(*゚∀゚)の恋はリメンバーなようです

319: ◆sEiA3Q16Vo :09/23(日) 09:36 lDX+hs/MO


――ダッカラカッコツケナイデ、モットジブンヲシンジテ〜

('A`)「……………」

(´_ゝ`)「……………」

(´<_`)「……………」

軽快な音楽がテレビから流れ、三人はそれを食い入る様に見つめていた。



    『アニキ……』



熱い吐息が混ざった溜め息と共に吐き出された三人の声が唱和する。

('A`)「俺、アニキになら掘られても良い」

(´_ゝ`)「奇遇だな、俺もだ」

(´<_`)「よう、俺」



『あぁ……』



再び、熱い声が漏れ出す。

('A`)「ロリ? 巨乳? 萌え? 何ソレ、食えんの?」

(´_ゝ`)「たかが萌えごときがしゃしゃり出てんじゃねえよ、自重しろ」

(´<_`)「燃えこそが俺達に必要なもんだろうが、常識的に考えて」



  『……合体してぇ……』



第十三話・あしたっていまさ



320: ◆sEiA3Q16Vo :09/23(日) 09:38 lDX+hs/MO


『もうすぐ、セサm――』

('A`)「黙れ、毛玉が」

毛玉が画面に写った瞬間、ドクオは迷う事無くリモコンでテレビの電源を落とす。

('A`)「てか何でお前ら俺の部屋で見てんだよ」

ドクオの視線が、床にマットを敷きそこに寝そべる二人に向けられる。

(´_ゝ`)「見舞いに来た妹者がプリキュアプリキュアうるさいんだよ」

(´<_`)「仕方ないからテレビ譲ってこっちに移民しに来ただけだ」

('A`)「お前ら見舞いって何なのか知らねーのか」

(´_ゝ`)「フラグが立ってるか見極めるのに必要なイベント」

('A`)「頼む、現実を見ろ」

(´<_`)「できれば『入院長いから溜ってるんでしょ』ってイベントを希望する」

('A`)「頼む、死んでくれ」



321: ◆sEiA3Q16Vo :09/25(火) 21:05 Z6nIX0i+O


(´_ゝ`)「時にドクオ」

('A`)「何だよ」

(´_ゝ`)「何故か知らんが謎の男達に終われ、廃工場に逃げ込んだら五、六匹のぬこが戯れてたんだ。俺は追われている事も忘れそのぬこ達に近付いたんだが、何故かぬこ達は俺に飛び掛りいきなり腰を振り始めた。ビビって引き剥がしたら白濁した汁を大量にブチ撒けられた。これでもかってぐらい全身に撒き散らされた。あれはまるで星彩無惨を彷彿させたね」

(´_ゝ`)「……そんな夢を見たんだがどう思う?」

('A`)「早くお前の頭の病気が治ると良いな」

(´_ゝ`)「ぶっちゃけ悪くないと思いました」

('A`)「黙れよ」



322: ◆sEiA3Q16Vo :09/25(火) 21:06 Z6nIX0i+O


(´_ゝ`)「……ドックン、最近冷たくなったね」

(´<_`)「もう私達に飽きちゃったの?」

(;'A`)「えぇい、寄るな気色悪い!」

ベッドを挟み、両サイドから体をくねらせて近付く二人の頭を強引に押し戻す。

(´_ゝ`)「暇なんだよ〜」

(´<_`)「遊ぼうぜ〜?」

上目使いで擦り寄る様に二人はなおも近付いていく。

(;'A`)「分かった! だから近付くなって言ってるだろうが!」

(*´_ゝ`)「やったね!」

(´<_`*)「何やる? 何やる?」

('A`)「バーチャロン」

(´_ゝ`)「俺ライデン使う」

('A`)「俺のテムジンでフルボッコにしてやんよ」

(´_ゝ`)b「おk、セガサターン取ってくる」

('A`)b「開始直後のレーザー砲は禁止だぜ?」

ドクオと兄者は、互いに親指を立てた右手を突き合わせると、それぞれが作業に取り掛かった。










(´<_`)(俺ってハブられてるのかなぁ……)



324: ◆sEiA3Q16Vo :09/27(木) 23:47 coYJAvSXO


(´_ゝ`)「な〜、ドクオ〜」


両肩に巨大な砲身を取り付けた黒い特機が脚部のスラスターを噴かし、左方に滑走しつつ手にしたランチャーからミサイルを放つ。

('A`)「な〜に〜? 兄者〜」

特機と空中で対峙する白い機体が、背面のバーニヤによって特機との距離を詰め、飛来する銃火の雨を掻い潜り、特機の眼前に降り立つ。

(´_ゝ`)「最近どうよ?」

白い機体は握る銃剣の銃床を自らに押し当て、光子を束ねた銃弾を放つ。
間断無く放たれる銃弾を特機は重厚なその姿で上体を反らすが、装甲の上面を削られる。

('A`)「何が」

特機は反らした上体の胸部スラスターを噴かし、光子を纏った銃剣の刀身から逃れる。

(´_ゝ`)「何がって……」

滑る様に退く特機はランチャーから数発のミサイルを撃ち出すと、地面を大きく蹴り、自身を空へと舞い上がらせる。

(´_ゝ`)「惚れてるんだろ?」



('A`)



特機の両肩に備えられた砲身が開き、青く輝く二条の光がその動きを止めた白い機体を消し飛ばした。



325: ◆sEiA3Q16Vo :09/27(木) 23:48 coYJAvSXO


('A`)「……………」

画面に表示された自身の敗北を告げる文字を呆然と眺め、ドクオは動きを止めている。

(´_ゝ`)ノシ「お〜い」

惚けた様に口を開くドクオの前で掌を上下させる兄者の言葉が聞こえているのかいないのか、依然動きを見せない。

('A`)「ダレカラキイタ」

(´_ゝ`)ノ「从゚∀从」

('A`)「ナルホド」

(´<_`)「どう表現しているんだ、それ」

(´_ゝ`)「凄味」

(´<_`)「ナルホド」



326: ◆sEiA3Q16Vo :09/27(木) 23:49 coYJAvSXO


(´_ゝ`)「ドクオ」

不意に、兄者がドクオに呼び掛けた。
兄者は深く腰かけていた椅子の背持たれから僅かに身を乗り出す。

('A`)「……何だよ」

いつもの調子はなりを潜め、改まったその姿勢にドクオは僅かにたじろぐ。

(´_ゝ`)「……………」

互いに視線を合わせ。

黙したまま目で語り合う。

開け放った窓からは新たに始まった秋の涼しげな風が舞い込む。



(´_ゝ`)「頑張れ」



風が通り過ぎ、それを追うように兄者の口からそんな言葉が紡ぎ出された。

(´_ゝ`)「今の自分の気持ちを、そのまま言葉にしてみろ。ドラマや漫画みたいに格好付けた洒落た台詞じゃあない、お前の、自分自身の正直な気持ちを吐き出せ」

('A`)「……兄者……」

(´_ゝ`)「……ぶつかって、吐き出して、それが駄目だったとしても、後悔はしないはずだ」



327: ◆sEiA3Q16Vo :09/27(木) 23:49 coYJAvSXO


(´_ゝ`)「行ってこい、ドクオ」

ドクオから視線を外さず、兄者は病室の扉を指差す。

('A`)「……………」

示された扉。

そこをドクオは穴が空く程に視線を注ぐ。

やがてドクオは、自分が掛けられたシーツを握り締めている事に気付く。

('A`)「……兄者」

扉から、視線を外した。

その目には曇りは無く。

('∀`)「行ってくる」

その顔には、迷いを拭った笑みを浮かべていた。

(´_ゝ`)b「駄目だったら一緒にエロゲやろうぜ」

('A`)b「一人でやってな」

握り締めたシーツを払い。

ドクオは、病室を飛び出した。



328: ◆sEiA3Q16Vo :09/28(金) 00:14 b86ugB4NO


(´_ゝ`)「……………」

ドクオが飛び出していった扉が音も無く閉じていく。

しばらく眺めていた扉から、兄者はやがて開け放たれている窓から空を望む。


――天高く、馬肥ゆる秋。

空が以前よりも高く感じる。
それは錯覚で、実際には空の高さは依然変わらない。
いつもの通り、青く澄んだままそこにある。

ふと、そんな空が滲んだ様に思える。輪郭を失い、ぼんやりと。

(´<_`)「兄者」

いつの間にか、寄り添う様に弟者が側にいた。
その手には、差し出す様にハンカチが握られている。
『どうした、弟者』

『……泣くな、兄者』

『……すまん』

『兄者はいつも損な役だな』

『そうかも、な』

『……兄者』

『ん? どうした?』

『何か、やるか』

『あぁ、そうだな……』



暖かい風が、少しだけ病室を通り抜けた。



第十三話・完



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