( ^ω^)ブーンは砂漠に生きるようです
- 3: ◆ExcednhXC2 :2007/10/11(木) 19:51:21.33 ID:9sMVG4zm0
第二話「流石兄弟を追え 前編」
レンガで作られた家と家の間。
狭く、複雑に交差する道無き道を二つの人影が走っていた。
( ´_ゝ`)「ああ……ツンちゃん。巻き髪ロールの俺のヒロイン……」
(´<_`;)「兄者、さっきから何をぶつぶつと呟いているんだ?」
( ´_ゝ`)「弟者。恋という言葉を知っているか?」
(´<_` )「あ、ああ。そりゃ知ってるが……」
(* ´_ゝ`)「あの少女は大変な物を盗んでいきました。
それは私の心(ry」
(´<_`;)「兄者! 追っ手だ!」
- 6: ◆ExcednhXC2 :2007/10/11(木) 19:55:02.05 ID:9sMVG4zm0
兄者の言葉を躊躇無く遮り、弟者が後ろを見ながら叫んだ。
彼らの後ろから追う人影は二つ。そのどちらも、流石兄弟にとって見覚えのある顔であった。
ξ゚听)ξ「見つけた! ブーン、そこから3つ先の曲がり角を右に行って!」
( ^ω^)「おkだお!」
ξ;゚听)ξ「ってバカ! そこは二つ目でしょ!」
(;^ω^)「あれ? 間違えたお!」
踵を整地された地面に食い込ませ、ガリガリと削りながら速度を落とす。
その様子を上空、建物でいうなら三階ほどの所からツンが見下ろし、怒声を飛ばす。
- 8: ◆ExcednhXC2 :2007/10/11(木) 20:00:01.79 ID:9sMVG4zm0
ξ;゚听)ξ「このバカ! ああもう、このままじゃ逃げられちゃうじゃない!」
(;^ω^)「ツン! 流石兄弟はどっちにいったお? 僕はどっちに行けばいいんだお!?」
ξ;゚听)ξ「ああ、ダメ! これ以上離されたら見失っちゃう!
ブーンは適当に頑張って! 助っ人にこなかったらご飯抜きだからね!」
(;^ω^)「ちょ、 ツ―――ン! カムバ――――ック!」
壁を蹴り、ツンは空を飛ぶ鳥のように跳躍し、やがてブーンの視界から消えていった。
壁蹴りなどという芸当が出来ないブーンにとって、残された道はただ一つ。
( ^ω^)b「こうなったら……勘だお!」
再び風を足に纏い、ブーンは一直線に駆けていく。
時々、何か思いついたように速度を緩め、左へ右へと曲がっていった。
- 9: ◆ExcednhXC2 :2007/10/11(木) 20:04:41.87 ID:9sMVG4zm0
(´<_` )「ふう、何とか少年の方は振り切ったか」
後方をちらりと見て、勝ち誇ったように弟者が呟く。
(´<_` )「しかし、あの少女……ツンといったか。
あの身のこなし、ナチュラリストで間違いなさそうだ」
ξ#゚听)ξ「待ちなさ――い! このドロボ――!」
(´<_`;)「くっ。まだ振り切れないか……!」
遥か遠くに在ったツンの影は、すでに弟者のすぐ背後まで迫っていた。
逃げ道を頻繁に変え、振り切ろうとする弟者の努力も、空を舞うツンにとっては無意味な策略であった。
- 10: ◆ExcednhXC2 :2007/10/11(木) 20:08:19.02 ID:9sMVG4zm0
(´<_` )「兄者、振り切るのは無理のようだ。
相手はナチュラリストとは言え少女一人のみだ……兄者?」
ξ#゚听)ξ「くっ! 二手に分かれて逃げるなんて……!
もう、こういう時にブーンは使えないんだから!」
(´<_`;)「え? 二手?」
弟者の脳裏に、嫌な予感が浮かび上がる。
恐る恐る、隣を走っているであろう実の兄の姿を、その目で確認し……
(´<_`;)「兄者――――!!!」
嫌な予感は、期待を裏切ることなく(悪い意味で)確信に変わった。
- 12: ◆ExcednhXC2 :2007/10/11(木) 20:12:22.92 ID:9sMVG4zm0
※
(;^ω^)「あれ? 行き止まりだお……」
(;´_ゝ`)「あれ? 行き止まりか……」
目の前に立ちはだかるレンガの壁を見て、顔に幼さを残す少年と、手足の長い青年は唸る。
頭にクエスチョンマークを浮かべながら、これからどう行動すべきかを必死で思案する二人。
( ^ω^)「あのー、空を舞う金髪で鬼のような女の子を見ませんでしたかお?」
( ´_ゝ`)「あの、昔は無邪気だったのに、今は言うことなすこと全てにスルー。
俺の可愛い弟者を知りませんか?」
互いに顔を合わせ、しばし沈黙。
二人の間に、何とも言いがたい微妙な間が生まれる。
- 13: ◆ExcednhXC2 :2007/10/11(木) 20:17:01.74 ID:9sMVG4zm0
(;´_ゝ`)(あれ? こいつ俺を追ってきたやばそうな少年じゃね?
いや、でも人違いだったらめっちゃ恥ずかしいよ俺。うん)
(;^ω^)(うーん、どう見ても僕とゴッチンコした盗賊だお……。
でも、これ人違いだったら半端なく怒られちゃうお)
相手の素性を疑うような視線が交わり、一分ほど経った頃。
兄者の眉がピクっと動き、それに釣られてブーンの眉もピクっと動く。
(;´_ゝ`)(;^ω^)「あああ――――!!」
ようやく、お互いに認識したようだ。
ブーンは驚きの余り躓きそうになるが、何とかバランスを建て直し戦闘体勢に入る。
- 14: ◆ExcednhXC2 :2007/10/11(木) 20:21:29.33 ID:9sMVG4zm0
(;^ω^)「こ、ここここら! 商品を盗んじゃダメだお! 返すお!」
(;´_ゝ`)「お、おおおOK、少年。落ち着いて話し合おう。
話し合えばきっとわかるさパラダイス。だって人間だもの」
追いかけてる時に考えていた決め台詞など吹き飛び、
ブーンは頭真っ白になりながらも兄者に向かい、そう言い放つ。
言われた兄者も、混乱しているのか意味のわからない言葉で返答した。
(;^ω^)「おk。とりあえず、抵抗しなければこちらも攻撃はしないお」
( ´_ゝ`)「……うん? 少年、足が震えているぞ」
(;^ω^)「そ、そんなことないお!」
言って、つい自分の足を見るブーン。
……どう見ても震えてます。本当にありがとうございました。
(;^ω^)「あ、あれ?」
( ´_ゝ`)「ほほう、なーるほどな♪ なるほどナスきのこ……。
ぶっちゃけ、実践経験は無いのだろう、少年よ」
- 15: ◆ExcednhXC2 :2007/10/11(木) 20:25:48.71 ID:9sMVG4zm0
図星です、と言わんばかりにブーンの顔が引きつった。
その表情を見て自分の考えを確信したのか、兄者は落ち着いた目でブーンを見る。
( ´_ゝ`)「人を傷つけるのは趣味じゃないが……。
どうしてもそこから退かないと言うのなら、仕方ないなぁ」
(;^ω^)「ば、バカにするなお!」
(#´_ゝ`)「ガウウッ! バウバウバウ!」
(;^ω^)「ひぃ!?」
突如、兄者が犬のような声を出し威嚇した。
恐怖の声が漏れ、思わずブーンは目を瞑ってしまう。
- 16: ◆ExcednhXC2 :2007/10/11(木) 20:29:11.88 ID:9sMVG4zm0
( ´_ゝ`)「その青春輝く一瞬の隙が――――」
(;^ω^)「なっ!?」
再び目を開けた時、ブーンの視界に移ったものは、至近距離まで踏み込んでくる兄者の姿だった。
繰り出される拳に備え付けられているのは、鉄で出来たナックル。
(;゚ω゚)「――――……っ!」
( ´_ゝ`)「戦闘では命取りになるんだよ、ベイベーちゃん」
長い腕から繰り出されたアッパーが、ブーンの腹部に直撃した。
数回の痙攣の後、ブーンの体からゆっくりと力が抜けていき、その場に膝を着いた。
- 18: ◆ExcednhXC2 :2007/10/11(木) 20:33:57.40 ID:9sMVG4zm0
※
ξ゚听)ξ「ここまでね。痛い目みたくなかったら観念して盗んだ物を返しなさい」
(´<_` )「……。どうやら君から逃げ切るのは不可能なようだな」
逃げるのを止め、ツンの方へ振り返る弟者。
その表情は、追い詰められているとは思えぬほど冷静なままだ。
ξ゚听)ξ「観念したようね。大人しく保安官の所までご同行お願いできるかしら?」
(´<_` )「残念だが、観念したという訳ではない。
作戦を変更しただけだ」
冷静な言動。その言葉に揺るぎや不安は無く、あるのは僅かな殺気だ。
弟者は背中に手を回すと、背負っていた木刀を取り出し低く構える。
- 19: ◆ExcednhXC2 :2007/10/11(木) 20:37:22.57 ID:9sMVG4zm0
ξ゚听)ξ「へぇー、か弱い女の子相手に武器を使うんだ」
(´<_` )「俺は兄者と違って用心深い性格でね。
女子供とは言え、仮にもナチュラリストが相手だ。素手では挑まんよ」
ξ゚听)ξ「あっそう。大人しく捕まれば許してあげようと思ったけど――――」
二人の距離が一瞬にして縮まる。
地面を思い切り踏み、木刀を右手に構える弟者に突っ込んでいくツン。
その勢いを軸足で止め、細い足から繰り出されたまわし蹴りが弟者の首を狩りにいく。
しかし、弟者の反応は速かった。腰を落とし木刀と左腕できっちりと頭をガードする。
蹴り足の衝撃をまともに受けた木刀は、ミシ、という嫌な音を出した。
- 21: ◆ExcednhXC2 :2007/10/11(木) 20:40:46.49 ID:9sMVG4zm0
(´<_`;)「ぐっ……!」
ξ゚听)ξ「まだまだ!」
間髪入れず、突きや蹴りの連打を放つツン。
直線的な打撃を木刀で弾くも、一方的に攻め続けられている。
正直、予想以上だった。
ナチュラリストの身体能力は、一般人のそれを遥かに超えることは知っている。
だが、それでも非力な少女が相手ならば何とかなるだろうと思ってしまったのだ。
目の前の少女の攻撃を凌ぎながら、弟者は自分の考えの甘さを再認識する。
- 22: ◆ExcednhXC2 :2007/10/11(木) 20:45:59.73 ID:9sMVG4zm0
ξ゚听)ξ「随分硬い木刀ね。そこら辺の木刀とは素材が違うのかしら?」
攻撃を続けながらツンが呟く。
弟者の振るう木刀は、ツンの強烈な打撃を幾度と無く受けながらも
原型をまったく崩していない。
(´<_`;)「樹木の国とやらで作られた名刀だ。
そんじょそこらの木刀とは強度が違う」
ξ゚听)ξ「それも盗んだ物って訳ね。呆れるわ。
それを作った人がどんなに悲しんでるか、分からないの?」
(´<_` )「子供が……知った風な口を聞くな!」
横一線に振るわれた木刀。
紙一重でそれを避け、弟者が構え直す前にツンは蹴りを放った。
蹴り上げられた木刀が、弟者の手から離れ回転しながら空へと飛んでいく。
- 23: ◆ExcednhXC2 :2007/10/11(木) 20:47:37.00 ID:9sMVG4zm0
ξ゚听)ξ「よしっ!」
武器を無力化し、自分の有利を確信するツン。
これで、こちらの攻撃を受け流す物は無くなり、弟者は完全に無防備な状態だ。
意気揚々と、視線を木刀から弟者に戻す。
(´<_` )「詰めが甘いな」
ξ;゚听)ξ「えっ!?」
ツンが状況を理解したと同時。
弟者の長い手が彼女の首を掴み、そのまま地面へと押し倒した。
- 24: ◆ExcednhXC2 :2007/10/11(木) 20:49:25.80 ID:9sMVG4zm0
※
(;ФωФ)「牙猫盗賊団の流石兄弟が出た!?」
('、`*川「はい! 今、うちのブーンとツンが追跡してるんです!」
市場から少し離れた場所にある、小さな小屋。
この街で唯一の保安官であるロマネスクの元に、ペニサスは訪れていた。
保安官と言っても、本人がそう言っているだけで正式な物ではない。
どこの国にも属さない、独立した街VIPでは明確な法律や秩序は無いのだ。
その為、荒くれ者から商人まで集うこの街では、犯罪が起きても誰一人として助けてはくれないだろう。
ロマネスクは、そんな街の秩序を守る、いわば変わり者だった。
- 25: ◆ExcednhXC2 :2007/10/11(木) 20:51:56.37 ID:9sMVG4zm0
(#ФωФ)「あいつら……いつもいつも我輩が来るとすぐに逃げおって!
今日こそとっ捕まえて二度と悪さができないようにしてやる!」
('、`*川「あ、ロマネスクさ――――ん!」
ペニサスの呼び止めも聞かず、勢い良く外に飛び出すロマネスク。
そのまま通行人を弾き飛ばしながら、市場の方へと走っていってしまった。
('、`;川「行っちゃった……。場所、まだ行ってないのに」
もう見えなくなった彼の背中を見て、ペニサスは呆れていた。
正義感の強さ故か、悪さと聞くと人の話も聞かずに飛び出すのは彼の悪い癖である。
- 27: ◆ExcednhXC2 :2007/10/11(木) 20:54:22.43 ID:9sMVG4zm0
(´・ω・`)「ペニサス」
('、`*川「ショボンさん! どうしてここに!?」
(´・ω・`)「いや、昼飯を作って待っていたんだが、中々戻らないから心配になってね。
……ブーンとツンはどうしたんだい?」
('、`*川「実は……かくかくじかじか、なの」
(;´・ω・`)「何ぃ!? 街で偶然ぶつかった盗賊を追っかけていったぁ!?」
('、`;川「う、うん」
簡略な説明を受け、驚きの余り大声をあげるショボン。
いつもはにこやかな彼の表情が、一瞬にして動揺した顔に姿を変えた。
- 29: ◆ExcednhXC2 :2007/10/11(木) 20:56:16.21 ID:9sMVG4zm0
(;´・ω・`)「ペニサス、どうして止めなかったんだ!」
('、`;川「え、だってあの二人なら大丈夫だと思って……」
その言葉に、ショボンが何かを言おうと口を開く。
しかし、その言葉は背後から聞こえる大声でかき消されてしまった。
( ФωФ)「ペニサスさぁぁぁぁ――――ん!!!!!」
('、`;川「は、はい!?」
(´・ω・`)「ぶはっ!?」
ロマネスクが一直線にペニサスの方へ走ってきた。
そのままブレーキをかけるように足を止め、砂埃がショボンに襲い掛かる
- 32: ◆ExcednhXC2 :2007/10/11(木) 20:59:00.68 ID:9sMVG4zm0
( ФωФ)「ちなみに、流石兄弟が逃げた場所はどこでしょうか!?」
('、`;川「えっと、市場の裏通りです。家の間に作られた所から……。
いっそのこと案内しましょうか?」
( ФωФ)「おお、それは心強い! ぜひお願いしたい!」
ぐっとペニサスの手を握り、やる気満々の瞳を向けるロマネスク。
その隣で、ショボンは体全体に掛かった砂埃を叩き落とし、口を挟んだ。
(´・ω・`)「ペニサス、その場所に僕も連れてってくれ」
('、`*川「はい!」
(;´・ω・`)「急ごう。くそっ、接触していなければいいが……」
そう呟き、三人は人で溢れる市場へと走っていった。
第二話 終わり
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