(*゚∀゚)の恋はリメンバーなようです

128: ◆sEiA3Q16Vo :07/08(日) 22:34 88ykT8HYO


第6話・なにか



('A`)「痛ェ……」

つーのボラボラによって、ドクオの入院期間は更に延長されることとなった。
ほぼ全身をギプスで固められ、なかば拘束具によって囚われる囚人と化していた。

(*゚ー゚)「一体何したのよ、兄さん」

呆れた顔でパイプ椅子に腰掛けた妹が溜め息を突く。

('A`)「できれば聞かないでくれ。死にたくなる」

死んだ魚の様に濁った目をしながら、妹の視線から顔を外そうと試みる。
しかし、首に走る激痛にそのままの体勢で硬直した。

(*゚ー゚)「兄さん」

('A`)「……何だよ」

(*゚ー゚)「退院は、いつ頃になるのかな?」

('A`)「かなり……先だな」

(*゚ー゚)「そう」

唐突に、事務的な口調で周知の事項を聞き返すしぃに、ドクオは何とも言えない違和感を覚える。

('A`)「……何で今更そんな事聞くんだよ」

(*゚ー゚)「ん? ちょっとね……」












『兄さんの部屋を掃除しようと思って、ね』



    『徹底的に』



129: ◆sEiA3Q16Vo :07/08(日) 22:35 88ykT8HYO


('A`)「―――――」

その言葉の意味を理解するのに、ドクオは僅かな時間を必要とした。

(*゚ー゚)「じゃあね、兄さん。また来るから」

その間に、しぃは立ち上がり入り口に向かうと、小悪魔めいた微笑を浮かべ扉に手を掛ける。



年頃の男子の部屋。

そこを掃除、それも徹底して行う。

それが意味する事は、自ずと理解できるだろう。












『うぉあああああああああッッッ!!! やめてくれえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ……』

扉を閉め、ドクオの絶叫が遠ざかっていく。

(*゚ー゚)「〜〜〜♪」

鼻唄混じりに廊下を歩く少女の足取りは、軽やかだった。



136: ◆sEiA3Q16Vo :07/12(木) 22:41 300y0/n+O


『らめえぇ! それだけはらめええぇぇッ!!!』

扉を隔て、ドクオの悲痛な叫びが聞こえて来る。
しかし、それが確実に耳に入っているであろう筈の少女はその歩みを止めることは無かった。

『Fateにだけは! まだ凛ルートグッドエンド見てないんだぁッ! だから……だからッ』

やがて、ガタガタとベッドを揺らす音も悲鳴に混じりだし、尚も苦悶の雄叫びが木霊する。

从゚∀从「……………」

(*゚ー゚)「……………」

少女は廊下で、颯爽と白衣を翻す女医とすれ違う。
女医は、少女と視線を僅かに交わすと、吸い込まれて行くように未だ怨嗟の声が漏れ出る病室の扉に手をかける。

『しかもエロ要素皆無とかどんだ――』
















女医が扉の向こうに消え一瞬、静寂がこの一帯を支配した。

(*゚ー゚)「〜〜〜♪」

少女は再び歩みを進め。



(*゚∀゚)「アヒャ?」

唐突に曲がり角から現れた看護婦と鉢合わせた。



138: ◆sEiA3Q16Vo :07/13(金) 21:36 pg7oH/QYO


(*゚ー゚)「兄さんに、何か用ですか?」

少女は、言葉をハッキリと区切る様に強い語気でつーを睨む。そこには、強い警戒の心が現れていた。

曲がり角で出会ったまま、少女と看護婦は対峙していた。

看護婦、と言っても現在の彼女はナース服ではなく、カジュアルな私服で身を包んでいた。その手には慎ましく花束が携えられ、奇妙なコントラストを飾っている。

(*゚∀゚)「いや、まぁ、うん」

つーはバツの悪そうな顔でポリポリと後頭部を掻きつつ言い淀みながら、頷いた。

(*゚ー゚)「……………」

少女はそれを聞くと、目に込める力を一層強め。



(*゚ー゚)「お引き取り下さい」

キッパリと、拒絶の意思を込めて言い放った。



141: ◆sEiA3Q16Vo :07/16(月) 15:14 fBjGrMErO


(*゚∀゚)「アヒャ?」

言い放たれた言葉に、思わずつーは首を傾げる。
その仕草に、しぃの目には剣呑な光が宿り、射抜く様にして睨み付ける。

(*゚ー゚)「お引き取り下さい、と言ったんですよ」

(*゚∀゚)「……お〜」

仁王立ちする少女から発せられる威圧感に、思わず感嘆の声を漏らしながら、別の意味でも感心していた。

似ていたのだ。

かつて、自分に向けられた彼女の兄の目と。
今、自身に向けられる拒絶の瞳は、酷く似通っていた。

(*゚ー゚)「……ちょっと、聞いてるんですか!」

(*゚∀゚)「アヒャヒャ、聞いてるよ〜」

少女の苛立ちを含んだ声に、意識が現実に引き戻される。
自分の言葉を無視されたと取ったのか、少女の目付きは更に悪化していた。



142: ◆sEiA3Q16Vo :07/16(月) 15:15 fBjGrMErO


(*゚ー゚)「とにかく、金輪際兄さんには近付かないで下さい!」

(*゚∀゚)「何でさ」

(;゚ー゚)「なっ!?」

(*゚∀゚)「何で駄目なのさ〜」

まるで玩具を取り上げられた子供の様に頬を膨らませるつーに、しぃは愕然とした顔でたじろぐ。

予想だにしなかった反論に、軽い眩暈を覚えながらも頭を振り、再び強い視線をつーにぶつける。

(;゚ー゚)「あ、当たり前じゃないですか! 兄を再入院させた人と会わせられる訳ないじゃない!」

(*゚∀゚)(……お?)

うろたえながらも必死に声を張り上げるしぃを眺めながら、つーは何かに気付いた様に片眉を持ち上げる。

(*゚∀゚)「お見舞いだもん、そんな事しないって」

(;゚ー゚)「何の証明にもならないじゃない!」

(*゚∀゚)「確かに」

花束を軽く振りながら軽口を叩くつーに、しぃは腕を振り回し絶叫する。



143: ◆sEiA3Q16Vo :07/16(月) 15:16 fBjGrMErO


(*゚∀゚)「いや〜、しかし……」

(;゚ー゚)「―――ッ!!!」

口元を緩めながら一歩前進してくるつーに、しぃは大袈裟に身をすくませてみせる。

(*゚∀゚)「アイツも良い妹さんを持ったもんだよ」

それに気付きながらも、口元が緩みっぱなしのつーは更に迫っていく。

(*゚∀゚)「こ〜んなちっさくて可愛い妹さんなんだからさ〜」

しぃの目の前までやってきたつーは、自身の胸元までしか無い少女の頭をポンポンと撫でる。

(;゚ー゚)「くぅううううっ! 人が気にしてる事をぉ!」

(*゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャ!!!」

顔から耳まで、全体にまんべんなく赤くなりながらも下から見上げるしぃを、弛緩した表情で見下ろす。

(*゚∀゚)「あんな兄さん持ったらそりゃしっかりしたくなるけどさ〜」

(#゚ー゚)「うわぁああああああっ!!! うるさい、うるさい、うるさ〜い!!!」

撫でるのを止めないつーの手から脱兎の如く逃げ出し、曲がり角で立ち止まると赤面したまま振り返り。



『べ、別に可愛いとか言われて嬉しくなんかないんだからね!!!』



そう一言叫ぶと、角の向こうに走りさって行った。
一人残されたつーは、フッ、とシニカルな笑みを浮かべつつ窓から外の景色を望み。





『ツン……アンタの時代は終わったみたいだよ……』



何処に居るのか分からぬ友人に対して、そんな言葉を呟くのだった。



147: ◆sEiA3Q16Vo :07/16(月) 20:38 fBjGrMErO






('A`)「ロリなんて糞……そう思っていた時期が、俺にもありました」

从゚∀从「あ〜そ〜」

面倒臭そうに落ちてくる髪をかき上げながら、高岡はカルテに記入をしていた。

('A`)「でも……イリヤたんには飼われても良いと思ったんだ……」

从゚∀从「あ〜そ〜」

生返事を返しつつ、手をうちわ代わりにして襟元を扇ぐ。

('A`)「いっその事……バーサーカーになりたい……」

从゚∀从「なってるじゃん」

('A`)「……は?」

从゚∀从「スマン、忘れろ」

時折、落ちる点滴の滴と腕時計を見比べ、一度頷くと再びカルテにペンを走らせた。



148: ◆sEiA3Q16Vo :07/16(月) 20:38 fBjGrMErO


('A`)「ロリ×ブルマ×アルビノ=破壊力って花山さん家の薫君が言ってた」

从゚∀从「逆にこえーよ」

('A`)「バーサーカー仁侠立ち」

从゚∀从「あ〜そ〜」

深々と溜め息を突くと、再びカルテにペンを――('A`)「あ、でも鷹野さんへの忠誠心は譲れませんから」







从゚∀从「仕事の邪魔をするな」

(#)A(#)「医者の仕事は人命の救護だと思います」

从゚∀从「も一発行くか?」

(#)A(#)「ごめんなさい」



149: ◆sEiA3Q16Vo :07/16(月) 20:40 fBjGrMErO


(#)A(#)「あの……」

从゚∀从「何だ」

文字が歪む程の力をペン先に込め、落ちた前髪の隙間から鋭い眼光を覗かせる。

(#)A(#)「あの看護婦さん……どうなりましたか?」

从゚∀从「……………」

一転して、ドクオは真摯な口調で高岡に問掛ける。

やがて、もう一度深い溜め息を吐くと共に、ペンをカルテに挟むとドクオと向き合う。

(#)A(#)「……………」

从゚∀从「まぁ、謹慎処分って所だな。仮にも医療に携わる人間が患者に怪我させちゃあ話にならん」

σ(#)A(#)「じゃあ、こ从゚∀从「ってもそう対した事じゃない。二、三日したら出てくるようには言ってある」

σ(#)A(#)「……………」

从゚∀从「ただでさえ、ウチは人手が足りないんだからな、休ませる暇が無い」

(#)A(#)「あの人……何て名前なんですか?」

从゚∀从「あぁ、あいつの名前は――」

高岡が、口を開く瞬間だった。

(*゚∀゚)ノ「アヒャヒャ、元気〜?」

場違いな雰囲気で、話題の人物が花束を抱えながら扉を開いていた。

第6話・完



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