22:08:55.22 ID:AodSa8fw0

('、`*川「ツン……」

ξ゚听)ξ「ブーンもそれでいいわよね?」

( ;ω;)「うんだお。事情はわかったから、いい加減尻を離してくれお」

ξ#゚听)ξ「男がこれくらいで泣くなっ!」

( ;ω;)「あんまりだおー!」


いつものやり取りをする二人をよそに、ぺニサスは目頭に熱いものを感じていた。
血の繋がりこそ無いけれど、兄弟として五年の歳月を共に過ごしてきた二人からの小さな恩返し。
まだまだ子供だと思っていたけれど、彼らは人を思いやれるほど立派に育っていたのだ。



51: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 22:11:44.42 ID:AodSa8fw0

('、`*川「グスッ……二人ともありがとう」

ξ゚听)ξ「やだな、泣くなんて大げさだよ姉さん」

( ^ω^)「どうして姉ちゃんは泣いてるんだお?
       ツン、まさか意地悪してジュースにタバスコとか入れたんじゃ……」

ξ#゚听)ξ「そりゃあんたでしょ! 私がそんな子供っぽいことするかー!」

(;^ω^)「ひぃ! ごめんだおごめんだお!」

('、`*川「ふふ。ほら、喧嘩しないの」


言い争う二人をなだめ、手に持った赤い飲み物をこくりと飲む。
甘い果実の香りが口いっぱいに広がり、ぺニサスは大事そうにゆっくりと飲んだ。



53: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 22:17:07.64 ID:AodSa8fw0

「ドロボ――――!!!」

( ^ω^)「お?」


そんな心温まる光景を打ち破る声。突然、曲がり角の先から叫び声が聞こえてきた。
その声の方へ振り向くと同時、何かがブーンの頭に正面衝突した。


(;´_ゝ`)「ぐおおぉぉぉ! 痛い、すっごく痛いよ!」

(;^ω^)「おぉぉ……頭ぶつけたお」


互いに頭を抑えながら悶える。
やがて顔を上げると、ぶつかってきた何かと目が合った。



55: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 22:19:17.10 ID:AodSa8fw0

(;^ω^)「すいませんでしたお。大丈夫ですかお?」

(;´_ゝ`)「こりゃご丁寧にどうも。いや、中々の石頭ですな」

(*^ω^)「いやぁ、それほどでも……」


微妙な所を褒められたブーンであったが、何故かその顔は満面の笑みだった。
十三歳の彼にとっては、単純に褒められたこと自体が嬉しかったようだ。


ξ゚听)ξ「何やってんのよ、もう。ごめんなさい、うちのバカが迷惑かけちゃって……」

( ´_ゝ`)「おお……なんという美少女! そしてこの展開……。
       ついに俺の人生にもリアルにフラグが立ったか!」

ξ;゚听)ξ「え? フラグ?」

( ´_ゝ`)「よければ、ご一緒に強奪でもしませんか?」


男は跪き、まるで童話に出てくる王子のような誘いポーズを取る。
だが、無駄に手足の長い彼がやると、正直気持ち悪かった。

強奪という言葉に、後ろにいたペニサスがようやく状況を理解した。



57: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 22:22:13.98 ID:AodSa8fw0

('、`*川「ツン、伏せて!」

ξ;゚听)ξ「え!?」


背後から聞こえた声に、ツンは無意識に反応し頭を下げる。
直後、ツンの頭の上を飛び蹴りを放つぺニサスが通過した。


( ´_ゝ`)「まずは同じ家の下で暮らさねばな。それから、徐々に親交を深め
       結婚は盛大にどこかの城を貸し切って……」

('、`*川「どりゃあぁぁぁぁ!!」


一人何かを呟く男は、ぺニサスの攻撃に気付かない。
勢いに乗った蹴りが跪く男の顔面を捉え――――


('、`*川「なっ!?」


否、避けられた。
ぺニサスが着地した場所に、男の姿は無い。



59: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 22:23:59.47 ID:AodSa8fw0

(´<_` )「兄者。強奪の途中に一般人と話し込むのはどうかと思うぞ」

( ´_ゝ`)b「おお、これは弟者! 聞いてくれ!
        ついにリアルで膨らみかけの少女とフラグが立ったんだ!」

(´<_`;)「……OK、落ち着け兄者。とりあえず仕事優先だ。
       早く戻らないと親分にどやされてしまうぞ」


兄者と呼ばれた男を、庇うようにして抱きかかえる弟者。
男同士でお姫様だっこという奇妙な光景を前に、呆然としていたブーン達は、はっと我に帰る。



61: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 22:28:25.95 ID:AodSa8fw0

ξ;゚听)ξ「って、あんた達まさか泥棒!?」

( ´_ゝ`)「ふふ……俺達の名は流石兄弟。牙猫盗賊団の使いっぱしりだ!」

(´<_` )「兄者、仮にも盗賊なら自己紹介自重しろ。早く逃げるべきだ」

流石兄弟は踵を返し、一目散に人ごみを避け裏通りへと走り去っていく。

('、`*川「ブーン、ツン! 追いかけるわよ!」

( ^ω^)「わかったお!」

ξ゚听)ξ「うん!」


ひゅ、と風が市場を通り抜ける。
やがてその風はブーンとツンを中心に集まり、市場にいた人々はその光景に目を取られ、足を止める。



62: ◆ExcednhXC2 :2007/10/10(水) 22:30:08.83 ID:AodSa8fw0


( ^ω^)ξ゚听)ξ「エクシ――ド!」


発動の呪文を唱えると、二人の体が一瞬輝く。
彼らは人間の身体能力を限界まで高めた状態――――エクシード状態になったのだ。

生まれ持って身についた不思議な能力を持つ者、ナチュラリストにしか出来ない離れ業である。


('、`*川「二人は奴らを追いかけて! 私はロマネスク保安官を呼んで来るから!」

( ^ω^)「任せてくれお! 悪い奴を逃がしはしないお!」

ξ゚听)ξ「行くわよ、ブーン!」

( ^ω^)「わかったわ、ツン!」

ξ#゚听)ξ「まともに答えなさいよ!」


妙に劇口調で決め台詞を発し、二人はぺニサスと別れ流石兄弟の後を追う。
足に風を纏い、高速で走るブーンと、壁キックで建物の間を縫うようにして移動するツン。

灼熱の太陽が照りつけるVIPで、間の抜けた盗賊と二人の幼きナチュラリストの攻防戦が始まった。


第一話終わり



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