( ^ω^)ブーンは砂漠に生きるようです

3: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 00:17:15.29 ID:PvMsHhtI0
第十話「頼りになる男」


露天が立ち並ぶ村の通り。
道行く人々は足を止め、対立する二つの人影を見つめていた。

二人が戦っている。
拳が放たれ、それが空を切る音が鳴り響いていた。


(#^ω^)「おぉっ!!」

( ゚∀゚)「よいしょっと」

腰を捻り、的確なフォームで突きを放つブーン。
対し、ジョルジュはそれを余裕な面持ちで受け流している。



4: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 00:20:46.18 ID:PvMsHhtI0
(#^ω^)「ぜぁぁぁっ!!」


右拳を打ち込み、同時に上段回し蹴りを放つ。
右から右へ繋ぐコンビネーションだ。


( ゚∀゚)「くだらねぇ」

(;^ω^)「おっ!?」


渾身の蹴りは難なく止められ、同時に風を切る音が聞こえた。
肘打ちがブーンの顔面へと打ち込まれる。
衝撃と共に、視界が流転した。



5: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 00:27:18.83 ID:PvMsHhtI0
(;^ω^)「がっ!」

顔を歪め、よろめくブーン。

( ゚∀゚)「おらよっ!」

反射的にガードする手をあげ、顔面を庇う。
瞬間、無防備になった腹部にジョルジュの前蹴りが突き刺さった。

(;^ω^)「が――――……ッ!!」

内部にまで広がるような痛みが突き抜ける。



6: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 00:30:41.31 ID:PvMsHhtI0
吹き飛ばされるも、何とか姿勢を建て直し着地するブーン。
口の中には血の味が広がり、攻撃を受けた部位が麻痺している。


( ゚∀゚)「……期待外れ、だな」


ジョルジュは息を荒げるブーンを見て、つまらなそうに呟く。
その目からは、すでにブーンに対する興味や関心は無くなっていた。


(#^ω^)「何だと……!!」

( ゚∀゚)「弱すぎるよ、お前」


そう呟くと同時。
ブーンの視界からジョルジュの姿が消えた。



7: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 00:34:23.26 ID:PvMsHhtI0
(;^ω^)「なっ!?」


突然の事に戸惑い、ブーンは目を見開いた。
刹那、上から接近してくる気配に気付き、視線をあげる。


( ゚∀゚)「くたばれ、屑が」


上空から回転蹴りを放つジョルジュ。
強力な遠心力を纏ったそれは、ブーンを体ごと打ちぬいた。


(;^ω^)「ぐぁっ!!」


短い悲鳴を漏らし、ブーンの体は地面へと叩きつけられた。
血が視界を塞ぎ、目の前が真っ赤に染まる。



8: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 00:38:30.18 ID:PvMsHhtI0
ξ゚听)ξ「ブーン!」

ツンは倒れるブーンの元へ駆け寄った。

(;^ω^)「ぐ、あ……」

血だらけになったブーンは、苦しそうに呻いている。
命に別状は無さそうだが、とても立てそうに無い状態だ。


( ゚∀゚)「あーあ、何か冷めちまったぜ。サンドバック以下だな」

ξ゚听)ξ「……この!」

ツンはこちらを見下すように見るジョルジュを睨み、地を蹴った。
拳を握り締め、走りながら呪文を叫ぶ。



10: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 00:41:33.13 ID:PvMsHhtI0
ξ゚听)ξ「エクシ――ド!」


ツンの体からまばゆい光が溢れ出し、直後、速度が飛躍的に上昇。
風を切り、ジョルジュ目掛けて高速で接近する。

( ゚∀゚)「うざってぇ。……失せろ、雑魚が」

対し、ジョルジュは面倒臭そうに、構えもせず立っている。

ツンの足がジョルジュ目掛けて一直線に放たれる。
横に一閃する軌道の回し蹴りだ。
狙いは中段。



11: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 00:42:58.34 ID:PvMsHhtI0
( ゚∀゚)「はっ!」

右腕一本で、お粗末なガードを固めるジョルジュ。
難なく蹴りを受け止める。
だが、

( ゚∀゚)「軽……?」

蹴りは軌道を変える。
直前で膝を内側に捻りこむような動き。

蹴り足が跳ね上がり、ジョルジュの頭部に振り下ろされる。

ξ#゚听)ξ「ぜやぁぁぁ――――!!」

叫び声と同時に、打撃音が鳴り響いた。
全体重の乗った蹴りが、ジョルジュの頬を捉えた。



13: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 00:43:54.14 ID:PvMsHhtI0
( ゚∀゚)「へぇ。少しはやるじゃん」

ξ;゚听)ξ「なっ!」

思わず声を上げた。
渾身の蹴りを受けたはずのジョルジュは、目の前で平然とした顔をしている。
常人なら、脳を揺らされしばらくは立てないほどの威力の蹴り。

その男には、まるで効いてなかった。

( ゚∀゚)「ま、雑魚には変わりねえけど、なっ!」

ジョルジュは頬に当たっている蹴り足を掴む。
そのまま、ツンの体を軽々と持ち上げた。



14: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 00:44:55.99 ID:PvMsHhtI0
ξ;゚听)ξ「きゃっ!」

ジョルジュはツンの足を持ったまま回転する。
浮遊感が体を包み、凄い勢いで視界が回る。

( ゚∀゚)「おらぁっ!!」

遠心力を十分つけ、投げ飛ばされた。
体が地面に叩きつけられ、水切りをする石ころのように跳ねながら転がる。

ξ゚听)ξ「う……」

砂埃をあげ、ようやく体は止まった。
全身が痛みに悲鳴をあげている。

ジョルジュは、仰向けに倒れるツンに近づき、手を踏みにじった。

ξ;゚听)ξ「痛っ……!」

( ゚∀゚)「さっきの餓鬼よりは面白かったぜ。そのお礼と言っちゃあなんだが……
     しばらくまともに飯食えなくしてやるよ!!」



17: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 00:46:08.14 ID:PvMsHhtI0
(;゚ω゚)「ツンッ!!」

ブーンが叫ぶ。
痛手を負った体は、意思に反して動かない。

ジョルジュが腰を落とし、拳を引く。

ダメだ。やめろ。
ツンを助けなければ。


動け動け動け動け――――ッ!!


( ゚∀゚)「ッ!」



19: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 00:47:03.39 ID:PvMsHhtI0
(;゚ω゚)「……え?」


一瞬。
ジョルジュの動きが止まった。

静寂の中、僅かな振動をブーンは感じた。
揺れているのは、地面。

その揺れは、徐々に大きくなっていく。


( ゚∀゚)「――――ッ!」


直後、ジョルジュが違和感の正体に気付いた。
その場から離れようと地を蹴る。

――――だが、その瞬間。その地は破壊され、何かが流星の如く天へと突き抜けた。



20: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 00:48:13.20 ID:PvMsHhtI0
( ,,゚Д゚)「土竜拳ッ! ゴラァァァァァ!!!」

( ゚∀゚)「ッ!」


地面を砕き、空に向かい拳を突き上げるその人影。
その掛け声。その姿。


(;^ω^)「ギコさん!!」


地面から襲来したギコの拳を、ジョルジュは咄嗟に両手で受ける。
ジョルジュは受けきれないと判断したのか、脱力し上空に吹き飛ばされた。

そのままジョルジュは地面に落下。
砂埃があがり、視界が遮られた。

ギコはにやりと笑うと、空中で一回転し、ブーンの傍に着地した。



24: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 00:50:53.81 ID:PvMsHhtI0
( ,,゚Д゚)「小僧、なぁーに地べたに寝転がってんだゴラァ!」

(;^ω^)「あうあう……」

( ,,゚Д゚)「まぁいい。小僧、ツン。お前らは下がってろ。
     事情は知らねぇが、代わりに俺がやってやる」


そう言い、ブーン達に背中を向けるギコ
視線を吹き飛んだジョルジュの方へと向ける。

砂埃が晴れ、その中から高笑いと共に人影が姿を現した。


( ゚∀゚)「ヒャヒャヒャ……! まさか地面から出てくるとは予想外だったぜ。
     あんた、こいつらの仲間か?」

( ,,゚Д゚)「そうだ。随分とまあ、俺の部下達をいたぶってくれたみてぇじゃねえか……」

(;^ω^)ξ;゚听)ξ(いつから部下になったんだろ(お))



25: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 00:53:40.23 ID:PvMsHhtI0
二人は心の中で突っ込みをいれる。
そんな見えない言葉に反応する事は無く、ギコは腕を前に突き出し

( ,,゚Д゚)「やられたならば、倍返し。部下の傷は、俺の傷。邪魔な壁なら壊してみせる。
     覚悟しやがれフード野郎! このギコ様が来たからには、もう謝っても許さねーぞゴラァ!!」


叫び、能力を発動する。
ギコの両腕に展開されるのは、岩の手甲。

刺々しく突き上げる岩の手甲は、ブーンと戦った時のそれとはまるで異なっていた。
目の前で展開されるは、ギコの体よりも巨大な手甲。

( ,,゚Д゚)「岩竜手甲……!! ぬああああああっ!!」

ギコの両手から光が溢れる。
その量は、エクシード状態になる時のそれとは比にならないほどだ。



27: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 01:00:53.40 ID:PvMsHhtI0
ξ;゚听)ξ「すごい……!」

(;^ω^)「お……」


ブーン達は呆然と、その異型の手甲を見上げる。
それがどういった物なのかはわからない。

だが、放たれる威圧感と巨大な姿から、力量は一目瞭然だった。


( ゚∀゚)「こりゃあ……随分とでかいのが出てきたな。
     自然系……岩使いか……ククク、ゾクゾクしてきたぜ! オィ!」

( ,,゚Д゚)「ごちゃごちゃ言ってねぇで、テメエも能力を開放しやがれ!
     まさか、それで全力だ、なんて事はねーだろゴラァ!!」

岩竜手甲を構え、叫ぶギコ。
その姿は圧巻。だが、ジョルジュは笑みを浮かべたまま

( ゚∀゚)「いいぜ……。久々に全力で――――」

( <●><●>)「ジョルジュ!」


ワカッテマスが止めに入る。
だが、それよりも先にギコが動いた。



29: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 01:06:58.49 ID:PvMsHhtI0
( ,,゚Д゚)「ふんっ!!」


岩竜手甲を空高くあげ、ジョルジュ目掛けて振り下ろした。
地面が砕け、轟音と共に激しい揺れが周囲に響き渡る。

(;^ω^)「うわっ!」

砂埃や地面の破片が飛び散り、思わず目を瞑るブーン。

やがて、衝撃の余韻が収まる。

(;^ω^)「や、やったのかお? てか、あんな物くらったらペチャンコになっちゃうんじゃ……」



31: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 01:12:37.63 ID:PvMsHhtI0
( ,,゚Д゚)「チッ! 逃げられたか。卑怯者め」


砂埃の中で、ギコは不機嫌そうな声で呟く。
岩竜手甲を持ち上げると、そこに敵の姿は無かった。

ギコは不満げな表情で、エクシード状態を解除する。
巨大な岩の手甲は、光となり姿を消した。


( ,,゚Д゚)「おい、おめーら大丈夫か?」

(;^ω^)「あう……なんとか平気ですお」

ξ゚听)ξ「うん。ちょっと痛むけど大丈夫」

二人は立ち上がり、返事をした。

('A`)「あ、あの……」

露天の影から、少年が姿を現した。
ブーンの元へ、恐る恐る近寄る。

( ^ω^)「あ……ごめんだお。ペンダント、取り返せなかったお……」

('A`)「ううん。いいんだ。その、ありがとう」



33: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 01:19:53.16 ID:PvMsHhtI0
( ,,゚Д゚)「で、だ。小僧」

(;^ω^)「うわっ」

ブーンの肩に手を回し、指の骨をぼきぼきと鳴らすギコ。

( ,,゚Д゚)「あの変なフード野郎との喧嘩の訳を聞かせてもらおーじゃねーか。
     つまらん理由だったらお仕置きだぞ? あ?」

(;^ω^)「あ、いや。実は……」

言葉を言う前に、足がふらついた。
血を流したせいか、頭がぼーっとしている。

( ,,゚Д゚)「……ったく、宿に戻ってからゆっくり聞くぞゴラァ!」

そう言い、ギコはブーンの体を肩に乗せる。

(;^ω^)「お?」

( ,,゚Д゚)「ツン、てめーも乗れ」

ξ゚听)ξ「え、ちょ……きゃっ!」

ギコはもう一方の肩に、ツンを乗せた。



35: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 01:23:28.67 ID:PvMsHhtI0
('A`)「あ、あの……」

立ち去るとするギコに、少年が声をかける。

( ,,゚Д゚)「あん? そういやお前誰だ?」

(;'A`)「……」

ギコを見つめ、少し後退する少年。
その瞳は見るからに怯えている。

(;^ω^)「あー、大丈夫だお。この人は怖くないお。
      ……とりあえず、一緒に宿に来るかお?」

('A`)「は、はい」

少年はブーンを見て頷く。
再びギコに視線を向けると、やはり怯えたように俯いた。

( ,,゚Д゚)「……」

( ,,゚Д゚)(ちょっとショックだ……)



37: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 01:28:24.50 ID:PvMsHhtI0
               ※


アサヒ村よりやや西に位置する岩石地帯。
二つの人影が歩いている。


( <●><●>)「まったく、遊びが過ぎますよ」

ワカッテマスは怒りを通り越し、呆れたように言い放った。

( ゚∀゚)「悪い悪い。面白そうだったから、つい熱中しちまった」

( <●><●>)「能力を使えば、あの村の一部は吹き飛んでいたでしょうね。
       そうなれば大事になり、ヤオイ国から騎士団が来るのはわかっています」

( ゚∀゚)「悪かったって! まぁ団長には秘密の方向で! な?」


まるで反省した様子の無いジョルジュ。
ワカッテマスはため息をつき、諦めた様子で頷いた。



38: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 01:32:42.28 ID:PvMsHhtI0
二人はある岩石の前で立ち止まる。
その影には、洞穴があった。


( <●><●>)「ただいま戻りました」

( ゚∀゚)「てでえまー」


その中は暗闇だ。
僅かな月明かりだけが、岩の隙間から入り込んでいる。


ミ,,゚Д゚彡「遅かったな」

( ゚∀゚)「あれ? フサギコだけかよ。他の皆は?」

ミ,,゚Д゚彡「野暮用とかで出て行ったよ。それより、遅かったな」

促すように語尾を強める、フサギコと呼ばれた男。
大剣を背中に背負い、その剣に見合った体格をしている。



39: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 01:35:59.98 ID:PvMsHhtI0
( ゚∀゚)「ちょっと遊んでてね。まぁ団長には秘密でな?」

おどけるように言うジョルジュ。
その言葉をフサギコは無視し、ワカッテマスに視線を向ける。

ミ,,゚Д゚彡「ワカッテマス、あまりこいつを甘やかすな。
      下手に騒がれては迷惑だ」

( <●><●>)「申し訳ないのはわかってます。
       何分、まだ月光狂団としての自覚がないようでして」

( ゚∀゚)「うるせーなぁ。俺は暴れられりゃいいんだよ。コソコソするのは性に合わねー」



41: ◆ExcednhXC2 :2007/11/04(日) 01:41:26.97 ID:PvMsHhtI0
ジョルジュは舌打ちしながら、子供のようにいじける。
頭の後ろに手を回し、言い訳のように呟いた。

( ゚∀゚)「だってよ、強そうな岩使いのナチュラリストがいたんだぜ?
     戦いたくなるのが本能っていうかー」

ミ,,゚Д゚彡「岩使い……?」

フサギコが、岩使いという言葉に反応する。

( ゚∀゚)「何? 知ってんの?」

ミ,,゚Д゚彡「いや、まさかな……。何でもない。思い違いだ」


そう言い、それっきり黙りこむフサギコ。
岩の隙間から月を眺め、頭に浮かんだ過去の人物に思いをめぐらせる。


砂漠の空に浮かぶ月は、今日も美しかった。
狂わしいほどに。


第十話 終わり



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