ξ゚听)ξツンと星空と海風のようです
- 22: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 04:30:44.68 ID:3Ia+C9II0
- ―4月28日(土曜日)―
―時刻・AM8:05―
ξ#゚听)ξ「遅ーーい!! 」
待ち合わせの時刻を5分程過ぎた頃。美府駅の駅前でツンは叫んだ。
ξ#゚听)ξ「ねぇ、しぃ? 」
(;゚ー゚)「な、何? ツンちゃん」
明らかに不機嫌な顔でツンはしぃに話しかける。
ξ#゚听)ξ「昨日はブーンとゲームやった? 」
(;゚ー゚)「う、うん。でも、明日早いからって十一時にはやめたよ? 」
ξ#゚听)ξ「……あの馬鹿。いい加減に縁切ろうかしら」
ツンは一人息巻いていたが、ドクオがなだめる。
('A`)「アイツの遅刻なんて、今に始まったことじゃねーだろ? 少し落ち着け」
(*゚ー゚)「ねぇ、ドックン。ブーンてそんなに遅刻するの? 」
('A`)「学校行く時以外は、ほぼ毎回だな。学校行く時の待ち合わせだって七割は固い」
(;゚ー゚)「そんなに? 」
- 24: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 04:32:48.84 ID:3Ia+C9II0
- 予想以上の答えにしぃは驚きの声を上げる。
(;゚ー゚)「で、でも、それでなんで学校には間に合うの? 」
ξ゚听)ξ「それは、待ち合わせ時間を早めにしてあるからなのよ」
(;゚ー゚)「そうなの?! 」
('A`)「10分までなら遅れても、歩いて間に合う」
ξ゚听)ξ「走れば15分までなら、ギリギリセーフ」
('A`)「走るのだるいから10分までしか待たないけどな」
(;゚ー゚)「それで、置いて行かれたブーンは遅刻しないの? 」
ξ゚听)ξ「あの馬鹿。足だけは速いからね」
('ω`)「『僕だけなら、あと20分遅くても余裕だお! 』とか言ってたな」
ドクオがブーンの物まねをしながら答える。
(*゚ー゚)「あははは! ドックン、そっくり! 」
ξ゚听)ξ「もうちょっと、太れば完璧ね」
('ω`)「『そんな事無いお! 僕はピザじゃないお!! 』」
調子をよくしたドクオは更に物まねを続ける。
- 27: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 04:35:40.57 ID:3Ia+C9II0
- ⊂二('ω`)二二⊃「『ブーン! 』」
そこに同じポーズで疾走する人物が現われた。
⊂ニニ( ^ω^)ニ⊃「ブーーーーン!!! 」
ξ#゚听)ξ「『ブーン! 』じゃない!!」
猛スピードで走ってきたブーンの腹に、ツンのボディブローがめり込む。
( ゚ω゚)「ぶふぉ!!! 」
(;゚ー゚)「ブーン! 大丈夫?! 」
心配するしぃをよそにドクオはニヤニヤしながら、腹を押さえてうずくまっているブーンに近づく。
('A`)「なぁ、ブーン。昨日の夜、電話で集合時間何時っていったっけ? 」
(;^ω^)「えっと、8:00に駅前だったけど、7:48の電車で行きたいから7:30に変更になったって聞いたお? 」
ちなみにそれはドクオの嘘で、ブーン以外の三人は8:00に待ち合わせてる。
それでも7:40にはブーン以外の全員が集まっていた。
(;゚ー゚)「ドックン、そんな事言ってたの? 」
('A`)「ああ、たぶん15分は遅刻すると思ってたからな」
ドクオは「見事にその倍以上の遅刻だけどな」と付け加えてブーンに向き直る。
('A`)「さて、ブーン! Time of punishment! (訳:お仕置きの時間だ! )」
- 29: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 04:38:18.97 ID:3Ia+C9II0
- ドクオはブーンの腕を掴むと袖をまくり、思いっ切りしっぺをする。
( ゚ω゚)「いでーーーーお!!! 手加減しろお! 」
('A`)「ツンと協力して、サンドイッチ・ラリアットの方がよかったか? 」
(;^ω^)「のーせんきゅーだお」
ξ゚听)ξ「しぃもやっちゃいなさい」
(;゚ー゚)「ええっ! 私も?! 」
突然、話を振られたしぃは、今日何度目か分からない驚きの声を上げる。
('A`)「『遅刻したら一発だけ何してもOK』俺らのルールだ」
ξ゚听)ξ「ブーンしかやられたこと無いけどね」
(;^ω^)「お、お手柔らかにお願いしますお」
(;゚ー゚)「え、えっと。じゃあ、いくよ? えい! 」
- 30: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 04:41:15.64 ID:3Ia+C9II0
- しぃはブーンに軽くデコピンをする。
(*^ω^)「しぃちゃんは、誰かさんと違ってやさしいお」
ξ#゚听)ξ「誰かさんって誰の事だ! 」
( ゚ω(#)「ひでぶ! 」
ブーンの余計な一言に、間髪いれずツンの右フックがブーンの顔面を捉えた。
(;^ω^)「ちょ、ツン二発はルール違反だお」
ξ#゚听)ξ「フン! しぃが手加減した分の補足よ! しぃ、行こ? 」
そういうとツンはしぃを引っ張って駅構内に入っていく。
('A`)「相変わらず一言多いな、おまえ」
(;^ω^)「つい脊髄反射で言ってしまうんだお」
('A`)「知ってるよ。ほら、行くぞ」
そういうと、二人もツンたちを追って駅に入っていた。
- 32: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 04:43:26.42 ID:3Ia+C9II0
- それから電車に揺られること30分。
【美府海岸駅】で降りた四人は5分程歩き『VIPマリンパーク』に到着した。
('A`)「結構混んでるな」
入場ゲートをくぐり園内に入った四人を出迎えたのは、人だかりだった。
(*゚ー゚)「GW初日だしね。仕方ないよ」
ξ゚听)ξ「【海王・リヴァイアサン】は諦めたほうがいいかもね」
('A`)「ちぇー、あれ乗りたかったんだけどな」
ツンの提案にドクオは不満を漏らす。
( ^ω^)「『VIPパス』って言うのを使えば乗れそうだお」
ドクオの言葉に答えたのはパンフレットを眺めていたブーンだった。
('A`)「なにそれ? 」
( ^ω^)「前もって予約しておけば、指定された時間に戻ってきて優先的に乗れるシステムみたいだお」
ξ゚听)ξ「その間、他のに乗れるのね」
(*゚ー゚)「じゃあ、それ予約してこようよ」
こうして四人のアトラクションめぐりは始まった。
- 35: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 04:45:40.92 ID:3Ia+C9II0
- ………
……
…
(;´ω`)「おえー、気持ち悪りぃお」
【SEA−1・GP】から出てきたブーンは青い顔で唸りながらベンチに腰を下ろす。
(*゚ー゚)「ブーン、大丈夫? 」
(;´ω`)「お昼に食べた、シーフードピッツァが出てきそうだお」
('A`)「馬鹿みたいに、二つも食うからだよ」
ξ゚听)ξ「それに加えて、あれだけ蛇行運転すれば、気持ち悪くもなるわよ」
ツンの言うように【SEA−1・GP】に乗ったブーンは「すごいお! 」と連呼し、
キョロキョロと回りを見ながら、猛スピードで蛇行運転を繰り返していた。
結果、昼食を食べ過ぎたこともあり、乗り物酔いするのは火を見るより明らかだった。
('A`)「そろそろ、【海王・リヴァイアサン】の予約の時間だけど大丈夫か? 」
(;´ω`)「ちょっと無理だお。幸い【海王・リヴァイアサン】の乗り場はすぐそこだし、
僕はここで待ってるから三人で行ってきたらいいお」
- 37: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 04:47:36.80 ID:3Ia+C9II0
- ('A`)「別に無理に乗ることもねーし、パスしてもいいんだぜ? 」
(;´ω`)「いいから行って来るお。ただの乗り物酔いだし、少し休めば治るお」
ドクオもブーンもお互いに譲り合って話が進まない。そこに、助け舟を出すように、しぃが提案する。
(*゚ー゚)「なら、私がブーンと残るから、ドックンとツンちゃんは行ってくれば? 」
ξ゚听)ξ「……」
('A`)「え? いいよ。別に……そこまでして乗りたいわけでも無いし」
(*゚ー゚)「いいから、いいから。ドックン、乗りたかったんでしょ?
私、ああいう絶叫系って、実はちょっと苦手なんだ」
ぶっきらぼうに答えるドクオにしぃは、はにかんだ笑顔で答える。
('A`)「でも……」
ξ゚听)ξ「それなら、ドクオ行きましょ? 」
('A`;)「おい、ツン! 」
ξ゚ー゚)ξ「しぃ、ありがと。ちょっと行って来るから、ブーンをお願いね」
ツンはそう言い残し、ドクオの腕を引っ張って乗り場に向かった。
- 39: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 04:49:49.15 ID:3Ia+C9II0
- ツンとドクオは階段を登り、マンションの5階ほどの高さに作られた乗り場の上から、地上のブーンとしぃを眺める。
何を話しているのかは聞こえるはずも無かったが、
しぃが買ってきたであろうジュースをブーンが飲んでいるのは分かった。
('A`)「……よかったのか? 」
二人をじっと眺めるツンにドクオが話しかける。
ξ゚听)ξ「……なにが? 」
ドクオのほうを見ることなくツンは答える。
('A`)「あいつら二人を残して、これに乗って良かったのかって事」
ξ゚ー゚)ξ「いーのいーの、私はこれに乗りたかったし。
体調の悪いブーンと、こういうの苦手なしぃを無理やり乗せる訳にいかないでしょ? 」
こっちに気付いたしぃが手を振ってるのを見て、手を振り返しながらツンは笑顔で答える。
('A`)「……そうかい」
ツンがそう答えるのでドクオはそれ以上何も言わず、しぃに一度だけ手を振った。
ξ゚听)ξ「……」
そんな事をしているうちに、列は進みツンとドクオは龍を模して造られたコースターに乗り込んだ。
…………
……
- 41: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 04:52:07.51 ID:3Ia+C9II0
- コースを一周したコースターは、乗り場まで戻ってくると徐々にスピードを落とし、定位置で停止する。
(’e’)「では、足元にお気をつけて、お降りください」
係員の言葉と共に、ガチャンと音がしてセーフティバーのロックが解除される。
('A`)「けっこう、迫力あったな? 」
ロックの外れたセーフティバーを押し上げるとドクオは隣に座っているツンに話しかける。
ξ; -;)ξ「……」
ツンはドクオの言葉に答えず黙って涙を流していた。
('A`;)「おい、ツン! どうした?! 」
慌てたドクオの声に、ツンはハッとして慌てて目を擦る。
ξつ凵シ)ξ「な、なんでもない。さっき跳ねた海水が目に入っただけ」
そういうとツンはセーフティバーを押し上げ立ち上がると、コースターを降りる。
ξ゚ー゚)ξ「しぃ達が待ってるし、早く行こ」
ツンは赤い目をしながら、笑顔でそう答えた。
('A`)「……ああ」
結局、ドクオはその笑顔に何も言えず、適当に相槌を打ってコースターを降りた。
- 43: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 04:55:29.12 ID:3Ia+C9II0
- ( ^ω^)「ふぅ、落ち着いたお」
しぃの買ってきたオレンジジュースを飲み干す頃、ブーンはようやく回復した。
(*゚ー゚)「よかったね。でも、ブーンが乗り物に弱いなんてちょっと意外だったなー」
( ^ω^)「別に弱い訳じゃないお。ちょっと食べ過ぎたのと、あとは多分寝不足のせいだお」
(*゚ー゚)「え? 寝不足って、昨日あの後、何してたの? 」
( ^ω^)「しぃちゃんが落ちた後、ちょっとお得な情報を手に入れたから、踊り子のレベル上げてたんだお」
(*゚ー゚)「なんで急に踊り子のレベルなんて上げてたの? 」
「レベル上げならいつでも付き合うのに」という意味も込めてしぃは聞き返す。
( ^ω^)「今やってるミッションでベヒーモス倒すのに必要なんだお」
(*゚ー゚)「えー? 踊り子で倒せるの? 」
( ^ω^)「踊り子の特殊スキル[Moon Dance]を使うと、
物理攻撃が半減する代わりに、魔法攻撃の威力が倍増するんだお」
(*゚ー゚)「でも、ブーンは戦士系の職業しか育ってないし、
私は魔道士系だけどレベル低いから、ベヒーモス倒せる魔法なんて無いよ?」
- 45: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 04:57:44.42 ID:3Ia+C9II0
- ( ^ω^)「それが一つ方法があるんだお。
性別が異性のプレイヤーとパーティ組んで累積50時間以上プレイしてると、
リアル時間換算で1時間に一回、合体魔法の[純情ラブ☆マジック]が使えるんだお! 」
(*゚ー゚)「それで倒せるの? 」
( ^ω^)「[Moon Dance]使ってからやれば、ほぼ一撃で倒せるらしいお」
(*゚ー゚)「へー、それはすごいね! 」
二人がゲームの話で盛り上がってるところにドクオとツンが戻ってきた。
('A`)「えー、大変盛り上がってるところお邪魔しますが、ただいま戻りました」
(*゚ー゚)「あ、ドックンとツンちゃん、おかえり。どうだった? 」
('A`)「あれは、すげーや。もう一回乗っても楽しそうだ」
ξ゚ー゚)ξ「面白かったわよ。ブーン、体調はどお? 平気? 」
( ^ω^)「もう、すっかり平気だお! 」
ξ゚听)ξ「あっそ。少しくらい元気ないほうが静かでいいのに」
( ^ω^)「それはひどい言い草だお。……お? ツン、目が赤いお。どうしたんだお? 」
ツンの赤い目に気づいたブーンがツンに問いかける。
- 47: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 04:59:48.97 ID:3Ia+C9II0
- ('∀`)「ああ。あまりの怖さに泣いちゃったんだよなー、ツンちゃん? 」
(*゚ー゚)「えー! ツンちゃん大丈夫? 」
ξ#゚听)ξ「ドクオ怪情報流すな! しぃも信じないの! 」
ツンはドクオを思いっきり睨む。
ξつ听)ξ「海水が目に入っただけよ。大した事じゃないわ」
そういいながらツンは目を擦る。
(*゚ー゚)「だいじょうぶ? 顔洗いに行く? 」
ξ゚听)ξ「へーきへーき! それより次の乗り物行こ」
(*゚ー゚)「ホント? なら、大観覧車行こうよ! そろそろ夕日が綺麗に見える時間だよ」
しぃの言うように空は赤く染まり始めていた。
ξ゚ー゚)ξ「ホントだ。最後は観覧車で景色を見るのもいいね! 」
( ^ω^)「これはまた、随分と似合わない台詞もあったもんだお! 」
笑顔で夕日を眺めるツンに、ブーンがゲラゲラ笑いながらまた余計な一言を口にする。
ξ#゚听)ξ「何ですってーーーー!!! 」
- 49: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 05:02:19.98 ID:3Ia+C9II0
- ( ゚ω(#)「ぷるお!! 」
ツンの右手が閃光の如く横に走ると、ブーンの左頬には季節外れの紅葉が彩られた。
ξ#゚听)ξ「フン! しぃ、行こ! 」
(;゚ー゚)「えっ? ちょっと、ツンちゃん、待って」
ツンはしぃの手を掴んで引きずる様に大観覧車に向かった。
('A`)「……おまえさー。犬だってそれだけ叩かれたら理解するぞ? 」
(;^ω(#)「頭ではわかってるんだお。でも、つい口が出てしまうのは止まらないんだお」
('A`)「……はぁ、お前も難儀な奴だな。ほら、いくぞ」
ドクオがため息をつくのと同時に二人もツン達の後を追って大観覧車に向かう。
('A`)「……ホント、難儀な奴だな」
ドクオは、誰かに向けたようにも、誰にも向けていないようにもとれる言葉を、ポツリと一人呟いた。
- 51: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 05:04:30.69 ID:3Ia+C9II0
- (*゚ー゚)「おっきいねー! 」
ξ゚听)ξ「ホントね。この上から見る夕日と海は楽しみだねー」
(*゚ー゚)「だよねー」
ツンとしぃは大観覧車を見上げ感嘆の声を上げると、そこにようやく追いついたブーンとドクオが口を挟む。
('A`)「いま、看板見てきたけど4人乗りみたいだな」
ξ゚听)ξ「あら、丁度いいわね」
(#^ω^)「よくないお! 」
ブーンが急に大きな声を上げる。
(*゚ー゚)「え、どうして? 」
(#^ω^)「観覧車といえば女の子と二人っきりで乗るもんだお!! 」
(*゚ー゚)「……はい? 」
ξ゚听)ξ「……頭になんか虫でも湧いてる? 」
('A`)「……これがゲーム脳ってやつか」
ブーンの漢気溢れる主張に、三人は温度差を感じずにはいられなかった。
- 53: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 05:05:50.76 ID:3Ia+C9II0
- ( ^ω^)「というわけで男女二人ペアで乗ることにするお」
そんな三人を置いてけぼりにしながらブーンは一人で話を進めると、バッグから爪楊枝を4本取り出す。
どうやら昼食を取ったレストランから持ってきたらしい。
ξ゚听)ξ「あんた、お昼からそんな事考えてたの? 」
('A`)「馬鹿の極み、処置なしってやつだな。手に負えん」
(;゚ー゚)「あはははは」
あきれるツンに、達観して匙を投げるドクオに、最早笑うしかないしぃ。
( ^ω^)「さぁ、みんな一本引くお! 二本は先に印がついてるお! 」
三者三様のリアクションをスルーして、ブーンは爪楊枝を右手に握って突きつける。
('A`)「しかたねーな。ホントめんどくせぇ奴だな、てめー様はよ! 」
ξ゚听)ξ「言い出したら聞かないんだから……。ホントにアンタはガキよね」
(*゚ー゚)「まぁ、楽しそうでいいじゃない」
そういいながら三人はクジを引いた。
……その結果
- 55: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 05:07:51.36 ID:3Ia+C9II0
- (;゚ω゚)「……この発想は無かったお」
(*゚ー゚)「あはははは」
ξ゚听)ξ「これは、いいオチが付いたわね」
('A`)「……男女のペアに分けるなら、4人同時に引いたらダメだろ。常識的に考えて」
ツンとしぃペアとドクオとブーンペアに分かれた。
(;^ω^)「や、やり直しを要求するお!! 」
ξ゚听)ξ「はぁ? アンタが決めたルールでしょ。それくらい守りなさいよ」
(;^ω^)「で、でも、これじゃ意味が無いお! 男女二人ペアで乗るという目的が果たせないお! 」
('A`)「それは4人同時に引かせたお前が悪い」
(;^ω^)「この結果は読めなかったんだお」
('A`)「それで今度は空気が読めないのか」
(;TωT)「やだお! これじゃ面白く無いお! 泣きの一回でやり直しさせてくれお」
- 58: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 05:10:22.81 ID:3Ia+C9II0
- 駄々をこねるブーンにツンとドクオがあきれていると、しぃが助け舟を出す。
(*゚ー゚)「まぁまぁ、ドックンもツンちゃんも、やり直してあげようよ」
ξ゚听)ξ「えー? もう一回やるの? 」
('A`)「コイツを甘やかすとろくな事にならねーぞ」
(*゚ー゚)「まぁ、それは分かるけどね。でも、こういう時はみんなで楽しめる方がいいじゃない? 」
ξ゚听)ξ「しぃってホントお人好しねー」
('A`)「まぁ、しぃがいいって言うなら俺は構わんが……」
(*^ω^)「ならもう一回やるお! 」
今度はツンとしぃ、ドクオとブーンに分かれてクジを引く。
その結果、ブーンとしぃ、ドクオとツンのペアに決まった。
('A`)「……満足か? 」
(*^ω^)「おっおっお、これぞ観覧車の醍醐味ってやつだお」
('A`)「そいつぁ、よかったな」
ホクホク顔のブーンに対してドクオが素っ気無く答えたところで、ブーンたちの順番になった。
- 59: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 05:12:35.07 ID:3Ia+C9II0
- ブーンとしぃの乗ったゴンドラは、ゆっくりと上がっていく。
(*゚ー゚)「すごーい! 夕焼けがすっごく綺麗! 」
海とは反対側の山のほうに沈む夕日を眺めながら、しぃは声を上げる。
(*゚ー゚)「ねぇ、ブーン。あれ、私達の学校だよ! 遠くまで見えるんだね」
しぃの指差す方にはブーンたちの学校があり、ブーンたちの住む街が見えた。
(*^ω^)(しぃちゃんはやっぱり可愛いお)
楽しそうに笑うしぃの横顔を眺めながら、ブーンは柄にも無く赤くなっていた。
高校2年生にしては小さな身長。
肩に届くくらいに切りそろえられた髪がすこし赤っぽいのは、生まれつき色素が薄いのだろう。
二重まぶたの奥にある濡れた瞳も茶色がかっている。
白く透き通るような肌を、少し赤みの差した健康そうな頬が彩りを添える。
それらの要素に加えて、小さな鼻とさくらんぼのように瑞々しい唇。
若干幼さを残した顔付き。
そして、華奢なようで女の子独特の丸みを帯びた体形。
美少女という言葉がピッタリな少女だった。
- 61: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 05:14:49.56 ID:3Ia+C9II0
- (;^ω^)(あんまりジロジロ見てたら、変態さんみたいに思われちゃうお)
そんな事を考えたブーンは海の方角へ向きを変える。
ブーンの眼前に広がる光景は、夕日を受けてキラキラと輝く海。
どこまでも続く水平線が広がり、その海上をウミネコの群れが飛んでいた。
( ^ω^)「すごい綺麗だお! 」
先程の邪な思考は吹き飛び、ただ美しい景色に見とれた。
(*゚ー゚)「え? どれどれ? 」
ブーンの感嘆の声にしぃが振り返る。
(*゚ー゚)「すっごく綺麗……」
海に見とれたしぃが、海側の窓際に移動しようと立ち上がるとゴンドラが揺れた。
(;゚ー゚)「きゃ! 」
しぃは小さな悲鳴を上げて、よろめく。
(;^ω^)「おっ! 」
それに反応してブーンは立ち上がり、しぃの腕を掴んで引き寄せる。
すると、しぃの体はポスッとブーンの胸の中に納まった。
(;゚ー゚)「えっ? 」
(;^ω^)「おっ? 」
- 63: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 05:16:31.03 ID:3Ia+C9II0
- しぃが恐る恐る顔を上げると、しぃを見下ろしているブーンと目が合った。
その瞬間二人は、時が止まったような錯覚を覚える。
(;////)「ごごごご、ゴメン! 」
見つめあった状態が1分程続いた後、しぃは慌ててブーンから離れ座席に戻る。
(;^ω^)「こっちこそ、ゴメンだお! 」
(;////)「そそそそ、そんな! 倒れたのは私だし、ブーンは支えてくれたんだし! 」
手をブンブン振りながら、しぃはまくし立てる。
(;^ω^)「そんなの気にすること無いお。むしろ、嬉しいくらいだお」
(;゚ー゚)「えっ? 」
(*^ω^)「だって、しぃちゃんみたいに可愛い女の子に抱きつかれたんだお。
謝られるどころか、こっちがお礼を言いたいくらいだお! 」
ブーンの言葉にしぃはフリーズし、見る見るうちに顔が真っ赤になる。
(;////)「そそそそそ、そんな! かかかかか、可愛いなんて! からかっちゃ、やだよぉ! 」
(;^ω^)「か、からかってなんか無いお」
(;////)「あああ、ありがとう……」
しぃは、その言葉を合図に顔を紅潮させてうつむき、ゴンドラが下に着くまで顔を上げることはなかった。
そして、ブーンも何かを話そうとして、結局何も話せないまま、ゴンドラが地上に着くのを待った。
- 64: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 05:18:26.81 ID:3Ia+C9II0
- ξ゚听)ξ「……」
('A`)「……」
ブーンとしぃに先を譲り、次のゴンドラに乗ったツンとドクオは無言で外を見ていた。
それでも気まずい空気にならないのは、10年以上の付き合いがあるからこそ為せる業だろう。
お互いに西の方角を黙って眺めていると、ゴンドラの位置が90度を越えたあたりから、
他のアトラクションや建物の高さを越えたため視界が開け、夕焼け空や街の様子が見渡せるようになった。
その景色に、それまで無言だったツンが口を開く。
ξ゚听)ξ「……綺麗」
('A`)「……」
ドクオはツンの声に反応して、無言のままツンのほうに視線を移す。
- 67: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 05:20:29.78 ID:3Ia+C9II0
- 昔からトレードマークになっている、綺麗に巻かれたフワフワのツインテール。
勝気な性格をそのまま現したような眼は少しつり目で、
長くきれいなまつげが縁取っている。
すっと通った鼻筋に、小さくて艶やかな唇は年齢よりも大人びて見せる。
それらがまるで計算されたのように並び、一つの顔を形成している。
そしてスレンダーで均衡の取れた肢体。
本人は胸が小さいことを気にしているが細く華奢な体は、
ガラス細工のように儚く透明感のある美しさを放っていることに
本人はまったく気付いていない。
そんな芸術作品のような少女が夕日に照らされている姿は、一枚の絵画のようだった。
('A`)「……ああ、綺麗だな」
ドクオはツンのほうを向いたまま、呟くように相槌を打つ。
ξ゚听)ξ「……? アンタ、景色見て無いじゃない」
ドクオの視線に気付きツンもドクオと向き合う。
('A`)「……」
ドクオは視線を外すことなく、無言のままじっとツンを見つめ返す。
- 68: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 05:22:27.98 ID:3Ia+C9II0
- ξ゚听)ξ「なによ? なに、見つめてんのよ? 」
('A`)「……」
ξ*゚ー^)ξ「もしかして、綺麗って私の事? 」
ツンはいたずらっぽい笑顔で微笑むと、ウィンクをする。
('A`)「……」
ξ゚听)ξ「……? 」
('A`)「…………そうだよ」
ドクオは少し間を置き、ツンを見つめたまま真顔で答える。
ξ;゚听)ξ「えっ? 」
('A`)「……」
ξ;゚听)ξ「……」
そのまま、二人の表情は固まる。
まるで辺りの空気まで凍りついたように。
- 70: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 05:23:41.18 ID:3Ia+C9II0
時間まで止まってしまったのではないかと思い始めた頃、ドクオが口を開いた。
('A`)「……冗談だ、バカ」
ξ;゚听)ξ「えっ? 」
('A`)「……」
ξ )ξ「……」
再び、沈黙。
だが、今度の沈黙は短かった。
- 72: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 05:25:33.31 ID:3Ia+C9II0
- ξ# )ξ「……貴様、殺す! 」
('A`;)「ちょ、落ち着け! 俺が悪かった! 」
ドクオは掴みかかって来たツンの両腕を掴む。
それでもツンの白魚のような手がドクオの首筋にジワジワと伸びる。
('A`;)「くぁwせdrftgyふじこlp;@:!! く、首を絞めるな!! 」
ξ# )ξ「ウルサイ! 黙れ! 無駄な抵抗はやめなさい!
抵抗しなければ楽に殺してあげるわ!! 」
('A`;)「……抵抗したら? 」
抵抗する手を緩めずにドクオが聞き返す。
ξ# )ξ「抵抗するなら、地獄の苦しみの中で殺してやる!!! 」
('A`;)「どっちも、いやぁーーー!!! 」
ドクオが絶叫したところでツンの手から力が抜ける。
('A`;)「 ? 」
ξ )ξ「……」
- 74: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 05:27:15.26 ID:3Ia+C9II0
- ドクオが横にそむけていた顔を正面に戻しツンの顔を見上げると、ツンは海の方角を見ていた。
ξ゚听)ξ「ねぇ、ドクオ見て」
('A`)「……」
二人の眼前には、夕日を受けてキラキラと輝く海がどこまでも広がり、
その海上をウミネコの群れが飛び、どこか非現実的な光景を演出していた。
ξ^ー^)ξ「……凄く、綺麗だね」
いつの間にかドクオの首から手を離したツンは、笑顔で食い入るように海を眺めていた。
('A`)「……ああ」
ドクオは曖昧な返事を返すのが精一杯だった。
それほど、ドクオは見入っていた。
ツンが笑顔で「……凄く、綺麗だね」と言った、凄く綺麗な景色ではなく……
「……凄く、綺麗だね」と笑顔で言ったツンの、本当に綺麗な横顔に。
- 75: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 05:28:47.52 ID:3Ia+C9II0
- ( ∵) 「足元に、お気をつけ下さい」
係員の言葉に従い、ツンとドクオはゴンドラをゆっくりと降りる。
ξ;゚听)ξ「……」
('A`;)「……」
乗り場のスロープを降りてきた二人はとんでもない光景を目にした。
\( ^ω^)ノシ「ツーン、ドクオー! こっちだおー! 」
先に降りていたブーンがまわりの目も気にせず、両手を大きく振り大声で二人を呼んでいる。
(;////)「ちょっと、ブーン。恥ずかしいよ……」
その後ろには、顔を真っ赤にして俯くしぃが立ってる。
('A`;)「……他人の振りする? 」
ドクオはブーンの方を見ないでツンに問う。
ξ;゚听)ξ「そうしたいのは、山々だけど……」
ツンも出来るだけブーンの方を見ないでしぃを盗み見る。
(;////)「……あうぅ」
何を言っても、大声で呼ぶことを止めないブーンに、
しぃはただ真っ赤になって俯きながら、少し距離を取ることしか出来ないようだった。
- 77: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 05:30:26.95 ID:3Ia+C9II0
- ξ;゚听)ξ「しぃを置いていくわけには……」
('A`;)「……しぃもホントお人よしだよなぁ」
ξ#゚听)ξ「……何より、私がムカつくわ! 」
('A`#)「……そいつに関しては俺も同意見だ! 」
ξ#゚听)ξ「私達の怒りを鎮め……」
('A`#)「被害を最小限に抑えるには……」
ξ#゚听)ξ『アレしかない!! 』('A`#)
ツンとドクオはブーンとの距離を早足で一気に詰めると、ブーンの左右に分かれる。
ξ#゚听)ξ『破ッ!! 』('A`#)
ブーンの左に回ったツンは、下から斜めに突き上げるような右のショートフックを左わき腹へ
ブーンの右に回ったドクオは、上から斜めに振り下ろすような左の中段回し蹴りを右わき腹へ
- 79: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 05:31:42.63 ID:3Ia+C9II0
同 時 に 叩 き 込 ん だ 。
( ゚ω゚)「げふっ!! 」
膝から崩れ落ちるブーンをツンとドクオが肩で支える。
('A`#)「よし! おとなしくなったな」
ξ#゚听)ξ「いくわよ! しぃ! 」
(;゚ー゚)「う、うん! 」
既に丸一日三人のノリを見てきたしぃも、即座に状況を理解する。
そのまま三人と一体の屍は、速やかにその場から撤収した。
- 81: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 05:33:19.96 ID:3Ia+C9II0
- (;^ω^)「あうあう、まだわき腹が痛いお」
エントランスのベンチに腰掛けたブーンは両わき腹をさする。
ξ#゚听)ξ「自業自得よ! 」
('A`#)「いい加減にTPOってもんをわきまえろよ。ガキじゃねーんだから! 」
(;^ω^)「そんなステレオで説教しないでほしいお」
(;゚ー゚)「ブーンが悪いんだからしょうがないよ」
今回ばかりはしぃも庇わない。
(;^ω^)「しぃちゃんまでそんなこと言うのかお? 」
('A`#)「当たり前だ! 」
ξ#゚听)ξ「むしろ、しぃが一番は恥かいてるんだから、嫌われないだけ感謝しなさい! 」
(;´ω`)「申し訳ないお」
そんなやり取りをしていると、園内に設置されているスピーカーから放送が聞こえてくる。
- 83: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 05:34:37.04 ID:3Ia+C9II0
- 『本日はVIPマリンパークへご来場、誠にありがとうございます。
当園はあと30分少々のお時間を持ちまして閉園いたします。
本日のご来園、誠にありがとうございました。』
(*゚ー゚)「あ、もう閉園時間なんだね」
ξ゚听)ξ「もうそんな時間なのね。なんか、最後に無駄な時間をすごしちゃったね」
(;^ω^)「……ツンさん、なぜそこで僕を見るんだお? 」
ξ#゚ -゚)ξ「何か言ったかしら? 」
(;´ω`)「なんでもありませんお」
('A`)「さて、ブーンをこれ以上いたぶっても仕方ねーし、帰ろうか? 」
ドクオは大きく伸びをしながら言うと三人も同調した。
ξ゚听)ξ「そうね、お腹もすいたしね」
(*゚ー゚)「じゃあ、帰りに何か食べていかない? 」
('A`)「お? いいね。帰りの電車混むのも嫌だし美府駅に戻ってからにしようぜ」
- 84: ◆DyhKUHe1jM :2007/10/31(水) 05:35:47.30 ID:3Ia+C9II0
- 話がまとまりかけたところで、ツンが一つ提案をした。
ξ゚听)ξ「もちろん、ブーンの奢りよね? 」
(;^ω^)「何でそうなるんだお?! 」
('A`)「当然だわな」
(;^ω^)「ちょ、ドクオまで何を言い出すんだお! 」
追い詰められたブーンは、最後の望みであるしぃに視線を向ける。
(*゚ー゚)「えっと……。ブーン、ご馳走様! 」
Σ(゚ω゚;)「しぃちゃんまで!! 」
ξ゚听)ξ「3対1ね」
('A`)「決定だな」
(*゚ー゚)「多数決は民主主義の基本だよ? 」
(;´ω`)「……把握しましたお。だから、ファーストフードで勘弁してほしいお」
こうして、四人のGW初日は楽しく過ぎていった。
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