( ^ω^)スーパーロボット大戦BOON のようです

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/20(土) 22:16:35.15 ID:M4fMsOMw0
女性の一声の後、作業員達の動きが明らかに一変した。

先頭で手が空いていた男が、いきなり至近距離から弟者の腹部へと拳を叩き込む。
小さく息を吐き、体を折り曲げる弟者だが、間一髪クリーンヒットは避けたようだった。

弟者は突き出された拳を受け止め、そのまま肘関節を決めようと試みる。
だが、男も体をひねってそれに対応し、弟者の体を蹴って距離を離す。
そうしてすぐさま男は体勢を低くして構え、弟者の追撃の前に素早く他の作業員達と合流した。

(;´_ゝ`)「お、おい弟者!」
(´<_`;)「気を付けろ兄者……こいつら軍人だ!」

自らも軍人であるからこそわかるのか、先ほどの攻防で弟者は作業員達の素性を見切っていた。

そうこうする間もなく、作業員三人の内の男二人が女性をかばう形で前に出る。
その標的を流石兄弟に定め、二人は低くした体勢から飛び掛った。

( ::ω::)「おおっ!」
(;´_ゝ`)「ぐっ!」

腰を捻って繰り出された右フックを首だけでかわし、そのまま兄者は腕を取って投げ飛ばそうとする。
しかし、それより先に男が拳を引っ込め、続けざまに膝蹴りを繰り出す。
兄者は自ら体を折ってダメージを減らすが、そのまま首相撲の体勢に入られてしまった。

( ::ω::)「だおらぁっ!」
(;´_ゝ`)「うぐおっ!?」

連続で放たれる膝蹴りを、兄者は両腕で必死に防ぐ。
だが、それにも限界があった。兄者はその腕力だけでなんとか男を弾き飛ばす。
それでも、ダメージは明らかに兄者の方が大きかった。



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/20(土) 22:19:19.66 ID:M4fMsOMw0
川 ::-:)「二人とも下がれ」

わずかな警告の後、二人の作業員が格闘から身を離す。
何事かと思われたが、兄弟の二人も女性作業員が銃を構えているのを見てすぐに事態を把握した。

(;´_ゝ`)「おおっ!」
(´<_`;)「ぐうっ!」

すぐさま二人はそれぞれ近くにあった物陰へと跳躍する。
次の瞬間、断続する銃撃音がその場に轟いた。

(;´_ゝ`)「くっそー! 武器持ちか!」
(´<_`;)「どうする兄者!」
(;゚∀゚)「ま、任せろ! 警備ロボーッ! カームヒアーッ!!」

一足先にレストルームへ避難していた長岡が叫んだ後、その場にサイレン音が鳴り響く。
そうしてすぐに赤い光と共に警備ロボットが近付いてきた。

川 ::-:)「まずいな、二人とも戦闘を継続しつつ後退」
( ::ω::)(::A:)「了解」

作業員は運んでいた荷物からそれぞれ銃を手に取ると、緊急用のエレベーターに向かって走り出す。
それを、数体の警備ロボットが追撃した。

ロボットは山型の本体に手が生えたような形状をしており、小型ながら独自の浮力を搭載している。
作業員は後退しつつ銃を乱射するも、的が小さいのでなかなか当たらない。

それでも流石に鍛えられた脚力のおかげで、エレベーターまでは苦もなく辿り着く。
先頭だった女性作業員が制御スイッチのカバーを叩き割り、災害避難用の厚い扉が重低音と共に開かれる。
銃撃で牽制しつつ、作業員達は中へと踏み込んでいった。



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/20(土) 22:21:17.36 ID:M4fMsOMw0
(;::A:)「うおっ!?」

作業員の一人がエレベーターに入ろうとしたが、突然何かの強い力でその身を引っ張られる。
見ると、何やら持っていた銃が黄色い液体のせいで壁に張り付いていた。
液体は正しく一瞬の内に凝固し、作業員はなんとか離そうとするが、もはや人間の力ではどうしようもなかった。

川 ::-:)「やむをえん、その銃は捨てろ」
(;::A:)「りょ、了解!」

銃を離し、作業員は転がるようにしてエレベーターへと飛び込む。
それを銃撃で援護しつつ、女性作業員は文字盤を操作する。
再びの重低音の後、重々しい扉が閉じていった。

(;´_ゝ`)「くっ、逃げちまったか……!」
(´<_` )「待て兄者、この銃は……」

銃は完全に壁に張り付いてしまっていたが、そのグリップから弟者は何かを読み取る。
そして、そこに小さく彫られたマークのようなものを確認した。

(´<_` )「間違いない、この銃はVIP国製だ。このマークに見覚えがある」
( ´_ゝ`)「む……? しかし、なんだってVIP国が?」
(´<_` )「さあ、そこまではわからん。もしかしたらわざと他国の銃を使っているかもしれんしな」

思案を続ける兄弟の元に、顔を強張らせた長岡が駆け寄る。
走ったことよりも緊張で息を荒げ、弟者から銃のことを確認した。
  _  
(;゚∀゚)「VIP国? しかし、もう確かめようもねえな」
( ´,_ゝ`)「……そうでもないかもしれんぞ」

そう言って、兄者は意味あり気な笑みを浮かべていた。



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/20(土) 22:23:25.18 ID:M4fMsOMw0
(;'A`)「申し訳ありません少尉! 銃を……」
川 ゚ -゚)「いや、私のせいで見つかったのだ。お前は気にしなくていい」
(;^ω^)「でも! あんなの誰にも予想できませんお!」

三人はエレベーターから離れ、緊急用の非常口へと走る。
セキュリティを突破するためのチップが幸いしたのか、警備用の設備は完全には起動していない。
三人はとにかく脇目も振らずに走り、雪崩れ込むようにして非常口から飛び出した。

外へと出た後、三人は雑踏を避けながら道路脇に停めてあった脱出用の車へと駆け込む。
車種はホワイトのライトバン。ブーンが運転席、残る二人が後部座席へと乗り込んだ。

川 ゚ -゚)「あまり速度は出すな。気付かれるとまずい」
( ^ω^)「了解!」

キーが差し込まれ、車のハザードランプがウィンカーの点滅へと変わる。
人通りは多かったが、車の数はそれほどでもなかった。
ブーンは一般道のそれよりも気持ち速めに車を走らせる。

( ^ω^)「……おっ?」

すると、しばらくして突然周りの景色が薄暗さに包まれる。
ブーンは雨が降るのかと思ったが、フロントウィンドウに水滴が落ちる様子もない。
何事かと思っていると、いきなり後部座席からドクオの驚愕する声が聞こえてきた。

(;'A`)「う、上だ!!」

ドクオが窓から首を出して見上げる先。そこに、彼が驚く理由があった。

(  _ゝ )「……見つけたぞ」



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/20(土) 22:25:41.48 ID:M4fMsOMw0
(;'A`)「な、なんだありゃ!? 駆動兵器なのか!?」

車から数十メートル上空を飛ぶ“それ”は人型の機械――ロボットであった。
機体はメタリックブルーとホワイトで彩られ、背部には肩上に飛び出す小型のウイングジェネレーターが確認できる。
角張った部分が多く見られるが、関節部分はすっきりとしており、どうやら装甲の厚みがそうさせているようである。

肉眼では武装まで確認できなかったが、大きさは三人の搭乗する駆動兵器の二倍以上だった。
だが、それよりも彼らを驚かしたのは単独での飛行を可能とする点である。

VIP国が所有する駆動兵器は局地戦闘にも優れ、それ自体の能力は極めて高い。
しかし、単独での飛行能力を持つ機体は存在していなかった。

それ故、クーは独自に思考を走らせる。「その技術力は脅威に成り得る」、と。

川 ゚ -゚)「ブーン、目的地変更だ。港の倉庫に向かえ、全速力でな」
(;^ω^)「えっ……りょ、了解!」

ブーンは多少乱暴にハンドルを切り、アクセルを思い切り踏み込む。
車は一気に加速し、人通りの少ない港の方向へと進んでいった。

(;'A`)「くっ、なんで俺たちの居場所がわかったんだ……?」
川 ゚ -゚)「……ドクオ、自分の体を調べてみろ」
(;'A`)「え……アッー!」

ドクオが自分の首筋に手を這わせると、そこで何か固い感触を発見した。
摘んで見てみると、それは発信機であった。これによって三人の居場所は突き止められていたのである。

川 ゚ -゚)「恐らくあの警備の機械の仕業だろうな。ということは、やはりあれは追っ手か」
(;'A`)「も、申し訳ありません、俺……」
川 ゚ -゚)「気にするな。汚名はこの後返上すればいい」



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/20(土) 22:43:19.99 ID:M4fMsOMw0
車は猛スピードで進むが、道は路地裏や、狭い道を優先して選んでいた。
相手が相手なだけに、見逃すようなこともないが、これなら手を出される心配もない。
多少回り道となる場合が多いものの、車は確実に目的地の港へと迫っていた。

( ^ω^)「……! 港ですお!」
川 ゚ -゚)「よし、二番倉庫だ。突っ込め」

スピードを落とさぬまま、車は倉庫の扉をぶち破って中に入る。
そのまま倉庫内をいくらか進んだ後、車はエンジンを切られ停車した。

車が倉庫内へと姿を消した後、港はしばし波風のそよぐ音に支配される。
しかし、それもすぐに終わり、上空から接近する大きな影が存在していた。

三人を追いかけていた、青と白の機体である。
機体は港の開けた場所に着陸すると、扉の壊された二番倉庫の前で静止した。

( ´_ゝ`)「追い詰めたぞ、とっとと出て来い!」

機体から通常音声でその場に声が響き渡る。
声の主――コックピットに座るのは、専用のスーツに着替えた兄者だった。

兄者の駆るこの機体こそ、コメリカ合衆国のシマンテック社が開発した最新鋭の人型武装兵器。
形式番号BBQ-072L/R、その名もワロスブルーダーであった。

未だ試作機のために武装は完全ではないが、それでもその機構のほとんどは通常稼動することを可能としている。

実は、兄者達は今回、この機体の輸送任務に就いていた。
だが、その輸送の途中に荒巻コーポレーションの近くを通るため、ついでに長岡に見せびらかそうという魂胆だったのだ。

長岡は以前に軍の技術開発部門で勤めていたことがあり、その際に二人とは顔見知りだったのである。



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/20(土) 22:46:55.84 ID:M4fMsOMw0
兄者はその後も何度か通告を繰り返すが、果たして相手側には投降する意思すら感じられなかった。

( ´_ゝ`)「仕方ない……実力行使と行くか」

兄者は機体を倉庫に向かって接近させる。
そのまま機体はしゃがみ込み、壊れた扉へと手を掛けた。

(;´_ゝ`)「うっ!?」

その瞬間、兄者の見るモニターに無数の弾幕が映し出された。
弾丸は倉庫の扉を穴あきチーズのようにしながら機体の胸部装甲に直撃する。
兄者は機体左腕部に装備されているシールドでそれを防ぎ、そのままじりじりと後退させていく。

やがて、銃撃が止むと、倉庫の扉が音と埃を上げながら倒れ、中から一筋の硝煙が覗き出た。

( ´_ゝ`)「やはり駆動兵器か!」

未だ多く熱の残るV-Rifle1の銃口を向けながら、倉庫内より真紅の機体が姿を現す。
クーの駆る駆動兵器、2CH-VR。型式は古くとも、汎用性に優れ、特に格闘性能に優れている。
搭乗者によって力を発揮するという、クーにおあつらえ向きの機体だった。

川 ゚ -゚)「……射撃は性に合わない……」

機体が持つV-Rifle1にはまだ残弾が十分にあったが、クーはその場に銃を放らせる。
そうして機体を象徴する鉤爪の付いた両腕を構え、兄者へと突撃した。

(;´_ゝ`)「くっ!」

咄嗟に兄者は機体左腕部のシールドに収納された携帯用刀剣、デリーティングカッターを引き抜く。
刀身を相手の鉤爪に絡ませ、そのまま左腕で押し込むようにして防いだ。



70 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 [BGM聞こえなかったりするかな?] 投稿日: 2007/10/20(土) 22:50:28.90 ID:M4fMsOMw0
(;´_ゝ`)「小さいのに……! 力持ちだな……!」

そう口走った兄者だが、やはり機体の出力差は現れ始めていた。
大型であるブルーダーの方が逆にVRのことを押し返していく。
クーの機体もその爆発力には目を見張るものがあるが、この状況でそれを発揮するには至らなかった。

川 ゚ -゚)「力では劣るか……だが、我々はチームだ」

クーは出力を維持しつつ、機体の体勢を若干低くする。
その瞬間、倉庫内より光速の矢がブルーダーの肩を掠めた。

(;´_ゝ`)「ぬおっ!?」
('A`)「この距離……スコープは必要ないか」

現れた漆黒の機体、ドクオの2CH-VB。
クーの機体が至近距離にあるにも関わらず、躊躇なくドクオは機体腕部のクレインクラインによって追撃の矢を発射する。
兄者は出来うる限りで的を小さくするよう努めたが、このままでは狙い撃ちにされるのが必然であった。

('A`)「見た限り装甲は厚そうだ……だが、直撃すれば関係ない……!」
(;´_ゝ`)「そうはさせるかっ!」

兄者はスラスターを噴かし、機体を上空へと退避させる。
領空を支配できるのは兄者の機体、ワロスブルーダーだけの特権である。

だが、その有利も長くは続かなかった。
地上より、純緑に彩られた閃光が襲い掛かったのである。

( `ω´)「おおおおおっ!!」
(;´_ゝ`)「うわっ!?」



71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/20(土) 22:54:00.72 ID:M4fMsOMw0
ブーンの2CH-VGに搭載された超加速を可能にする機能、ノトーリアス。
それを限定的に発揮し、ブーンは機体を遥か上空へと飛び上がらせた。

加速によって威力が何倍にも膨れ上がったVGの拳は、容赦なくブルーダーの装甲を砕く。
兄者は機体のコントロールを失い、真っ逆さまに海上へと落ちていった。
大型の機体が海面に衝突した瞬間、それ相応に天高く飛沫が舞い上がる。

(;´_ゝ`)「くっそぉ……まだ、動くだろうな……?」

兄者は衝撃でわずかに朦朧とする頭を定めながら、機体の損傷箇所を確認する。
見ると一番ダメージが大きかったのは胸部の辺りだが、それでも装甲の一部が欠けただけで留まっていた。

(;´_ゝ`)「スキンアーマーがちょっとやられたぐらいで……これならまだいける」

兄者はモニターを確認し、相手戦力を今一度見極める。
港には赤、黒、緑の三機が揃い踏み、そこには一分の隙など見当たらない。
それぞれがそれぞれの長所を活かし、短所を補い、まさに見本とも呼べるチームワークであった。

川 ゚ -゚)「あまり時間をかけてもいられん……一気に攻勢を仕掛けるぞ」
( ^ω^)('A`)「了解!」

指示を出すクーの機体を先頭に、海上のブルーダーへと三機が迫る。
万事休すという状況に兄者も歯がゆさを覚えたが、すぐにいい考えが浮かぶわけでもない。

そうして、三機の駆動兵器が今まさに追撃を加えようとした瞬間、突如三発の銃声が轟いた。

川 ゚ -゚)「む……!」

機体の足を止めるように放たれた銃撃はVRの前面を掠め、すぐさまクーは周囲を見渡す。
しかし、辺りにそれらしい機影は見えず、兄者が行ったわけでもなかった。



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/20(土) 22:57:57.33 ID:M4fMsOMw0
川 ゚ -゚)「なんだ……?」
(;'A`)「っ! 少尉、レーダーに反応があります! しかし……!」

ドクオはそこで思わず言葉を詰まらせる。
何故なら、レーダーに反応があったと言っても、それは港から数キロ離れた市街地の方向であったからだ。
念のためにドクオはレーダーを遠景タイプに切り替えるが、それでもその反応は確認できた。

つまり、先ほどの弾丸は数キロも離れた距離から狙って撃たれたものなのである。

( ´_ゝ`)「ん……やっと来たか」

兄者もレーダーでその機影を確認し、その表情に余裕を浮かび上がらせる。

そして、そこから数キロ離れた上空に、もう一つの隼の姿があった。

(´<_` )「ふむ……スナイピングモードの精度はこんなものか」

専用の武器オクスタントンファーを構え、高速で空を突き進むのは弟者の機体、ワロスフレール。
兄者のブルーダーとは兄弟機であり、開発も同じシマンテック社の試作機である。

ブルーダーと同じく青と白を基調とするパーソナルカラーだが、こちらは流線型を意識させるフォルムとなっていた。
背部のウイングジェネレーターも大型化しており、より飛行能力に特化した機体だと言える。

四枚の大型ウイングが特徴的で、その鋭いカメラアイが猛禽類を想像させた。

川 ゚ -゚)「……どうやら増援が来るようだな」

クーは海上のブルーダーと接近するフレールをレーダーで見据え、思考を巡らせる。
機体の数だけならば未だクー達の方が有利だと言えるが、相手は最新鋭の高性能機である。
とても余裕を作れるような状況でもなかった。



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/20(土) 23:01:36.51 ID:M4fMsOMw0
( ^ω^)「クー少尉、どうしますかお?」
('A`)「相手戦力の偵察だけならば、既に十分とも言えますが……」
川 ゚ -゚)「いや、戦闘を続行する」

すぐに返って来たクーの答えは、その戦闘意欲をまじまじと現すものだった。
先ほど兄者と刀を合わせ、既にクーはその機体性能、操縦者の技術、どれも評価に値すると判断していた。

それ故、今の彼女の中にはある欲求がその鎌首をもたげている。

強いものと戦い、勝利するという、彼女にとって格別の快楽であった。

川 ゚ -゚)「相手は我々にない飛行能力を有している。障害物の多い市街へと移動するぞ」
(;'A`)「し、しかし、それじゃあ不要な人的被害が……!」
( ^ω^)「そんなこと言ってる場合じゃないお! ドクオはやられてもいいのかお!?」

ブーンの問いに、ドクオはぐっと言葉を詰まらせる。
自国が戦争の真っ只中であるのに、他国で撃墜されるなど言語道断、そんなことはもちろん理解している。

しかし、今の彼には迷いが生じていた。

戦争では敵を倒し、国を守ることが真実である、そう信じて戦うこともできた。
だが、この国はVIP国ではない。ましてや戦時中でもないのだ。

クーとブーンの言葉は力強く感じられる。しかし、それは真実なのかと、ドクオは頭を悩ませる。
今の彼にとって、それは非常に酷な決断だと言えた。

川 ゚ -゚)「既に避難勧告は出されているはずだ。今は勝利することだけを考えろ」
(;'A`)「……了解」

その返事にはまだ迷いがあるも、今はクーの命令にドクオは従うしかなかった。



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/20(土) 23:05:33.74 ID:M4fMsOMw0
駆動兵器の小隊は踵を返し、海上のブルーダーから離れていく。
兄者はそれを見届けると、機体の体勢を整えて特定の通信回線を開いた。

( ´_ゝ`)「弟者、聞こえるか。奴らは街に向かったぞ。後、来るのが遅い」
(´<_` )「機体の使用許可とか諸々やってたんだ。とにかく把握した。挟み撃ちにしてやろう」

兄者は機体の出力を徐々に上げていく。
スラスターから放たれる噴射で海面に波が作られ、そのまま機体が海上から浮き上がる。
カッターは元の鞘に仕舞い、代わりに腰に下げていた二挺の試作型リボルヴァーカスタムを構えた。

レーダーで確認できる点との距離はどんどん開いていくが、兄者にそれを焦る様子はなかった。
ブルーダーに搭載されたスラスターは最新鋭のものである。追い付くのにそれほど時間はかからない。

各部のジェットノズルで機体を水平に保ち、ブルーダーは高速飛行を開始した。



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