(*゚∀゚)の恋はリメンバーなようです

156: ◆sEiA3Q16Vo :07/20(金) 00:33 Xgjm5CsKO


第七話・からけ

从゚∀从「……………」

(*゚∀゚)「……………」

(#)A(#)「……………」

開け放たれた窓からは、夏の日差しによって熱された風と共に、アブラゼミの鳴き声が聞こえる。

しかし、騒音に包まれた外と、病室の中の空気は隔絶されていた。
開かれている筈の窓。
その窓枠を境界線として、この病室には異質な空気が漂っていた。

空気の発生源は、純白の汚れとは無縁とも言える白衣に身を包んだ女医が中心となり、室内を満たしている。

从゚∀从「オ゛イ」

鉄を擦り合わせた様な、無機的な異音が女医の口から漏れ聞こえる。
それは既に医者という人種から放たれる声ではなく、彼女以外の人間をその場に縫い付ける。

(*゚∀゚)「―――――」

从゚∀从「謹慎って、言ったよな。間違いなく」

カルテを挟んだプラスチック製のボードがミシミシと悲鳴を上げ。

从゚∀从「アレか。お前は風邪とかで休んでもコッソリ遊びに行くタイプだろ」

(*゚∀゚)「あ、分かる〜?」

从゚∀从「はっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは」

照れながら頭を掻くつーに、渇いた笑いを上げながら高岡は歩み寄る。

从゚∀从「ちょ〜っと分かってないみたいだから、続きは外で話そ〜か〜」

有無を言わせず、高岡はつーの襟首を掴むと扉を開け、外に引きずって行った。



157: ◆sEiA3Q16Vo :07/20(金) 00:48 Xgjm5CsKO


从゚∀从「……………」

(*゚∀゚)「……………」

(#)A(#)「……………」

空気が重い。
何だよ、この状況。
アタシはドクオの見舞いに来たのにさ。何でドクターが居るんだよ。

ヤバいよ。
アレは白衣の天使とかそんなレベルじゃないよマジで。
『シィイイイイィ』とか言いながら銃剣で追ってくる神父と同じ人種だよ。羊のコスプレした範馬のダディみたいなモンだよ。

从゚∀从「オ゛イ」

遂に声帯が人外に及んじゃったよ。ヤバいよ、この人絶対ベヘリットに何か捧げてるよ。

(*゚∀゚)「―――――」

从゚∀从「謹慎って、言ったよな。間違いなく」

一字一句に呪いでも仕込んでそうな声でアタシを睨んでくる。

从゚∀从「アレか。お前は風邪とかで休んでもコッソリ遊びに行くタイプだろ」

(*゚∀゚)「あ、分かる〜?」

とりあえず、アタシは何とかそれだけ言葉を絞り出す。
この空気を何とかしなきゃ息が詰まる。


从゚∀从「はっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは」

お? これなら――

从゚∀从「ちょ〜っと分かってないみたいだから、続きは外で話そ〜か〜」

あ、駄目だ、死ぬわコレ。



161: ◆sEiA3Q16Vo :07/22(日) 18:43 E9/HKpZUO




从゚∀从「何やってんだお前は」

病室の扉を閉じ、開口一番そう言った高岡は胸の前で腕を組み、つーと向き合う。

(*゚∀゚)「だから、お見舞い」

从゚∀从「謹慎って単語を知らねーのかお前ってやつは」

(*゚∀゚)「……………」

从゚∀从「聞いた俺が馬鹿だったよクソッタレ」

苛立たしげにそう吐き捨てると、白衣のポケットから煙草を取り出すと乱暴に火を点け、紫煙を吐き出す。

(*゚∀゚)「お見舞いぐらい良いじゃんか〜」

从゚∀从y━・~「あのな、お前自分がやった事、理解してないだろ」

(*゚∀゚)「ちょっとナランチャしただけじゃんか〜」

从゚∀从y━・~「ナランチャは動詞なのかよ」

(*゚∀゚)「類似語にブチャる、ジョジョる、花山薫があります」

从゚∀从y━・~「使い所に迷うとか言う問題じゃないな」

(*゚∀゚)「ちなみに花山薫はワイルドターキー一気飲みや、気付いたら無駄毛処理がされていた時に使います」

从゚∀从y━・~「お前何かキャラ変わってね?」



162: ◆sEiA3Q16Vo :07/22(日) 18:44 E9/HKpZUO


从゚∀从「とにかくだ。患者に手を出すのは流石に看過できない。その為の謹慎処分だ」

高岡は中途半端に吸った煙草を突き付けると、火が点いたままのそれを開けられた窓から外に放る。

从゚∀从「筋は通さにゃならんだろうが」

分かったか? と再び腕を組むと、高岡はつーの表情を覗き込む。
納得がいかないと眉根を寄せるつーは、つと高岡と視線を交える。


(*゚∀゚)「……ねぇ」

从゚∀从「ん?」

(*゚∀゚)「怪我させたなら、見舞いに行くのも筋ってもんじゃない?」




从゚∀从 ・・・










_,
从゚д从





从゚∀从「奇才現る」

(*゚∀゚)「アンタも馬鹿だよね」



171: ◆sEiA3Q16Vo :07/27(金) 19:15 58izQThKO


从゚∀从「……さてと」

高岡は何事も無かったかの様に白衣のポケットからシガーケースを取り出すと、中から一本煙草を抜き取る。

从゚∀从y━・~「……診察も終わったし、もう戻る」

(*゚∀゚)「……アヒャ?」

从゚∀从y━・~「俺は何も見なかったし、これからも見ないつもりだ」

(*゚∀゚)「……………」

从゚∀从y━・~「話はそれだけだ」

高岡は、先程と同様に中途半端に火が付いた煙草を窓の外に放り投げる。

『アッー!!!』『兄者ぁあああああああッッッ!!!』と階下から悲鳴が聞こえた気がしたが、二人は何事も無かったかの様に向き合っていた。



172: ◆sEiA3Q16Vo :07/27(金) 19:16 58izQThKO


从゚∀从「んじゃ、もう行くぞ」

(*゚∀゚)「あ、高岡ドクター」

从゚∀从「何だよ」

(*゚∀゚)「はい」

気だるそうに歩き出した高岡の背に、つーの声がかかる。

同様に気だるそうに振り返る高岡に、つーは自らが手にした鮮やかな花束を押し付ける。

从゚∀从「何のつもりだ」

(*゚∀゚)「アヒャヒャ、ドクターが渡しといて〜」

从;゚∀从「ハァ?」

(*゚∀゚)「やっぱ帰る」
 _,
从;゚∀从「ハアァ!?」

(*゚∀゚)ノシ「じゃ〜ね〜」

当惑する高岡に、強引に握らせると脱兎の如く駆け出し、瞬く間に高岡との距離を開いて行った。
 _,
从;゚∀从「お〜い……」

右手にカルテ。

左手に花束を持ち。

夏場の猛暑の中でもタートルネックのセーターと白衣を着込むその姿は、非常に奇っ怪であった。



173: ◆sEiA3Q16Vo :07/27(金) 19:16 58izQThKO







('A`)「ヤバいな」

ベッドに拘束されたドクオは、ポツリと呟く。

('A`)「漏れそうだ」

股間から伝わる圧力。

('A`)「……ナースコール、ナースコールっと……」

届かないボタン。

('A`)「……………」

動かない体。

('A`)「―――――」









『もらしてもいいじゃない
だってにんげんだもの

           どくお』



('A`)「いや、駄目だろ常識的に考えて」

慌てて最悪の結果を打ち消すが、股間から打ち出されるエメラルド・スプラッシュは防げそうにない。

('A`)「……そうだ、さっきしぃが使ってたペットボトルが……」

周囲を見渡し、目当ての物を見付けると、プルプルと痙攣しながら必死に手を伸ばす。

(;'A`)「ぉおおお……」

その間にもエメラルド・スプラッシュの奔流は津波の様に押し寄せていた。



174: ◆sEiA3Q16Vo :07/27(金) 19:17 58izQThKO


(;'A`)「――ッ! 届いた!」

そのままペットボトルを引き寄せ、その手にしっかりと握り締める。

空いた手を動かし、ズボンのファスナーに手を伸ばし。






『スティッキイィィィ・フィンガアアァァァッッッ!』

高らかにそう叫ぶと、股間から性剣を取り出――





从゚∀从y━・~「……………」

いつの間にか花束を持ち、壁に背を預けながら紫煙をくゆらせる高岡の姿があった。

从゚∀从y━・~「どうした? 早くしないと漏らすぞ」

('A`)







 ブルッ
(('A`))「あ……」

从゚∀从y━・~「あ」











『……ゴメンな』

『いや、いいッス……』

すすり泣く声が、病室に響いた。



177: ◆sEiA3Q16Vo :07/28(土) 22:02 PQObBddDO


数回のコール音の後、受話器の向こうから事務的な声が聞こえてくる。

从゚∀从「あ〜、もしもし。高岡だ」

『……何ですか……』

从゚∀从「悪いが65号室に換えのシーツと着替え持って来てくれないか」

『……………』

从゚∀从「お〜い」

『…………チッ』

从#゚∀从「てめっ、いい度胸しt――」

『ブヅッ、プー、プー…』

从#゚∀从「えぇい、腹立つな!」

受話器に向かい一言吠えると高岡はそのまま壁に向けて投げつける。
嫌な音を立てながら、受話器はプラスチックの破片を撒き散らしながらその生涯を閉じる。

(;A;)「……………」

从#゚∀从「お前も小便の一つや二つで泣いてんじゃねえ!」

その怒りの矛先は滂沱するドクオに向けられる。

(;A;)「この歳になって漏らすなんて……」

从゚∀从「安心しろ、もっと歳とりゃあ自然に緩くなる」

('A`)「……フォローになって無いッス」

从゚∀从「うっせ」

('A`)「……あれ? その花束って……」

从゚∀从「ん? あぁ、コレか」

気付けばドクオの視線は高岡が小脇に抱えたままになっていた花束に向けられていた。



178: ◆sEiA3Q16Vo :07/28(土) 22:21 PQObBddDO


从゚∀从「ホレ、さっきの奴からだよ」

('A`)「あ、どうも……」

高岡が片手で軽く放ったそれを受け取り、ドクオは無言でそれを眺めていた。

从゚∀从y━・~「自分で渡しゃあ良いものを……何考えてんだか」

いつの間にか、火を付けた煙草を吹かし、やけにニヤついた表情を浮かべている。

('A`)「あの」

从゚∀从y━・~「ん? 何だ?」

しばし眺めた後、ドクオは花束から高岡に視線を移す。

('A`)「あの人は……俺を知ってるみたいなんスけど、俺は……」

从゚∀从y━・~「知らないって言うんだろ?」

('A`)「そうッス」

从゚∀从y━・~「ん〜……」

高岡は自らの顎に手を添え、天井に目をやり、考え込むそぶりを見せる。
数秒程時計の針が進む音だけが病室を満たし。

从゚∀从「ま、頑張れ」

(;'A`)「……はぁ?」

窓から煙草を放りながら高岡は事もなげに言い放った。

『ヒギイィッ!!!』『兄者ぁあああああああッッッ!!!』と先程と似た悲鳴が聞こえた気がするが、高岡はそれを無視し更に続ける。

从゚∀从「考えてみれば、俺が言える事なんて無いぞ。お前が自分で考えて、自分で行動しろ」

('A`)「動けないんスけど」

从゚∀从「頑張れよ」

('A`)「動けないんスけど」

从゚∀从「頑張れよ」

('A`)「……ハイ」



179: ◆sEiA3Q16Vo :07/28(土) 22:35 PQObBddDO


从゚∀从「んじゃ、俺はもう戻る。着替えとかは後から持って来させるからな」

白衣を翻す高岡が扉に手を掛けた時。

('A`)「高岡さん」

从゚∀从「ん? どうした?」

('A`)「花……ありがとうございました……」

軽く眉を上げながら振り返る高岡に、そんな言葉がかけられる。

从゚∀从「……そりゃ俺じゃなくて持って来たヤツに言ってやんな」

フッ、と目を細めて苦笑し、高岡は扉の外に消えていった。

(*'A`)「……………」

アレはアレで良くね? 何か余裕持った大人の魅力っつーか厳しい年上の女が時折見せる優しさっつーの? 気が強いキャラは大体クリムゾンで『悔しいっ、ビクビク』ってなっちゃうアレみたいな?



軽くそんな事を夢想しながら、ドクオは勃起していた。

男なんてそんなものだ。

第七話・完



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