( ^ω^)ブーンの住む世界が大変なことになっているようです

167: ◆x4rswkGbI2 :2006/03/04(土) 23:19:06.15 ID:t5AZgBpS0
二日目  開始

朝の様だ。
雀のさえずりが聞こえて……来ない。
そうか、みんな死んだのか。
死ばかりが交差する、生の無い世界。



168: ◆x4rswkGbI2 :2006/03/04(土) 23:19:18.30 ID:t5AZgBpS0
('A`)「起きろ、行くぞ」
( ^ω^)「……起き輝男。なんつって」
('A`)「洒落なのか、今のは。まあいい、買い出しだ」
( ^ω^)「買い出し?食料はあるお」
(´・ω・`)「武器だよ、武器。魔法だけじゃやっていけないよ」
( ^ω^)「そうかお?」
(´・ω・`)「説明してなかったけど、魔法は使うだけカロリーを消費するんだ」
('A`)「食糧不足に備えてとりあえず用意くらいはしておかねば」
( ^ω^)「売ってるのかお?」
(´・ω・`)「『融解』の能力を持った人間が居れば作れる」
( ^ω^)「人間狩りをするのかお!?」
('A`)「買い出しだ。能力のな」
( ^ω^)「お金で能力が買えるのかお?」
(´・ω・`)「いや、普通に人間狩りだよ」
( ^ω^)「じゃあさっき肯定しろお」
(´・ω・`)「済まない」
('A`)「じゃあいこうか」
( ^ω^)「心当たりはあるのかお?」
('A`)「……先生が融解を持っている」
(´・ω・`)「でも『死』も持っているみたいなんだ。やっかいだなぁ」
( ^ω^)「ショボンも『死』をもって居るんじゃないのかお?」
(´・ω・`)「うん。でも確実に当てなきゃこっちが死んじゃうんだ」
('A`)「だが先生は"絶対に"はずさないんだ。絶対にな」
( ^ω^)「なんでだお……?」
(´・ω・`)「奴は3つ目の魔法を持ってる。まだ内容はつかめていないが……多分そのせいだろうね」
('A`)「とりあえず先生を捜さないと」

2日分の食料をいつも学校に持っていっていた鞄に詰めた。
今では、あの石を貰った日がひどく遠い過去に感じる。



169: ◆x4rswkGbI2 :2006/03/04(土) 23:19:39.27 ID:t5AZgBpS0
('A`)「こっちな気がする」
(´・ω・`)「そんなんでいいのか」
( ^ω^)「いいんだお。ドクオを信じるお」

3丁目、4丁目、5丁目。
そうかかれていた信号機はもう動かない。
丁度6丁目にさしかかったときに、
ふと上を見上げた。

('A`)「居たな」

高層ビルの低い階に、見慣れた先生の顔があった。
ショボンと同じ、いや、それ以上に恐ろしかった。

( ^ω^)「い、行くのかお?」
(´・ω・`)「ここからじゃ魔法はガラスで跳ね返るな」
('A`)「『音』はどうだ?」
(´・ω・`)「先生はもう我々に気づいていると思うよ」
(◎―◎)「その通りだ、ショボン君」


先生が、後ろに居た。



179: ◆x4rswkGbI2 :2006/03/04(土) 23:57:19.62 ID:t5AZgBpS0
('A`)「どういうことだ……?」
(◎―◎)「私が説明してやる。最後の授業かもな、良く聞いておけ」
( ^ω^)「ゴクリ」
(◎―◎)「私の能力はもう知っているだろう。『死』と『融解』だ」
(´・ω・`)「3つ目をいってよ」
(◎―◎)「おおっと、もう気づかれていたのか。そうだな、三つ目は『投射』だ」
('A`)「投射?聞いた事が無いな」
(◎―◎)「ふふっ……この力はすごいぞ、光をそこに残しておく魔法なんだ」
( ^ω^)「光?じゃああのビルに居る先生は……」
(◎―◎)「そうだ、ただの光源の集まり。君たちはあそこから発っせられた光を見て私だと思いこむ。無論、この体もだ」
( ^ω^)「!!」

ドクオが先生に対して奇襲を書けた。
ドクオの手の向けられた先に存在していたはずの者は、
斬ることも動かすことも、触れることもできないただの"残像"だった。



180: ◆x4rswkGbI2 :2006/03/04(土) 23:57:42.28 ID:t5AZgBpS0
(◎―◎)「ふふ……ここだよ」
( ^ω^)「ブリンク野郎かおwwその力ホシスww」
(´・ω・`)「我々がほしいのは『融解』の方だ。投射は便利だが、必要は無い」
('A`)「……そうか、残像は死なない、そういうことか」
(´・ω・`)「残像に魔法を撃たせることができるとでも?」
( ^ω^)「でももうなんでもありだお」
('A`)「残像が魔法を放つ可能性もある。油断するなよ」
(◎―◎)「そう、その通りだ、私はお前らに負けることはない。」
(´・ω・`)「会話が少しずれてるな。奴はここら辺には居ないようだ」
(◎―◎)「死ねぇ!」

先生の残像が左手の親指を曲げるのとほぼ同時に、
ドクオが左手の小指を曲げた。
残像がはじけ飛んだ。まるで一斉に飛び立つ蛍のように美しく散った。



181: ◆x4rswkGbI2 :2006/03/04(土) 23:58:23.64 ID:t5AZgBpS0
(´・ω・`)「なんだそれ」
( ^ω^)「そんなことができたのかお?」
('A`)「ショボン。学校で石を貰ったときに言った防御魔法だ」
(´・ω・`)「おばさんのやつか」
( ^ω^)「あの時別の石を選んでおけば…」
('A`)「後悔はしないことだな」
(´・ω・`)「でも『選別』よりはマシだよ」
( ^ω^)「選別?」
(´・ω・`)「うん。たくさんのもののなかから自分の指定したものを確実に発見できる魔法だよ」
( ^ω^)「役に立たなさそうだお」
(´・ω・`)「だから元気出してよ。君しか僕たちを助ける魔法を持つ者はいないんだから」
( ^ω^)「うん……ありがとうだお」

ショボンの優しさを、初めて知った。
意外と言い奴なんだと思った。
この戦いが始まって以来の、感動だった。



183: ◆x4rswkGbI2 :2006/03/04(土) 23:59:30.10 ID:t5AZgBpS0
('A`)「そんなこと言ってられないぞ。先生が狙ってるかもしれないからな」
(´・ω・`)「君には反射があるよ」
('A`)「背後に回られたら終わりだし、他の人間に掛けられた魔法は跳ね返せない」
( ^ω^)「自己中な魔法だおww」
('A`)「うるせぇww」
(´・ω・`)「ww」

久々の笑顔だ。
前まではこれが「日常」だったのに。

('A`)「さて、進むか」
(´・ω・`)「そうだね」
( ^ω^)「……もう武器を作るのはやめにしないかお?」
('A`)「今更何を」
(´・ω・`)「いや、ブーンの言う通りかもね。先生は間違いなく強い」
( ^ω^)「誰か、『選別』を持った人間を仲間にするんだお」
(´・ω・`)「なぜ?」
('A`)「頭良いな、お前。『選別』で本物の先生を見抜くんだろ?」
( ^ω^)「思いついたのはショボンのおかげだお」
(´・ω・`)「いやぁ、はっはっは」
('A`)「確か……兄者がトルマリンを持っていっていたな」

兄者とは、クラスメイトのフーン兄弟の兄のあだ名で、
最近では本名すら忘れられているくらいの利用率だった。



184: ◆x4rswkGbI2 :2006/03/04(土) 23:59:59.35 ID:t5AZgBpS0

(´・ω・`)「トルマリン……『選別』の石だね」
( ^ω^)「兄者は武道の達人だお。絶対他にも能力を持ってる希ガス」
('A`)「弟者は俺が喰った」
(´・ω・`)「ちょwwwおまwww」
( ^ω^)「それは知られているのかお?」
('A`)「いや、知らないはずだ。精神操作は奴から手に入れた」
( ^ω^)「そうだったのかお……じゃあまず兄者探しだお」

( ゚∀゚)「やあ」

( ^ω^)「!!」

いきなり声を掛けられて驚いた。
ブーン達の背後に姿を現したのは、紛れもないジョルジュだった。
ジョルジュはクラスの中でも浮いた存在で、
いつも特定の単語しか話さず、気味悪がられていた。



185: ◆x4rswkGbI2 :2006/03/05(日) 00:00:17.29 ID:0DncrGtd0
('A`)「気づかなかった……なにしてる」
( ゚∀゚)「別に!ただ君たちの後ろをついて行っただけだ!ははははは!」

明らかに様子がおかしい。
確実に血が流れる。
そんな予感がした。

( ^ω^)「死ねだお」

ブーンは手をかざし、凍らせる指を曲げた。
だが、凍らない。まったく凍らない。

( ゚∀゚)「なにしてるんだお?なにしてるんだお?だおだおだおだお」
( ^ω^)「やめるお!真似するなお!」
( ゚∀゚)「ヒャヒャヒャ!俺の力を見せてやるッヒャッヒャッヒャ!」

ジョルジュの指がブーンめがけて曲げられた。
人生\(^0^)/オワタ……そう思ったが、何もおこらない。

( ゚∀゚)「後ろ!後ろ!」
( ^ω^)「後ろ……?」

後ろを振り返ると、そこにはジョルジュがいた。
ジョルジュが二人。まさか、奴も―



186: ◆x4rswkGbI2 :2006/03/05(日) 00:01:15.28 ID:0DncrGtd0
(´・ω・`)「お前も『投射』が使えるんだ」
( ゚∀゚)「アヒャ?俺だけだよ!俺だけ!先生は俺が作った!作った!つ喰った!なんてなアヒャヒャヒャァァ!」
('A`)「幻覚だったのか……狂ってるな」
( ^ω^)「さっさとやっちまうお」
( ゚∀゚)「そうはいくかな!イクカナイクカナ!二つ目うpいってみようか!」

ジョルジュが先ほど逆の手を伸ばした。
ドクオも手を伸ばす。曲げる準備をしているのは『反射』の指のようだ。

('A`)「さあ、かかってこいよ」
( ゚∀゚)「そっれ!」

二人の指が、同時に曲がる。

( ゚∀゚)「グヒャ!」

ジョルジュの体が消えた。
はじけたとかそんなんじゃなく、映像処理されたかの様に消滅した。



187: ◆x4rswkGbI2 :2006/03/05(日) 00:01:39.99 ID:0DncrGtd0
('A`)「チッ……『消滅』か」
( ^ω^)「消えたお……」
(´・ω・`)「これじゃあ脳はいただけないなぁ」
('A`)「便利な能力なのに……くそっ」

ドクオはどうやら『消滅』を望んでいたようだった。

( ^ω^)「……アレは……穴?」

ブーンハウスに帰る途中の道に、大きな穴があいていた。

('A`)「道路に落書きがある……"みんなで集まって殺りあおう!さあ中へ!"だそうだ」
( ^ω^)「英語が読めるのかおww」
('A`)「まあな」
(´・ω・`)「英語ってことは世界から集めているのかな」
('A`)「……行きたくはないが、体がうずくな。『誘惑』だ」
( ^ω^)「魔法のオンパレードだお……行きたくて仕方ないお」
(´・ω・`)「行かないと精神的に持たなくなるね。いくしかないや」
('A`)「俺に捕まれ、飛び込むぞ」

3人で、ドクオの風に乗ってゆっくりと下降していった。
暗い暗い、『59億人の墓場』へと――



188: ◆x4rswkGbI2 :2006/03/05(日) 00:01:59.13 ID:0DncrGtd0
('A`)「着いたぞ」

非常にじめじめとした洞窟だった。
本当にこんなところに人が居るのだろうか?

( ^ω^)「なんかかいてあるお。日本語でおkの様だお」

"この入り口を通る者、能力を捨てよ"
"大好きな手の指名指。そこだけに残る妖精さん"
"中で食べたお食事は、中身を出さなきゃ入らない"

( ^ω^)「どういう意味だお?」
('A`)「どうやら、能力を一つだけ残して他は捨てろ。そういう事らしいな」
(´・ω・`)「……主催者側がこの争いを面白くしようとしているみたいだね」
( ^ω^)「主催者?」
('A`)「この洞窟に魔法使いみんな連れ込んで戦いまくろうって考え出した奴さ」
(´・ω・`)「主催者の能力は『転移』と『空間破裂』に『誘惑』
         ……それで穴を世界中に作ったんだろうね。
         ここに来たときに1つに搾ってるだろうけど」
( ^ω^)「戦者がたくさん居るのかお?」
('A`)「たぶんな。中では」
( ^ω^)「最後の下品な部分はどういう意味だお?中身?」
(´・ω・`)「たぶん、洞窟の中で得た能力は必ず利き手の人差し指に上書きされるんだろう」
('A`)「取捨選択のサバイバルだな」

先に繋がる入り口には、
妖しい光が漂っていた。



189: ◆x4rswkGbI2 :2006/03/05(日) 00:02:20.66 ID:0DncrGtd0
('A`)「残したい能力の指を一番先に通すみたいだな」

ドクオは『風』を選んだようだ。

(´・ω・`)「じゃあ、次に行くよ」

ショボンは『音』を選んだようだ。

( ^ω^)「迷うお……」
('A`)「お前の好きに選ぶといい。お前の魔法だ、好きにしろ」
(´・ω・`)「でも慎重にね」

ショボンの言葉で、なぜか決心が付いた。

( ^ω^)「じゃあ、いまからそっちにいくお」
(´・ω・`)「心が決まったようだね」

ブーンは指を突き出した。
『氷』の指を。



190: ◆x4rswkGbI2 :2006/03/05(日) 00:02:37.17 ID:0DncrGtd0
( ;ω;)「ああ、もったいないお」
('A`)「まあ、そういうな。ここから先はシンプルな戦いができるってことだ」
(´・ω・`)「その分協力がより強く必要になるだろうけどね」
( ^ω^)「頑張るお、みんな一緒に平和を取り戻すんだお」
('A`)「平和……か。俺達って勇者みたいだな。」
(´・ω・`)「でもやってることはみんなと変わらない。相手はモンスターじゃない。人間なんだ」
( ^ω^)「……」

ブーン達はひたすら洞窟を進んだ。
「生」と「死」を考えながら。

(´・ω・`)「あ、街だ」

洞窟を出た先は、街だった。
街と言っても、人の気はなく、
建物もカビやコケで廃墟と化していた。



191: ◆x4rswkGbI2 :2006/03/05(日) 00:03:01.11 ID:0DncrGtd0
ブーンがショボンの視線の先に目をやった。
そこにいたのは、兄者だった。

( ´_ゝ`)「なんだ、お前らか」
('A`)「兄者、君の協力が必要なんだが」
( ´_ゝ`)「残念だが、協力する気などさらさらない」
(´・ω・`)「流石だな、兄者」
( ´_ゝ`)「……そのセリフは、ドクオ、お前の腹の中に居たヤツだけが発言を許されるセリフだ」
('A`)「気づいていたのか」
( ´_ゝ`)「今気づいたんだ。俺が残した能力は『読心術』」
( ^ω^)「……兄者、バカかおwwwwそれじゃ戦えないお」
( ´_ゝ`)「俺は戦わないさ。こいつが戦う」

兄者の背後からゆっくりと何かが近づいてくる。



192: ◆x4rswkGbI2 :2006/03/05(日) 00:03:20.51 ID:0DncrGtd0
(◎―◎)「やあ、かわいい生徒達」

先生、だった。

( ^ω^)「先生……こんなところに」
('A`)「消え去れ」

ドクオが先生に指を差し向けたが、
ドクオは指を曲げない。

(´・ω・`)「どうした?早く始末した方が身のためだとおもうよ」
('A`)「……指が動かないんだ」
( ^ω^)「先生、質問です」

先生は、残酷な笑いを浮かべた。

(◎―◎)「なんだい?ブーン君」
( ^ω^)「先生の魔法は、なんですか」
(◎―◎)「いい質問だ。先生の魔法はね……『操作』だ」

先生が後ろで組んでいた手を正面に持ってくると、
ドクオはぱたりと倒れた。



193: ◆x4rswkGbI2 :2006/03/05(日) 00:04:24.97 ID:0DncrGtd0
( ^ω^)「!!ど、ドクオ!」
(´・ω・`)「……死んでるね。心臓の動きを『操作』されたのかな」
( ^ω^)「なんでそんなに冷静なんだお!まさか……」
(´・ω・`)「おいおい、よしてくれ。そんなことより、冷静であった方がいいと思うよ。君もドクオの無念を晴らせないまま死にたいのかい?」
( ^ω^)「……そうだったお。仲間割れは厳禁だったお。……ドクオ……」
(◎―◎)「早くしてくれないか。夜なのに寝てないからイライラしてるんだ」

先生の指が、何故かドクオに向けられた。

二日目  終了



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