( ^ω^)ブーンがあの世で死んだようです

24: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 00:01:40.12 ID:M2Gge9g00
  
目の前に人影がある。
最初、3人はその程度の感覚しか持っていなかった。
しかし、その物体に近づくにつれて。
違和感は膨大し始めた。

('A`)「……おい」

ドクオが呟く。
クーも、しょぼんも答えない。
目の前の彼に釘付けだった。

やがて、彼が気付く。
そのころには、3人は歩みを止めていた。

彼はまぎれもない、間違えようも無い。
一ヶ月前に死んだはずの、ブーンだった。

('A`)「ブーン……」

驚愕の声を漏らすドクオ。

( ^ω^)「……」

夕焼けに映えるブーンの顔は、生気に満ちている。
とても、死んだようには思えない。
足もある。服装は制服。
3人を、無表情で見つめている。



26: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 00:03:19.41 ID:M2Gge9g00
  
(´・ω・`)「君は、ブーンだよね?」

確認するようなしょぼんの問いに、ブーンは機械的な動作で頷いた。

(´・ω・`)「君は、死んだんじゃないのかい?」
( ^ω^)「死んだお」
('A`)「……」
(´・ω・`)「でも、君は今ここにいる。なぜ?」
( ^ω^)「……」

沈黙。夕日が沈んでいくのがわかるぐらいの時間が流れる。

やがて、ブーンはぽつり、ぽつりと語り始めた。

( ^ω^)「僕は、確かに一度死んだお。車に轢かれたんだお。あとはわからないお。目の前が真っ暗になって」
(´・ω・`)「……」
( ^ω^)「気付いたら、あの世にいたお」
('A`)「あの世だと?」
( ^ω^)「見たことの無い場所だったお。海とか山があって、車も走ってたお」
川 ゚ -゚)「にわかには信じがたいな」

口に出してからクーは気付く。
そもそも、目の前の存在が信じられないのだ、と。

( ^ω^)「天国かもしれないと思ったお。でも、違ったお」
(´・ω・`)「どうして?」
( ^ω^)「天国っていうほど、メルヘンじゃなかったお。あまりにも、この世と似ていたお」
('A`)「それで、どうなったんだ?」
( ^ω^)「僕は、僕はそこで」



28: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 00:04:42.61 ID:M2Gge9g00
  
( ^ω^)「もう一度死んだお、車に轢かれて。気付いたら、ここにいたんだお。そして、ぼーっとしてたらしょぼんたちが来たんだお」
('A`)「ねーよ」

途切れ途切れの説明をドクオが切り捨てる。
彼はその目でブーンの亡骸を見たのだ。棺の中で眠っているブーンを。

でも彼は今ここにいる。
実体として、ここにいる。

川 ゚ -゚)「……じゃあ、幽霊ではないのか?」

クーが震える声で尋ねた。

( ^ω^)「違うと思うお、ほら」

そういって、自分の着ている制服を引っ張ってみせる。
風が吹いた。
制服がなびく。

('A`)「……いよいよ、わけわかんねえよ」



35: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 00:12:41.91 ID:M2Gge9g00
  
川 ゚ -゚)「……ところで、どうすればいいんだろう?」
(´・ω・`)「だよね。ブーン、これからどうするの?」
( ^ω^)「わからないお……家に帰るのがいいのかお?」
('A`)「びっくりするだろうな、家族」

3人はこれ以前も以降にもないであろう驚愕を味わっている。
家族が彼の姿を見れば卒倒してしまうかもしれない。

('A`)「……それに、学校に行くわけにもいかないんじゃね?」

問題は重なる。

(´・ω・`)「……」

( ^ω^)「僕はもう、生きてちゃいけない存在なんだお」

達観しているかのようなブーンのセリフ。

川 ゚ -゚)「そんなこと……」
( ^ω^)「実際そうだお。でも、でも」

( ^ω^)「個人的には、死にたくないお」
(´・ω・`)「……」

ブーンはすでに二度死んでいる。

('A`)「とにかく、何か対策を考えないと」

???「その必要は、ないですね」



36: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 00:19:05.68 ID:M2Gge9g00
  
5人目の声。
それはブーンの向こう側から聞こえた。

坂道を上ってくる一人の男。

冬物のスーツで身を包んでいる。

(´・ω・`)「……誰、ですか?」

( ・∀・)「誰でもいいでしょう。私は単に、彼を連れて帰るためにここに来たのです」

そういってその男はブーンを指差す。

( ^ω^)「僕のことを知っているのかお」

( ・∀・)「えぇ。しっていますよ。この世に恨みを持った嫉妬深い少年」
( ^ω^)「……」
('A`)「おい、どういうことだよ」
( ・∀・)「……さあ、行きましょう」

ドクオの問いかけを無視して、モララーはブーンの腕を掴んだ。

( ^ω^)「やめてくれお!」
( ・∀・)「しつこいですねえ。わかっているでしょう? 君はここにいるべき人間ではない」

( ・∀・)「……まったく、少し目を離した隙に死んでしまうのですから。おかげでこの世の人間にも見つかって」
('A`)「やめろよ!」

抵抗するブーンとどこかに連れて行こうとする男。
その間にドクオが割って入った。



38: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 00:26:37.37 ID:M2Gge9g00
  
( ・∀・)「……あぁ、この世の人間は厄介だ」

ドクオが二人を引き離したと同時に、男は嘆くように呟いた。

('A`)「こいつをどうするつもりなんだよ!」
( ・∀・)「……はぁ、まぁいいでしょう。口外しても信用されることではありませんし」

( ・∀・)「魂をすり潰すんですよ。何度も何度も殺して」
(´・ω・`)「魂を……?」
( ・∀・)「そうです。この少年の魂は恨みや妬みで満ちています。そんな魂は昇天できません。この世と天国の狭間の世界で、すり潰されます」
('A`)「ばかばかしいな。ブーンはそんな奴じゃねーよ」

( ^ω^)「……」

( ・∀・)「そんなこといわれても、事実ですからねえ……」
川 ゚ -゚)「それで、ブーンはどうしてここにいる?」
( ・∀・)「本来なら、あの世で死んで、この少年は終わりのはずでした。でもなぜか彼はまたこの世に戻ってきた」

( ・∀・)「不測の事態です」

男の口調は吐き捨てるようでもある。
丁寧な物言いだが、相当いらだっているのかもしれない。

('A`)「だから、殺すってか? もう一度」
( ・∀・)「そうです。魂が跡形もなくなるまで」

あくまでも当然だという風に
男は言ってのけた。



39: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 00:35:29.10 ID:M2Gge9g00
  
川 ゚ -゚)「……そんな非道なことが許されるものか」
( ・∀・)「非道? そんなはずがありません。仕事を忠実にこなしているのですから、褒めていただきたいものです」
('A`)「こいつが何したってんだよ」
( ・∀・)「さあ。それは、私の知るところではありませんので」
(´・ω・`)「そんなわけのわからない理由で殺されるなんてありえないよ!」

( ^ω^)「ドクオ、しょぼん、クー、もういいお」
('A`)「ブーン?」
( ^ω^)「この人の言ってる事は正しいお」
(´・ω・`)「そんな……じゃあ君には、恨みや妬みがあるというのかい?」

返ってきた答えは沈黙だった。

( ・∀・)「と、いうわけですから。本人も賛同していますし」
('A`)「させねえよ!」
( ・∀・)「……あんまり五月蝿いと、貴方たちも殺しますよ?」
('A`)「何……」
( ・∀・)「貴方たちには大きな恨みはなさそうだ。殺しても、私の仕事は増えません」

( ^ω^)「……みんな、もういいお。僕のことを気遣ってくれてありがとうだお」
川 ゚ -゚)「ブーン、いいのか! さっき、君は死にたくないと言ってたじゃないか!」

( ^ω^)( ・∀・)「個人の希望なんて叶えられないことが前提」

( ・∀・)「……そういうことです」

('A`)(ブーン……お前は、あの世で何を見たんだ?)

男に、あくまでも従順なブーンは。
性格から表情まで、生前とは明らかに違っていた。



41: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 00:41:42.65 ID:M2Gge9g00
  
( ・∀・)「……さて、行きましょうか」
( ^ω^)「お」

もう抵抗はしない。
ブーンはただ、男に付き従って坂を下る。
3人は見つめることしか出来ない。

('A`)「……混乱するよなあ、夢か? これは」

ヤケクソ口調のドクオ。

(´・ω・`)「最初は抵抗していた。でも最後は抵抗しなくなった」
('A`)「クリムゾンかよ」
川 ゚ -゚)「彼はモララーの言うことに納得した……そういうことだろうな」

できれば、全てが夢であってほしい。
それは3人の、共通の願望だった。

今更、ブーンに現れて欲しくなかった。
そして、混乱させるような一幕を演じて欲しくなかった。
あの世、この世、天国……信じたくもない。

ブーンたちの姿が見えなくなる。
そろそろ、陽も完全に沈もうとしていた。



43: ◆xh7i0CWaMo :2006/10/15(日) 00:46:28.40 ID:M2Gge9g00
  
ーーーあの世ーーー
そこはあまりにも現実に酷似している。
空があり、海があり、山がある。
昼もあれば夜もある。
季節は夏。

( ・∀・)「……まだ消えませんか」
( ^ω^)「お」

呆れたような男の呟きに、ブーンも首をかしげた。
もう何度死んだことか。

( ・∀・)「はぁ、少年、貴方はどれほど大きな恨みを抱いているのです?」
( ^ω^)「……」

色々な言葉を交わすようになった二人。
しかし、この質問にだけは、ブーンは口を閉ざしたまま。

( ・∀・)「……はぁ。仕方ない」

( ・∀・)「もう一度、死んでみますか」

( ^ω^)「お」



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