(*゚∀゚)の恋はリメンバーなようです
- 380: ◆sEiA3Q16Vo :10/09(火) 21:44 Gms4nEfxO
从;゚□从「クソッタレ……」
一定のリズムを刻み電子音の中で高岡は毒突く。水色の手術着に身を包み、手元を忙しく動かし続け、時折電子音を発する機械に目を向ける。
从;゚□从「汗を拭いてくれ」
高岡と同じ装束に身を包んだ看護士が手に持つガーゼで軽く押さえる様に、高岡の額に浮かんだ汗を拭う。
しかし、拭いた所からまたすぐに玉の様な汗が吹き出してくる。
从;゚□从(南無三……正直どこから処置して良いのか……)
眼下に広がる赤い人体の設計図を前にして、高岡は半ば諦観の面持ちで立ち尽くしていた。
破損し、削られた設計図を全て修復するには時間と人手、なにより自身の技術が足りない。
从;゚□从(どうする……)
メスを握ったまま、高岡は酸素マスクを取り付けられたつーを見る。
目を閉じたまま、強制的に酸素を送り込まれる彼女の姿に、高岡は自らの無力を呪った。
从;゚□从「現代医学の限界、か」
僅かに血飛沫を浴びたマスクの中で、歯噛みする。
『諦めたらそこで試合終了ですよ』
第十六話・ぽいずんせんせい
- 381: ◆sEiA3Q16Vo :10/09(火) 21:45 Gms4nEfxO
_,._
从;゚□从「……………」
('□`)「……………」
_,._
从;゚□从「誰だ、お前」
('□`)「人呼んで、ポイズンジャック」
_,._
从;゚□从「そうか、帰れ」
突如として高岡の背後に男は現れた。それに狼狽する高岡の問いに、男は誇らしげに答える。
('□`)「連れない事を言うなよ」
从 ゚□从「ふざけんな、今は手術中だ。さっさと出ていけ」
('□`)「消毒は済ませてある。問題は無いだろ?」
从 ゚□从「……誰だ、この馬鹿を入れたのは」
高岡は突然の来訪者に呆然とする周囲の看護士を睨むが、皆一様にして首を横に振った。
- 382: ◆sEiA3Q16Vo :10/09(火) 21:47 Gms4nEfxO
('□`)「誰も俺は止められないんだぜ?」
从#゚□从「いい加減――」
出ていけ、と叫ぼうとした瞬間、高岡はすんでにそれを止める。
从 ゚□从
('□`)
1+1=2
遠足のおやつ=300円
Ζガンダム(ボディ)+ザク(首)=Ζザク
コナン=新一
セイバー=俺の嫁
いちご=100%
スピード×体重×握力=破壊力
遅刻寸前の男子高校生+食パン+曲がり角+(−幼馴染み)=フラグ発生≠現実
('A`)+□=('□`)
('A`)=('□`)−□
('A`)=童貞
_,._
从;゚□从「嘘だと言ってよ……バーニィ」
('□`)「認識したか? Dr.ハインリッヒ高岡」
- 388: ◆sEiA3Q16Vo :10/11(木) 23:41 DqGpyNr5O
_,._
从;゚□从「……何で、ここに居るんだよ……」
高岡の手の動きが止まる。
優先すべき事よりも、予期せぬ来訪者に対しての興味が勝り、メスを握る手に込められる力が緩む。
('□`)「その質問は、どうやって此処に居るのかを聞いているのか、俺が此処に居る理由を聞いているのかどっちだ?」
_,._
从;゚□从「……とりあえず、どうやって来たのか気になりました」
('□`)「童貞に不可能は無い」
_,._
从;゚□从「良し、死んでくれ」
かしこまった高岡に、さもありなんと男は胸を反らして答える。
('□`)「もう一つの答えは……」
男は床を鳴らしながら手術台に近付き、体の横にダラリと垂らしていた両腕を僅かに持ち上げる。
男は手術台の前まで来ると、目を閉じ、呼吸器を取り付けられ、男の眼下に赤い人体の設計図を広げるつーを、郷愁の眼差しで見下ろし――
('□`)「恩返し、だな」
一言そう言った男は。
自らの股間に両手をねじ込んだ。
- 389: ◆sEiA3Q16Vo :10/11(木) 23:43 DqGpyNr5O
('A`)「……………」
ドクオは赤く点灯する手術中の表示を見上げていた。何をするでもなく、扉の前でただ赤い光を眺め続ける。
(*゚ー゚)「さっきの人、誰?」
('A`)「いや……分からない」
(*゚ー゚)「嘘」
問い掛けに視線を合わせず答えたドクオに、棘を持ったしぃの声が突き刺さる。
(*゚ー゚)「兄さん、嘘付くと目を合わせてくれないよね」
('A`)「……………」
(*゚ー゚)「何で嘘なんか言うの?」
('A`)(ぶっちゃけレナみたいに嘘だっ! て展開を期待した俺死ねよ)
ドクオは赤い光から目を離さないまま、深く息を突いた。
- 390: ◆sEiA3Q16Vo :10/11(木) 23:44 DqGpyNr5O
『つーが居る手術室に案内しろ』
男が言ったのはそれだけだった。
何故この男がつーを知っているのか。何故つーが手術を受けている事を知っているのか。
何故、この男はこれ程自分に似ているのか。
様々な疑問がドクオの頭を巡り、口から突いて出ようとした。しかし、その疑問を問掛ける事なく。
('A`)「……こっちだ」
まず動いたのは足であり、口から突いて出たのは男の問いに対しての答えだった。
ロビーまで来た道を今度は逆に、先程の倍以上の速さで駆け戻る。
やがて手術室の前の廊下に着くと、ドクオに追従していた男が速度を増し、扉に向かって一直線に突き進む。
驚き、椅子から立ち上がったしぃの横を駆け抜け、男は扉に触れる寸前、霞の様に消え去った。
『通ォ〜り抜けフゥウ〜プゥ〜(懐かしきダミ声)』
男が消える瞬間、ドクオとしぃはそんな声を聞いた、ような気がした。
わさび? 何それ食えんの?
- 396: ◆sEiA3Q16Vo :10/14(日) 01:22 UPLUOWy0O
('A`)「……クソ」
ドクオは見上げ続けていた赤いランプから目を反らすと、一人歯噛みする。
爪が掌に食い込む程強く拳を握り絞め、自身の内側から沸き上がる苛立ちに毒付いた。
(*゚ー゚)「……………」
その様子を、しぃは何の感慨も抱かずただ眺めていた。
('A`)「……クソ」
(*゚ー゚)「……何をそんなに怒ってるの?」
('A`)「怒ってなんかいない」
唇に人指し指を当てて小首を傾げるしぃに、ドクオはバツの悪そうな顔でうつ向く。
('A`)「ただ……」
(*゚ー゚)「ただ?」
視線を伏せたまま言った言葉をオウム返しで問われ、僅かに口籠る。
('A`)「あの男が気に入らない……それだけだ」
(*゚ー゚)「やっぱり怒ってるんじゃない」
不機嫌そうに呟くドクオに、少女は心底呆れた口調で溜め息を突いた。
- 397: ◆sEiA3Q16Vo :10/14(日) 01:23 UPLUOWy0O
何かが胸の中でくすぶっている様な、奇妙な焦燥感が何度も押し寄せてくる。
力を込め過ぎて奥歯が砕けそうな気分になってくる。
指が掌を突き破って反対側に飛び出してしまいそうな気分になってくる。
拳を目の前の扉に叩き付けて、どちらかが壊れるまで殴り続けたい気分になってくる。
胸を掻き毟って胸骨を砕き、赤く脈打つ心臓を引きずり出してしまいたい。
言葉で表せない衝動が何度も体の中を駆け巡る。
苛立っていた。
そのベクトルの先には、唐突に現れたあの男が立っていた。
自身に余りにも似すぎている男。
苛立ちは消える事無く、くすぶり続ける。
やがて、どれ程の時間が経ったのか、ドクオの目の前で扉は開かれた。
- 398: ◆sEiA3Q16Vo :10/14(日) 01:24 UPLUOWy0O
二人は開かれた扉を凝視したまま言葉も無く立ち尽くしていた。
やがてガラガラと騒がしい音を立てて看護士が押す台車が現れる。
从 ゚∀从ノ「よ」
('A`)「た、高岡さん」
(*゚ー゚)「……先生」
帽子とマスクを外し、血で染まった手術着を纏った高岡が片手を上げながらそれに続く。
ほぼ全身を包帯で覆われ、台車で運ばれるつーと高岡を交互に見ながら二人は駆け寄り。
从 ゚∀从y━・~「ま、成功だ」
いつの間にか取り出した煙草に火を付け、高岡はアッサリと言い放つ。
('A`)「あ――」
(*゚ー゚)「先生……」
从 ゚∀从y━・~「かなり危なかったんだけどな、思わぬ助っ人に助けられたよ」
('□`)「……………」
破顔する高岡が振り返ると、丁度男が帽子を外し扉をくぐる所だった。
男は黙したまま歩き出し、ドクオやしぃが目に入っていないかの様にその横を通り過ぎる。
('A`)「どこに行くんだよ」
その背中に棘を含んだドクオの言葉が突き刺さる。
('□`)「事は果たした。俺が此処にいる理由が無い」
振り返りもせず男は答え、再び歩みを進める。
(*゚ー゚)「あの……」
ドクオに続き、しぃの言葉が男の耳朶を打つ。おずおずと言った様子のその声に、男は肩越しに振り返る。
(*゚ー゚)「ありがとう」
少女の言葉に男の目は見開かれ。
(//□//)「べ、別にお前らの為にやったんじゃないんだからな!」
駆け出し、廊下の向こうに走る男の去り際の一言は。
とてもキモくて、殺意が湧いた。
- 399: ◆sEiA3Q16Vo :10/14(日) 01:26 UPLUOWy0O
――無機的な機械の音と、時計の針の音が混ざった病室で。
(*゚∀゚)「……アヒャ?」
彼女は覚醒した。
(*゚∀゚)「綺麗な小川と花畑で馬場とブッチャーがランデブーしてた」
起きぬけの開口一番に発したそんな言葉は。
(*;ー;)「おねえちゃあああぁぁぁぁあん!!!」
少女の絶叫に掻き消される。
(*゚∀゚)「何? どしたの?」
首に巻き付いた少女の頭に手を置きつつ、つーは傍らに立つ高岡に首を傾げながら助けを求める。
从 ゚∀从「トラックに撥ねられてもう少しでお陀仏だった所に女神が舞い降りたんだよ」
(*゚∀゚)「小皺の出来たね」
从 ゚∀从「今度は帰ってこれないが、もう一度逝っとくか?」
(*゚∀゚)「アヒャヒャ、遠慮しとく」
巻き付いたままの少女をなだめながら、つーは苦笑した。
从 ゚∀从「お〜い、お前もさっさと来いや」
高岡は先程から輪から外れ、部屋の隅に立つ者を手招きで呼んだ。
('A`)「あ……」
呼ばれたドクオはおずおずとベッドに近付き、高岡の隣に立つ。
('A`)「あの――」
伏し目がちだった視線を持ち上げ、意を決した様に言葉を発しようとし――
(*゚∀゚)「あなた、だれ?」
呑み込まれていった。
第十六話・完
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