( ^ω^)ブーンがあの世で死んだようです
- 5: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/14(土) 23:38:40.68 ID:TEzhLmTQ0
- ーーー昼休み 高校ーーー
('A`)「うえーい、メシ食おうぜ」
(´・ω・`)「う、うん」
お気楽人間のドクオが弁当箱をしょぼんの机の上に放り投げる。
その音に一瞬、しょぼんは身体を震わせた。
('A`)「どーした、しょぼん。いつも以上にキョドってるじゃねえか」
(´・ω・`)「ああ、うん。まぁね」
('A`)「考え事?」
(´・ω・`)「うん……今日って、月命日だろ、ブーンの」
('A`)「あぁ……」
気付いたドクオも、言葉を失う。
- 6: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/14(土) 23:39:50.86 ID:TEzhLmTQ0
- ブーンが亡くなったのはちょうど、一ヶ月前。六月のことだった。
原因は交通事故、というよりはひき逃げ。現在も犯人は捕まっていないらしい。
親友の死に直面したしょぼんとドクオは、ただ茫然自失とするしかなかった。
そして、ようやく一ヶ月。
その期間は長いようで、非常に短い。
(´・ω・`)「……そういえば」
しょぼんが視線を教室の隅に移す。
窓際の最後尾。
ここ一ヶ月間、だれも座っていない席。
(´・ω・`)「しぃさん、まだ来ないね」
('A`)「あぁ」
同じクラスのしぃ。彼女はブーンが死んで以来、学校に来ていない。
その理由は公とされていないが、今現在最も有力な噂は、
「しぃはブーンのことが好きだったが、そのブーンが死んだショックから未だに立ち直れていない」
というものだった。
不謹慎かもしれないが、当然の流れともいえるかもしれない。
- 7: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/14(土) 23:41:09.85 ID:TEzhLmTQ0
- (´・ω・`)「早く戻ってきて欲しいけどなあ」
('A`)「だな、可愛いし」
(´・ω・`)「いや、そうじゃなく……やっぱり、クラスの一員だしさ」
('A`)「相変わらず、クソ真面目な人間だな、お前は」
ドクオが嘆息する。
今までだったら、ここでブーンもツッコンでるだろうなあ。
などとも思ったが、口には出さないでおく。
しばらく、二人の間に食事をする音だけが響いた。
二人とも、ブーンのことを思い出さずにはいられないのだ。
(´・ω・`)「……ブーンのお墓に行こうよ」
唐突に、しょぼんがそんなことを言い出した。
('A`)「ああ、そうだな」
箸を片手にドクオが応じる。
('A`)「お供え物とか、いらねえのか?」
(´・ω・`)「いらないんじゃない? 家族じゃないんだし」
('A`)「でも、花ぐらいは持ってったほうがいいんじゃね?」
(´・ω・`)「うん、そうだね……」
こういった時の作法をとんと理解していない二人である。
- 9: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/14(土) 23:44:48.23 ID:TEzhLmTQ0
- そのとき。
川 ゚ -゚)「私も行っていいかな」
そんな声が、上から降り注いだ。
ドクオとしょぼんが見上げた先に、女生徒が立っていた。
('A`)「お、委員長」
(´・ω・`)「やあ、こんにちは」
彼女はクー。このクラスの委員長である。
クーが委員長、しょぼんが副委員長。
事実上、このクラスのツートップなのだ。同時に、クラスにおける真面目コンビでもある。
(´・ω・`)「クーも一緒に?」
川 ゚ -゚)「うん、迷惑じゃないかな?」
(´・ω・`)「ぼくらは別にかまわないよ。それに、ブーンも喜ぶと思う」
('A`)「あいつ、美人に目が無かったからなあ」
(´・ω・`)「ドクオもね」
軽く笑う3人。しかし、その笑顔は決して晴れやかなものではなかった。
- 10: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/14(土) 23:46:53.70 ID:TEzhLmTQ0
- ーーー放課後 墓地周辺 路上ーーー
墓地に続く、寂しい坂道を歩く3人。
今は7月。汗が額から流れ落ち、アスファルトに吸い込まれていく。
('A`)「しっかし、キツい坂だ」
(´・ω・`)「うん……」
川 ゚ -゚)「バスでも使えばよかったかな」
世間話をしながら、坂を上る。
しょぼんの手には、花屋でつくろってもらった花束が握られていた。
セミの声がサラウンドで響き渡っている。やかましい。
ドクオはふと、路上を見た。
そこに転がっているのは、セミの死骸。
('A`)(……早いな、死ぬの)
('A`)(セミが地上で生きていられるのは一週間……そう考えると、生きるって儚いな)
('A`)(って、なに臭いこと考えてんだよ、俺……思春期かよ……)
(´・ω・`)「ドクオ?」
('A`)「あぁ、いや、なんでもねえよ」
- 13: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/14(土) 23:49:04.18 ID:TEzhLmTQ0
- 川 ゚ -゚)「見えてきたぞ」
そこは閑静な墓地である。
入り口には地蔵が並び、その奥には整然と墓石が建てられている。
川 ゚ -゚)「お坊さんに挨拶したほうがいいのかな?」
隣にある寺院らしき建造物を眺めながら、クーが言った。
('A`)「金とか持ってきてないし、お参りするぐらいなら別にいいんじゃないか?」
川 ゚ -゚)「……そうか、そうだな。ところで、私はここに来るのが初めてなんだ。ブーンの墓の場所を教えてくれないか?」
(´・ω・`)「うん、えっと、確かこっち……」
ドクオとしょぼんは、葬式の直後にここまで来ていた。
親友ということで特別に、という理由である。
(´・ω・`)「……あれ?」
墓と墓の間の、狭い砂利道を進んでいたしょぼんが、素っ頓狂な声をあげた。
('A`)「どうした?」
(´・ω・`)「あれは……」
しょぼんの視線の先にあるのは、ブーンの墓。
そこに、先客がいた。
- 16: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/14(土) 23:53:13.73 ID:TEzhLmTQ0
- 川 ゚ -゚)「しぃさん……?」
墓の前でしゃがみこみ、目を瞑って手を合わせている少女。
遠目で見る限り、間違いなくしぃである。
('A`)「きてたのか」
(´・ω・`)「声、かけたほうがいいのかな」
川 ゚ -゚)「私が行くよ」
そんな会話を交わしていると、祈りを終えたのか、しぃが立ち上がった。
傍に置いてあった紙袋をつかんで、フラフラとこちらに向かってくる。
- 18: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/14(土) 23:54:39.15 ID:TEzhLmTQ0
- 川 ゚ -゚)「しぃさん」
歩み寄ったクーがしぃに話しかける。
(*゚ー゚)「!」
いま気付いた、といったような表情のしぃ。
その顔は、3人の記憶に存在するしぃよりも、はるかにやつれていた。
食事もしていないのだろうか。
(*゚ー゚)「……クー、さん」
川 ゚ -゚)「久しぶりだな」
クーも、話しかけたのはいいが、話題が思いつかない。
学校に早く来るよう促すのも、無粋な気がしてならなかったのだ。
(*゚ー゚)「うん、久しぶり……」
川 ゚ -゚)「……」
- 19: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/14(土) 23:56:11.34 ID:TEzhLmTQ0
- (*゚ー゚)「ご、ごめんね、私急いでる……から」
言葉少なにそう告げて、クーの脇を通り過ぎていく。
後方に突っ立っていたしょぼんとドクオには、会釈するのみだった。
('A`)「やっぱ、あの噂は本当なのか」
姿が見えなくなった頃に、ドクオが呟いた。
(´・ω・`)「かも、しれないね」
川 ゚ -゚)「噂で人を判断するのはよくないな」
(´・ω・`)「そうだけど……一途だったのかな、って」
川 ゚ -゚)「……」
クーが黙り込む。
またも、重苦しい空気が流れた。
('A`)(あー、畜生。真面目コンビはこれだから……)
などと、頭の中で考えているドクオにも、何かが出来るわけではない。
川 ゚ -゚)「お墓参り、済ませようか」
(´・ω・`)「……うん」
ブーンの墓には、真新しい花と幾つかのお菓子が供えられていた。
それがブーンの家族によるものか、しぃによるものかは、3人の知るところではない。
・・・
・・
・
- 21: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/14(土) 23:57:58.08 ID:TEzhLmTQ0
- 川 ゚ -゚)「……よし、帰ろうか」
手を合わせて暫く黙祷を捧げていたが、やがてクーが口を開いた。
(´・ω・`)「うん」
('A`)「そうだな」
異論は無く、ドクオとしょぼんは頷く。
川 ゚ -゚)「……ん、これは」
戻ろうとした矢先、クーが何かを拾い上げた。
(´・ω・`)「どうしたの?」
川 ゚ -゚)「いや……こんなものが落ちていた」
('A`)「生徒手帳じゃねえか、うちの学校の」
藍色のカバーに刻まれている高校名は、確かにドクオたちの学校のものである。
川 ゚ -゚)「しぃさんのかな?」
('A`)「学生証とか、何か入ってないのか?」
川 ゚ -゚)「……入ってない」
それどころか、定期券や回数券なども入っていない。
(´・ω・`)「でもたぶんしぃさんのだと思うよ。クー、明日しぃさんに届けてあげたら?」
川 ゚ -゚)「うん、そうするよ」
クーは何の気もなしに、その手帳をポケットにしまいこんだ。
- 22: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 00:00:06.37 ID:M2Gge9g00
- ーーー墓地周辺 路上ーーー
帰り道は夕焼けに染まっている。
川 ゚ -゚)「……夜は気味が悪い場所になりそうだ」
('A`)「なんてったって墓地の近くだからなあ」
(´・ω・`)「……」
('A`)「どうした? しょぼん」
(´・ω・`)「いや、しぃさんのことなんだけど。あの時何か言っといたほうがよかったかなあって」
川 ゚ -゚)「とはいえ、これは彼女の問題だからな……親御さんも忠告はなさっているはずだ」
('A`)「あいつの家、貧乏なんだよな」
しぃの家は市内屈指のボロアパートである。
家計は相当厳しいらしく、弁当も持ってこずに昼休みは机で寝ている場合も多い。
見かねたクーや、他の女子が食べ物を差し入れることも度々ある。
だが、しぃ自身あまり人と接することをよしとする性格ではないので、そんな善意も拒否してしまうことがほとんどだ。
川 ゚ -゚)「ブーンのことだけでなく、家庭のことも関係あるのかもしれないな」
('A`)「あぁ……やつれてたもんなあ」
(´・ω・`)「今度、家に行ってあげようよ」
そんな会話をしていたときである。
怪奇は、突如として訪れた。
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