(*゚∀゚)の恋はリメンバーなようです

444: もう…殺して…◆sEiA3Q16Vo :11/02(金) 23:27 uvtFDKcqO

誰かが泣いていた。

誰かが走っていた。

誰かが呼んでいた。

それが誰なのか分からず。
それが何故なのか解らず。
それが現実なのか判らず。

何故か懐かしくて。
とても狂おしくて。
誰かを求めていた。


これは一体何なのか。
その全てが分からなかった。



第十九話・たいせつなもの



445: ◆sEiA3Q16Vo :11/02(金) 23:28 uvtFDKcqO


(*゚∀゚)「……知らない天井だ」

薄く開いた目に写った天井を眺め、ぼんやりとそんな事を考える。

(*゚∀゚)「あ〜動けない〜」

何気無しに上体を起こそうと試みるが、全身を拘束具のように覆ったギプスがその動きを阻害していた。

仕方なしに、押し付ける形でベッドに体を預けると、その僅かな動きだけで全身に鈍い痛みが走る。

(*゚∀゚)(……こりゃリハビリがしんどいだろうね)

痛みで覚醒した頭でそんな事を思い浮かべ、後々に控える苦痛の日々を思うと、憂鬱な感情が持ち上がり自然と溜め息が漏れ出た。

(*゚∀゚)「ん〜……」

再び天井を見上げながら、口を尖らせ一人唸り声を上げる。

先程の憂鬱な感情とは別に、何か奇妙な感覚が頭の隅にこびりついている。

(*゚∀゚)「ん〜……?」

それに不快感を感じ、動き辛い首を僅かに傾けると、もう一度口を尖らせた。



446: ◆sEiA3Q16Vo :11/02(金) 23:30 uvtFDKcqO


見上げた先の天井は、清潔感を出すために白一色に染められている。

しかし、月日の流れからその白い壁面に、虫食いの様なシミがいくつも現れていた。

点々とした小さなシミから、動物や何かのようにも見える大きなシミ。

それは、まっさらな白さを蝕み奇異な景観を写し出す。

その虫食いの様に。

彼女の記憶は、欠落していた。



何もかも失った日。
復讐を誓った日。
戦う術を身に付けた日。
仇敵を見付けた日。



憶えている。
そしてこの場所で、この病院で見た事、聞いた事、感じた事。全て憶えている。

ただ。

その間の記憶が無い。

正確には存在するが、虫食いのように曖昧としてハッキリと形にすることができない。

その記憶を結び付ける事柄。

それが記憶から欠落した事により、他の記憶までが砂上の楼閣となって判然としない。



447: ◆sEiA3Q16Vo :11/02(金) 23:31 uvtFDKcqO

(*;∀;)「――ッ」

自然と、涙が溢れた。

思い出せないのが悲しいのではなく、忘れてしまった事が、忘れたはずの事が、今も彼女の胸を貫きその感情を涙として押し出していく。

彼女は、ギプスで固定され動きを狭められ、動かすと鈍い痛みを放つ右腕を持ち上げる。

奥から熱く込み上げ、螺子切れる様に締め付ける苦痛を、胸の上から押さえ付ける。

腕の痛みすら忘れて、強く、強く握り絞める。





  『……お姉ちゃん?』





(*;∀;)「ッ!!!」

突然かけられたその声に、慌てた様子で声の主に気取られないように目を拭う。

(*゚ー゚)「泣いてたの?」

(*゚∀゚)「……ん」

ベッドの側に立ち、心配そうに自分を覗きこんできた少女に、赤く充血した目で見上げながら僅かに頷いた。



449: ◆sEiA3Q16Vo :11/04(日) 23:06 v1EMFIObO


(*゚ー゚)「どこか痛いの?」

恐る恐る、といった動きでしぃはつーの腕に巻かれたギプスに触れ、まるでその下に伝わる痛みを和らげるように、ゆっくりと左右に摩る。

(*゚∀゚)「しぃちゃんは……優しいね……」

そう言うと、つーはしぃの頭をクシャリと撫でる。栗色のそれは、フワフワとした感触で仔猫を思わせる。

(*゚∀゚)「だけどね、傷が痛いわけじゃないんだよ」

少し顔を赤らめるしぃに、つーは苦笑を浮かべながら優しく、そう言った。



450: ◆sEiA3Q16Vo :11/04(日) 23:07 v1EMFIObO


寂しそうに笑う彼女の顔を見て、少女の胸は締め付けられる様な痛みを覚える。

快活に笑った彼女に、こんな大きな傷を負わせたのは自分だ、と。

救ってくれた彼女に対して、報いなければならないはずなのに、それができない自身に苛立ちが募る。

怪我だけではない。

彼女の心から、大切なモノまで奪ってしまった。幼い自分にも分かる。それはこの人にとって、掛け替えのない大切なモノだ。

それを自分が奪ってしまった。

彼女の、兄との思い出を。

そして、それは同時に兄からも大切なモノを奪った事になる。




初めて彼女と出会った時、兄が取られてしまうと思った。

大好きな兄だ。

時々、むしろ常に変態だが、兄が大好きだ。

その兄を、部外者の彼女に奪われるのは、我慢ができなかった。兄の気持ちが、彼女に傾いて行くのが許せなかった。





彼女が、嫌いだった。



451: ◆sEiA3Q16Vo :11/04(日) 23:07 v1EMFIObO


見知った仲でもないのに、人の心に入り込んでくる彼女が嫌いだった。

子供扱いする彼女が嫌いだった。

大人のはずなのに、子供みたいな彼女が嫌いだった。

悪い人ではないと分かっているのに、心が拒絶していた。

やがて彼女の心を垣間見る。

苦痛と憤怒と悲哀に満ち。

なおも笑う事を絶やさぬ彼女。

そんな彼女を見て、やがて自身の間違いに気付く。意地を張ることの無意味さを知る。

認めよう。

そう思った。

思った矢先に、悲劇は起きた。

責任は全て自分にあった。それによって二人から奪ってはいけないモノを奪い取ってしまう。

望む、望まないに関わらず。



贖罪する。

犯した罪を贖いたい。

だが、贖う術を自身は知らない。



458: ◆sEiA3Q16Vo :11/10(土) 22:51 /X2IzpFqO


謝ろう。

そう、少女は決意した。



(*゚ー゚)「……お姉ちゃん」

(*゚∀゚)「ん? なんだい?」






   ごめーんねー
   / ̄\
   |/ ̄ ̄ ̄\
 (ヽノ////V\\/)
 巛_)//(゚) (゚)(ツ
`/ム彡 (_●_) ムヽ
(___   |∪| __)
   |  ヽノ/
   |    /



(*゚∀゚)「……………」



459: ◆sEiA3Q16Vo :11/10(土) 22:52 /X2IzpFqO


(*゚∀゚)「……………」

(*゚ー゚)「……………」

重い。

重すぎる空気が病室を支配する。

空気。
酸素とか二酸化炭素とか窒素。

からけ。
花山さんの空気っぷりは異常。

エアロ。
青魔法青魔法。

エアーマン。
倒せないよ。

Air/まごころを君に。
ラミエル可愛いよラミエル。



氷ついた空気は、さながら時が止まった様な錯覚を覚える。

(*゚∀゚)「そして時は動き出す」

正直TVチャンピョンは無いと思った。それ以上にタンクローリーに爆笑した。



(*゚∀゚)「人間……適材適所だよね……」

(*゚ー゚)「……そうだね……」



460: ◆sEiA3Q16Vo :11/10(土) 23:00 /X2IzpFqO


(*゚ー゚)「ねぇねぇ、お姉ちゃん。どこに行きたい?」

(*゚∀゚)「杜王町」

唐突に話題の転換を図る少女の発言を、冷静に切り捨てる。イッツCOOL。

(*゚∀゚)「発言には責任を持ちな、お嬢ちゃん」

もう何か西部でテキーラ煽ってるガンマンみたいな言い方で攻める。責める。超攻める。ガンガン攻める。チョコボール向井ぐらい果てしなく攻める。

この巨乳マジ鬼畜。

(*゚ー゚)「……………」

少女涙目、超泣きそう。
もうダメ神みたいにあぅあぅ言いながらスイーツに溺れてさりげなく全てを水に流しそう。流すのは綿だけど。

(*゚∀゚)「いや、冗談だって」

発言には責任持てって所が。

杜王町には行きたい。
超行きたい。
いつか旅行したい場所ベスト3にノミネート。他二つは雛見沢とグリーンドルフィン。



(*゚∀゚)「……屋上に行きたい」

高くなった空を見上げて、つーはそう言った。

(*゚ー゚)「じゃ、行こうか」

そんな横顔を眺め、少女は手を差し出す。



第十九話・完



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