('A`)が10時間だけ王になるようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 19:41:51.58 ID:4qzloPCW0
1.
本格的な冬も差し迫ったある日のこと。

原子力発電所から核廃棄物処理施設へ向かう一台のトラックが何者かに襲われた。

犯人は運転手にスタンガンを食らわせてトラックごと奪い、逃走。

トラックは少し離れた森の中ですぐに見つかったが、積んでいた核廃棄物が

ほんの少しだけなくなっていた。

警察関係者は事態を重く見てこの事実を公にしないことに決定した。

なくなった廃棄物の量はグレープフルーツ一個分ほど。

核爆弾を作るには十分な量だ。








ド ク オ が 1 0 時 間 だ け 王 に な る よ う で す



2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 19:43:13.09 ID:4qzloPCW0
2.
公営団地の一室。

すべての準備を済ませたドクオは台所のテーブルについて時間が過ぎるのを待っていた。

テーブルにはアタッシュケースが一つ置かれている。

そのケースからはコードが一本伸びていて、それはスイッチ付きのグリップに繋がっている。

腕時計を見る。

時間だ。


('A`)「行くか」


この日の為に用意したちょっとだけ高級なスーツをはためかせて家を出る。

ドクオの家は団地の一階だ。

まず右隣の部屋の扉をノックした。


('A`)「失礼、隣のもんだが」



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 19:44:23.62 ID:4qzloPCW0
3.
( ><)「鬱田さん。何か用なんですか?」

('A`)「やあ、どうも。いつぞやはミカンをありがとう。うまかったよ」

( ><)「いえいえ、どうせ田舎から山のように送ってくるんです」

('A`)「ところで俺の部屋に爆弾を仕掛けたんだ」


「回覧版を持ってきました」みたいなその軽い口調に、隣人は呆けた顔をした。


(;><)「えっ?」

('A`)「まあここの壁は頑丈だから大丈夫だとは思うが一応知らせとく。じゃあ」

(;><)「じゃあってあの、鬱田さん!」


ドクオは次に自宅の左隣の部屋をノックした。


('A`)「やあ奥さん。子供は元気かい?」



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 19:45:22.75 ID:4qzloPCW0
4.
J( 'ー`)し「ええ、そりゃもう」

('A`)「そりゃ良かった。ところで俺の部屋に爆弾を仕掛けたんだが…」


そんな調子で隣近所に「お知らせ」を済ませるとドクオは団地村の入り口に向かった。

ケータイを取り出して110番する。


***「こちら警察です。どうしましたか?」

('A`)「あーどうも。核廃棄物が盗まれた事件のことは知ってるか?」

***「?」

('A`)「これから詳細を話す。よく聞いてくれ」


ドクオは犯人しか知りえないようなことをすべて喋った。


('A`)「そういうわけだ。今、VIP団地の前にいる。すぐ来てくれ」



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 19:46:23.64 ID:4qzloPCW0
5.
たちまちパトカーがやってきた。

サイレンをガンガン鳴らしてまるで気の早いクリスマスだ。

∧∧
(,,゚Д゚)「警察だゴルァ! お前を連行する、大人しくしろ」

('A`)「まあ話を聞いてくれ」
∧∧
(,,゚Д゚)「そいつは暗くて狭い部屋でいくらでも聞く」

('A`)「急くなよ。今聞いて欲しいんだ。例えばたった今から俺の部屋が爆発する」
∧∧
(,,゚Д゚)「へ?」


ドクオは腕時計を見た。


('A`)「あと十秒…九秒…8,7,6,5,4,3,2,1、はいドカン」


団地の端っこで爆発が起き、衝撃波が津波となって押し寄せた。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 19:47:52.20 ID:4qzloPCW0
6.
子供の泣き声、サイレン、助けを呼ぶ声、火災報知機のベル。

すべてが悲鳴と化していた。

∧∧
(,,゚Д゚)「pけおいgじゃえおいrjぎあwjぎおあr!?!?!?!?!」

('A`)「話を聞く気になったか?」


ドクオは手にしたアタッシュケースを見せて笑った。

ささやかな微笑だ。


('A`)「爆弾はまだある」
∧∧
(,,゚Д゚)「ま、待てゴルァ! 本部に連絡するからちょっと待てゴルァ」

('A`)「いいとも。マスコミが来るのとどっちが先か賭けるか?」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 19:48:54.82 ID:4qzloPCW0
7.
昼下がりの静かな団地はあっという間にリオのカーニバルみたいになった。

ドクオは警察やマスコミに遠巻きに囲まれて台風の目みたいに立ち尽くしていた。


('A`)「テレビ局も来てるな。こうでなくっちゃあ」

( ^ω^)「あんたがドクオさんですかお」

('A`)「ん。お前は?」

( ^ω^)「警察の内藤と言いますお」

('A`)「俺とお喋りする役か」

( ^ω^)「そうなりますお。要求を聞きたいですお」

('A`)「まあそれより先に俺に喋らせろよ。カメラをこっちに近づけてくれないか?」

( ^ω^)「は、はいですお…マスコミを入れますお」


視聴率のハイエナどもを前にドクオは朗々と語り始めた。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 19:49:55.44 ID:4qzloPCW0
8.
('A`)「核廃棄物が盗まれた事件はみんな知ってるな? 俺が犯人だ。

    で、盗んだそれがどこにあるかって言えばこの中だ」


ドクオはアタッシュケースを掲げてみんなに見せた。

『ライオンキング』のマントヒヒが生まれたてのシンバを見せるみたいに。


('A`)「量にすれば僅かだが地球に大穴あけるには十分だ」
  ∧_∧
兄(;´_ゝ`)「それは核爆弾ってことですか!?」

('A`)「物理学の基本を知ってりゃ誰だって作れる。ファミコンの基盤を溶接するより簡単だ」

(;^ω^)(こりゃとんでもない事になったお…)

('A`)「アタッシュケースから伸びてるコードが見えるかな? これが起爆スイッチだ。

    押した瞬間、日本に新たなグラウンド・ゼロが生まれるぞ」

('A`)「説明は以上だ。それじゃ、要求の方に入ろうか」



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 19:50:57.32 ID:4qzloPCW0
9.
たちまち日本中が蜂の巣にバクチク投げ付けたみたいな大騒ぎになった。

今ごろ遺憾の意とか誰の責任だとか政治家どもはそんなことを言っているのだろうか。

それともとっくに尻に帆かけて国を出てるかな?

ドクオは目の前で起こっているマスコミと警察の右往左往っぷりにそんなことを考えた。


('A`)「要求…要求は…そうだな、とりあえずリムジンを用意してくれ」

( ^ω^)「え? どこへ行くつもりですかお」

('A`)「俺の勤めてた会社だよ」


意味不明だ。でも、誰も逆らえない。

すぐに黒塗りの高級車が団地にやってきた。


('A`)「何だ、映画で見たようなこう、やたら長いやつじゃないのか?」

( ^ω^)「そんなの日本にはないですお。これで我慢して欲しいですお」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 19:52:03.76 ID:4qzloPCW0
10.
('A`)「すげえ! 車に冷蔵庫ついてるぞ」


得体は知れないがこれ一本でドクオの月給が吹っ飛びそうな洋酒を呷っていると車が止まった。

ドクオが前に勤めていた会社、2ch商亊の前だ。

降りた瞬間に警察やらマスコミやらがあたりを取り囲む。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「ドクオさん、要求は一体なんなんですか! 世界中が貴方に注目してます!」

( ^ω^)「こら下がれお! 勝手に質問すんなお!」


ドクオはニヤつくのを堪えられなかった。


('A`)(今の俺はハリウッドスターだな)


さあ、社長室に行こう。

あのハゲには言いたいことが山ほどある。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 19:53:02.38 ID:4qzloPCW0
11.
('A`)「よう社長! 元気だったか」

(´・ω・`)「…」


社長室のでかい机の前では、ショボン社長が突っ立っていた。

ドクオは何の遠慮もなしに社長の机に向かい、椅子に座って足を上に投げ出した。


('A`)「いい椅子だなオイ、この机の下に秘書を入れてお仕事か? ん?」

(´・ω・`)「な、何の用だ…」

('A`)「あんたは俺の顔なんか覚えていないだろうが、俺はあんたを忘れたことはない。

    残業手当てを払わなかったことで裁判しただろ? 覚えてるか?」


言いながらドクオは机を漁り始めた。


('A`)「机は整理しろよ。あんたあれだろ、小学生のころ机でパンとかカビさせてたクチだろ」



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