('A`)が10時間だけ王になるようです
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 20:08:23.87 ID:4qzloPCW0
- 23.
('A`)「懐かしいな、ここは。何も変わっていない」
( ^ω^)「来た事あるんですかお」
('A`)「結婚前に妻とな。ああ、あった。これだ」
荒巻がつけていたという西洋式の階中時計が強化ガラスのケースの中に展示されている。
('A`)「館員さん、これ俺にくれないか?」
川;゚ -゚)「そ、それは困ります…」
('A`)「カタイこと言うな。開けてくれ」
( ^ω^)「言う通りにしてくれお」
ドクオは手にした時計を嬉しそうに胸のポケットにしまった。
('A`)「こうして胸から金の鎖を下げとくのがカッコイイんだ。どうだ?」
( ^ω^)「似合いますお」
- 50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 20:09:21.45 ID:4qzloPCW0
- 24.
二人は車に戻った。
リムジンの周囲はマスコミと警察と自衛隊と野次馬、あとどっかのスパイやら何やらで
ブルース・リーの伝記映画のラストシーンみたいになっている。
('A`)「一秒後には蒸発してるかも知れないってのに呑気な連中だな」
( ^ω^)「次はどこへ行く気ですかお?」
('A`)「そうだな…」
時計を見た。
夕方の四時三十分ちょうど。
('A`)「テレビ局に電話してくれ」
( ^ω^)「インタビューでも受ける気ですかお」
('A`)「いや、見たいテレビがあるんだ。NHKに頼む」
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 20:10:20.00 ID:4qzloPCW0
- 25.
内藤が電話をかけた。
( ^ω^)「どうぞですお。NHKの偉い人ですお」
ケータイを受け取ったドクオは横暴な先輩が下級生に命令するみたいに言った。
('A`)「やあ、実は頼みがあるんだ。『不思議の海のビコーズ』の最終回を放映してくれないか?」
(;^ω^)「え?」
('A`)「今すぐあんたのチャンネルでだ。この車にはDVDプレイヤーがないんでね。
今すぐにだぞ。それじゃ」
ドクオは電話を切って内藤に返した。
( ^ω^)「なんでまたそんなもんを…」
('A`)「俺がガキのころにやってたアニメだ。最終回を見逃したままなのを今思い出した」
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 20:11:20.96 ID:4qzloPCW0
- 26.
('A`)「あ、車は2chドームへやってくれ。今日はアジア統一選で韓国戦だろ?」
( ^ω^)「野球見るんですかお?」
('A`)「しー、静かに。始まった!」
ドクオはテレビに齧り付いた。
NHKの報道特番がいきなり途切れ、不思議の海のビコーズが始まる。
('A`)「大人になってからもふと気になることがあったんだ、最後はどうなったんだろうってな」
( ^ω^)(このおっさん一体何がしたいんだお? 最終目的はなんだお?)
アニメが終わるころにはドーム球場についた。
('A`)「よーし、バックネット裏に行こう! ヤンヨーズは勝ってるか?」
- 55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 20:12:16.28 ID:4qzloPCW0
- 27.
( ^ω^)「三回表0−2でヤンヨーズが負けてますお」
('A`)「何だよ、昨日も負けてたじゃねえか」
憧れの席で見る野球も負けてるんじゃ仕方がない。
一点も返せないまま五回裏、ヤンヨーズの攻撃。
('A`)「内藤」
(;^ω^)「韓国側のピッチャーに手錠付けて投げさせろとか言う気ですかお」
('A`)「それも面白そうだが、そうじゃない」
ドクオはアタッシュケースを抱えて席を立った。
('A`)「次の打席は俺が出る。手配しろ」
(;^ω^)「ええええ!?」
- 56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 20:13:12.47 ID:4qzloPCW0
- 28.
( ^ω^)「…というわけなんですお、監督」
∧_∧
( ・ω・)「ふざけちゃいけないんよ、大体こいつは誰なんよ」
('A`)「あんたの大ファンだよ」
∧_∧
( ・ω・)「俺の目の黒いうちは勝手な事させないんよ! 核爆弾持っててもなんよ!」
( ^ω^)「ふう、しょうがないお。おい」
∧∧
(,,゚Д゚)「はい。さあ、こっちに来い。ちょっとだけ俺たちとお話しよう」
∧_∧
( ・ω・)「アッー! 離せ、何するんよ!」
やんよ監督は警官やら黒服やらに抱えられてどこかへ連れて行かれた。
呆けたような顔をしている他の選手を尻目にドクオはバットを手にした。
観客のどよめきを受けながらバッターボックスへ。
('A`)「ピンチヒッタードクオだぜ。さあバッチコイ」
( ^ω^)(それはピッチャーが言うセリフだお…)
- 58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 20:14:22.80 ID:4qzloPCW0
- 29.
('A`)「…アタッシュケースが邪魔だな。ちょっとこれ持っててくんない?」
審判にケースを持たせ、ドクオはバットを構えた。
左手にはグリップが貼り付けてあるからしっかりとは持てない。
当然ながら観客は珍獣を目の当たりにしたみたいな顔だ。
いきなり出てきたあの背広男はなんだ?
もしかしてテレビで今実況してる男?
(;^ω^)「ドクオさん、お願いだからコードを引き千切らないで欲しいお!」
('A`)「うるさいなもう、引っ込んでろよ。必ずヒット打ってやるから」
(;^ω^)「そうじゃないですおおおおお!」
何がどうなっているのか理解できないでいるピッチャーのところへ黒服がやってきて耳打ちした。
打ち易い球を投げろとでも言っているのか?
- 59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 20:15:18.47 ID:4qzloPCW0
- 30.
初球…見逃し。ストライク。
('A`)「お、なかなか速いな。テレビで見るのと段違いだ」
二球目。空振り。ストライク。
('A`)「ふふん、タイミングは見抜いたぜ」
そして三球目。
ピッチャーが振りかぶる。
ドクオはしっかりと踏ん張って身構えた。
最後に野球をしたのはいつだっけ?
高校時代に仲間とやった草野球か。
あいつらもみんな今ごろ、この中継を見てるのか?
- 62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 20:16:14.66 ID:4qzloPCW0
- 31.
バットを振る。
当てずっぽのスイングだが重たい手応えがあった。
衝撃がバットを通じて全身を駆け抜けてゆく。
ボールは高く高く舞い上がった。
ライトの明かりの中を漂い、ぼんやりしていたファーストのグローブの中に落ちた。
「思わず捕っちまった」って顔をしている。
('A`)「ああ。まあ…上出来だろ」
ドクオは満足げだった。
アタッシュケースを審判から受け取り、ベンチに下りる。
歓声はなかった。
場内は恐ろしいほど静かだ。
- 64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 20:17:11.89 ID:4qzloPCW0
- 32.
('A`)「待たせたな。まあ、現実はあんなもんだ。ホームランを期待したか?」
( ^ω^)「…」
('A`)「何だ? 怒ってるのか?」
( ^ω^)「あんた図体のでかい幼稚園児ですかお!?」
球場を出てリムジンに乗り込もうとしたとき、内藤が怒鳴った。
( ^ω^)「あれがしたいこれがしたいってダダばっかこねてるお。
その挙句に爆弾のスイッチ持ったままバットのスイングですお!
もしうっかり押してたら…」
('A`)「悪かった、悪かったよ」
内藤の部下やら何やらが彼の口を塞ごうとなだめるが彼は黙らなかった。
( ^ω^)「あんたみたいなアホとはもう付き合い切れないお!」
- 65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/12(月) 20:18:09.89 ID:4qzloPCW0
- 33.
('A`)「まあ待て、反省してるよ。確かにバッターになるのは思慮が足りなかった」
( ^ω^)「口だけだお」
('A`)「タイムリミットはあと3時間だな。車でどこまで逃げられるか試してみるか?」
( ^ω^)「…」
('A`)「これが最後だ。どっか適当なレストランに入ろう。そこで話そうじゃないか」
( ^ω^)「わかったお…」
再びパレードが始まった。
ドクオは適当な高級レストランで車を止めさせた。
('A`)「貸し切りにしてくれ。今度はコックを逃がすなよ」
( ^ω^)「わかったお。他の客を追い出すから少し待つお」
('A`)「それから頼みがある。これが本当に最後の頼みだ」
( ^ω^)「?」
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