('、`*川新聞部が嘘吐きを探すようです
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/16(金) 20:25:21.49 ID:g2xTxqFnO
ζ(゚ー゚;ζ「嘘吐きが……居るの? 本当に?」
从 ゚∀从「……あぁ」
理科室、いや今は科学部部室。
普通の教室よりも広いそこは、無音かと思うくらいに静かだった。
ζ(゚ー゚;ζ「……」
从 ゚∀从「……」
今この教室に居るのはデレとハイン、2人だけ。
その2人が押し黙ってしまえば、静かになるのは当然だ。
从 ゚∀从「……別の話するか。
お前、次の部長なんだって?」
そう言ってハインは、あからさまに話題を変えた。
デレは少しぼんやりとしながらも、返答するため口を開く。
ζ(゚ー゚*ζ「うん……そうみたい」
从 ゚∀从「お前に出来んのかぁ?
アイツとは真逆の性格じゃねぇか」
ζ(゚ー゚*ζ「……だよね。私もそう思う」
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/16(金) 20:28:16.75 ID:g2xTxqFnO
12話「本当の嘘吐き(前編)」
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/16(金) 20:30:47.92 ID:g2xTxqFnO
从 ゚∀从「アイツは人を利用するのが大好きで、
利用されるのが大嫌いな奴だからなー」
だからこそ今の新聞部があるのかもしれない。
そうハインは、笑いながら言った。
ζ(゚ー゚*ζ「私には多分……出来ないな。
頼まれたらなんでも了承しちゃうから……」
从 ゚∀从「……やっぱ向いてねぇよ、お前は。
他人を嫌いにならなきゃ、新聞部なんか勤まらないだろ」
ζ(゚ー゚*ζ「そ、そんな事は……ないと思うな」
実際デレは2年目。まぁ確かに仕事は出来る方じゃないが、
他人を貶し落としめるだけが新聞部ではないと、そう思っている。
从 ゚∀从「学校側の言う事ばっか聞いてたら、何も出来ないぞ?」
ζ(゚ー゚*ζ「じゃ、じゃあある程度ストイックに……」
从 ゚∀从「漫研から依頼も来るし、嘘吐きの事バレたらオカ研だってやって来るぞ?
つーだって抑止力無くなって、毎日毎日やって来るんだぞ?」
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/16(金) 20:32:18.36 ID:g2xTxqFnO
ζ(゚ー゚;ζ「……」
確かにそうかもしれない。
今までペニサスはそういう輩を無視していたが、果たしてデレにそれが出来るだろうか。
多分出来はしないだろう。
彼女自身、それは自覚している。
すると、将来的に新聞部はどうなるか。
紙面は漫画で埋まり、部室にはオカ研の連中が押し掛け、
写真部、もといつーには部費が食い物にされる。
やがて新聞部は部員が居なくなり、ひっそりと廃部になるのだ。
ζ(゚ー゚;ζ「だ、駄目だよそんなのッ!」
そんなネガティブ予想を、デレは頭を横振りにして追い出す。
从 ゚∀从「でもそれが現実なんじゃねーの?
実際お前らは他の部より力持ってんだからよ」
それが学生のお遊びの範囲ならば、
わざわざ校長室に呼び出しなどはされないだろう。
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/16(金) 20:36:12.05 ID:g2xTxqFnO
何でも書き兼ねないというペニサスの性格を抜きにしても、
学校的に新聞部が発行するその内容を、手放しで無視はできないのだ。
そんな力が身近にあるのだ、他部だって頼る。
利用しようと寄ってくる。
从 ゚∀从「そんな部を、お前が一任するんだぜ?」
ζ(゚ー゚;ζ「……」
今まで次期部長になると言われても、どこかでデレはそれを軽視、
もしくは楽観視していた。なんとかなる、と。
ただここまで、軽く大袈裟ながらもハインに言われ、デレはその重圧を改めて感じた。
ζ( ー ;ζ「……やっぱり私には……向いてないや」
プレッシャーにすこぶる弱いデレは、ついに俯き弱音と深いため息を吐いてしまう。
ζ( ー *ζ「……はァ」
从 ゚∀从(……なんで俺、コイツを凹ませてんだ?)
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/16(金) 20:38:29.56 ID:g2xTxqFnO
正しい事、思う事を言っただけだ。
それがハインの性格だし、科学を嗜む人間として、
現実は現実としてキチンと見るべきだと思う。
ただ友人に任せた、と言われた人間をベッコシ凹ませるのは、
軽くお門違いなのかもしれないと、ほんのちょっぴり疑問に思った。
从 ゚∀从「……」
ζ( ー *ζ「……」
微笑は消えてないが、確かにデレは落ち込みを見せている。
そんな彼女を見て、流石のハインも悪気を感じ出す。ちょっとだけ。
从 ゚∀从「まぁ、さ……なんとかなるんじゃね?」
ζ( ー *ζ「……なんとかなる前に廃部になってるよ」
从;゚∀从「いやいや、そこまで悪い方に考えんなよ」
ζ( ー *ζ「まずでぃちゃんが愛想尽きて辞めちゃうの……。
妹者ちゃんも気付いたら居なくなってて。
それで私は、誰も居ない静かな部室で首を吊って……」
从;゚∀从「おいおい死ぬなよッ!!」
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/16(金) 20:42:17.29 ID:g2xTxqFnO
ζ( ー *ζ「ツンちゃんからも忘れられて……
十年後に部室で白骨化した私が発見されるんだよ……」
从;゚∀从「……」
まさかここまでネガティブ思考が深い女だったとは。
天然と聞いているし、恐らくマジにそこまで妄想しているのだろう。
ζ( ー *ζ「それでね……白骨化したまま学校をウロツキ回ってね……
千切っては投げ千切っては投げ……廃部を感染させるの……うふふふふふふふふふふふ」
从;゚∀从「壊れた……」
その引き金を引いたのは誰であろうハインだ。
という事は、デレをなんとか宥め落ち着かせるのは彼女の仕事になる。
しかしあろう事かハインは、気味が悪いという理由で
うふふと笑うデレの背を押し、教室から追い出した。
とことん非道い奴である。
そのままデレは、落ち込み度をMAXに維持して帰宅。
家ではツンが心配して話し掛けるも、彼女は何でもないよ、と風呂にも入らずに寝てしまった。
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/16(金) 20:45:32.93 ID:g2xTxqFnO
それから8日が経過して、やっとデレは自分の胸の内を打ち明けるチャンスを得る。
受動的なデレだからこそ、そのチャンスはここまで遅れたのだ。
が、話は無駄にややこしい。
8日が経過しデレが打ち明ける、その1時間前に焦点を合わせねばならないからだ。
少し整理。
8日の間にジョルジュの失踪、いわゆる神隠し事件が新聞部内にて発覚。
直ぐにでぃはそれを調べ、そこから容疑者に嘘吐きが挙げられた。
しかし嘘吐きを何とか出来る要素、可能性を持つのはハインだけ。
だがそのハインは、神隠し事件発覚以前に嘘吐きの尻尾を掴んでいた。
しかしその事をペニサスには言わず、余計な事を言って
デレを凹ませ、しかもそのまま追い返した。
敢えて簡単に言おう。
ややこしくしてやがるのはハインだ。
何を考えてるのか知らないが、尻尾を掴んだのならばそのままペニサスに渡せばいい。
結局はデレにも詳細を話さないのだから、8日間も嘘吐きの尾を放置した事になる。
そんな頼りたくはない科学部部長の元に、ペニサスが箱を片手にやって来る。
調べ上げた次の日、冒頭から8日目の、放課後の事だ。
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/16(金) 20:49:15.75 ID:g2xTxqFnO
('、`*川「おいすー。ケーキ持ってきてあげたよー」
从*゚∀从「おッ! 流石心の友だぜ!」
嬉々とハインは後ろを振り向き、心の友もといケーキ運びを確認。
したが直ぐに、アルコールランプで沸かしたお湯を使って2人分の紅茶を煎れた。
从*゚∀从「なに買ってきてくれたんだ?」
('、`*川「うんにゃ、その前に……」
嬉しそうに身を乗り出すハインを片手で制し、ペニサスは彼女の対面へと座る。
箱を机に置き自分側に寄せると、湯気を立たす紅茶を一口啜り話を始めた。
('、`*川「嘘吐きがさ、動いたっぽいんだよね」
从 ゚∀从「……ふ〜ん」
('、`*川「しかも大きく。パン事件なんか鼻糞レベルだよ」
年頃の女の子として、その発言はどうなのか。
まぁ今更驚きもしないし、自身も気になどしない。
ペニサスはまた、ズズと紅茶を啜った。
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/16(金) 20:52:30.44 ID:g2xTxqFnO
('、`*川「……ふぅ。 んでさ、何か分かってない?
どんな些細な事でもいいからさ、嘘吐きっぽいのはないかな?」
ペニサスが、ハインが尻尾を握っている事を知ってるならば、
ここは『何か知らない?』になっていただろう。
彼女の性格からして、隠す相手にはまずカマを掛けるからだ。
从 ゚∀从「……その言い方だと」
そんな性格なんだと、少なくともハインは知っている。
あまり好ましいとは言えない所だが、それがペニサスなんだ、とも。
从 ゚∀从「デレの奴から、何も聞いてないんだな?」
('、`*川「……? どういう事?」
その問いに、ハインは直ぐには答えない。
焦らすように紅茶を持ち、目を閉じながらゆっくりと一口飲んだ。
カチャ、と音を立て、カップは元あった場所へと戻される。
それからやっと、ハインが口を開いた。
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/16(金) 20:55:09.72 ID:g2xTxqFnO
从 ゚∀从「デレから聞けよ、直接会ってな。
んで話合って、俺にその答えを聞かせろ」
じゃないと、教えない。
そう続いたハインの言葉に、ペニサスの眉間には皺が出来た。
なに言ってんだコイツ、と。
('、`*川「……ケーキあるよ?」
从 -∀从「いらねぇ」
目を閉じ、即答。
('、`*川「……」
从 -∀从「……」
ハインの意志は、堅い。
彼女がケーキよりも他のモノを取るなんて考えられないが、事実そうなのだ。
この意志は物では崩せないと、ペニサスは感じ取った。
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/16(金) 20:57:11.48 ID:g2xTxqFnO
('、`*川「……わかった。
帰らないでよ、すぐ戻ってくるからさ」
从 -∀从「じっくり話せ。………嘘は、吐くな」
少しの間と、音量を抑え言われた最後の言葉。
それがひどく、ペニサスの頭に残った。
部室にて、デレは未だに落ち込んでいた。
今部屋には、でぃと彼女だけ。
そのでぃも何か紙を眺めている為か、部室はひどく静かだ。
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/16(金) 21:00:05.10 ID:g2xTxqFnO
そんな部屋にガララと音が響き、2人の視線は自然とそちらへ向けられる。
(#゚;;-゚) 「あ、部長。どうでした?」
どうでした、とはハインとの事についてだ。
神隠し事件は、でぃとペニサスだけの秘密なので
そんな言い方をしたのだが、今のデレにその部分が引っ掛かる事はない。
('、`*川「その事だけどさ……
悪いんだけど、ちょっと外してくれる?」
(#゚;;-゚) 「え? ……あ、はい」
てっきり退室するのはデレの方だと思ってた。
その事、ならば尚更だ。秘密にしようと言いだしたのは、ペニサスだし。
でも今の言葉は間違いなく自分を見て、自分に向けられた言葉だ。
疑問には思ったが問いただす事などせず、でぃは一人部室を出て行った。
('、`*川「ホント、空気読める子は助かるわ……」
そんな事を呟きながら、ペニサスは自席へと座る。
ちょうどデレの左隣がその席なので、彼女は右へと椅子を回し向き直した。
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/16(金) 21:04:36.50 ID:g2xTxqFnO
('、`*川「……デレちゃん、ちょっといい?」
ζ(゚ー゚*ζ「……はい」
デレも、左を向く。
('、`*川「あのさ……私になんか、話す事ない?」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
言われ考える。
すぐにその、話すべき事の節は見つかった。
むしろ昨日も今も、その事ばかりを考えていたのだ。
ζ(゚ー゚*ζ「部長、私……」
('、`*川「……」
ζ(゚ー゚*ζ「……私、次の部長になんかなれません」
パッとペニサスは思った。
なんだ……そんな事か、と。
('、`*川「……もう、私の子でも妊娠したのかと思ったわよ」
ζ(゚ー゚;ζ「……はい?」
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/16(金) 21:07:03.39 ID:g2xTxqFnO
生理学上ありえない事を言いながら、ペニサスはふぅと肩の力を抜いた。
('、`*川「まぁ確かにさ、不安だと思うよ。
でもね、デレちゃん。私は君なら出来ると」
ζ(゚ー゚*ζ「出来ませんよ、私なんかに」
珍しくデレは、はっきりと言い返した。ペニサスの言葉の途中で、はっきりと。
だがそれは、良い事なんかじゃない。
絶対にだ。遮り言うネガティブな否定などは、良い事なんかじゃない。
ζ(゚ー゚*ζ「私……仕事も出来ないし、すぐに誰かを信じちゃうし……。
そんな私が部長になんかなったら、皆部活を辞めちゃいますよ」
('、`*川「馬鹿じゃないの? それは今のアナタだからでしょ?
私が知ってるデレちゃんは、弱音を吐いても簡単には諦めないわ」
ζ(゚ー゚*ζ「……違います。
今の私が……本当の私なんです」
('、`*川「……そう、知らなかったわ」
嫌な空気を出しながら、言葉達に間が空く。
こんな言い合いになる事など、いつ予想が出来ようか。
ペニサスにとって最近のデレの落ち込みなど、些細な物でしかなかったのだから。
- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/16(金) 21:09:06.31 ID:g2xTxqFnO
('、`*川「……今のアナタが本当のアナタなら、
確かに皆、部活を辞めるわね」
ζ(゚ー゚*ζ「はい……だから次の部長はでぃちゃんに」
('、`*川「嫌よ。次の部長は君」
ζ(゚ー゚;ζ「なッ……なんでですかッ!?」
('、`*川「だって決めたんだもん。
君が次期部長だ、って」
そんな子供のような言い分に、思わずデレは閉口してしまう。
変だ変だとは前々から思っていたが、そんな物を振りかざすとは。
ζ(゚ー゚*ζ「……私がやりたくないって言ってるのにやらせるっ、て……。
そんなのただの……嫌がらせですよ。
私の事、嫌いなんですか……?」
('、`*川「大ッ嫌い。
そうやって弱がって、人に縋る人間は」
ζ(゚ー゚;ζ「よ、弱がってなんかッ……!」
('、`*川「否定するの? 私をアナタなんかが?」
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/16(金) 21:11:36.52 ID:g2xTxqFnO
ζ(゚ー゚;ζ「なッ……そんな言い方ってッ!」
('、`*川「言い返すんじゃない。やっぱり弱がってるわよ」
ζ(゚ー゚;ζ「……ッ!」
デレは、何も言えなくなった。
それと同時に恐ろしく。
本当にこの女は、全部計算してから動いてるんじゃないか。
デレは改めて、そんな風にペニサスの事を思った。
('、`*川「デレちゃん前に言ったわよね。続ける理由は部活の為に、ってさ。
アレ聞いて私、驚いたのよ。馬鹿じゃねコイツ?って」
また馬鹿にされたが、デレは何も言わない。
下手に動けば動くほど、ペニサスの罠にハマるから。
('、`*川「私はね、自分の為に続けてるのよ、部活を。
私は部活より上なの。でもデレちゃんは、部活より下」
ペニサスは利用する。教師も、他部も、友人も……仲間も。
それが部活という小さな組織であっても、例外などはない。
ペニサスはそんな自分の、やりたい事だけをやれる場所を作った。
それが、新聞部。
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/16(金) 21:13:46.83 ID:g2xTxqFnO
('、`*川「私とは丸っきり、180゚違う考え方。
そんな君の新聞部を、私は見たかったのよ」
ただ、見たかっただけ。
その為にペニサスは、デレを利用する。
新しい新聞部を見る為『だけ』に。
ζ(゚ー゚*ζ「……私は物扱いですか?」
('、`*川「今更何言ってんのよ。
私の部なのよ? 私の部の部員は、私の駒よ」
これがペニサスの、嘘の無い本音だった。
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